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能登半島地震 暮らし・生業再建を(『女性のひろば』2024年3月号)

能登半島地震 暮らし・生業再建を――井上さとし参院議員に聞く

2024年1月1日、石川県能登地方を震源とする地震があり、同県志賀町で震度7の揺れを観測しました。日本共産党は被災者の要望を行政につなぐ活動に全力をあげています。いち早く現場にかけつけた井上さとし参院議員に聞きました。(1月15日記)

 元日の朝宣伝を終え、京都の自宅にいた午後4時10分、ぐらぐらっと大きく揺れ、能登で大地震のニュースが。すぐに現地と連絡をとり、JRが動き始めた2日夕に金沢へ行き、党県委員会で対策会議。3日朝、藤野保史前衆院議員、佐藤正幸石川県議とともに被害の甚大な輪島市に向かいました。通常なら金沢から2時間半ほどですが、地割れや土砂くずれなど道路が大変な状況で、6時間近くかかってたどりつき、鐙史朗輪島市議の案内で、被災地のみなさんの要望をお聞きしました。
 07年の能登半島地震(震度6強)、また3年前から能登半島先端の珠洲市では群発地震(21年震度5弱、22年震度6弱,23年震度6強)が続いています。何度か現地に行っていますが、道路の損壊状況をはじめとして、これまでとは比べようのない災害規模に呆然とするばかりでした。

■災害関連死を防ぎ、避難所にジェンダー視点を

 2週間たった今も、県全体で2万人近い人たちが避難所に身を寄せています。3日に坂口輪島市長に伺ったところ「1万人の避難者に2千人分しか食料が届いていない」ということでした。実際、市中心部の避難所でお話を伺うと「何の食料も配られていない」という状況でした。小学校の体育館や車中泊、ビニールハウスなどに自主避難されているみなさん、そして孤立した集落のみなさんはどうしておられるか...。拠点には物資が届いていますが、被災者のところまで届ける人的体制が急務です。
 断水も6市町全域に及び、インフラ復旧のめどは立たず、避難生活は長期化を余儀なくされています。熊本地震(16年)のときは直接死50人、災害関連死は200人を超えました。健康面での対応に万全を期して災害関連死を防ぐことが急務です。
 避難所には間仕切りも段ボールベットもなく、床に毛布を引いて寝ておられる状況で、学校などの避難所は暖房も十分ではありません。
 断水によるトイレの問題は深刻で、とりわけ女性が本当に困っておられました。避難所では、着換える場所もない。過去の震災では避難所での性被害も報告されています。
 これまでもジェンダーの視点からの災害対策が重要として、女性の参画が求められてきましたが、防災・危機管理部局に女性職員がいない市区町村は6割にのぼり、地方公共団体の防災・危機管理部局の女性職員は1割程度にとどまっています(内閣府調査)。能登地震には内閣府の男女共同参画局から一人の職員が派遣され対応に当たっていますが、抜本的強化が必要です。

■防災計画上回る被害

 時間の針を一気に30年以上前に戻したかのような状況はなぜもたらされたのか。石川県の地域防災計画は、今回の震源に最も近い地震の被害として死者7人、避難者2781人などを想定していました。今回の死者数は14日時点で災害関連死13人を含め221人となり、想定をはるかに上回りました。地震被害の想定は97年度から更新されておらず、県は新たな断層の知見や群発地震を受けて被害想定を見直しているさなかでした。備蓄の食料も一日目でなくなったといいます。
 今回の地震では、陸路に加え、空港が地割れで閉鎖、津波や地盤の隆起で海路も使えないという想定を超える交通断絶が起こりました。能登半島という地形的な特徴で交通手段が限られているのですから、今後は物流の遮断を見込んだ物資の備えなど、被害想定を見直した抜本的な対策強化が求められるのではないでしょうか。

■朝市全焼、輪島塗の工房も

 輪島市の「朝市通り」は、地震による火災で文字通りの"焼け野原"となっていました。消防団の方に話を伺ったのですが、地震で水源が確保できず、海水を汲みあげて懸命に消火活動にあたったが追いつかず...と大変悔やんでおられて。
 朝市は能登半島の代表的な観光地で、伝統産業・輪島塗の工房や店舗もこの通りに集中していました。和倉温泉(七尾市)は、20余りある旅館やホテルなどがすべて休業し、再開のめどはたっていません。
 新型コロナの影響から回復してきた矢先であり、二重三重の打撃を受けた地で生業と街の復興を進めていくには、人命救助を最優先にしつつ、融資にとどまらず迅速で長期的な直接支援が必要です。被災地のみなさんに政治がいち早く展望を示すことが何よりも求められると痛感しました。

■原発廃炉に

 そして志賀原発です。昨年11月、経団連会長がわざわざ現地に赴き、「一刻も早く再稼働を」と促したばかりでした。能登地震直後に北陸電力や政府は「異常なし」としましたが、外部電源の一部の使用不能や油漏れなどの重大なトラブルが起きています。
 今回の地震は長さ150㌔におよぶ活断層の動きが原因と言われています。能登地方では20年から地震活動が活発化しており、想定を上回る揺れや津波、地盤の変化が志賀原発を襲う可能性は否定できません。避難計画も道路が寸断された今度の状況を見れば、とても現実的とは思えません。
 甚大な被害を受けた珠洲市も、20年前まで原発建設をめぐり住民が二分されていました。ねばり強いたたかいがあり03年12月、電力3社(関西、中部、北陸)は原発計画の凍結を発表したのです。今回の地震でも、「珠洲に原発が建設されなくて本当によかった」と地元の方たちから何度も声をかけられました。
 北陸電力にたいしては、詳細な事実関係を公表することを求めると同時に、志賀原発、柏崎刈羽原発(新潟県)は直ちに廃炉という決断が必要です。
 今後息の長い支援が必要になりますが、まずは住宅の再建、とくに被災者生活再建支援法の対象を広げること、支援の額を抜本的に引き上げることが必要です。
 裏金づくりや万博に巨額をつぎこむのではなく、被災地にこそ手厚い支援を、と求めていきます。

いのうえさとし:1958年山口県生まれ。広島で育つ。参議院幹事長・国会対策委員長、金権・腐敗政治追及委員会責任者

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