国会質問議事録

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外交防衛委員会

shitsumon201111.jpg徳之島の基地移設反対大集会を受け、破綻が明白な普天間基地の移設先探しはやめ、無条件撤去を米国に求めるべきだと改めて要求した。


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 まず、一昨日の徳之島での大集会と普天間基地の移設問題についてお聞きいたします。

 一昨日の大集会には島民の半数を超える一万五千人が集まったということは午前中からそれぞれ指摘がありました。断固移設反対の意思表示が示されたわけですが、東京の人口に置き換えますと七百二十万人が集まったと、こういう見当になるわけですね。この人数の重みというのは午前中から繰り返し答弁があったわけですが、私は同時に中身が非常に大事だと思うんです。

 決議文にはこう書いてありまして、私たちは基地の移設に断固反対して政府が断念するまで闘いますと、そして、奄美の祖国復帰運動にも勝る、島を守る民族危機の叫びですというふうに言われております。高校生が決意を述べたのが大変感銘を呼んだようでありますけれども、この奄美復帰運動を題材にした演劇に参加をしたという高校生がこう言っているんですね。第二次大戦後、この島はアメリカの占領下に置かれることになりましたが、勇気ある人々の島に対する思いと行動力で復帰を勝ち取った。その人たちの徳之島を思う気持ちを引き継ぎ、基地移設反対を訴えたいと思いますというふうに高校生が述べました。

 私、数とともに、やっぱり歴史が刻まれたこの島民の皆さんの思いをどう受け止めるかということは本当に大事だと思うんですね。ですから、あれこれの経済支援とかそんな条件では揺るがないような決意を私は示していると思いますし、同時に、世界の自然遺産登録を目指し観光振興を目指すという方向にも反するという、こういう決意があったわけです。

 外務大臣に是非、この数とともに、ここで訴えられた中身の重みをどう受け止めるか、是非伺いたいと思います。

外務大臣(岡田克也君)

 まず、午前中も申し上げましたが、これだけ多くの皆さんが集会に結集されたということは、そのことを重く受け止めなければならないというふうに思います。あわせて、今委員が御指摘のように、徳之島あるいは奄美の歴史というものもあります。そういったことが一つの背景としてあるということは十分理解をしなければならないことだというふうに思っております。

 ただ一方で、私は、この徳之島ということを離れて、危機感を感じますのは、米軍基地、もちろん日米安保条約そのものを否定されるという立場に立てば別ですが、日米安保を前提にして米軍基地が果たしている役割ということを考えたときに、もし今回のようなことが全国あちこちでどんどん起きるということになると、それはやはり日米同盟というものをどう考えるのかと、そういう議論に行きかねない、そういう話でありまして、私は、国民の皆さんに日米同盟の重要さ、そのことによって日本自身の安全、あるいはアジア太平洋地域の平和と安定が保たれている、そのことをもっとしっかりと伝えていかなければいけない、そのことを改めて感じたところでございます。

井上哲士君

 沖縄でもそうですけれども、改めて、海兵隊というものが本当に日本を守っているのかと、イラクやアフガニスタンに行って侵略しているだけじゃないかと、こういう声もありますし、また安保そのものを見直すべきじゃないかということが保守的な首長の皆さんからも出ているということだと思います。私たちは普天間の苦しみというのは全国どこへ行っても同じだと訴えてきたわけでありますけれども、そのことが徳之島の皆さんの島民の意思として示されたことになると思います。

 総理はこの普天間の移設先については地方自治体の首長や住民の合意が必要だというふうにずっと言われてきたわけですが、この移設先の報道をされたところではどこでも今町ぐるみの大きな反対の声が上がっているという状況があるわけで、今日、そういう合意が成立するような自治体が存在するというふうに外務大臣はお考えでしょうか。

外務大臣(岡田克也君)

 それは、そういった地元の理解をいただけるように努力をしなければならないということで、合意ができない、あるいは理解がもらえない、そういったことで済むことではない。これは何が何でも理解を求めなければならない。そのために懸命の努力をしなければならない、そういうふうに考えております。

井上哲士君

 その何が何でもという姿勢がこういう怒りの火を付けているということを自覚をする必要があると思いますが、私はやっぱり結局移設先探しというやり方はもう破綻をしてきていると思います。私ども最初から言っていますように、この無条件の撤去を求めるということこそが一番の解決の道だということを改めて強く申し上げておきたいと思います。

 その上で、今日は米兵の犯罪と地位協定の見直しについてお聞きいたします。

 民主党は総選挙のマニフェストで日米地位協定の改定を提起するというふうに明記をされておりますが、いつどのような内容を提起して、改定交渉をどういうふうに進めていくお考えでしょうか。

外務大臣(岡田克也君)

 我々、この日米地位協定について、見直しの作業、これは必要だと、そのための議論を始めたいというふうに考えておりますが、これはそのことによって成果を出さなければいけないというふうに思います。そのことを考えたときに、例えば今普天間の問題でこれだけ日米間である意味で意見の違いがあるという状況、そういう中で、この地位協定の問題まで同時に持ち出すというよりは、やはり一つ一つというふうに考えるべきだと思います。

 もちろん、普天間の問題を解決しなければ地位協定は提起しないということでは必ずしもありません。地位協定の中でも様々な内容がありますから、その中で比較的議論になりやすい、議論しやすい、そういうテーマを選んで、例えば環境の問題などを先行的にやっていくというやり方もあるかと思いますが、とにかく今は五月末までということで普天間の問題に全力投球している、そういう状況でございます。

井上哲士君

 ただ、この間も特に沖縄を中心に様々な米兵、関係者による犯罪が起き、その身柄の問題をめぐっても様々な声が上がっております。この米軍犯罪の裁判権や身柄の引渡しの取扱いなどに関する地位協定の十七条の改定は急務だと思うんですね。

 ちょっと今ので確認しますけれども、前政権はこの十七条については運用の改善で対応すると、地位協定そのものは見直すということをアメリカ側には求めてこなかったわけでありますが、鳩山政権としてはこの十七条についても地位協定の改定を進めるという立場でよろしいんでしょうか。

外務大臣(岡田克也君)

 まだ地位協定の中のどこをどのように見直していくかということについて、我々、全面的な見直しの案を野党時代に作った経験は持ちますが、その中である程度プライオリティーを付けてやっていくと。そういうときに、具体的にどこをどうするということを政権内で決まったものがあるわけではございません。

井上哲士君

 私は、この十七条の改定なしに解決がないと思います。

 それで、非常にやはりこの刑事裁判、司法の問題が米軍優遇になっているということに批判があるわけですが、この地位協定そのものの改定と併せて、この地位協定より更に米軍を優遇する、そして日本の法律にも反するような運用が行われているということを正す必要があると思います。

 今日は、犯罪が起きた場合の米軍関係者の身柄の引渡しの問題についてお聞きをいたしますが、米軍関係者の犯罪に関して、その者が公務中でないという場合には日本に第一次裁判権があるわけですが、まず法務省に確認いたしますけれども、この公務中であるかないかということの認定の権利はどちらにあるんでしょうか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 日本側に認定権があるというふうに理解をしております。

井上哲士君

 日本側にあるわけですね。

 これは、最終的な決定はどこが行うんでしょうか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 最終的な決定という御趣旨にもよろうかと思いますが、最終的には裁判所において御判断されることになろうかと思います。

井上哲士君

 起訴後に裁判所が判断をするということでありますが、実際には逮捕の段階でそういう同じような取扱いがされていっております。

 そこで、日米地位協定の実施に伴う刑事特別法、いわゆる刑特法の十一条をお手元に配付をしておりますけれども、米軍関係者が地位協定の第十七条第三項(a)に掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、被疑者をアメリカに引き渡さなければならないという規定でありまして、この協定十七条第三項(a)の下にありますように、二番、公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪となっております。

 つまり、米軍関係者が公務中だと明らかに認めたときには被疑者をアメリカに引き渡さなくてはならないと、こういうふうにしているわけですが、実際には、公務中だと明らかでなくても、公務中かどうかが疑問という場合にもアメリカ側に被疑者を渡すという運用がされていると思いますけれども、これは何に基づいて行われているんでしょうか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 御指摘の点につきましては、日米合同委員会におきまして、合衆国軍隊の構成員、軍属又はそれらの家族を日本国の当局が逮捕した場合には、直ちに最寄りの合衆国軍隊憲兵司令官に対しその旨を通知するとともに、当該犯罪が公務執行中に行われた疑いがあるときには被疑者の身柄を当該司令官に引き渡すという趣旨の合意がなされているということによるものと承知をいたしております。

井上哲士君

 それはいつどこで合意されたんでしょうか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 済みません、日時、場所というのはちょっと私今、詳細については承知しておりませんが、(発言する者あり)日米合同委員会の席上で合意がされたというふうに聞いております。

井上哲士君

 一九五三年十月二十二日の日米合同委員会の刑事裁判分科委員会で合意されたものだと思いますけれども、この、先ほど言ったような安保刑事特別法第十一条の規定で公務中であると明らかな場合に引き渡すとなっているのに、今のような合意による運用がなぜ行われているんでしょうか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 お尋ねのような場合には、当該被疑者は合衆国軍隊の構成員等という特殊な地位にあって、必要に応じて軍当局に拘禁され得るなどの特殊事情があることにかんがみ、当該犯罪について合衆国の軍当局が第一次裁判権を有する可能性がある場合に、我が国の当局においてその身柄拘束を続けるのは妥当ではないことから、その身柄を合衆国の軍当局に引き渡す旨の合意をしたものと承知をいたしております。

井上哲士君

 つまり、軍隊の構成員という特殊な地位にかんがみということでありますけれども、しかし、そのことによって被疑者をどう裁判にかけるかという国権の非常に中心の問題が脅かされるということは私はあってはならないと思うんですね。

 公務中だと明らかな場合と、公務中であるか否か疑問の場合というのは明らかに違うんですね。公務中と明らかな場合と公務中でないと明らかな場合とありまして、その間のグレーゾーンがあります。このグレーゾーンの場合に日本が身柄を取るのかアメリカが身柄を取るのかという、全く違うことになってくるわけで、これは刑事特別法の規定と先ほど述べられた合意事項ではそこの部分が違うわけですね。それを合意事項に沿ってやっているということでありますが、これは私は日本の法令に違反しているんじゃないかと思います。

 日本の法令に反する合同委員会の合意が行われた場合と日本の法令というのは一体どっちが優先されるんでしょうか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 こういった合意につきましては、日本の法令に反するような合意はしないようにしているということであると思いますので、それを前提にしない形でのお尋ねということであれば、ちょっとお答えすることは困難であろうと思います。

井上哲士君

 法務省も、この刑事特別法が改正をされたときには、公務中だと明らかな場合のみアメリカ側に引き渡すべきだと、こういう解釈をしていたんじゃないですか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 内部資料におきまして、そういう趣旨の記載をしていたことはあることは事実でございます。

井上哲士君

 今、内部資料というふうに言われましたけれども、検察資料六十六、外国軍隊に対する刑事裁判権の解説及び資料、部外秘と書いてある資料でありますけれども、私、最近これを入手をいたしました。この中では、これは法務省刑事局が発行している文書でありますけれども、その者の犯した罪が行政協定第十七条第三項(a)に掲げる罪のいずれかに該当するということがいまだ明らかに認められない間は直ちに引き渡すべきではなく、刑事訴訟法の手続によって処理されることになると、こう明記しているわけですね。

 ですから、先ほど日米合意を言われましたけれども、少なくとも日本の法令の解釈としては、公務中だと明らかに認められない間は引き渡すべきでないというのが法務省の当初の解釈であり、それを徹底をされていたんじゃないですか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 この点につきましては、その後の資料におきましても、この解釈につきましては刑事特別法十一条の解説を主眼とするものであったので、合意された事項についての場合を含む取扱いのための解説としては必ずしも十分ではなかったというふうに解されているところでございます。

井上哲士君

 つまり、法律の解説としてはそうなんだけれども、その後の合意によって違う解釈になったということを今言ったんじゃないですか。なぜ日本の法律と違うことが合意によって起こるんですか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 恐らく合意自体はその当時もう既にあったんではないかなというふうに思います。

 御指摘の点につきましては、この刑事特別法十一条の規定で書いているのは明らかに公務中と認められるときという場合のものでございまして、それ以外の、そうかどうかよく分からない、米側に公務中であるかもしれないということで第一次裁判権があるかもしれないという場合の取扱いは合意された事項によるべきであるということになるのではないかというふうに思っております。

井上哲士君

 ですから、そういうのがおかしいと言っているんですよ。明らかに刑事特別法では、公務中とはっきりしない場合は身柄を引き渡さないということを法務省も解釈していたのに、実際には合意によって違うことが行われていると。まさにここに米軍優遇があるんではないかということを私は申し上げております。

 これは、この間も指摘しましたけれども、やはり日米間の言わば密約というものがあるんですね。一九五三年の十月二十二日に日米合同委員会の裁判権分科委員会の刑事部会日本側部会長の声明というのがあります。先日言ったあの裁判権放棄の声明は同じ部会長で二十八日に声明されていますが、これも、今申し上げたのも非公開の議事録でありますけれども、この日本代表の津田實氏は、こういう米兵犯罪者の身柄の問題についてこういうふうに言っております。このような法律違反者が日本の当局により身柄を保持される事例は多くないであろうことを声明したいと、こういうふうにこの非公開議事録で言っております。つまり、犯罪を犯した米軍関係者をできるだけ日本が身柄を拘束しないと、こういうことを声明をしていて、そのための仕組みとして今、安保特別法の規定にかかわらず、公務かどうか明確でない者はアメリカに引き渡すという仕組みになっているんじゃないかということを私は指摘しているんですが、法務省、いかがでしょうか。

法務大臣官房審議官(甲斐行夫君)

 刑事特別法におきましては、まさに公務執行中という明らかな場合の措置を定めたものと、お尋ねの合意の部分につきましてはそれ以外の場合を合意したものというふうに考えられますので、そもそも刑事特別法の規定と矛盾するものでは必ずしもないのではないかというふうに考えているところでございます。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、明らかに矛盾をしておりますし、法律家の答弁としては、私はいかがなものかというふうにして聞きました。この問題は更に追及をしていきたいと思います。今日は終わります。

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