国会質問議事録

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決算委員会

2011年8月5日(金)

・原子力安全・保安院の「やらせ」問題、安全神話をばらまく広報予算が推進勢力の食い物になっている問題を追及

 
井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 国と電力会社が一体になって原発安全神話を振りまいてきた広報事業について今日はお聞きいたします。

 玄海原発の国主催の説明番組におけるあのやらせメール問題は、住民の大きな怒りを呼び起こしました。我が党は、同様のことがないか全ての電力会社を調べるように求めましたけれども、そうしますと、国が主催したプルサーマル発電のシンポジウムにおいて、事もあろうに保安院が中部電力と四国電力に、社員らの出席を促し、事業者の立場での発言を行うようにやらせを依頼していたということが明らかになりました。

 当時の保安院の広報課長がマスコミのインタビューにも答えておりますが、在任中五回のシンポがあって、動員要請はいつものことだったと、こういうふうに述べているわけですね。安全のための規制機関である保安院が推進の立場でやらせを要請していた、極めて重大であります。

 保安院長に来ていただいておりますが、この事実関係及びその責任についてどのようにお考えでしょうか。

原子力安全・保安院長(寺坂信昭君)

 お答え申し上げます。

 七月二十九日、電力会社からの資源エネルギー庁長官への調査報告の中におきまして、御指摘のように、平成十八年と十九年におきますシンポジウムの開催に当たりましてその公平な運用を損なうような行動を取っていたという、そういう報告が提出されたというところでございます。

 本件の事実関係につきましては第三者調査委員会におきまして検証されることになるとしてございますけれども、このような指摘をなされたこと自体、原子力安全・保安院にとりましては大変深刻な事態であるというふうに受け止めております。

 さらに、検証の結果、仮に事実でありました場合には、原子力安全・保安院を全体としてまとめておる者といたしまして、国民の皆様、立地自治体の皆様などに大変申し訳なく思うところでございます。

 原子力安全・保安院といたしましては、第三者調査委員会によります検証に全面的に協力いたしますとともに、いま一度原点に立ち返り、各職員が強い使命感を持って職務に精励することが今は何よりも重要と考えているところでございます。

井上哲士君

 これは、自ら要請しておきながら電力会社の報告によって発覚をしたと、私は自浄能力そのものが問われていると思います。

 資源エネルギー庁に来ていただいておりますが、この保安院からのやらせ要請があった〇六年の伊方原発シンポ、〇七年の浜岡原発シンポについて、どの団体が受託をして、委託金額は幾らだったんでしょうか。

資源エネルギー庁長官(細野哲弘君)

 お答えを申し上げます。

 お尋ねの二〇〇六年の伊方原子力発電所、それから二〇〇七年の浜岡の発電所のプルサーマルに関するシンポジウムでございますが、両方とも財団法人社会経済生産性本部、現在はちょっと名前が変わっておりまして公益財団法人日本生産性本部でございますが、そこが受託をしております。

 金額でございますけれども、伊方の原子力発電所につきましては二千二百七十二万六千六百四十四円、浜岡につきましては千九百九十五万円でございます。

井上哲士君

 この日本生産性本部は、実はやらせメールが問題になった九電の説明番組も受託をしております。さらに、二〇〇八年、二〇〇九年のプルサーマルシンポジウムも受託をしております。

 九電の説明番組の場合は、最初は番組の目的は緊急安全対策の説明だったわけですね。ところが、受託者である日本生産性本部が、再起動の地元了解のため原発の安全性、必要性を訴えるというような内容に計画変更、申請をして、資源エネルギー庁もこれを了承しているという経過があります。

 この日本生産性本部、役員を見ますと、評議員には東京電力の勝俣会長が就いております。幹事会の幹事には各電力会社の会長、社長、原子炉メーカーの相談役、さらには元通産省の事務次官などが並んでいるわけですね。ですから、私は元々、国の原発に関する委託事業を中立的立場でやれるような団体ではないと思うんですね。

 こういう団体に委託をするということとやらせというのは、安全神話を振りまいて原発を推進していくと、こういうシナリオと私は一体のものではなかったのかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

経済産業大臣(海江田万里君)

 委員にお答えをいたします。

 まず、この原子力安全・保安院のいわゆるやらせの問題でありますが、これは先ほども保安院長から御答弁がありましたように、第三者委員会、今朝その委員の方々正式に決まりまして、来週になろうかと思いますが、第一回の会合を開いていただきまして、徹底的に事実を解明していただくということでございます。

 ですから、その意味では、今委員御指摘のような、どこかに、なるべくこれは安いところ、それからなるべく中立的な立場のところに委託をするということはこれはもう原則でございますが、その問題と、それから今御指摘のありました原子力安全・保安院のやらせの問題とが直接に結び付いているということは今の段階では判断できません。

井上哲士君

 この日本生産性本部、いろんなこの関係の仕事も受託をしておりますし、広報関係にはずらりこの種の団体が並んでおるわけでありますね。

 いずれにしても、保安院が規制機関としての役割を果たすどころか、電力会社と一体となって安全神話を振りまいて国民を欺いてきたわけであります。今や、こんな組織が原発は安全だと言っても誰も信用しないですよ。だから、保安院の存在そのものが問われているわけでありまして、原子力行政に携わる資格そのものが問われていると思います。

 ですから、何かトップを替えたとか、それから替えるとか、組織的にも人的にも引き継いで他の省に付け替えるというだけでは、これはいいという話ではないと思います。もう保安院を解体をして、推進機関から完全に独立し、安全神話からも決別をした、そういう新しい規制機関と体制をしっかりつくるということが必要だと思いますが、その点での大臣の認識いかがでしょうか。

経済産業大臣(海江田万里君)

 この問題についてはかねてから答弁を申し上げておりますが、国際的にも、IAEAの会議でも私から保安院は経済産業省から切り離して独立をさせるということを言ってございます。

井上哲士君

 報道されているように、何か人的体制はそのままにしたままどこかの役所に付け替えるというだけでは、これでは駄目だということを繰り返し申し上げておきたいと思います。保安院全体を解体し、そして、私は、やっぱり新たにつくるこの規制機関は原発からの撤退を進める、そういう機関として位置付けられるべきだろうということも申し上げておきます。

 そういう今後のことを考える上でも、この問題はしっかり国会として解明をすることが必要だと思います。当時の保安院の広報課長を始め保安院と、そして電力会社の関係者の国会招致をして解明をすべきだと思います。その点、御協議いただきたいと思います。

委員長(鶴保庸介君)

 後刻理事会にて協議をさせていただきたいと思います。

井上哲士君

 国と電力会社が一体になって安全神話を振りまいてきたのはこの問題だけではありません。

 その一つが、資源エネルギー庁の即応型情報提供事業と言われるものであります。仕様書によりますと、新聞、雑誌などの不適切、不正確な情報への対応を行うとして、全国紙や原子力立地地域の新聞等の記事について日常的に監視し、訂正情報を資源エネルギー庁のホームページに掲載したり、不適切、不正確な報道を行ったメディアに訂正情報を提供すると、こうなっております。

 二〇〇八年から二〇一〇年度で合計四千六百八十二万円が計上されておりますが、まずこの二〇〇八年までは名前は違っても同様の事業はなかったのか、そして、なぜこういう事業が始められたのか。大臣、いかがでしょうか。

経済産業大臣(海江田万里君)

 二〇〇七年度までは、この不正確な報道への対応を含む情報提供事業というものがございました。それが、今委員御指摘のように、平成二十年、二〇〇八年になりましてから名前が即応型情報提供事業というものに変わったわけでございます。

 その背景には、これは総合資源エネルギー調査会の原子力部会報告がございまして、これは原子力立国計画というタイトルでございますが、この原子力に関する広聴広報活動の充実に向けた取組の一環として、不正確な報道等に適時適切に、タイムリーに対応することが期待されると、こういう報告をいただいたからでございます。

井上哲士君

 原子力立国計画の中で、誤った報道や極端に偏った報道があった場合、タイムリーに真摯な適切な対応を取るというものがあります。これ実は、昨日の東京新聞に、計画原案を練った部会の主な委員であった評論家の木元教子さんが登場されて、マスコミを監視しろとは一言も言っていない、エネ庁の事業は反対意見を封じる戦前の日本のようで、我々の議論を悪用していると、こういうふうに当に議論に参加した方が言われているんですよ。

 この事業は、第一次補正予算に名前を変えて引き継がれておりますが、これまでは新聞の監視が中心だったのが、一般市民のネット情報を監視をするという中身になっております。二〇一〇年度予算が九百七十六万だったのが、八倍余りになる八千三百万が第一次補正に計上をされたわけですね。

 不適切な報道、情報に対応すると言われますけれども、安全神話に反するような報道、情報が不適切と言うんですか。むしろ、絶対に事故は起こらないと、こういう安全神話であるとか、事故後に一部の学者が繰り返したような、すぐに収束するとか健康に問題はないとか、ああいう無責任な発言こそ私は不適切だったと思いますが、何をもって不適切な報道、情報と言われるんでしょうか。

経済産業大臣(海江田万里君)

 この不適切なということについて、何をもって不適切と認定をするかということは、これは絶対的な物差しはなかろうかと思います。

 私も、これは七月二十六日の閣議後の記者会見で、不適切だという物差しをこういう場合当てはめるということはいかがなものであろうかと、いかがなものであろうかということは、そんなことはできないんじゃないかという見解を述べております。これは現在も変わっておりません。

 ただ、不正確ということはございます。間違った情報に対して正確な情報を与えるということは、これは必要でございます。

井上哲士君

 もちろん間違った情報を訂正するというのはどの行政組織でもやるでしょう。しかし、不適切な情報ということで四年間にわたってこの事業が行われているわけですね。

 じゃ、聞きますけれども、不適切、不正確な情報として資源エネルギー庁にこの委託事業者から情報提供されたのは何件で、そのうち訂正情報としてホームページに掲載したものは何件か。また、関係メディアに対して訂正情報を送付したのは何件だったんでしょうか。

資源エネルギー庁長官(細野哲弘君)

 お答えを申し上げます。

 この即応型情報提供事業で、いわゆる不正確又は不適切な報道ということで委託先から情報提供を受けました件数は、二十年度で十件、二十一年度、これは原子力のほか新エネ等々の分野もありますものですから二百三十五件、それから二十二年度は三十一件でございます。

 それから、メディアに対して訂正を直接申し入れるということは実績としてはないわけでございますが、今申し上げました情報提供を基にしましていわゆる正確な情報に基づくコンテンツを作りまして、エネルギー庁の方でホームページを作っておりますが、そこに追加掲載をいたしましたのが、二十一年度で七件、二十二年度は三件でございます。

井上哲士君

 不適切というくくりというのは極めて曖昧で、逆に言えば非常に広くやられる可能性もあるわけですが、受けた事業者も困ったようなことも報道にもありました。

 平成二十年度の委託金額は二千三百九十四万なんですね。今、不正確情報としての報告は年間十件と言われました。二十一年度は委託金額千三百十二万で報告は二百三十五件ですよ。ですから、私は報道を監視するような事業はそもそもやるべきでないと思いますが、それにしても委託金額が何でこんなに高くなるのか、ホームページの作成という事業はあるにしても極めて疑問であります。

 そして、二〇〇八年度にこの事業を受注しているのも実は毎度出てくる日本生産性本部なんですね。二〇〇九年度に受注した日本科学技術振興財団も東電の勝俣会長が理事です。それから、一〇年度に受注したエネルギー総合工学研究所は白土、東電の元副社長が理事長で、副理事長は経産省の元局長、常勤理事は保安院の元広報課長と、こういう電力会社の幹部や経産省の天下りがずらり役員に並ぶような団体と国が一体となって安全神話に基づいて報道や情報を監視をすると、そこに巨額の委託費を支払ってきたというものなんですね。

 私は、元々、第一次補正というのは被災者の救援や復旧のためにどうしても必要なものということで組まれたわけで、そこに八千三百万もこういう事業が入っていると、これ自身が問題だと思うんですね。大臣は、資源エネルギー庁の全廃に対して、予算はあっても残して事故被害者に回せというふうに述べられたということも報道ありました。私はこの情報管理の事業はもう執行停止にすべきだと、こう思いますが、いかがでしょうか。

経済産業大臣(海江田万里君)

 これは井上委員は御理解いただけると思いますが、この第一次補正の場合は、今まさに原子力発電所の事故が起きまして、そして本当にいろんな情報が今ネット上あるいはマスコミ上飛び交っております。そうした大変この原子力の問題あるいは放射能の問題に対して国民の関心が非常に高いと。そのときに、やはり私どもは本当に正確な情報を発信する必要があろうかと思いますから、これまでのこの三件でありますとか、二十件でありますとか、多いときは二百何十件ということがありましたけれども、それとはやはり少し区別をしてお考えをいただきたいというふうに思います。

 そして、それと同時に、今委員からも御指摘ありましたけれども、やはり原子力の被害に遭って本当に、まだ仮払金も届かない方たちがたくさんいますから、予算がたくさん認められたことはそれは有り難いことでありますが、そこは本当にしっかりと節約をしてということで、今八千何百万というお話もありましたけど、一千万ぐらいもう既にカットしてございますが、これより先にこれからもそういう意味ではこのカット、そしてそれをしっかりと有効に使う、限られた金額で有効に使うという形で役立てていきたいと思っております。

井上哲士君

 実際にはエネ庁の方、ホームページにはいろいろ抗議も殺到して、今QアンドAのところは工事中になって開いていないんですよ。ですから、本来この事業は全くもう私は意味がないと思います。

 政府の原子力関係の経費のうち、広報関係の予算は二〇〇六年から一一年度の六年間で総額四百四億円を上回っております。その相当部分が日本生産性本部を始めとして電力会社が関与し、そして経産省の官僚が天下りをした、そういう団体が受注をしているわけですね。こういう広報広聴活動の財源というのは、国民が電気料金と一緒に払っている電源開発促進税なんですね。その税金を使って、国と電力会社が一体となって原発で共同体で安全神話を振りまいて、その振りまく事業をまた食い物にしていると、こういう図式だと思うんですね。これはもう即刻、内容、規模共に抜本的に見直すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

経済産業大臣(海江田万里君)

 先ほどもお話をしましたけれども、三月十一日以降のやはり原子力あるいは放射能に対する世の中にあります、もちろん正確な情報もあるわけでございますが、間違った情報に対してはしっかりと、それは違いますと、これがこうした例えば数字でありますとか、ファクトであります、事実でありますということは、私はこれは発信をしていく必要があると思います。

 それから、あともう一つ、広義の意味での安心をばらまくという、安心感をばらまくということは、これはもうその意味では、ファクトに基づかない単なる安心ですよということだけではこれはもう説得力を持たないことになろうかと思いますから、そういうものについてはこれはもう減らしていくと。今までは、先ほど御指摘がありました、数字のデータもお示しをいたしましたが、そうしたものはやはりどちらかといえば安心、安全のキャンペーンであったわけでございますが、これからは質的に変化をさせて、そして全体も縮小していかなければいけないと、こう思っております。

委員長(鶴保庸介君)

 時間です。

井上哲士君

 時間で終わりますが、安全神話の虚構の上につくられた原発行政からの撤退と、そして、こうした広報予算、直ちに大幅に見直すべきだと求めまして、質問終わります。

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