国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2011年・179臨時国会 の中の 法務委員会

法務委員会

shitsumon201111.jpg・刑法等改正案などの関係者への参考人質疑


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。今日はどうもありがとうございます。

 まず、川端参考人にお聞きいたします。

 先ほど来、我が国では必ずしもこの社会内処遇が位置付けられてこなかったということを言われておりますが、今回この一部執行猶予という制度を取り入れてこの社会内処遇を強化していこうということになった一番のポイントはどういうことだったのか、まずお願いしたいと思います。

参考人(明治大学法科大学院専任教授・法学部兼担教授 川端博君)

 井上先生の御質問のポイントとして、なぜ社会内処遇を利用しているかという点にあろうかと思いますが、従来の施設内処遇、これはただ刑務所に入れて、そしてその期間が過ぎればもうまた社会に出て、それが元になってまた再犯を繰り返していくと、こういうようなケースもなかったわけではございません。しかし、最近では刑務所内で、先ほど矯正の観点で松本参考人からもお話ございましたが、施設内処遇のモデルが、プログラムがかなり進んできておりまして成果を上げているということは事実でございます。

 しかし、再犯をするという場面で行為者が、まあ犯罪者といってもいいわけですが、その行為者がなぜそれを繰り返すのかと、こういった社会的な背景とかそういった問題と、それから個人の人格的な側面、この二つが相まって再犯が繰り返されていくわけですが、その場面で全部施設内で任せてしまうというのではなくて、それぞれのコミュニティーの中で各人が一定の自覚を持って社会生活を営んでいる中で改善更生をしていくと、こういうのが望ましいのではないかと。

 これがかつての隔離政策としての刑罰というものから教育、さらには施設内ではなくて社会内で社会人として生活をしながらそういうよき社会人として立ち直っていくと、こういうシステムで社会内処遇という理念が強化されて、これが現在の世界的な潮流でございますので、我が国もできるだけそういった国際社会の中でそういった新しい理念の下でそういう処遇を考える、こういう方向が望ましいと、こういうふうに私自身考えておりますし、またこれは審議会の意見の中にも結構ございました。

井上哲士君

 ありがとうございます。

 再犯ということでいいますと薬物犯が非常に多いということなわけですが、家族の方などいろんなお話聞きましても、やはり早い段階できちっと治療にのせていくということを望んでいらっしゃるわけですね。

 もう一点川端先生にお聞きいたしますが、今回、薬物の場合も初入の場合は刑法で対応されますから必要的に保護観察は付きません。再犯の場合は必要的保護観察が付くんですが、覚せい剤事犯でいいますと、大体最初は九割が全部執行猶予になっていますので、初入といっても再犯者なんですね。そういうことを考えると、薬物の場合は最初から、初入の場合から保護観察を必要的に付けるという考え方もあってもよかったんではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

参考人(川端博君)

 確かに先生御指摘の点はあろうかと思います。しかしながら、薬物事犯につきましては、犯罪の刑の量定の段階で行為責任という責任主義の原理がございまして、その行為の重さ、それから社会に対する影響という刑事責任の問題があります。そして、さらに再犯の可能性という両枠があって刑罰が現実に行われているわけですから、そういった点で、社会的な影響あるいは社会の、法益侵害性という観点から行為者の責任と、刑事責任という局面を見ますと、やはりこれも通常の犯罪と同じような面で評価していかなきゃいけないと、こういう面がございます。ですから、そこはやはり最初の、初犯であってもこれは普通の犯罪と同じような扱いをせざるを得ないと、こういう面がございます。これは責任主義という、これ近代刑法の大原則でございますので、これを破るわけにはいかないということがありますから、少なくとも犯罪として取り上げている以上はその面が前面に出てくることになると思います。

 ただ、累犯の場合には、先ほど来お話が出ておりまして、医学的に見ても再犯の傾向が非常に強いと、そしてそれを、医学的な治療が必要だということがございますので、累犯者についてこそむしろ施設内でそういうプログラムの下で処遇をして、そして継続的に社会に出てもなおそれを強化していくという点が大事だろうと思います。

 これは先ほども松本参考人がおっしゃったように、そのまま野放しにするというのでなくて、やはり継続性という観点から処遇を続けることによって社会内での処遇の成果を上げると、こういうことが大事だろうと、こういうふうに考えております。

井上哲士君

 刑事司法の考え方でいうと今のようなことになると思うんですね。そうしますと、やっぱり早い段階から、司法だけではなくて、治療とかいろんな公的な支援にどうつなげていくかということが必要になると思うんです。

 そこで、松本参考人にお聞きするんですが、そういう初犯で執行猶予になった方などを始めとして、早い段階からそれをチャンスと見ていろんな社会的支援をしていくということにとってどういうことが必要とお考えでしょうか。

参考人(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部診断治療開発研究室長松本俊彦君)

 一つ、ありきたりな言い方になりますけれども、啓発という、地域保健活動の中での啓発をもっともっとやっていくことになろうかと思うんですが、やはり薬物関連のその事犯が逮捕された直後から何らかの形で地域の公的な保健福祉機関にアクセスできるような仕組みが必要だろうと思いますし、それから、仮に一部執行猶予が始まった場合にも、保護観察所単独ではなく、そこがメーンの責任を持ちながらも地域の公的な保健福祉機関がかかわる、そこで本人だけではなく家族を支える仕組みをつくる、家族に情報を与える。

 とにかく、薬物依存者の家族というのは何年間も苦しんでいます。誰にも相談できません。地域の中でも親族の中でも孤立していて、何年間も相談できなかった末に、もうどうにもしようがなくなって来ている状況があるんですね。これを早めるためにも、やはり早くから家族に情報を流す。そのためには、司法機関だけではなく、保健福祉機関がかかわるということがとても大事だと思います。

井上哲士君

 今のに関連して、先生お書きのものなどでも、ダルクにたどり着くのに十年とか二十年掛かるというお話があるんですね。この辺をもっと早い段階からかかわれるようにするという点ではどういうことが必要とお考えでしょうか。

参考人(松本俊彦君)

 ダルクにかかわる前に、多分、まず司法機関にかかわり、それから病院にも来ていますね。それでようやくダルクにたどり着いたりしているんです。だから、その段階で適切な情報が提供されているのかということがまず問題になってきます。司法機関に来ても全然そんなことを教えてもらわなかったというふうな患者さんにはたくさん会っています。それから、精神科医療機関に来ても、幻覚や妄想の治療はしてくれたけど、依存症については何の情報もくれなかったというふうな患者さんにもたくさん会っています。

 先ほど申し上げたように、薬物依存症の領域は絶滅危惧種なので、一般的な精神科医がそのことを詳しく情報を持っているわけではないんですよ。卒前卒後のトレーニングの中でもほとんど情報提供されていない。この状況を改善していかなければいけないと思います。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 もう一点、松本参考人にお聞きするんですが、治療の途中に依存症の方が再び使用してしまうということがあります。これはなかなか難しい問題でいろいろ意見も分かれるところだと思うんですが、それを治療の途中の失敗として見て引き続き治療を与えていくのか、それとも再犯をしたということで、例えば執行猶予の場合は刑務所に戻るのかというようなことがあるわけですね。

 こういうことを、やっぱり治療という観点から私は柔軟な対応も必要かなと思うんですが、その辺、御意見があればお願いしたいと思います。

参考人(松本俊彦君)

 とても重要な質問だと思います。

 我々医療機関で勤めている薬物依存症の専門家の考え方からまず述べさせていただきます。

 治療のプロセスで本人が失敗したときには、治療の中で最高のチャンスです。治療を深めるチャンスです。本人は大丈夫だと思っていたのに、どこか油断があったんだと思います。そこを一緒に考えて、未来の再使用を減らすための努力をします。ですから、むしろこの再使用は回復のプロセスというふうな考え方です。ただ、この考え方を例えば司法関連機関にいる人たちに押し付けるのならばいささかむちゃな形になります。

 理想を言えば、大枠の外側を司法がサポートしてくれているんだけれども、治療の提供は民間とかあるいは医療とかというところに、守秘義務が優先させることができるところにお願いさせておいてもらって、そこのところの、失敗が直ちに再逮捕につながらないような仕組みというものが必要なのかなと。

 ただ、一部で本当に使用が止まらなくて本人の安全が逆に危なくなる場合もあります。逆に、そういうときにはしかるべき法的な手続も本人の安全を守る上で役立つ場合もあろうかと思います。そんなふうに考えています。

井上哲士君

 ありがとうございました。

 社会貢献活動について川端参考人と小林参考人に聞くんですが、当初は社会奉仕命令ということで言われていて、出口は社会貢献活動になったんですが、もう少し経緯を詳しくお願いしたいのと、それから、小林参考人には、今、少年犯の場合は社会参加活動という形で行われていますが、少年犯にもこの社会貢献活動ということが入ってくるわけですね。特に、やっぱり少年の場合は非常にこれは自発的にやらせるということが大事で、子供ども勉強しろと言われると、しようと思ったのにやりたくなくなったとか、いろんな話もありますが、そういう点でいうと少年には私は慎重に、今の社会参加活動をむしろ中心に据えることが必要ではないかと考えているんですが、実践の中で御意見があればお願いをしたいと思います。

参考人(川端博君)

 井上先生の御質問にお答えいたします。

 社会奉仕命令というものがアメリカなどで現実に行われておりまして、それも社会内処遇の一環としてかなり注目された時期がございます。アメリカなどの場合には著名な人が公道を掃除したりするシーンがマスコミ、マスメディアで大いに取り上げられて、その一つの効果をもたらしているというような面もございますが、逆にそういった刑罰として、あるいは刑罰に代えて社会奉仕命令を我が国で導入した場合どうなるかという観点からの議論が非常に激しく行われました。

 その点で申しますと、これは社会奉仕命令という形で強制的に社会の公然と目の付く場で一定の作業をさせるということがそこでのメーンになるわけですが、これはある意味で一つの社会的なさらしものにするというような側面がございます。そういった意味で、これは当人の人格、これをかなり卑しめるのではないかと、そういうことによって逆にその人もまた傷つくということで、本来の社会内処遇としては適切ではないんではないかと、こういう意見がありました。それと、これもまたプライバシーの問題にもかかわってまいります。そういうマスメディア、公然とやるということになりますから、そういった意味ではむしろマイナスではないかということで考えたわけです。

 ただ、これを刑罰ではなくて執行猶予などの遵守事項の一環として、先ほど小林参考人からお話がございましたように非常に効果を上げている面もございます。自分自身が社会で存在意義があるんだということで、その作業を通してそれを実感して、それが更生につながるという面も非常に強いことがございますので、遵守事項としてやるならこれはかなり成果が上がるだろうと。ただ、刑罰として、あるいは刑罰に代えてそれをやるのはよろしくないのではないかという、こういう議論でございました。

参考人(保護司・長野県保護司会連合会会長 小林聖仁君)

 今現在やっております社会参加活動、これはまさに自発的にといいますか、本人の同意を得て進めているところでございますけれども、なかなか進めて、実際に社会参加活動に積極的に出るという少年は最近やはり少ないですね。それでも、保護司とその少年の人間関係といいますか、そういう中で、保護司に心を許してくれる、そういう少年でありますと社会参加活動に加わっていただけるわけですけれども、どちらかというと社会参加活動に喜んで参加するという対象者は少ないわけであります。

 そういうときに遵守事項として定めていただくということは、いわゆる同意を得られない、そういう対象者に対しては有効かなと思いますけれども、今先生が御指摘のように、やはり自発的に参加するということで立ち直りに結び付くというわけですから、半分強制的にといいますか、貢献しなさいというのはやはりどうかなとは思いますが、ただ、対応の難しい対象者が最近多いわけですから、そういう場合には遵守事項を義務付けるということも保護司の立場からは有り難いかなというふうに思います。

井上哲士君

 ありがとうございました。

ページ最上部へ戻る