国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2012年・180通常国会 の中の 予算委員会

予算委員会

3848_2.jpg・予算委員会の集中審議で、大飯原発の再稼働の問題で質問。安全委員会もストレステスト第一次評価では不十分とするなかで、再稼働の判断することは許されないと指摘。さらに京都府がスピーディーを使って予測した、福井県・高浜原発からの放射性ヨウ素の拡散予測図を示し、被害が予測される自治体や住民の同意なしの再稼働はあり得ないと迫った。

委員長(石井一君)

 次に、井上哲士君の質疑を行います。井上君。

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。原発の再稼働について質問をいたします。

 政府は、東電の福島原発事故の究明も終わっていないのに、関西電力の大飯三号機、四号機について近く再稼働に向けた政治判断をしようとされております。関電が行ったストレステストの一次評価を保安院が妥当と評価して、それを安全委員会が確認をしたことによるものであります。

 そこで、原子力安全委員会の班目委員長、来ていただいておりますが、三月九日に決算委員会で私が質問した際に、ストレステストの一次評価だけでは不十分だと答弁をされました。そして、保安院の判断を安全委員会として確認をした三月二十三日の会見で、今後はもうちょっとちゃんとした実力値を評価するような現実的な評価をしていただきたいと述べられております。これどういう意味なのか。そして、安全委員会としてこの大飯原発の安全性を確認し、再稼働は妥当だと、こういう判断をされたのでしょうか。

政府参考人(班目春樹君)

 まず、現実的な評価でございますけれども、これは昨年の七月の時点で原子力安全・保安院の方で定めた計画、そして原子力安全委員会もこれを妥当と認めていますが、その中に、一次評価においては許容値、設計の際の許容値等と比べてどれだけの余裕があるかという評価をすることになっています。二次評価においては、なるべく過度な保守性を排して、なるべく実力値というか、現実的な評価をしていただきたいということになっていますので、それのことについて申し上げたわけでございます。

 それから、定期検査中の原子力発電所の再稼働の問題につきましては、これは法令上も、原子力安全委員会がその妥当性について判断する立場ではないと承知してございます。

井上哲士君

 いや、安全委員会として大飯原発の安全性を確認をされたのですかということをお聞きしております。

政府参考人(班目春樹君)

 安全委員会といたしましては、保安院の方で確認した結果について精査させていただきました。その結果、今回の事故の後、原子力安全・保安院の方で緊急安全対策等の実施を指示してございますけれども、それがプラントの頑健性を高めるという意味において、特に自然外力、設計の想定を超える自然外力に対する頑健性を高めるという上で一定の効果があるというところまでは確認してございます。

井上哲士君

 一定の効果があるということでありますが、一次評価で十分であると、こういう考えですか。

政府参考人(班目春樹君)

 原子力安全委員会といたしましては、昨年の七月の六日に経済産業大臣あてに要請した原子力発電所の総合的安全評価としては、これは一次評価と二次評価がセットだと思っておりますので、是非二次評価までしていただきたいというふうに考えてございます。

井上哲士君

 一次評価では不十分だということであります。

 枝野大臣は、テレビ番組等でも、安全について政治判断するつもりはない、安全については専門家の皆さんに専門的、技術的に客観的に判断をしていただくと、こういうふうに述べられました。しかし、今も安全委員会ありましたように、一次評価では不十分だということであります。大臣自身も決算委員会の答弁で、ストレステストで安全性が確認をされたものではないと、こういうふうに言われました。にもかかわらず再稼働について政治判断をするということになりますと、これ、安全性の確認ができていなくても再稼働をするのか、そうでないというならば、安全性そのものについて政治判断をするということになると思いますが、どうなんでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 安全性については政治判断いたしませんし、そもそもできません。

 まさに、原子力安全・保安院が行った緊急対策とその確認、そしてストレステストの一次テスト、それに対するIAEAや原子力安全委員会の評価というものを踏まえて、安全性が確認されたものと受け止められるのかどうか、そして、そのことを周辺住民の皆さんを始めとする国民の皆さんの一定の理解を得られるのかどうかという、客観的安全性ではなくて、それについてしっかりと確認できているのかどうかということについて今精査しているところです。

井上哲士君

 IAEAは、審査手法について確認をしましたけれども、安全だというお墨付きを出したわけではないんですね。

 再稼働を急ぐ関西電力が評価をした、それを保安院と安全委員会が二重チェックをしたということでありますが、保安院がそもそも電力会社と一緒にやらせをやってきたということであります。そして今日も、先ほども議論になりましたけれども、二〇〇六年に、原子力安全委員会が原発の重大事故を想定して国の原子力安全指針の見直しに着手したら、保安院が、原子力安全に対する国民の不安を増大するおそれがある、財政支出が増えるといってこれを、導入を凍結するように再三文書で要請をしていたということも明らかになりました。こういう保安院のチェックではとても信用できないということで安全委員会との二重チェックにしたわけでありますが、その安全委員会も、一次評価だけでは不十分であると、こう言っているわけですね。

 総理、お聞きしますが、これでどうして専門家による安全確認ができたと言えるのかと。結局、関電がやった安全宣言を政府は追認をするだけではないかと私は思うんですね。今朝の毎日新聞の世論調査でも、実に八四%が政府のこの安全審査は不十分だと回答しております。こういう国民の声、総理、どう受け止められますか。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 国民には様々な御意見があることは承知をしておりますけれども、あくまで私どもは、IAEAのレビューを受けた手法によって事業者がストレステストを行い、それに対して保安院とそして安全委員会がチェックをする、それがきちっと安全性の確認になっているかどうかということをしっかりと把握をした上で、先ほども大臣が答弁をされたように、地元理解が進んでいるかどうかも含めながら、最終的な判断をしていくということでございます。

井上哲士君

 国民にはいろんな意見があるという話じゃないんですよ。八四%がこれは不十分だと回答しているんですね。圧倒的多数の声ですよ。

 京都府議会が全会一致で意見書を出しておりますが、ストレステストは机上の調査にすぎず、再稼働の判断材料とするのには余りにも不十分だと、こういうふうにしております。にもかかわらず、地元への政治的判断をした上で同意を求めるという流れのようでありますけれども、根拠のない安全判断の押し付けは許されません。

 さらに、地元とは一体どこなのかという問題であります。福島原発の事故で、その被害というのは立地市町村にとどまらない、はるかに広いということが明らかになりました。政府は事故を受けて防災重点地域を三十キロまで拡大をし、さらに、自宅避難が中心になる放射性沃素防護地域を五十キロ圏というふうにしております。大飯原発から五十キロといいますと、四十五万人の住民が住んでおりまして、滋賀県も京都府も含まれるわけですね。

 にもかかわらず、藤村官房長官が先日、再稼働と防災のこととは内容が違うということで、地元を拡大するということを否定をする発言をされております。しかし、被害が予想される自治体が同意を条件に求めるのは私は当然だと思います。なぜ、総理、再稼働と防災というのは別なんですか。総理。

委員長(石井一君)

 それでは、枝野事実関係担当大臣を。簡潔にお答えください。

国務大臣(枝野幸男君)

 官房長官の発言は、地元の範囲を狭めるという趣旨だったというふうには思っておりません。防災のための視点と再稼働に当たっての地元と言っている話は別の次元の話で、再起動の理解を求める範囲が何かで機械的に決まるわけではないという趣旨を述べたものだと承知をしております。

 あえて申し上げれば、例えば緊急時防護措置を準備する区域、UPZという範囲がありますが、例えば、その中の人たちがおおむね賛成をして、それからすぐそばの人たちが物すごく反対をしているというときに、じゃ、地元も含めた国民の皆さんの一定の理解が得られたと評価していいのかというと、私は評価できないと。したがって、何らかの線のここから内側さえオーケーならオーケーです、ここから外の人は関係ありませんと、そういう線引きをするつもりはありません。

 したがって、私は繰り返し、地元の皆さんを始めとする国民の皆さんの一定の理解と申し上げています。

井上哲士君

 立地自治体は同意が必要なんですよ。そういう同意が必要な地元に、こういう京都や滋賀などが上げている声にもこたえるべきじゃないかということを聞いております。

国務大臣(枝野幸男君)

 再稼働について、三月十一日まで、これ再稼働について地元の同意必要だったでしょうか。

 まさに三月十一日のことを受けて、従来、非常に狭い範囲の地元の同意で様々な原子力政策動いてまいりましたが、大変広範囲にわたって様々な影響を及ぼす、そして、あえて言えば、国民生活が影響を受けているということで、全国民が影響を受けているということでありますので、どこかの限られた地域のところの人さえオーケーならあとの人たちは関係ないという視点に立たないということで、地元を含めた国民の皆さんの一定の理解が必要だということを申し上げているんです。

井上哲士君

 だったら、そんな一定の理解など言わずに、同意が必要だと言ってくださいよ。

 一体どういう不安の根拠があるのか。東電の福島原発事故では、風に乗って遠く離れた地域でも高い放射能の被害がありました。同じようなことが起きるわけであります。

 京都府は、大飯原発に隣接する関電の高浜原発で福島第一原発と同様な事故が起こった場合の放射性物質の拡散予想を先日公表いたしました。(資料提示)これが一月の予想図でありますけれども、高浜原発のすぐ東側、十キロばかり離れたところに大飯原発があるわけであります。これは、今日も議論になりました、文部科学省にSPEEDIを使って予測をしたものであります。

 それで明らかになったのは、季節によって風向きが違って被害が随分変わるということなんですね。この予測は福島第一原発事故並みの放射性沃素が排出をされたと仮定して、二十四時間でどれだけ累計被曝があるかということを月ごとに典型的な風向きなどによって試算をしております。京都府が避難区域としている五百ミリシーベルトを超えた地域は濃いオレンジ、屋内退避区域としている五十ミリシーベルトを超えた地域は薄いオレンジで表しております。

 一月は西から風が吹くんですね。そうしますと、屋内退避地域は福井県を越えまして滋賀県の高島市に入ります。SPEEDIはこの原発中心に九十二キロ四方しか予想できませんから切れていますけれども、明らかにこれは琵琶湖にまで達しております。これは非常に重要な予測資料なんですね。福島では活用されずに、高い汚染地域に避難をするということが起こったわけでありますけれども、これ事前にこういうことができるわけであります。

 そこで、文部科学大臣、来ていただいていますが、これは地方自治体の要請待ちではなくて、全ての原発についてこういう予測として資料を作って、是非国会にも提出いただきたい。そして、これ今九十二キロ四方しか出ませんけれども、もっと広い範囲に汚染が行くわけでありますから、そういうふうにできるようにするべきだと思いますが、いかがでしょうか。

国務大臣(平野博文君)

 先ほど来もこの当委員会でのSPEEDIの情報の提出の仕方と、こういうことで御議論ございましたが、私どもとしては、基本的な考え方としては、災害対策基本法に基づいて地方公共団体が地域における防災の取組を計画を策定すると、それに対して支援をしていくという観点から、これまでも地方公共団体からの御要望に応じてSPEEDIの計算結果の提供を行ってきたと、こういうことでございます。

 今委員御指摘のように、国があらかじめ前提条件をつくって予測計算を出すということは私は現時点では適切ではないと、かように思っております。

 なぜならば、どのような規模の事故を想定をしてどのような地形の中でやるのかということはやっぱり地域によって違うと、こういうことですから、その地方公共団体の御要望に応じて対応してまいりたいと、こういうふうに思っています。

 二点目、九十二キロ、こういうことでございますが、これをより精度アップしようということで今検討をさせております。

井上哲士君

 これは地形を勘案して予測しているんですから、今のお話はおかしいんですね。

 私は、これは非常に重要な資料でありますから、是非当委員会に、予測をして資料を出していただきたい、協議をいただきたいと思います。

委員長(石井一君)

 それじゃ、資料の提出につきましては協議をいたします。

井上哲士君

 さらに、三月はどうなるか、これは北から風が吹きます。そうしますと、屋内退避地域は京都市の右京区、亀岡市、綾部市、南丹市が入ります。さらに、五十キロをはるかに越えて京都府の南部まで屋内退避地域が広がっていくわけですね。

 次に、五月はどうか。五月の場合は東から風が吹きます。そうしますと、舞鶴市は避難地域になり、宮津市、伊根町、京丹後市が屋内退避地域に入ります。二月は北北西の風が吹きまして兵庫県も範囲に入ります。これは、隣接する大飯原発で事故があれば同様の被害が予想されるわけですね。

 私は、こういう被害を受ける可能性が具体的に示されている滋賀県や京都府などの周辺の地方自治体、地元の皆さんが同意抜きの再稼働はあり得ないと、こういう声は、上げるのは当然だと思いますが、総理、この声にどうおこたえでしょうか。

国務大臣(枝野幸男君)

 井上委員と私は余り考え違っていないんじゃないかと思うんです。私も、だから、どこかの何キロ、例えば五キロとか十キロとか三十キロでその線を引いて、その内側さえ良ければいいという視点には立ちませんと。まさに、影響を受ける範囲というのは季節や風向きによっていろいろ違ってきますし、それは相当広域に及ぶということがありますから、ですから、影響を及ぼす可能性のある自治体の皆さん、住民の皆さんというものの一定の理解が得られることがまさに条件だということを申し上げているわけでありまして、したがって、滋賀県や京都府からもストレステスト一次評価について詳細の説明を求められて、これ保安院に説明をさせていますが、そこでいろいろ御指摘をいただいたことについてはしっかりと対応をしていきたいと思っております。

井上哲士君

 一定の理解ではなくて同意が必要だと、こういうことが言えませんか。

国務大臣(枝野幸男君)

 これも早い時期から申し上げておりますが、住民の皆さんの一定の理解といったときに、首長さんや議会というのは民主的なプロセスを踏まえて選ばれている皆さんですから、当然、住民の皆さんの一定の理解を評価、判断する上で大変重要なものだというふうに思っておりますが、しかし我々は、国会議員もそうですけれども、じゃ、選挙で選ばれているから全ての民意を忠実に反映しているというわけではないのが間接民主主義ですから、したがって私は、もちろん従来から同意が必要ということで、首長さんの必ず同意が必要だというプロセス等があることは承知していますが、むしろ、幅広く周辺住民の皆さん始めとする国民の皆さんの一定の理解が得られているかどうかを判断する必要があると思っています。

井上哲士君

 今朝の毎日の世論調査は、大飯原発の再稼働反対六二%です。さらに、地元の声はどうか。先ほどの京都府議会の決議に加えまして、福井県の越前市、それから滋賀県の県議会もこの再稼働に対して反対の意見書を決めております。

 国民の声、地元の理解ということであれば、こういう下での再稼働はあり得ないと思いますが、総理、いかがでしょうか。

内閣総理大臣(野田佳彦君)

 地元の理解を含めて、国民のそういう御意向なんかも踏まえながらの判断だというふうに思いますので、私どもが行け行けで何でもやろうとしているということはありません。あくまで安全性の確認をした上で、その確認が妥当であるならば御説明はしなければというふうに思いますけれども、何でもかんでも再稼働するという姿勢ではないということは是非御理解いただきたいと思います。

井上哲士君

 事故究明も途中のまま、安全確認も世論も無視をして再稼働するようなことは絶対あってはなりません。今やるべきことは事故原因の徹底究明と、そして原発からの撤退の決断、原発に頼らないエネルギー政策を示すことだと申し上げまして、質問を終わります。

委員長(石井一君)

 以上で井上哲士君、日本共産党の質疑は終了いたしました。(拍手)

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