国会質問議事録

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法務委員会

shitsumon201111.jpg・成年後見人をつけると選挙権を喪失するという公選法の規定は違憲だとした東京地裁判決などについて法務大臣、総務副大臣に質問し国が控訴しないよう要求
・取調べの可視化問題について、法制審の基本構想で示された裁判員裁判対象の身柄拘束事件に限定すれば、ごく一部にとどまり、厚労省元局長事件、PC遠隔操作誤認逮捕事件なども対象外になると指摘し可視化を求めた


委員長(草川昭三君)

 ただいまから法務委員会を開会いたします。

 まず、政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りをいたします。

 法務及び司法行政等に関する調査のため、本日の委員会に警察庁生活安全局長岩瀬充明君、警察庁刑事局長高綱直良君、金融庁総務企画局参事官小野尚君、法務大臣官房司法法制部長小川秀樹君、法務省民事局長深山卓也君、法務省刑事局長稲田伸夫君、法務省矯正局長西田博君及び法務省入国管理局長高宅茂君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。

  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 同じ京都を地元とする谷垣大臣、よろしくお願いいたします。

 成年後見人を付けると選挙権を失う公選法の規定について、東京地裁が十四日、これは違憲であり原告の選挙権を認めるという非常に重要な判決を行いました。国民的にも非常に歓迎されている判決でありますし、私は二年前に当委員会で裁判が始まった直後に質問をした者として、大変うれしく思っております。

 判決はこういうふうに述べております。成年被後見人になった者も我が国の国民である、憲法が我が国民の選挙権を国民主権の原理に基づく議会制民主主義の根幹を成すものとして位置付けているのは、自らが自らを統治するという民主主義の根本理念を実現するために様々な境遇にある国民が、この国がどんなふうになったらいいか、どんな施策がされたら自分たちは幸せかなどについての意見を、自らを統治する主権者として選挙を通じて国政に届けることこそが議会制民主主義の根幹であると、こういうふうに言っております。大変重要な指摘だと思うんですね。

 原告の名児耶匠さんや御両親が先日、院内の判決報告集会に来られておりまして、私も改めてお会いしたんですが、お父さんはこういうふうに言われているんですね。計算が苦手な娘の将来の財産管理を案じて、自分が成年後見人になったと。その結果、選挙はがきが来なくなったと。よかれと思って制度を利用したのに、私は娘の人権を侵害する片棒を担いでしまったと、こういう思いを持ってこの裁判をやってきたというふうに言われました。そして、また親子三人そろって投票に行きますかというふうに聞かれた匠さんは、本当に満面の笑みで行きますと、ありがとうございましたと、こういうふうに言われました。

 私はこれを見ながら、我々選ばれる側の国会が、あなたには国民として選挙を通じて自らの意見を国政に届ける権利はないと、こういうことを言うような資格が我々にあるんだろうかということを思ったわけであります。

 まず、谷垣大臣にこの判決についての受け止めについてお伺いしたいと思います。

国務大臣(法務大臣=谷垣禎一君)

 先ほど魚住委員の御質問でもお答えしたわけでございますが、私はこの訴訟は国の訴訟担当者でございます。

 従前私どもがしておりました主張は、一つは、選挙権の行使に最低限必要な判断能力を有しない者に選挙権を付与しないとする立法目的、これ自体は合理性があると。そして、それに加えて、二番目として、成年被後見人は家裁の判断によって事理を弁識する能力を欠く常況にあるとされた者であって、選挙権の欠格事由として成年後見制度を借用することにも一定の合理性があるので、この規定をもって憲法に違反するとまでは言えないという主張をしておりました。

 これに対して、今の、東京地裁は、選挙権を行使するに足る能力を具備していないと考えられる者に選挙権を付与しないとすること自体は立法目的として合理性を欠くとは言えないと。その上で、しかし、今指摘をされましたように、選挙権を成年被後見人から一律に剥奪する規定を設けることはやむを得ないとして許容するわけにはいかないということで、違憲であるという結論を示されたわけでございます。ですから、私ども、今までの従前の国の主張からしますと、極めて厳しい判断をいただいたと受け止めているわけでございます。

 それで、控訴期限は先ほども議論がありましたように三月二十八日まででございます。選挙法自体は法務大臣としての私の職責に直接関連するわけではございませんので、総務省ともよく連携をしながら三月二十八日までに結論を出したいと、このように思っております。

井上哲士君

 判決は、そういう結論を導く上で、改めてこの民法の規定について述べているんですね。

 まず、法務大臣に確認したいんですが、先ほどありましたように、成年被後見人については事理を弁識する能力を欠く常況にある者としております。能力を欠く者とはしていないわけですね。これはどういう違いがあるんでしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)

 能力を欠く常況にある者というのは、そういう判断能力を欠く常況にあることが通常であると、通常である者という意味だと思います。それで、したがって、そういう状態であれば、当然、判断能力があるときもあるということだと思います、言葉の意味としましては。ですから、一般的に事理を弁識する能力を欠く者といえば、これはそういう能力を常時持っていないということを意味する、そこに違いがあると思います。

井上哲士君

 一時的であれ、能力を回復することを予定しているわけですね。

 もう一点、これ前回質問したときも確認したことでありますが、この事理を弁識する能力というのは自己の財産の管理や処理の能力を判断しているのであって、選挙する能力を問うているものではないと、こういうことでよろしいでしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)

 これは、井上委員がおっしゃるように、契約等の法律行為あるいは財産管理をする能力に着目してこの成年後見の規定はできていると思います。選挙法はこれを言わば借用というか、援用したもので今の選挙法を構成したわけでありますが、必ずしもこの概念は選挙権を行使することができるか否かと、この成年後見の制度はですね、選挙権を行使することができるか否かに着目して作られた規定では必ずしもありません。

井上哲士君

 この二点は判決の中で、この成年後見人の規定についての重要な問題なんですね。ですから、判決の中身と今の法務大臣の答弁は一致をいたしました。判決は、この認識の上に立って、成年被後見人とされた者が総じて選挙権を行使するに足る能力を欠くわけでないことは明らかであり、実際に自己の財産等の適切な管理や処分はできなくても、選挙権を行使するに足る能力を有する成年被後見人は少なからず存在すると認められると、こうしました。そして、その認識の上に、趣旨の違う成年後見制度を流用して成年被後見人から一律に選挙権を奪うことは違憲だと、こう判じたわけであります。

 国は、先ほど来大臣が言われているように、これは一定の合理性があるということを九九年の法改正時から言われておりました。しかし、その後、二〇〇五年の最高裁の判決があって、選挙権の重要性から見れば、それを奪うのはやむを得ない事由がある場合に限るというふうに非常に厳しい判決をしました。それに基づいて今回の判決がある。私は、そういう点では、一審とはいえ非常に重みのある判決だと思うんですね。

 それを受け止めて、私は、やはりこういう流れの中で出た判決として、控訴せずに公選法の速やかな改正をするべきだと思いますが、総務副大臣も来ていただいております、いかがでしょうか。

副大臣(総務副大臣=坂本哲志君)

 成年被後見人の選挙権の行使について争われました訴訟につきましては、今言われましたように、今月十四日の東京地裁判決におきまして国側の主張が認められず、違憲であるとの判断がなされたものと承知しております。

 総務省といたしましては、東京地裁における違憲判決を受けての今後の訴訟対応につきましては、国を当事者とする訴訟を代表する法務省と協議をいたしてまいりたいと思っております。

井上哲士君

 当事者として、私、もっと重くこの判決を受け止めていただきたいと思うんですね。

 この判決は、先ほど言ったような法改正後の選挙権に対する最高裁の大法廷判決を引いているという問題と、もう一つは、この成年後見制度自身がこの間のノーマライゼーションの流れにあるものだということを言っております。そういう国際的な流れの中で、知的障害者や心神喪失者等に対して選挙権を付与する改正が国際的にも行われてきたと。イギリス、カナダ、フランス、オーストリア、スウェーデンなどに行われているということも述べております。そして、この日本の現状というのはこういう国際的な潮流にも反すると指摘をしているわけですね。

 この世界の流れに逆行していると、こういうことについての総務省としての認識はいかがでしょうか。

副大臣(坂本哲志君)

 今回の三月十四日の東京地裁の判決や、あるいは国立国会図書館の資料によりますと、精神疾患等を選挙権の欠格要件とする法令の規定を改正し、今言われましたように選挙権を付与している国々もあります。イギリスやカナダやフランス等でございます。一方、精神的無能力者等について選挙権を有しないものとしている国々もまた一方の方であります。アメリカのミシガン州やカリフォルニア州、あるいはドイツ、そしてオーストラリアなどでございます。そういうふうに承知をしているところであります。

 我が国におきましては、それまでの禁治産及び準禁治産の制度に替わり、ノーマライゼーション等の理念に基づき、平成十一年の民法の一部改正によりまして成年後見制度が設けられているというふうに承知しておりますので、いずれにいたしましても、東京地裁における違憲判決を受けての今後の訴訟の対応につきましては、国を当事者とする訴訟を代表する法務省と協議をしてまたまいりたいと思っております。

井上哲士君

 幾つかの国のことを挙げられましたけど、世界の大きな流れを是非しっかりと見ていただきたいんですね。

 法務大臣、あくまでもこの所管は総務省だと言われているんですが、成年後見制度の活用は、今、後見、保佐、補助を合わせますと、二〇一〇年の末で十三万八千八百三十四人、一二年の末で十六万四千四百二十一人と増えておりますが、一二年末でいいますと、九二%以上が後見ということになりますから、選挙権を失います。で、やっぱりこれを見て成年後見制度を活用をちゅうちょしているという国民が相当数いるというのもいろんなところでお聞きするところなわけであります。

 ですから、これは、法務大臣が国の訴訟の法定代理人だというだけではなくて、成年後見制度という民法に規定された制度にかかわる問題でありますし、その選挙権喪失がこの活用を阻害しているという実態があるわけです。

 ですから、法定代理人だということにとどまらず、まさに当事者としてむしろ積極的に総務省とも相談をして、選挙権をしっかり実現をするという方向で対応していただきたいと思いますけれども、改めて法務大臣の見解をお聞きいたします。

国務大臣(谷垣禎一君)

 今御指摘のように、成年後見制度を選挙権が剥奪されているからちゅうちょしているという方があるという指摘は、私どもも伺っております。

 ただ、我々は成年後見制度を所管していることはもうこれは当然事実でございますし、これを今の流れに従って普及していかなければならないことも我々の職責でございますけれども、要するに、選挙権を行使する判断能力をどういうものとしてつくっていくかというのは、これは主として選挙制度の方から考えていかなきゃならない、いただかなきゃならないという面は依然として残るのではないかと思っております。

 いずれにせよ、控訴期限はもう目前でございますから、よく法務省と総務省、協議してまいりたいと思います。

井上哲士君

 各党から、これは公選法を改正するべきだという声が上がっておりますので、是非この点では一致をして取組をしていきたいと思っておりますし、まずはやっぱり国が控訴を断念するということを改めて求めたいと思います。

 総務副大臣、これで結構です。ありがとうございました。

 次に、刑事司法、取調べの可視化の問題についてお聞きをいたします。

 大阪地検の特捜部によるあの村木さんの事件というのは、刑事司法に対する国民の信頼を大きく揺るがしました。検事総長が辞任をし、厳しい国民的批判の中で検察の在り方検討会も設けられたわけでありますが、その一番最初の会議で当時の法務大臣は、検察の再生及び国民の信頼回復のためにどのような方策があり得るかと、検討してほしいと述べられました。つまり、再生という言葉まで使われたような事態だったわけですね。しかし、それ以降もパソコンの遠隔操作誤認逮捕事件なども相次いでおりますが、現状、検察及び刑事司法に対する国民の信頼は回復されたとお考えなのか、まず現状認識について法務大臣にお聞きいたします。

国務大臣(谷垣禎一君)

 今御指摘になりました大阪地検の村木元局長問題に端を発しましたいろいろな経過は、大変検察に対する国民の信頼を損なったと思います。そこで、前政権の時代からこの検察の再生についてはいろいろお取組もあり、現在私どももそれを継続して進めていかなければならない、信頼回復のための道を進めていかなければならないと思っております。

 具体的な案件についてはもう繰り返すのを避けますが、「検察の理念」というものも作り、今法制審の中で司法制度をどういうふうなものとして構想していくか審議していただいております。そういう中で、検察の問題点を克服していく道を切り開いていかなければいけないと思っております。

井上哲士君

 その在り方検討会での議論、検察の再生が必要だという厳しい認識で始まり、そして今法制審の特別部会での議論がされているわけですが、先日基本構想というのが出されておりますけれども、例えば虚偽の自白調書が誤判の原因になったという指摘について述べた上で、捜査段階において真相解明という目的が絶対視される余り、手続の適正確保がおろそかにされ又は不十分となって、無理な取調べを許す構造となってしまっていないかとの指摘もされている、こういう程度のことしか書いてありません。私は、これはかなり違うと思うんですね。

 例えば、村木さんの事件で問題になったのは、真相解明どころか、捜査当局の見立てでそれに合わせて自白を強要して、この見立てに合わないような証拠を隠したり、捏造すらしたと、こういうことが起きているわけですね。こういう言わば自白強要、長期間の身柄拘束、いわゆる人質司法の下で密室で自白を強要すると、こういう仕組み自身が冤罪を生んできたことに対する反省というものがどうもこの基本構想から読むことができないと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)

 何が反省点であったのかというのはいろんな見方があると思いますが、私は根本は今引用されました点にあるのではないかと思っております。つまり、取調べあるいは供述調書へ過度に依存をしたと。そうすると、どうしても自白を求めなければならないということになってまいります。

 そういう中で、刑事裁判の、それが調書としてまとめられて法廷で採用されるということになりますと、実際は刑事裁判の帰趨が事実上捜査段階で決着をしてしまうということにもなり、あるいはそのために結局無理な取調べをしたのではないかというのがあの基本構想の反省点であります。それに対応して適正手続、客観的な真実の発見というだけではなくて、適正な手続を取っていくということの重要性にもう一度戻れと、こういうことを言っているんだと思います。私は、これはこの検察改革ではまさに正道なのではないかと。

 したがいまして、委員の御指摘は、当初の検察の再生といった認識からこの基本構想は後退しているんじゃないかという多分御指摘だったと思いますが、基本を私は踏まえていると、このように考えております。

井上哲士君

 私は、人質司法と言われてきた密室の中でのこの自白の強要ということに対しての認識が、やっぱりそれでは甘いのではないかと思うんですね。

 その結果、この基本構想では二案が併記をされておりますが、可視化を取調べ側の裁量に委ねるというのはおよそ制度化だとは言えず論外でありますが、裁判員裁判の対象事件の身柄事件を念頭に置くというふうにしております。これでいいますと、四%程度に限られるというふうに説明では聞いておるんですが、これではそもそも問題の出発点であった村木さんの事件も、そして今回のパソコンの遠隔操作誤認事件も対象から外れてしまうわけですね。あの事件では、パソコンの遠隔操作誤認逮捕事件では、四人のうち、逮捕された四人のうち二人は全く身に覚えがないのにやったと自白をし、犯行の動機すら述べた供述調書も作られたわけですね。

 なぜこういうことになったのかということの検証が必要なわけですが、神奈川県警が検証しておりますけれども、例えば、少年側は、否認していたら検察官送致をされてこのままだと少年院に入ることになるぞと言われたと言っていますが、警察側は、今後の手続に不安を持っているだろうと考えてその手続について答えたと、全く違う評価になっております。

 そのほかにもいろんな食い違いがあるわけですが、検証したといいながら、なぜこういう食い違いが出てくるんでしょうか。警察、お願いします。

政府参考人(岩瀬充明君)

 お答えいたします。

 まずもって、四都道府県警察における誤認逮捕事案では、捜査過程で遠隔操作等の可能性を見抜くことができず、四名の犯人ではない方々を誤認逮捕し、関係者の方々に多大な御迷惑と御負担をお掛けいたしたことは誠に遺憾であると考えております。

 御指摘の神奈川県の事案でございますが、神奈川県警察におきましては、昨年の十月、真犯人を名のる者からの告白メールがあったことを受けまして、少年から再度事情を伺った上、誤認逮捕であったと判明したため少年側に謝罪を行ったところでありますが、これらの機会に、少年側より、否認をしていたら少年院に入ることになる等と取調べ官に言われたとの指摘があったものと承知をしております。

 この点につきましては、神奈川県警察で検証を行った結果、そのような言動自体は確認されなかったものの、取調べ官が行った刑事手続の説明が少年院に入ってしまうという少年の不安を助長させたおそれがあったと報告を受けているところでございます。

 神奈川県警察の検証に当たりましては、少年側の御意向によりまして、少年の御指摘について詳しく確認するため更に聞き取りをすることはできなかったところでありますが、昨年の十二月、検証結果を弁護士の方を通じてお送りした内容を確認していただいた結果、少年側からは検証報告書に対する特段の意見はないという回答をいただいたところであります。

 本事案を受けまして、少年の特性に十分に配慮した取調べが行われるよう全国警察を指導したところでございますけれども、今後もこれを徹底し、再発防止を期してまいりたいと考えておるところでございます。

井上哲士君

 少年は、検察官送致になると裁判になって大勢が見に来る、実名報道されてしまうぞと言われたということも言っているんですね。これも検察側の聞き取りでは、そういうようなことは、言わば裁判の在り方について説明をしただけだと、こういうことになっているんです。ですから、結局これ水掛け論になりますし、検証ができないわけですし、こういうことが何度も何度も反省と言いながら警察は繰り返してきたわけです。

 ですから、どちらが真実なのか検証する、そしてこういうことをなくすというためにも取調べの全面、全過程の可視化というのが求められているわけで、私は、この裁判員裁判の対象事件の身柄事件だけでは当然これも外れてしまうわけですから、こういうことも含めた可視化が必要かと思いますが、警察庁、そして法務大臣、それぞれから御答弁をいただきたいと思います。

政府参考人(高綱直良君)

 お答え申し上げます。

 取調べの可視化、すなわち録音、録画には、確かに供述の任意性等の的確な立証を可能とするなどのメリットがあると認識をいたしております。また、その検証機能によりまして、取調べの適正化にも資するものと考えております。

 ただ、他方で、取調べの全過程を録音、録画することにつきましては、事件の真相や組織犯罪等の解明に支障を来すおそれがあること、また、犯罪被害者等の名誉やプライバシーを侵害するおそれがあることなどのデメリットもあると考えております。

 警察におきましては、昨年四月以降、かねて実施をしてきております取調べの録音、録画の試行を拡充をしてきてございます。また、取調べの可視化等につきましては、現在、法制審議会で調査審議が行われているところでございます。警察といたしましては、取調べの録音、録画の在り方につきましては、引き続きこうした試行の状況や法制審議会での調査審議の状況を踏まえつつ、第一次捜査機関としての責務を全うするという観点から、ただいま申し上げましたようなメリット、デメリットを総合的に判断した上で更に検討を進めてまいる所存でございます。

国務大臣(谷垣禎一君)

 基本構想では、先ほど井上委員が指摘されましたように、一つは、一定の例外事由を定めながら、原則として被疑者の取調べの全過程について録音、録画を義務付ける制度案というのが提示されております。これについては、先ほどおっしゃったように、裁判員制度対象事件の身柄事件を念頭に置いて、制度の枠組みの具体的な議論をしていこうということでありますが、その結果を踏まえて、対象事件はどうしたらいいかというのはその結果を踏まえて更に議論しようということだと私は理解しております。ですから、取調べの録音、録画制度の対象事件の範囲は、基本構想に記載されておりますとおり、今後御指摘の点も含めて更に議論が行われることになるというふうに理解をしております。

 いずれにせよ、この法制審議会の議論、きちっとした取りまとめをしていただくことを期待しております。

井上哲士君

 時間ですので終わりますが、私はやっぱり国民の厳しいまなざしにこたえて、冤罪をなくす、全過程の可視化ということを改めて求めまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

委員長(草川昭三君)

 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会をいたします。

  午後二時五十七分散会

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