国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2013年・183通常国会 の中の 予算委員会

予算委員会

shitsumon201111.jpg・福島第一原発の汚染水漏れの問題で総理や東電社長、規制委員長らを質す。東電が汚染水の海への放出を前提にその場限りの対応をしてきたことを厳しく批判。安倍政権が原発の現状を「安定状態が継続」としてることを取り上げ、「こんな認識ではまともな対策はできない。本腰をいれた事故収束、廃炉対策を」迫る。


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 福島第一原発の事故で、今なお十五万人を超える福島県民の皆さんが県内外で避難を余儀なくされております。農業や漁業の再開のめどが立たない地域も多く残されております。これに追い打ちを掛けているのが、この間の一連の事故であります。私は、一か月前の予算委員会で使用済核燃料プールの停電問題を取り上げました。事故から二年もたっているのに仮設の配電盤のままで、ネズミの対策もなかった、一体三・一一の反省があるのかとただしたわけでありますが、その直後に再び停電が起き、そして地下貯水槽からの汚染水漏れの大事故。昨日も変電器で感電をしたネズミが発見をされて冷却が止まりました。

 東電、来ていただいておりますが、国民、特に福島県民は怒っていますよ。一体どうなっているんですか。どういう対応をしているんですか。

参考人(廣瀬直己君)

 東京電力の廣瀬でございます。

 先月来、いろいろな事故、多発しておりまして、本当に皆さんに御心配をお掛けしておりまして申し訳ございませんです。

 一連のこうした事象を受けて、私ども緊急対策本部というのを設置いたしまして、現在、汚染水の処理問題はもちろん中心でございますけれども、電気系の問題、それから設備系の問題、機械系の問題、それから土木の問題、そうしたものをそれぞれチームをつくりまして総点検を今やっております。その中で、東京電力のあらゆる経営資源、リソースをここに投入しておりまして、今まさに、これも今後こうした御心配をお掛けすることのないようにしっかりやってまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 本当に申し訳ございませんです。

井上哲士君

 水漏れした貯水槽は、産業廃棄物の処分場で使われる汚水などの流出防止用シートを転用したものでありました。

 この処分場の所管は環境省でありますが、そこでお聞きします。有害な汚染水が出るようなものを廃棄することが予定をされていたのか。それから、産廃でなく水を入れた場合の安全性は確認されているのか。そのことについて東電や保安院から問合せがあったか。いかがでしょうか。

国務大臣(石原伸晃君)

 三点のお尋ねだと思いますが、もう委員御承知のとおり、廃棄物処理法に基づく、今委員の御指摘した管理型最終処分場ではどういうものを扱うかと申しますと、重金属等の有害物質が一定の濃度基準以下の産業廃棄物に限って処分を可能とする、そういうものでございます。

 二番目の御質問でございますが、水をためることを想定していたのかというお尋ねだったと思いますけれども、廃棄物処理法に基づく産業廃棄物の管理型最終処分場では固形型廃棄物を埋設処理するというふうになっております。そのため、最終処分場の構造基準、すなわちどのように造られているかということでございますけれども、貯水を前提としては造られておりません。

 そして、三番目の御質問であったと思いますけれども、環境省、これは産業廃棄物に関する部門が担当させていただくわけでございますけれども、事前に問合せがあったかないのかということでございますが、私、確認いたしましたけれども、環境省には事前に相談はなかったと聞かせていただいているところでございます。

井上哲士君

 つまり、安全の確認もせずに転用したわけであります。

 一方、各地の産廃で破損事故が起きていたということは、東電の広報もほかの事例で漏水していたことは承知していたと私ども赤旗新聞の取材に答えております。にもかかわらず、何でこんな汚染水の貯水槽に転用したんですか。

参考人(廣瀬直己君)

 お答え申し上げます。

 私ども、今回、地下貯水槽タンクには、高密度ポリエチレンシートというのが一番強度が高いという専門家の皆さんの御意見をいただきまして、それを二重に、今先生のお示しになっているパネルの赤い部分でございますけれども、二重にして施工させていただいております。

井上哲士君

 あのね、二枚にすればいいというものじゃないんですよ。そういう認識で放射能汚染をされた水をためたと、許し難いことですよね。

 しかも、東電は、昨年八月の保安院の意見聴取会で、空きタンクを用意しておいて、汚染水を検知したらすぐそちらに移送すると述べております。ところが、それをせずに別の貯水槽に移送して漏れたわけですね。当時、何でこんないいかげんな説明したんですか。

参考人(廣瀬直己君)

 お答え申し上げます。

 地下貯水槽タンクから汚染水の漏えいが確認されましたので、ただいまそれを地上の鋼鉄製のタンクに鋭意今移しているところでございます。また、そうした中で、ナンバー2の地下貯水槽タンクからは昨日をもちまして地上のタンクに汚染水の移送が完了しておりますので、今後引き続きスピードアップして地上のタンクに移してまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 いや、質問に答えていないんですよ。すぐに移送すると言いながら、一旦はほかの貯水槽に入れたわけでしょう。なぜそんな違うことをやったのかと聞いているんです。

参考人(廣瀬直己君)

 先生の御指摘は、ナンバー2の地下貯水槽タンクから漏えいが発見された際にナンバー1の方に移送したということをお話しされているんだと思いますけれども、確かに緊急に、とにかくナンバー2が漏れているということが発見されましたので、まずナンバー2は、ナンバー1の方は空でございましたので、そちらに移送したということでございます。

井上哲士君

 いや、すぐにタンクに移送すると言って届出しているんですよ。それ、違うことやっているわけですね。

 しかも、このときの意見聴取会で東電は、ALPSという装置で処理すれば正常の水とほとんど同じ、ほかの原子力施設と同じように海水で希釈しながら出すという評価をしておりますと、こういうふうに述べております。しかし、ALPSではトリチウムは除去できないわけです。にもかかわらず、いずれ海に捨てるんだからタンクの増設など必要ない、無駄だと、こういうふうに考えたんじゃないですか。

参考人(廣瀬直己君)

 私ども、地上の鋼鉄製のタンクを今後ずっと造り続けるという計画でございます。二年半後の平成二十七年九月までに七十万トンの貯水容量を持つ地上のタンクを造るという計画で、今まさに、少しでも早くこのタンクを造るべく建設をしているところでございます。

井上哲士君

 質問に答えていないんですね。

 いずれ海に捨てるんだから必要ないと考えたんじゃないですかということですよ。

参考人(廣瀬直己君)

 私ども、安易に海に放出するということは全く考えておりません。

井上哲士君

 安易じゃなければいいんですか。そんな汚染水放出をしたら、漁業や環境への被害は重大なんですよ。

 これは東電だけの問題ではありません。当時の原子力安全・保安院は、東電の説明をうのみにして、環境省に安全性の問合せもせずにこのシートによる地下貯水槽を認可をいたしました。その責任についてはどうお考えですか。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 東京電力福島第一原子力発電所においては、依然としていろんなリスクが高い状況にあるため、私どもとしても注視しております。

 今回、このような事故が相次いで起こっているということについては大変極めて遺憾だと思っておりまして、四月十三日には私も現場を視察し、トラブルが頻発している現実を踏まえ、東京電力に対して、潜在リスクの抽出、継続的な改善を求めるとともに、資源エネルギー庁とも協力、連携することにして、原子力規制委員会としての対応を強化するところとしたところでございます。

 引き続き、いずれにしても、原子力委員会においては、本件を含む東京電力の各トラブルの対応状況、廃止措置にかかわるいろんな取組についてしっかりと監視してまいる所存であります。

井上哲士君

 三月十三日、その日の東電の資料では、この地下貯水槽の耐用年数を少なくとも十年以上と書いているんですね。それが僅か数か月で破損したわけですよ。

 こういういいかげんなことをチェックできなかったと、その責任はどう考えているんですか。

委員長(石井一君)

 誰に答弁させますか。

井上哲士君

 規制委員長。

委員長(石井一君)

 それじゃ、原子力規制委員長。そちらの答弁席で結構です。お願いします。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 この地下貯水槽については、当時の原子力安全・保安院の方が認可したところであります。

 それで、御指摘の地下貯水槽でありますが、原子力規制委員会としては、事業者が施設の使用を開始する前に現地の保安検査官によって工事段階における記録確認とか現場巡視による確認を実施しているところであります。

 いずれにしても、こうした事態が起こらないようにリスク低減に取り組むとともに、東京電力福島第一原子力発電所における事業者の取組を監視していく必要があると、また強力に指導してまいりたいと思っています。

井上哲士君

 およそ規制機関としての責任を私は感じられないんですね。

 午前中の答弁で、福島第一原発は依然として非常に不安定な状況、リスクがいろいろある状況だと述べられたと思いますが、そのことを確認をいたします。そして、なぜそういうふうに言われるんですか。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 リスクがある状況であるということは、まだ、いわゆる福島第一原子力発電所が事故を起こした後の状況というのは、通常の原子炉と違って様々な応急的な措置を、今動かしながら、できるだけ安全にその廃止措置を進めている段階だということであります。

 したがいまして、今後できるだけ、やっと、私どもも含めまして、若干コントロールができる、安全性を制御できる段階に差しかかっておりますので、そういったものをできるだけ早く進めて、より安全な恒久的な施設も含めて整備していきたいと、そういうふうに考えています。

井上哲士君

 午前中の米長議員への答弁で、非常に不安定な状況というふうにはっきり言われたわけですね。

 ところが、政府の認識はどうかと。総理が本部長である原子力対策本部に福島第一原発廃炉対策推進会議というのが設置をされておりますが、その三月七日の第一回の会議でこう書いております、同発電所が安定状態を継続していることを確認したと。規制委の認識と全く逆なんですよ。不安定と言っているのに、皆さんは安定状態を確認したと。

 総理、今も安定状態を継続という認識ですか。総理、総理ですよ。

国務大臣(茂木敏充君)

 炉が冷温停止状態、そして安定した状態と。ただ、これ、炉だけの問題ではなくて、先ほどからありますように、汚染水が毎日四百立米流れてくるわけであります。それについても、プルトニウムを取り払って毎日タンクの方に移送しなきゃならない。そして、そういった状態を保つために、電源も今完全に多重化できていないと。様々な課題があるわけでありまして、そういった事故処理全体から考えましたら、今全体として安定した状態ではないと。ただ、炉そのものの温度につきましては安定した状態だと、そういうことで申し上げております。

井上哲士君

 いや、過去も低温冷却状態にあるという答弁はありましたよ。しかし、これはそうじゃないんですよ。同発電所が安定状態を継続していると、全体としてそうだということを書いているわけですよ。

 総理、私はこんな認識ではまともな対策が取れるはずがないと思うんですね。この問題への認識、甘過ぎると思いますが、この安定状態を継続しているという見解、これはもう撤回すべきだと思いますが、いかがですか。総理です、総理。

国務大臣(茂木敏充君)

 議事録がどうなっているか、それは確認をさせていただきますが、炉につきましては温度は安定しております。しかし、廃炉に向けました様々な作業、そして先ほど申し上げました汚染水対策等々につきましては大きな課題が残っております。

井上哲士君

 総理の認識。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 ただいま茂木大臣が答弁したとおりでありまして、炉については安定的な状況になっている。しかし、一方、廃炉に向けて様々な課題があるわけでありますから、全力で取り組んでいく考えでございます。

井上哲士君

 いや、これには炉についてなんという限定はないんですよ。総理は収束という言葉は使わないと言われますけど、一方でこの安定状態が継続しているということを認めるんならば、結局同じ立場になるんですね。それではまともな対策が進まないんですから、事故は収束していないということを安倍内閣として宣言をして、東電任せにせずに、原子力対策本部が責任を持って必要な対策を強化して、本腰を入れた収束対策をするべきだと思いますが、総理、いかがですか。総理、総理。

国務大臣(茂木敏充君)

 事故処理は道半ばであります。先ほどから申し上げておりますように、例えば汚染水の処理の問題につきましても、流入してくる量をどれだけ抑えるか、また、海に出さないために防護壁をどうするか、最終的には、ALPSだけ使っても全部トリチウム取れませんから、最終的にはどうこの研究開発をやるか、こういった問題も残っております。

 そして、一号機から四号機までそれぞれ置かれている状況が違いますから、廃炉についてのロードマップ、もう一度見直すことにしております。それぞれに合った形での廃炉のスケジュール等々を六月までにまとめていきたいと、そんなふうに考えておりまして、事故処理につきましては道半ばということでありますから、我々はこの福島第一につきまして収束したと、こういう認識を持たずに、この廃炉の問題をきちんと加速していきたいと思っております。

井上哲士君

 だったら、収束していないと安倍内閣として宣言してください。いかがですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 そもそも、収束というのは前政権で、野田政権で出した宣言でございまして、安倍政権においては収束という言葉は使ってそもそもおりません。

 そして、ただいま茂木大臣が答弁したように、事故処理は続いていくわけでありますし、実際また福島第一の事故によって多くの方々が避難生活を余儀なくされている状況が続く中において、我々は収束ということを宣言する気持ちは全くないということでございます。

井上哲士君

 だったら、していないという宣言してくださいよ。

 私は、やはりこの問題に対する今の政府の認識が余りにも甘いと思うんですが、この今の、先ほどつくられました汚染問題の対策会議は廃炉対策推進会議に設置をされておりますが、この廃炉対策推進会議のメンバーというのはどうなっているんでしょうか。

国務大臣(茂木敏充君)

 メンバーでありますが、私が議長を務めております。そして、副議長は赤羽経済産業副大臣、委員として福井文部科学副大臣、廣瀬東京電力社長、鈴木日本原子力研究開発機構理事長、佐々木東芝社長、中西日立製作所社長、規制当局として田中原子力規制委員会委員長、オブザーバーとして内堀福島県副知事に御参加をいただいております。

井上哲士君

 原研というのは「もんじゅ」を持っているわけですね。ですから、東電、原研、東芝、日立、これまで安全神話の下で原発を推進してきた人ばっかしなんですよ。これで、最初の会議でこんな不安定な状況を安定状況だと、こういうふうに確認をすると。これでまともな対策を取れるはずがないと私は思います。

 問題が起きれば専門家を入れるという場当たりではなくて、あらゆる英知を結集したしっかりした体制を取って、廃炉は四十年間にわたる困難な課題なわけですから、そういう対応を、仕組みをつくり直すべきじゃないでしょうか。これ、総理、ちゃんと答えてください。総理、答えてください。

国務大臣(茂木敏充君)

 規制当局も入れまして、そしてやはり専門家じゃなきゃ分からない部分というのはあるんです、廃炉を進める上でも。さらには、IAEAの視察も受けたりしまして、そういったことをやっているわけであります。

 素人の方だけでやるのがいいという共産党の皆さんの意見とは全く我々は違っております。ちゃんと専門家がやるべきことをやる、そういった体制をきちんと取らさせていただいております。

井上哲士君

 いや、誰が素人でなんて言っているんですか。東電、日立、東芝、原研、こんな推進してきたばっかしでは駄目じゃないですかと言っているんですよ。ちゃんとした専門家を入れた体制をつくって英知結集しろと言っているんですよ。もう一回答えてください。

国務大臣(茂木敏充君)

 廃炉の問題、そしてまたこの汚染水の処理の問題、専門家そして外部の知見も生かしながら、さらには国際的な知見も生かしながらしっかりと進めてまいります。

井上哲士君

 私は、全く政府のこの構え、認識がひどいと思います。

 総理、福島の県漁連は、十五日に東電に対して、絶対に汚染水が海洋に放出されない根本的対策を国と確立してほしいという要望書を出しております。漁業の本格的操業がいつになるかとの落胆は大きい、汚染水が海洋に放出されれば福島県の漁業は復旧復興への道を断ちかねないと、こう言っていますね。

 あらゆる手だてを打って、絶対に汚染水の海洋放出はないと、こういうことをはっきり約束をしていただきたいと思います。

 総理、総理。いいから、あなたは。

国務大臣(茂木敏充君)

 担当でありますから。

 まずは、汚染水がしみ出さないようにモニタリングの体制をしっかりしてまいります。そして、さらには海側の方に遮断壁を設けることによりまして、そこから出ないような体制を取らさせていただく、海におきましてもモニタリングをする、こういった万全の体制を取る中で、海への流出がないようにできる限りの努力をしてまいります。

委員長(石井一君)

 総理を指名することは簡単ですけど、かなり専門的な議論ですから、それをやられて、最後に総理を指名いたしますから。

 質疑を続行してください。

井上哲士君

 じゃ、この点での答弁を下さい。

委員長(石井一君)

 この議論は終わったんですか。

井上哲士君

 最後に、最後です。

委員長(石井一君)

 それじゃ、内閣総理大臣。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 汚染水については、増え続けるこの汚染水については、根本的な解決を図っていかなければならないわけであります。原子力災害対策本部の下に汚染水処理対策を検討する委員会を設置をして、政府、原子力規制委員会、東京電力そして産業界等の関係者が一体となって中長期的な汚染水処理の具体策を検討していく考えでございます。

井上哲士君

 根本的な姿勢と認識を正していただく必要があると思います。

 もう一回東電に聞きますが、地下の貯水槽からの水漏れの原因というのは明らかになったんでしょうか。

参考人(廣瀬直己君)

 お答え申し上げます。

 現在のところ、まだ明らかになっておりません。私どもとしましても、この原因の究明は極めて大事だと思っております。まずは、地下貯水槽タンクから水をとにかく全部出すということでございますが、出した後もまだまだ恐らく線量が高いと思いますので、原因調査方法も含めて今検討中でございます。

井上哲士君

 これは、汚染水が増えているのは原子炉の格納容器が破損しているからでありますが、なぜ事故から二年たってもこの破損場所の確定ができないんでしょうか。

参考人(廣瀬直己君)

 お答え申し上げます。

 格納容器の破損につきましては、極めて線量の高い場所でございますので、これはとても人間が今行ってチェックすることはできません。したがいまして、ロボットなりカメラなりということになりますけれども、そうしたものの開発も含めて、国のプロジェクトのお力をお借りして、これからそうしたことからスタートしなければいけないところだと思っております。

井上哲士君

 現場の職員の方は苦労されています。

 私、この二つのこと、非常に大事だと思うんですね。原因究明なしの場当たり的対応では、解決しないばかりか、被害が広がっているということです。もう一つは、原子炉に立ち入っての調査ができないので、正確な事故現場の状況が分からないということですよ。国会事故調も、こういう中で、津波以外の原因についてもきちっと確認する必要があると、こう言っているわけですね。

 そこで、原子力規制委員会は三月二十七日に福島第一原発における事故分析の検討会についてというものを確認をされておりますが、その今後の論点でどういうことを挙げているでしょうか。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 お答えします。

 国会、政府事故調において引き続き検証等が必要とされている事項としては、地震動による安全上重要な設備への影響、例えば小規模な冷却材喪失事象の発生の可能性及びその影響、あるいは事象進展に関連する論点としては、一号機非常用復水器、ICの作動状況、あるいは畳のような水が確認されたということで、出水元の特定等があります。

 そのほか、事故及びその後の対応によって受けた影響分析が必要と考えられる事項として、格納容器の破損箇所の特定、格納容器の劣化等に係る分析等、あるいは溶融落下したデブリの状況確認等を考えております。

井上哲士君

 ここにパネルにしてあるわけでありますが、これ、いずれも事故原因を究明する上で極めて重要な論点なんですね。その検証や分析が尽くされていないということを規制委員会も認めているわけです。

 そこで、総理、お聞きいたしますが、繰り返し世界最高水準の安全を目指すというふうに言われておりますが、事故が収束をしていない、しかもこうした事故原因の究明も尽くされていない中で、どうして世界最高の安全など言えるんですか。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 様々な課題を抱えておりますが、二年前の東日本の大震災による過酷な事故を経験した中において、原子力規制委員会において、その中において世界的な知見も併せながら、また経験も生かして、最高水準の規則の中においてしっかりとこれから検査監督をしていただきたいと、このように思います。

井上哲士君

 いや、総理の見解を聞いているんですよ。

 さっきも言いましたように、汚染水漏れでも、原因究明なしにその場の対策をやったら、かえって被害は広がったんですよ。ですから、原因究明を尽くさずに世界最高の安全水準などは言えないんじゃないかと、それ言うんだったら新しい安全神話ではないかと。いかがですか。総理、総理。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 いや、今申し上げましたように、まさにそうした経験を生かしながら、また国際的な見地も生かして、世界最高水準の言わばルールをしっかりとつくっていくということでございます。

井上哲士君

 だから、原因究明もなしにできないじゃないですかということを言っているんですね。

 じゃ、規制委員会にお聞きしますが、この原発設計などに当たってきた技術者からは、この原子炉の構造そのものを見直して、福島の事故のように格納容器が壊れて放射性物質が外に出ることがないと、こういうふうに基準にすべきという指摘がされておりますが、新しい規制基準というのはそういうふうになっているんでしょうか。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 新基準におきましては、いわゆる設計基準として格納容器の基本構造に対する要求変更というところは加えておりません。

 一方、重大事故対策として炉心損傷を防止する対策を求めているほか、格納容器の閉じ込め機能を維持するため、格納容器を冷却、減圧するためのフィルターベントの設置等、それらが破れた場合に放射性物質の拡散を抑制する対策という多段階にわたる防護措置を求めております。いわゆる性能要求ということになっております。

井上哲士君

 つまり、原子炉の既存構造はそのままにして、フィルターベントを設置することによって事故のときには放射性物質を放出するということを前提にしている基準なわけですね。

 これまで原子炉立地指針というのがありました。立地場所の適否の判断条件として万一の事故でも公衆の安全を確保できるということを定めたもので、重大事故が起きた場合にこの原発の敷地の境界における放射線量が定められてきました。この基準は今回どうなったんでしょうか。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 お答えします。

 従来の基準では、シビアアクシデントが起こった場合のいわゆる対策というのが規制基準として要求されておりませんでした。重大事故とか仮想事故というものが起こったときに、いわゆる敷地から住民がお住まいになっているところまでの距離、いわゆる離隔距離をきちっと保っているかということで、いわゆる目安線量というのを基準にしてその安全性を判断してきたわけでございます。

 しかし、今般はそういう考え方ではなくて、そういった重大な事故が起きたときにはそれをきちっと、起こさないことがまず第一ですが、起こった場合にもそれをきちっと対策を施すということを要求しております。基本的には大体福島事故の百分の一以下ぐらいの放射能放出量、セシウムにしてですが、それぐらいの低さまで抑えるということを要求しておりますので、そういったいわゆる今までの目安線量のような考え方は、今回は採用しておりません。

井上哲士君

 昨年十一月十四日の田中委員長の記者会見では、福島のような放出を仮定すると立地指針が合わなくなっていると言って、指針を国際基準並みに厳しくして建設済みの全原発に適用すると、こういうことを述べられておりました。それと全く逆行しているんじゃないですか。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 従来のこれまでの基準のままでいくと、御指摘のとおりだということを申し上げました。

 それで、そういう基準を変えて今般は新しい基準として、そういう重大事故、仮想事故あるいは目安線量といった考え方をなくして重大事故に対する対策を求めているというのが今回の基準であります。

井上哲士君

 つまり、原子炉の構造そのものを見直しますと、既存原発は全部不適格になります。そこで、フィルターベントという新しい施設を付け加えることによって既存の原発を再稼働できるようにしようと。そうなりますと、放射性廃棄物を外に出すというのが前提でありますから敷地の目安線量の基準に収まらなくなると、そういうことでこの基準をなくしたということじゃないんですか。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 従来の目安線量は敷地境界で全身被曝が二百五十ミリシーベルトでした。小児甲状腺ですと一・五シーベルトです。今回、福島の今回のような事故が起きた場合、その百分の一程度になりますと〇・〇一とかその程度のミリシーベルト程度になりますので、いわゆるそういう意味で、決して出さないようにするということが基本でありますけれども、仮に万が一にもそういうことが起きたときでも、かなり今までから比べれば何桁も低いレベルに収まるということでございます。

井上哲士君

 希ガスはフィルターでは除去できません。そして、福島第一原発で放出されたのは炉内の核燃料の数%だったんですね。百分の一というのは一体どういう根拠があるのかと私は思うんですが、これは目安線量をなくす理由にはならないと思います。

 そこで、総理、お聞きいたしますが、シビアアクシデントがあればこの放射性廃棄物を外に出すということを前提にした対策でいいんでしょうか。福島のようにふるさとに帰れないような地域をつくり出す、そういう前提でいいんでしょうか。総理ですよ、総理。

国務大臣(茂木敏充君)

 原子力につきましては、現政権として、いかなる事情よりも安全性を重視いたします。

 そして、安全性をどうするかということにつきましては、これまでの反省、教訓も踏まえて、独立した原子力規制委員会において判断するということになっておりますので、政府としてのコメントは差し控えさせていただきます。

井上哲士君

 だったら、原発推進なんて言わないでくださいよ、こういう問題にちゃんと答えないんなら。

 もう一回規制委員会に聞きますが、今回、安全基準という名称をやめて規制基準と言い換えました。その理由はどういうことでしょうか。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 従来、安全基準というもの、その言葉に対して、基準を満足していれば安全であるというふうな誤解がありました。これについては、メディアをも含めて世論からも御指摘がありましたので、規制基準は安全を守るための最低の基準であって、安全を高めるという努力は常に怠ってはいけないという意味もありまして規制基準という名前に変えさせていただきました。

井上哲士君

 つまり、基準を満たしても安全とは言えないんだと。

 この論理で言いますと、安全を保証し切れない規制基準で安全を確認して再稼働するという総理の主張というのはもう成り立たないんじゃないでしょうか。

 総理、いかがですか。いや、総理が言っているんですから。自分の言葉に責任を持ってくださいよ。

政府特別補佐人(田中俊一君)

 いわゆる規制基準で全て絶対安全というのは、逆に言うと安全神話に陥るということで、安全はできるだけ常に高める方向で努力すべきだということで、私どもとしては、いわゆる安全神話という、まあ皆さん御指摘のところから、とりこから抜け出すために、そういう絶対安全ということは言っておりません。

 そういうことで、安全は究極の目標、少しでも安全を保つための目標だということで努力をしていくということで、安全目標というのもそういう考え方で最近委員会でまとめさせていただいております。

井上哲士君

 それでどうして世界最高水準の安全と言えるんですか。総理、答えてください。

内閣総理大臣(安倍晋三君)

 ただいま原子力規制委員長がお答えをしたように、今までは言わば安全神話、もうこれはシビアアクシデントは起こらないという前提で物事を考えていたわけでありますが、それを変えたわけでありまして、重大事故は決して起きないという前提ではなくて、重大事故を回避するための厳しい基準を、世界で最も厳しい基準を設定した上において、それでもなお、もし万が一シビアアクシデントが起こったときには、それを最小限に食い止めていくように、停止をしていくような努力も更にしていくと、こういう考えでございます。(発言する者あり)

井上哲士君

 少しも分かりません。

 シビアアクシデントを起こしたら放射性物質を外に出すことを前提にしたのがどうして対策になるのかと。特定安全施設もこれ五年間猶予になっていますし、この間、淡路島で未知の活断層で大地震が発生するなど相次いでおりますが、活断層が露頭しなければ直下にあってもできると。これもう抜け穴だらけですよ。実効ある避難計画も作られていないわけでありまして、私は、国民の安全のためではなくて再稼働ありきというような規制基準作りではなくて、事故の原因究明と収束のために全力を挙げるべきだと思います。

 再稼働はやめて、大飯も中止をさせ、停止をして、そして全て廃炉プロセスに入ると、原発の即時ゼロと、この方向に決意をすることを求めまして、質問を終わります。

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