国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2013年・185臨時国会 の中の 原子力問題特別委員会

原子力問題特別委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 やっと参議院の原子力問題特別委員会も今日最初の質疑を行えるようになりました。私ども、衆議院のように先国会からこの特別委員会を設置しろと求めてきたわけでありますが、当時与党の自民党などの賛同が得られないまま参議院選挙後の設置ということになって、やっと今日、第一回目の質疑となりました。
 改めて、この委員会がなぜつくられたのかということを確認をしておくことが必要だと思うんですね。全会派の賛同で国会事故調査委員会がつくられました。その提言に基づいてこの委員会はつくられたわけであります。国会事故調が、安全神話の下でなぜああいうような大きな取り返しの付かない事故を起こしてしまったのかということを調査し、そして結論として、当時の規制機関が電力会社のとりこになっていたと、こういうことを指摘をいたしました。その下で新たな規制機関がその役割をしっかり果たして、国も適切な対応をするということを、言わば監視もし議論をするのがまさにこの委員会としてつくられたわけでありまして、ゆめゆめ安全をおろそかにするような議論をすることはあってはならないということを肝に銘じながら、今日は質問に立たしていただきます。
 まず経産省にお聞きいたしますが、福島第一原発の放射能汚染水問題は依然として深刻な事態が続いております。放射能で決して海を汚さないという立場で断固立って取り組むことが重要だと思いますが、十八日も一号機と二号機の間の観測用井戸で高濃度の放射性物質が検出をされておりますが、その状況及び原因についてどうなっているでしょうか。

○大臣政務官(磯崎仁彦君) 今、井上委員の方から御質問ありましたとおり、事実関係を申し上げますと、十一月の十七日、一号機から四号機のタービン建屋の東側ですので海側になりますけれども、この地下水の観測孔、これはたくさんありますけれども、一の九というふうに呼ばれております観測孔でございますが、この放射性物質の濃度を測定した結果、一号機と二号機の間の観測孔、これが一の九になりますが、ここにおいて、前回は十四日の採取でございましたけれども、その時点では一リットル当たり七十六ベクレル、こういう数字でございましたが、この十七日の採取におきましてはその約二十七倍に当たる一リットル当たり二千百ベクレル、こういう濃度の全ベータ放射線濃度が検出をされたというのが事実でございます。翌十八日も再度採取をして分析をしたところ、数字は四百七十ベクレルということでございますので、前日十七日の濃度の約五分の一まで低下をしているという報告を東電の方から受けております。
 このときに、当該観測孔そばで濃度が上昇するような作業は実際問題として行っていないということでございますし、その周りの観測孔あるいは海水の全ベータ濃度、放射線の濃度の上昇が見られていないということから、今東電の方で原因調査を行っているということで、まだ確定した原因は分かっていないというふうに伺っております。
 港湾等への汚染された海水の流出を抑制すべく、いろんな方策を今取っているところでございますので、引き続き大きな関心を持ってウオッチしていきたいというふうに思っております。

○井上哲士君 一気に二十七倍の濃度が検出をされたわけでありますが、幸い下がっているようでありますけれども、しかしなぜそうなったか分からないということが私は深刻だと思うんですね。この汚染水問題というのは、一連の問題、この原因究明ができていないまま進行しているということがあるわけであります。
 私たちは、この汚染水問題の抜本的な解決は、原発への態度とか将来のエネルギー政策についての違いは越えて取り組むべき国民的な課題だと思っております。そういう点では、もう再稼働や輸出の準備の活動は停止をして、この汚染水問題にあらゆる知恵と力を結集をすべきだと主張してまいりました。
 そこで、規制委員長にお聞きいたしますが、東電は九月の二十七日に柏崎刈羽原発六、七号機の再稼働申請をいたしました。福島第一原発での作業ミスも含めた汚染水漏れが続く中で、規制委員会はこの申請に対する本格審査を行っておりませんでした。それが十一月十三日の会議で一転、本格審査を開始するということを決められたわけであります。新潟の県知事も、なぜ止めていて、なぜ始めるのか説明が欲しいと、福島第一原発の汚染水漏れは止まっていないじゃないかということを語っておられますけれども、本格審査を行ってこなかった理由、そして一転行うとした理由について、まずお願いします。

○政府特別補佐人(原子力規制委員会委員長 田中俊一君) まず、東京電力福島第一原子力発電所について、汚染水問題が喫緊の問題であるという認識はしております。そういう観点から、先日、廣瀬社長とも面談して、汚染水対策とか作業環境の改善とか、一F、一昨日から取り出しが始まった燃料の取り出しとか、そういったことについてきちっとやっていただくようお願いしたところであります。
 他方、柏崎刈羽の原子力発電所の適合性審査について、これは一応、申請は既に、申請がなされれば私どもは受理してそれを審査するという法的義務があります。ただし、福島も第一の汚染水問題等が非常に大きな問題になっていましたということで、本格的審査というよりは事務的な、書類とかいろんなそういうことがきちっとできているかどうかということを進めてまいりました。
 そういった事務的なヒアリングもほぼ、もう何回も重ね、十数回重ねてもう終わっていると。これを、じゃこの扱いをどうするかということですが、一応、私どもは適合性審査をするという義務がありますので、そういったことを踏まえまして、審査をどうしましょうかということで十三日に委員会へ諮って、各委員から賛同を得られましたので、一応公開での審査に、普通の審査に入っていくということに決めたものでございます。

○井上哲士君 マスコミも不可解で納得できないという大きな見出しを掲げて報道しておりましたが、田中委員長自身が、この汚染水の対策がきちんとされているか見て判断をすると、口先だけでは駄目だということもおっしゃっていたわけですね。廣瀬社長との面談があり、その後、十一月の八日、緊急対策が東電から出された、その後の十三日にやるということを決められたようでありますけれども、まさに計画が出ただけでこういうことに転換をしていくというのは到底納得がいかないわけであります。
 私たちは、この間の事態見たときに、東電に事故対応能力とか当事者能力があるのか、そのことが問われていると思っておりますが、その中でも、非常に単純ミスが相次いでおると、現場の労働者の皆さんの実態が非常に深刻だということがあったと思います。
 十一月八日に東電が緊急安全対策を出しておりますが、そのうちで、労働環境の改善、それから社内総動員体制による汚染水対策の要員の強化、これはどういう中身になっているでしょうか。

○参考人(東京電力株式会社 代表執行役社長 廣瀬直己君)お答え申し上げます。
 十一月八日に、私ども、緊急安全対策と称しましてかなりいろいろな対策を発表させていただきました。御指摘の二つの部分につきましては、とにかく、今先生から御指摘もありましたように、そこで働いている方々が例えば疲弊をしているとか、あるいはモチベーションやあるいは使命感、責任感といったようなものが万が一にも下がっているというようなことがあっては決してならないことですし、そうならないためにも、まずはとにかく安心して働きやすい職場といいますか、環境をとにかく少しでもそちらに近づけていくという対策が必要だというふうに考えまして、いろいろございます。御存じのように、全面マスクをしておりますといろいろ体力的にも厳しいですし、コミュニケーションもなかなか取りづらいということで、全面マスクをしないでいいエリアを拡大していくということであるとか、それから新しい事務棟を造る、それから休憩所を造る。休憩所も箱物ですので、すぐ、にわかにはできませんので、その間は大型バスのような簡易なすぐ持ってこられるものを代用して、そこの中ででも少しでも休息が取れるような体制をしていただくとか、あるいは、これも小さいことかもしれませんけれども、食堂、食堂というか食事を改善するということで、できるだけ近くに給食センターみたいなようなものを用意をして少しでも温かいものを食べていただこうというふうなこと。あるいは、医療機器を近くに持っていく、あるいは通勤バスを改善する、あるいはまた労務費の増分をするというようなことが先生御指摘のまず一つ目の環境の方の改善策ということで発表させていただきました。
 もう一つ、要員を総動員するということにつきましては、いろいろなところで今人が必要になってきております。例えば、タンクのパトロールであるとか、それから水位計を設置するとか、それから御存じのようにフランジ型のタンクを今、溶接型にどんどん切り替えていかなければいけませんので、そうしたことであるとか、そうしたことの工事の管理であるとか、そういったようなこと、あるいは、今先ほど田中委員長からもお話ありましたが、たくさんの穴を掘っておりますので、それをモニタリングをしていくというようなこともございますので、そうした要員のために二百二十人を持ってきております。それが要員の方の対策でございます。

○井上哲士君 労働者に対する危険手当の増額というのが入っているわけでありますが、これは我々も高放射線下の困難な環境での労働に対して必要だということで求めてきたことであります。
 ただ、一方、これまでもこの危険手当というのは重層下請の下でいわゆるピンはねをされて、なかなか現場に届いていないという事態があったわけでありまして、その対策の必要性ということも東電も前から言われていたわけですね。ですから、ここをきちっと正さなければ改善につながらないと思いますが、この点はどうされるんでしょうか。

○参考人(廣瀬直己君) その問題についても私どもも認識をしております。
 この度もあのような形でまず一万円から二万円に増額するということを公に発表させていただきましたので、これでもうお一人お一人の方が、ああ、そういうことなんだなというのをまず御認識いただくということ、それによってそうしたものがお一人お一人まで行き渡らなければ、当然それはお分かりになっていただけると思いますし、それから、まさにその請負構造の中で、私どもが元請さんにお支払いしたものが末端まで行くように、これはしっかり元請さんを、あるいはその間に入っていらっしゃる会社さんも含めてお呼びして、今回の趣旨をよく御理解いただくべく、またお願いを我々からもしていかなければいけないと思っておりますし、また、その相談窓口のようなものも私ども用意しておりますので、そうしたことからの声もしっかりしていかなければいけないし、今後どういうふうにこの今回の一万円、二万円が実際に展開されていくのかということについての実態の把握の方法についても、これは元請さんともよく御相談しながらいろいろな策を取っていきたいなというふうに考えております。

○井上哲士君 マスコミにいろんな声も出ていますが、あるベテラン作業員、日当を含めてどこまで実際に改善されるのか、今もう作業の核になるベテランだけではなくて作業員が全然集まらなくなっていると、こういう声も上がっております。私は、これはずっと我々も追及をしてきたわけでありますけれども、元請にお願いするだけじゃなくて、仕組みも含めて考える必要があるし、国が前面に出るというならば、国としても踏み込むべきだと思っております。時間がないので、その点は是非経産省にもしっかりとした対応を、国を挙げて、この点で現場まで届くということで求めておきたいと思うんですね。
 後者の社内総動員体制の問題です。
 二百二十人増やしたと言われましたけれども、内訳を見ますと、柏崎刈羽からは僅か二十人の異動ということになっているんですね。汚染水対策に東電の総力を挙げるということであるならば、柏崎千二百人おると言われていますから約一・七%の異動と。もっと大胆な人員配置を柏崎から移すべきじゃないですか。

○参考人(廣瀬直己君) まさに総動員体制で、今福島第一で必要とされている技術であるとかノウハウを持っている人間を極力持ってこようという考え方でございます。
 すなわち、水を止める必要がございますので、例えば、私どもの水力発電の部門の技術者は、ダムで水をどうやって止めるかと、地下水とのずっと格闘をしてきた技術や知見を持っている人間がおります。また、問題となっておりますタンクにつきましては、御存じのように、私ども火力発電所に油のタンクは幾つもあります。フランジ型のタンクも幾つもございます。そこでどういうメンテナンスをするか、どういう増し締めをしたらいいかというようなことは、むしろ火力の人間がそうした技術を持っております。
 したがいまして、現在、福島第一で必要とされているような技術を、これもまたずっと同じではないと思いますけれども、そうした者を社内を総動員をして持ってくるという趣旨でございます。
 もちろん、柏崎にも人を出してもらうということがあって二十名を持ってきたわけですけれども、御存じのように、柏崎は柏崎で、止まっているとはいえ燃料が装荷されている原子力発電所でございます。津波や地震もないということは言えないわけで、しかるべき人間の配置は必要だというふうに考えております。

○井上哲士君 原子力の知見を持った人が二十人、柏崎から移せばいいというのがおよそ総動員とは思えないんですが。
 今、安全性の確保のために柏崎にも必要な要員を置いているんだと、こう言われました。逆に聞きますけれども、今後、再稼働の準備、審査ということになりますと、それに対する追加の要員というものが柏崎刈羽でも必要になってくるんじゃないでしょうか。それはどのように見込んでいらっしゃるんですか。

○参考人(廣瀬直己君) 私どもまだ、規制庁、規制委員会の方に柏崎の六号、七号の安全適合審査を申請した段階でございますので、再稼働については全く何も申し上げられる段階にございません。

○井上哲士君 じゃ、規制委員長にお聞きしますが、先ほどの答弁の中で既に審査に入っているところの状況がありました。それぞれの電力会社が審査に必死になって対応していると、こういう御発言もあったわけですね。
 当然、審査になりますと、いろんな追加調査であるとか資料の提出ということが求められることになるわけで、私はそれの相当の人手、体制が求められてくるんじゃないかと思いますが、そういう人的な問題などで柏崎刈羽のこの審査に対する対応や再稼働準備が福島第一の汚染水対策に与える影響を規制委員会としてはどうお考えでしょうか。

○政府特別補佐人(田中俊一君) 規制委員会は、柏崎刈羽は初めてのBWR、沸騰水型の原子炉の審査が入りますので、相当新しい規制要件もございますので、それをきちっと適合性審査を進めるということで、少し時間も掛かるかもしれないなというふうには思っていますが、今BWRの審査を担当する人間もおりますので、そこが担当することになります。福島第一の方についてはまた別のグループが担当しておりますので、そういったことで、規制サイドとしては、十分とは申し上げませんけれども、きちっと審査は進められるというふうに考えています。

○井上哲士君 私がお聞きしたのは、田中委員長がこの福島第一について、トラブルが毎日のように起こっている状況が落ち着いてきちんとできるようになるまで見極めなくちゃいけないということをこの柏崎刈羽の審査の関係で言われておりました。報告書に書いてあることが実際に行われているかを見るということも言われているわけですね。
 現にまだ、緊急対策は出ましたけれども、始まったばかりであるということ、そして審査を始めれば当然必死になって対応するための一定の人員を電力会社が確保する必要があると、そういうことが電力会社で対応が求められることが電力会社の福島第一の対応について影響があるんじゃないか、そのことについてお聞きしています。

○委員長(藤井基之君) 田中委員長、時間になっておりますので、簡潔な答弁をお願いいたします。

○政府特別補佐人(田中俊一君) はい。
 福島第一の方の対策と柏崎刈羽の審査に対するものとは一体ではありませんけれども、やはり基本的に国民の理解を得る上では福島第一を優先にするという取組を全社を挙げて取り組んでいただきたいと思っておりますし、廣瀬社長からはそういう約束をいただいておりますので、その実態をよく見極めていきたいというふうに思います。

○井上哲士君 時間ですので、終わります。

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