国会質問議事録

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予算委員会

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○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 三・一一を挟んで、おとついと今日も質問に立つことになりました。改めて犠牲者の方へのお悔やみと被災者へのお見舞い、そして復興への決意を新たにするものでございます。
 さて、武器輸出三原則について聞きます。
 我が国は、武器及び関連技術について海外に輸出しないという武器禁輸政策を取ってきました。これは一内閣の方針ではありません。衆参の本会議で八一年に全会一致で決議をしております。そして、内外に国是として宣言をしてきました。決議では、日本国憲法の理念である平和国家としての立場を踏まえ、政府は、武器輸出について厳正かつ慎重な態度を求めております。
 残念ながら、様々な抜け穴がつくられてきましたけれども、安倍内閣は昨日、この武器禁輸原則そのものを変える新しい原則の案について決定をしております。憲法と国会決議に基づく国是をなぜ一内閣の判断で覆すことができるのか。総理、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 武器輸出三原則等については、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念に基づくものでありますが、具体的内容につきましては、佐藤総理と三木総理の国会答弁を根拠とするものであります。
 その後、安全保障環境の変化に対応いたしまして、平和貢献、国際協力や国際共同開発、共同生産等の必要性に応じて、累次にわたりまして官房長官談話を発表するなどして例外化措置が講じられてきており、既に例外化は二十一例に及んでいるわけでございまして、これは自民党政権時代だけではなくて、自民、社会、さきがけ連立政権時代、あるいは民主、社民、国民新党の連立時代等にも行われていることでございますが、昨年の十二月に策定いたしました国家安全保障戦略においては、国際協調主義に基づく積極的平和主義の観点から新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定めることとしており、新たな原則は現在検討中でありますが、あくまでもこれまで積み重ねてきた例外化の実例を踏まえまして、それを包括的に整理をして、防衛装備の移転を認め得るケースを明確かつ適切な形で限定する考えであります。
 また、移転を認め得る場合であっても、万が一にも国際紛争の当事国に武器が渡ることなどがないよう、移転先の適切性や安全保障上の懸念等を個別に厳格に審査する考えであります。あわせて、これまでは必ずしも明らかではなかった審査基準や手続等についても明確化、透明化を図るとともに、政府全体として厳格な審査体制を構築する考えであります。さらに、同様の観点から、目的外使用や第三国移転についても適正に管理していく考えであります。
 このように、言わば新たな基準については、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念は維持した上におきまして、防衛装備の移転に係る手続や歯止めを言わばこれは今まで以上に明確化していくものであるということでございますので、御理解をいただきたいと思います。

○井上哲士君 今の答弁にも新しい案にも肝腎な言葉が抜けております。一つは憲法ということ、そして日本が武器輸出を禁止してきた理由、その肝腎の言葉がありません。
 七六年の政府統一方針は、平和国家としての立場から、国際紛争等を助長することを回避するために、憲法の精神にのっとり、武器の輸出を慎むと述べています。これは、この間、例外が積み重ねられてもこの国際紛争の助長を避けるという言葉は維持されていましたが、今の答弁にも政府の新方針にもありません。国際紛争の助長をしてもよいと、こういう立場に変わるんでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 従来は国際紛争を助長することを回避するとの文言を用いていたのは事実でございます。しかし、テロとの戦いなど、国際社会の平和と安定のために取り組まねばならない紛争があることを踏まえますと、紛争の平和的解決や国際の平和及び安全の維持を目的としている国連憲章に言及する形でこれを遵守することこそ平和国家としての基本理念であるとした方が適切であると、このように判断したところでございます。

○井上哲士君 これは、国連憲章に置き換えられるものではないんですね。我が国は、国連憲章の上に更に日本国憲法の精神にのっとって、国際紛争の助長を避けるために武器輸出をしないということを方針にしてきたわけです。これは、国際社会でも広く注目をされてきました。
 昨年の十二月三十日のニューヨーク・タイムズの社説は、総理の積極的平和主義と武器輸出解禁について述べています。
 もう一つの武器輸出国が生まれることがどう世界の利益になるというのか全く不可解だと述べた上で、日本は武器でなく厳密な外交を通じて憲法の平和原則を輸出すべきであると、すなわち、平和原則の精神の下に武器管理の熱心な擁護者になるべきであると、こう述べております。世界は日本の立場についてこう見ているわけですね。
 なぜ、この憲法九条を持つ日本が、普通の国連加盟国、一般の立場の横並びになって武器輸出を進めるのかと、こういうことが問われるわけでありますが、大体、国連加盟国は憲章を守るというのは当たり前のことなんですね。しない国というのは、つまり、武器輸出ができない国というのは具体的にどの国のことを想定されているんでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今まさに、我々、この新しい原則におきまして、最終的な調整を今日から与党と行い始めたわけでございまして、その最終的な姿について今ここで申し上げることはできませんが、今原則についての政府の問題意識を申し上げれば、現状の三原則等によれば、例えば、現状の三原則によれば、紛争終了後に遺棄された地雷の除去装備や化学テロ等への対処のための除染用装備、あるいは危険地帯に邦人が滞在する際に必要な防弾チョッキなども一律に海外への持ち出しが禁止されていることになっています。果たしてそれでいいのかということもあります。
 また、防衛装備品については国際共同開発が主流となってきていますが、現状のままでは我が国はこれに一切参加することができない状況にあるわけでございまして、国民の生命や財産の保護、平和貢献、国際協力の積極的推進からは、このような状態のままでよいのか見直しが必要ではないかとの問題意識に基づいて検討を行っているものでございます。そして、基本的には、もちろん紛争をしている地域、あるいはまた国連決議によってそれは武器等を出すことができない、また、あるいは既に条約がある、そうしたものは当然だろうと。
 そしてまた、中身の詳細につきましては、今まさに政府と与党において協議が今日からスタートしたところでございますので、まだ今の段階では断定的に申し上げることはできません。

○井上哲士君 具体的にどの国になるかという明確なお答えがありませんでした。
 報道では、現に国連から制裁を受けていなければ国連憲法の遵守に当たるということにされているようでありますが、そうであれば、例えば、現に紛争に関与していても国連から現在制裁を受けているわけじゃないアメリカとかロシアとかもこれは可能になる。それから、レバノンやパレスチナなどに空爆を繰り返して過去何度も安保理から決議を受けているイスラエルも輸出の対象としてはオーケーだと、こういうことになるということで、外務大臣、それでよろしいですか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) この新たな原則につきましては、ただいま総理からも答弁させていただきましたように、今、現在検討中であります。これ、詳細について今の段階で申し上げることは難しいと考えています。
 是非これからしっかりとした議論が行われ、新たな原則が、しっかりとした原則ができ上がるのを期待したいと考えています。

○井上哲士君 昨年の三月に、この国際紛争の助長を避けるという言葉を外した官房長官を出してイスラエルに輸出されるようなF35への共同参画を決めたわけですね。つまり、それを原則に取り込むと、こういう国も輸出が大手を振ってできるようにするというのが私今度の中身だと思うんですね。
 さらに報道では、石油輸出ルートを守るためのシーレーン沿岸国への武器輸出も新原則の下で認められるとされておりますが、これはそういうことでいいんでしょうか。

○委員長(山崎力君) どちら。
 では、小野寺防衛大臣。

○国務大臣(防衛大臣 小野寺五典君) 委員のお話を聞いていると、何か日本が他国の紛争を助長するような、そういうイメージに取られるので正確なお話をさせていただきますと、防衛当局で、例えば中国の遺棄化学兵器、これは旧軍が遺棄したものですが、これを当然日本として支援をして無力化するというときに持っていく防毒のマスクあるいは防護服、これも実は武器ということで、今まで官房長官談話で一つ一つ外さなければいけない。あるいは、例えば海外で復興支援のために自衛隊が持っていくブルドーザー、これも自衛隊のブルドーザーであればこれは実は武器という範囲で、復興支援に持っていくこのブルドーザーですら武器という範囲で私どもは官房長官談話等でクリアしなきゃいけないわけですよ。
 そういう一つ一つのことを積み上げていくことが、私どもとして、今まで継ぎはぎだらけの状況の中できちっとした明確な基準を考えなければいけないのではないか。二十一ももう例外をつくっているわけです。そういうことで今政府を含めて検討しているということですので、どうも委員のお話を聞くとまるで武器という話ですが、現実的には防衛装備ということです。
 それから、シーレーンのお話ですが、シーレーンについて、もし私どもがしっかりとした形で、今自衛隊は、例えばソマリア沖・アデン湾においての海賊対処行動を行っております。これは我が国のための行動でありますので、こういうことを一つ一つをすることが日本としては大切なことだと思っております。

○井上哲士君 全然関係ないことを答弁しないでくださいよ。ごまかしちゃ駄目ですよ。だって、イスラエルにF35を輸出される共同開発、参加したんでしょう。これ使ってイスラエルは空爆したらどうするんですか。今みたいな話、全然違うんですよ。
 そういうことをやろうとしていると、結局、武器輸出は禁止という原則をなくして、原則解禁して個々に判断をすると、こんなことになるから、多くの今、日本の人は、日本で輸出された武器が使われるんじゃないかと、人を殺すんじゃないかという懸念の声を上げているんですよ。最近の共同通信の世論調査でも、武器輸出三原則の緩和に反対は六六%です。賛成の二五%を大きく上回っていますよ。このことを正面から受け止めていただきたいと思います。
 そして、一方、この武器輸出国への転換を一貫して求めてきたのは経済界や防衛産業でした。今、大歓迎していますよ。経済界の要求に応えて、政府は、昨年初めて、防衛産業の国際競争力強化というのを掲げました。まあ武器輸出で世界の軍需産業と競争する国へ踏み出そうというわけですね。
 その下で、この間一年余りで総理が外国訪問した際に経済界が同行した国を私、まとめてみました。(資料提示)ロシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコから始まって、インドまでの十五か国でありますが、外務大臣、この間のロシア、中東、アフリカ訪問の中で、新しい原則で武器輸出が禁じられる、こういう国はあるでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) この新たな原則につきましては、従来の原則に加えて様々な例外が設けられましたこうしたものも整理した上で、より明確に考え方を示す、透明化を図る、こういった考えの下に新たな原則をつくっていこう、こうした考えに基づいて今作業が進められようとしています。
 これは、議論がこれから続くわけですので、具体的にどういった結果をもたらすのか、これは今の段階では明確に申し上げることは難しいと考えています。

○井上哲士君 つまり、これは、輸出できないということは一つもさっきから挙げることができません。この外国訪問の際に、防衛産業がどれだけ同行して、訪問国との間で防衛協力等でどういう合意がされているのか、私、調べてみました。
 これ、防衛産業というのは、この六年間に防衛省との中央調達上位二十社になったことがある企業です。合意内容というのは、首脳会談の内容や外務省が発表した共同声明から引用をいたしました。そうしますと、全ての外遊に上位二十社からの同行がありまして、ほとんどの国と防衛協力の強化などが合意をされております。例えば、昨年のロシアやサウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコへの訪問には、三菱重工や川崎重工、三菱電機、東芝、富士通、IHIなどなど、軍需産業十二社が同行し、そしてそれぞれの国と防衛協力の拡充などの合意がされております。
 武器輸出拡大を前提に総理を先頭としたトップセールスが既に行われているんじゃないですか。総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) それは全くそんなことはございません。今挙げられた企業がそうした自衛隊の装備品について造っているかもしれませんが、私が訪問した国々でそうしたものが言わば商談としてできているという話は全く聞いていないわけでございますし、また、そもそも別の大きなプロジェクトを目的としているものでございますからこれは全く関わりのない話でございまして、それとは別に、言わばそれぞれの国と、防衛交流を行うということをそれぞれ取り決めているわけでございますが、関係を緊密にしていく。言わば、特にロシアとの関係もそうでございますが、ロシアとはそもそも残念ながら平和条約がないわけでございまして、平和条約がない国に対して、これは武器を輸出するということは基本的にこれはそもそも考えられないわけでございますが、一方、防衛交流を行っていく上においては、これは両国の信頼関係を醸成していく上においては極めて重要であると、このように考えている次第でございますが。
 いずれにいたしましても、先ほど小野寺大臣が答弁をさせていただきましたように、今まで既に二十一例、例外として挙げている、この穴を空けているわけでありますが、それは例えば防弾チョッキであるとか化学兵器を、これを解体していくためのものであるとか、向こうにブルドーザーを置いてくる、そういうものに一々やってきた。それを今度はルール化しようというものでありまして、F35、例として挙げられたF35につきましても、部品をある程度造って、この言わば製造の一部を供給をしていかなければF35自体が購入できないという中においてそういう判断をしていくというものでありまして、こちらが積極的に武器を輸出をしていこうということでは全くないということははっきりと申し上げておきたいと思います。

○井上哲士君 繰り返しの答弁はやめてほしいんですが。
 過去、これらの国々の外遊の例を見ましたけれども、こういう形で防衛協力などの合意をしたというのはほとんどありません。そして、こういう形で同行企業が来ていると。現実にはいろんな形で前さばきがされているわけですね。
 大体、経済界、防衛産業はどう見ているかと。
 経団連はこの二月に、共同開発に限らずに国産品の輸出も広く容認することや、政府に専門の部門を求めると、もっと拡大しろという要望書を出していますね。
 それから、みずほ銀行の産業調査部が昨年十一月に、「「武器輸出三原則等」の見直し機運高まる」というレポートを出しています。その中で、民間企業が防衛装備品分野で国際共同開発、生産に参画することを可能にし、防衛産業の事業性を大きく改善することにつながると。量産開始後には共同参画した国に販売することが可能になり、生産量、販売量が拡大し、スケールメリットを享受できると書いているんですね。
 つまり、武器の生産、輸出を拡大してもうけを上げようという経済界の狙い、明らかじゃありませんか。
 政府はこの間、防衛産業の国際競争力の強化なんかを打ち出していますけれども、まさにこういう防衛産業の要望と一体となって進めてきているのがこうした動きじゃないですか。総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほど申し上げたとおり、我々がやろうとしていることは、今まで二十一例において例外措置をとってきたと、今度はやっぱりこれを整理してルールを明確化していこうということでありますし、そしてルールの透明性を上げていこうということであります。そして、私たちは、基本的に平和を維持をしていくという重要性についてしっかりと認識をしながら、そのための国連憲章をしっかりと遵守をしていくという精神においては、今までの三原則とこれ全く同じであるということは申し上げておきたい。
 つまり、今までのこれは例外措置として行ってきたこと、これからはしかしそれを整理いたしまして、厳格なルールとして透明性の高いものを作り、国内外に示していくというものであるということは申し上げておきたいと思います。

○井上哲士君 この間の憲法に基づくこの武器禁輸政策に様々な抜け穴がつくられてきた、であるならば、その抜け穴を防ぐことが今求められているんですよ。結局、抜け穴をつくった例外を原則に変えてしまって、大手を振って武器輸出ができるようにする、こんなことは絶対に許すことができません。
 武器輸出で栄える国になったり、集団的自衛権行使で戦争する国に踏み出すと、国会決議も憲法も踏み出してこの国の形を変えるようなことは許されないと申し上げまして、質問を終わります。

○委員長(山崎力君) 以上で井上哲士君の質疑は終了いたしました。(拍手)

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