国会質問議事録

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原子力問題特別委員会

井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 川内原発の再稼働が進められておりますが、火山学会ができないと言っている巨大噴火の早期予知が前提となっており、実効ある避難計画もないままのものでありまして、新たな安全神話だと言わざるを得ません。しかも、再稼働すれば増え続ける使用済核燃料の問題は何も解決しておりません。
   〔委員長退席、理事中原八一君着席〕
 今日はこの問題を中心にお聞きいたしますが、まずこの使用済核燃料について、全国の原発の貯蔵プールなどの総容量と現在の貯蔵量はどうなっているでしょうか。
○政府参考人(資源エネルギー庁電力・ガス事業部長  多田明弘君) お答え申し上げます。
 我が国の電気事業者、今年の九月の末の時点で約一万七千トンの使用済燃料を貯蔵しているところでございます。このうち、約一万四千トンが各原子力発電所の敷地内、つまりサイトの中で保管をされております。残りの約三千トンが日本原燃の六ケ所再処理工場の方で貯蔵されております。
 今先生お尋ねのキャパシティーといいますか、管理の容量でございますが、これにつきましては全体で二万八百トン余りの状況かと認識しております。
○井上哲士君 ですから、全国の原発でいいますと二万トン余りの容量に一万四千トンが貯蔵されていると。例えば、玄海など再稼働いたしますと約三年、柏崎刈羽でも三年余りでいっぱいになると、こういうふうに指摘をされているわけですね。
   〔理事中原八一君退席、委員長着席〕
 政府は、核燃料サイクル計画の中でこの使用済核燃料問題も大きく解決するんだということを言ってまいりました。使用済核燃料を全て再処理して、取り出したプルトニウムを高速増殖炉で再利用するというものでありますが、この計画自身が大きく行き詰まっております。
 今日も議論がありましたが、六ケ所村の再処理工場の新規制基準への適合審査がどうなっているのか、そしてこの工場の完成予定日というのはどうなっているんでしょうか。
○政府参考人(原子力規制委員会 原子力規制庁長官 官房審議官 大村哲臣君) 適合性審査の状況のお尋ねでございますので、事務方から回答させていただきます。
 日本原燃の六ケ所再処理施設に係る新規制基準への適合性の審査でございますけれども、本年一月に事業の変更の許可の申請を受理をいたしておりまして、その後、鋭意審査会合を実施しているところでございます。現在まで十七回の審査会合を開催をいたしました。現在、重大事故対策なども含めまして事業者の方でまだ不十分な点があるということで、現在大幅な申請の補正を作業を行っているという状況だというふうに承知をしております。
 今後の審査のスケジュールにつきましては、今後提出されます、今申し上げました申請の補正内容、それから審査に対する事業者の対応状況によるところが非常に大きいということですので一概に申し上げるのは難しいというふうに思いますけれども、これ事業者からの対応に応じて厳正かつ着実に審査を進めてまいりたいというふうに考えてございます。
 それから、この施設の竣工の時期につきましては、先月三十一日に事業の変更の許可の申請、これ一部補正が出されておりまして、これによりますと平成二十八年の三月というふうに記載をされているところでございます。
○井上哲士君 重大事故対応など大幅な補正が事業者の申請に必要だと、こういうことでありますが、先ほど、この完成予定も延びたということになっていますが、これで実に二十二回目の予定日の延期になるわけですね。建設費は二兆二千億円、当初予定の三倍ということになってきております。
 じゃ、この核燃サイクルの要とも言える施設である高速増殖炉「もんじゅ」はどうなっているのかと。事故などが相次ぎまして、これ停止をしたままでありますが、二〇一二年に機器の点検漏れ約一万件が発覚をしております。これに対して今規制委員会としてはどういう対応をされているんでしょうか。
○政府参考人(大村哲臣君) お答えいたします。
 原子力規制委員会におきましては、「もんじゅ」の今御指摘のございました保守管理の不備を踏まえまして、昨年五月に原子炉等規制法に基づきまして保安措置命令それから保安規定の変更命令を原子力研究開発機構に対して発出をしておりまして、これにつきましては、現在、原子力研究開発機構からの報告を待っているという状況になっております。
 これまで同機構の方からはこれらの対応状況につきましてヒアリング等で報告を受けるとともに、保安検査、年に四回やっておりますけれども、これで取組状況を随時確認をしているというところでございますが、本年九月に実施しました前回の保安検査でございますが、これにおいても不適切な事案が見付かるというようなこともございまして、この機構の保守管理体制や品質保証体制の再構築、これがまだ途上にあるというふうに認識をしているところでございます。
 こういった認識の下、引き続き、保安検査等で保守管理それから品質保証に関わる業務の改善に向けた取組状況の確認ということで、これは法令に基づきまして厳正に対応していくということにしてございます。
○井上哲士君 この「もんじゅ」の事故、そして事故隠しの問題等々はこれまでも国会で何度も議論がありまして、私も質問してまいりました。そのたびに反省の弁を述べられたわけでありますが、にもかかわらず、この点検漏れ約一万ということを聞くと、本当私は唖然といたしました。もう、およそ放射能を扱う事業者としての自覚、過去の実態への反省があるんだろうかと。早期再稼働などはあり得る話じゃないというのが私は思っております。
 やはり、この安全の根本問題の解決のないままに私は事業者の要望であるとか国際的な要請などといって再稼働を進めるようなことがあれば、これはむしろ規制組織としてはサボりだと言われるようなことだと思いますが、その点、規制委員長の見解、いかがでしょうか。
○政府特別補佐人(原子力規制委員会委員長 田中俊一君) まず、先ほど来申し上げておりますけれども、まずきちっと今私どもが発出しております保守管理体制、品質保証体制の構築をしていただいて、その上でさらに申請がありましたらそれを厳正に審査をしていくということにしております。
○井上哲士君 まさにその構築の途上だということであります。
 この中心的な施設がこういう事態の下で、もう核燃サイクル計画そのものが技術的にもコスト的にも事業の実現性はないと、こういう専門家の指摘も多々あるわけですね。さらに、再処理によって生じる高レベル放射性廃棄物処分のめども全く付いておりません。
 これも今日いろんな議論があったわけでありますが、二〇〇〇年に日本でも高レベル廃棄物の地層処分が可能だという評価をして、それに基づいて法律が作られました。しかし、その後、一番最初の段階である文献調査に応じる地方自治体が一つもなくて全く進んでこなかったというのが実態なわけなのですね。
 今日これ議論がいろいろあったわけでありますが、国民の理解が進んでいない、だから国が取組の強化をし、知事会にも要請をすると、いろんなお話がありました。しかし、その中で私は、二〇〇〇年に確かにそういうことで始めましたけれども、その後あの三・一一という事態に直面をし、それまでの様々な知見そして安全神話というものに根本的な問題が突き付けられたと、このことを抜きにこの問題は議論はできないと思うんですね。
 経産省にお聞きいたしますが、この二〇〇〇年の日本でも地層処分が可能という評価の後、三・一一の地震が起きました。その後、その地震の前に原子力委員会が日本学術会議に依頼をしていた報告書がこの地震の後二〇一二年に発出をされたわけであります。この学術会議の報告書は、日本は火山活動が活発な地域であるとともに、活断層の存在など地層の安定には不安要素がある、さらに、万年単位に及ぶ超長期にわたって安定した地層を確認することに対して、現在の科学的知識と技術的能力では限界があることを明確に自覚する必要があると、こういう指摘がされておりますが、この学術会議の報告についてどのように受け止められているでしょうか。
○副大臣(経済産業副大臣 高木陽介君) 高レベルの放射性廃棄物につきまして、将来世代の負担を最大限軽減するために最終処分を目指すべきであり、その方法としては現時点では地層処分が最も有望であるという認識が国際的に共有されていると。ただ、委員御指摘のように、その学術会議の指摘もございました。私どもとしては、各国において地層処分に向けた取組が進められており、我が国もその方針ということはまず基本的に申し上げたいと思います。
 その上で、御指摘の日本学術会議の報告は、地層処分が技術的に難しいと言っているわけではなくて、国民の信頼獲得のためには科学的知見の限界を認識、つまり、いわゆる、今回の原発もそうでございますが、リスクゼロということはないと思います。しかしながら、そういったことを、その限界を認識をして開かれた討論を行うことが必要であることなどを提言したものというふうに私どもは認識しております。
 政府としては、最新の科学的知見を定期的かつ継続的に評価し、地層処分の技術的信頼性を高めていくとともに、透明性あるプロセスの下、政策決定を行ってまいりたいと。
 もう一言申し上げさせていただければ、それぞれ原発を推進する立場又は反原発の立場の方、いろいろいらっしゃると思います。そういった中で、現在もう使用済みの核燃料がある。この問題については、推進であろうが反対であろうが、この問題についてはしっかりと議論を進めて合意をしながら、そして最終処分をしていかなければいけないというのが私どもの世代の責任であるというふうに認識をしております。
○井上哲士君 現にあるものをきちっと処理しなくちゃいけない、それは当然であります。問題は、そのめどが何もないままに新たな使用済核燃料をどんどん生み出すようなことをやることが許されるのかということを私は問いたいと思うんですね。
 昨年十一月の総合資源エネルギー調査会のワーキンググループで、国が前面に出て候補地を示して、地域住民に情報提供を行って、住民参加での議論の仕組みを整えるなどの方向が示されました。エネルギー基本計画でも同様の方針が盛り込まれて、閣僚会議などでも確認をされておりますが、これに基づき具体的にはどのような検討が進められているんでしょうか。
○副大臣(高木陽介君) これは先ほどの答弁でもございましたけれども、高レベル放射性廃棄物の最終処分、何度も申し上げますが、現世代の責任として解決すべきものであると。しかしながら、先ほど委員御指摘のように、二〇〇〇年代に入って、じゃ、この十数年間、今に至るまで処分地選定の最初の調査にも着手できないという現状もございます。
 これまで手挙げ方式等でやってまいりました。しかしながら、こういう状況を反省した上で、昨年十二月の最終処分関係閣僚会議を開催し、実施主体による公募方式を見直して、国がより適性が高いと考えられる地域を科学的有望地として提示して、重点的な理解活動を行っていく方針を決定しました。また、本年九月に開催されたこの会議におきまして、科学的有望地の具体的基準等について専門家の更なる検討を進めていくこととし、十月から総合資源エネルギー調査会での議論を開始したところでございます。
 将来世代に先送りしない、そういった中で、じゃ今の段階で、先日の知事会等も含めまして、各都道府県におきまして説明をまずさせていただきたいと、こういう段取りで今スタートを切ったところでございます。
○井上哲士君 法律では、この立地選定のプロセスは、文献調査、概要調査、そして精密調査という三段階に分かれておって、その上で建設地を選定をするということになっております。調査全体に約二十年掛かるというものでありますが、この概要調査、精密調査、建設地の選定、それぞれ次の段階に進む場合には知事及び市町村長の意見を聞き、いずれかが反対の場合は次の段階へ進まないということになっておりますが、この枠組みは当然維持をされると、これは確認してよろしいですね。
○副大臣(高木陽介君) 今委員御指摘ありましたように、最終処分方法において、法律では文献調査、概要調査、そして精密調査の多段階を経て最終処分地を決定することとされており、その方針に変更はございません。概要調査地区等の選定に当たり、経済産業大臣がその所在地を管轄する都道府県知事及び市町村長の意見を聞き、これを十分尊重した上で閣議決定することとなっております。
 政府といたしましては、これまでも都道府県知事又は市町村長の意見に反して概要調査地区等の選定を行うことはないとの考えを明らかにしており、今後もその考えに変わりはございません。
○井上哲士君 そうしますと、今言っている国が前面というのは、文献調査に至る前のことのわけですね。
 その中で、住民参加で議論ができる仕組みをつくるということも言われておりますが、市町村が文献調査の受入れを決める前の段階で住民参加の仕組みをつくると、これどういう性格のものになるんでしょうかね。市町村を飛び越えて国が直接住民と議論をする、そんな場をつくろうと、こういうお考えでしょうか。
○副大臣(高木陽介君) 今現在の段階ではそこまで決定はしておりません。
 その上で、先ほどから何度か申しておりますように、その地域の理解を得ていくことは第一でございますので、都道府県や市町村に対して情報提供を緊密に行い、丁寧な対話を重ねていくと方針を決定をいたしました。先ほどから確認をさせていただいている全国の知事会とも連携して、まず広く自治体向けの説明を行っていくこととしたいということで、具体的に、委員御指摘のように、こうこうこういう形でやる、これはまだ先の段階でございますけれども、しっかりそういった地域住民、さらには、地域だけではございません、全国民が理解を得ていくような、そういうような形を取ってまいりたいと考えております。
○井上哲士君 学術会議で高レベル放射性廃棄物処分検討委員会の委員長を務められた今田東京工大の名誉教授は、政府は科学的有望地を選んで国が自治体に申し出る新たな方式を打ち出したが、こうした民主主義に反する上意下達では駄目だと、こういう指摘もされております。
 福島の事故の放射性廃棄物の中間貯蔵施設でも、国が場所を選定して進めるという形に激しい住民の反対の声なども上がってきているわけで、私は、国が前面に出るというやり方をやったといって果たして事態は進行するのか、そういう保証が一体どこにあるのかと思うんですが、その点、いかがでしょうか。
○副大臣(高木陽介君) 逆に言いますと、どこが責任を持ってやればこれが進むのかという問題ですね。先ほどから何度かお話ししている最終処分の問題というのは、これは、これから再稼働をしたときの出てくる使用済核燃料の問題だけではなくて、今現在ある問題もしっかりと解決しなければいけないと思います。この十数年の間にこれが進まなかった、これはこれで国としても大変反省をしておりますし、だからこそ国がしっかりその有望地の選定について責任を持っていこうと。
 しかしながら、ここは、国が決めればそれでオーケーですよという話ではなくて、しっかりと都道府県そして市町村と合意を得ながらやっていくというのが何よりも大切であると、このように考えております。
○井上哲士君 今多くの国民は、あの三・一一事故を受けて、それまで安全神話をばらまいてきた国の姿勢そのものに様々な不信を抱いているからいろんな問題が起きているわけですね。そして、今新たな安全神話という形で再稼働が進められる。そして、福島原発の汚染水も完全にコントロールされていると、こういう事実と全く違うようなことを世界に発信する、こういうことに私は国民は不信を持っていると思うんです。
 おっしゃるように、現実にある、今ある使用済核燃料の問題については国民的な議論と英知を集めて処分をすることが必要ですけれども、そうだからこそ、そういう今の国の姿勢を改めるということが私は前提として必要だと思いますけれども、一方でどんどんどんどんそっちは進めるということをやっている。結局この議論も、特に昨年、一昨年の暮れ頃から、自民党の元総理も含めてこの問題が大きな指摘をされるという中で、何か、国が前面に出ればこの問題は解決するかのような、そういうことを振りまく中で再稼働議論が進めてこられた。私は、これ自体がまやかしだと思うんですね。もし本当に国民的な議論をして解決をすることであれば、そこの国の姿勢そのものを、今の再稼働の姿勢そのものを改めることが必要だと思いますが、その点、最後、いかがでしょうか。
○副大臣(高木陽介君) まず、科学というのは事実に基づいて行われるものだと思うんですね。安全と安心の考え方というのがあると思います。そういった意味では、いわゆる第三者である規制委員会がしっかりとその科学的知見に基づいて一つ一つ判断をしていただいていると。
 そういった中で、ただ、あの福島の原発事故以来、やはり原子力に対する不安というのがあるのは確かだと思います。そういった部分で、その事実をしっかりと認識をしていただく。その安全というものに対する認識も持っていただくんですが、その安全が安心につながるかどうかというところで、先ほど御指摘されているように国がなかなか信頼を得ていないという、こういう指摘がございました。だからこそ、この部分については国は謙虚になりながら、そしてその事実を丁寧に説明をしながら、そしてこの安心というものを持っていただくような努力をしてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 時間ですので終わります。

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