国会質問議事録

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予算委員会


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、チュニジアで邦人を含む人々が殺害をされたテロ事件について、心からお悔やみを申し上げるとともに、許し難い蛮行として糾弾をするものであります。
 その上で、この間、集団的自衛権の行使容認等の閣議決定の具体化の与党協議が行われ、今日取りまとめが合意をされます。総理はこの間、専守防衛、そして平和国家としての日本の歩みは変わるものではないと、こう繰り返してこられました。しかし、この協議と合意を見ますと、閣議決定にもなかったようなことも盛り込まれ、これまでの我が国の在り方を大きく変えるものになっております。
 様々な国民から危惧の声が上がっておりますが、例えば地方新聞を見ますと、愛媛新聞、自衛隊の任務拡大、平和国家の形が崩れていくという社説を掲げました。京都新聞は、自衛隊の任務、拡大の一途を危惧するとの社説を掲げ、首相は国会で専守防衛に何ら変更はないと答えた、だが与党協議の中身はどう見ても専守防衛から程遠いと述べております。総理、こういう指摘をどう受け止められますか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まさに私ども、専守防衛については今後も維持していくことには変わりはありません。これは我が国の防衛の基本的な方針と言ってもいいと思います。
 専守防衛とは、ちなみに、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいうものであります。
 今後とも、憲法第九条の下で許容される武力の行使はあくまでも新三要件に該当する場合に限られており、我が国又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃の発生が前提であり、また他国を防衛すること自体を目的とするものではございません。

○井上哲士君 総理、そういう答弁を繰り返してこられましたが、これに国民が納得しておりません。ですから、例えば最近の世論調査でも、先日の朝日では、自衛隊の海外活動強化に反対、これは過半数であります。毎日新聞、安保法制を今国会で成立させるのには反対、これも過半数であります。
 そこで、今回はこの閣議決定具体化の一つの柱である海外における他国軍の戦争支援の拡大の問題についてお聞きをいたします。まず、周辺事態法の改正です。
 この法律は朝鮮半島有事などを想定をして作られました。法律の第一条は、我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して実施する措置などを定めるものとしております。
 当時、小渕首相が中東やインド洋は想定されないと答弁をして、事実上の地域限定だとされてきました。ところが、与党協議には、政府提案としてこの我が国周辺の地域という言葉をなくすということになっておりますが、なぜなくすんでしょうか。地域的限定はなくなるんでしょうか。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) この周辺事態とは、法律制定時から、事態の性質に着目した概念であると、そして、ある事態が周辺事態に該当するか否かは、軍事的な視点を始めとする様々な観点から見て、我が国の平和及び安全に重要な影響を及ぼすか否かをその時点の状況を総合的に見た上で判断することとなると説明をしてきております。
 こうしたこれまでの政府の考え方を基にいたしまして、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態について、事態の性質に着目した概念であることを明確にするための規定の在り方について検討していきたいと思っておりまして、詳細につきましては、今後与党においても御議論いただきながら、引き続き検討してまいります。

○井上哲士君 事態の性質に着目した概念である、地理的限定はないということなわけですね。
 じゃ、この日本の平和と安全に重要な影響を与える事態というのはどういう事態なんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 先ほど御説明をいたしましたけれども、事態の性質に着目した概念でございまして、こういった状況で我が国の平和及び安全に重要な影響を及ぼすか否か、その時点の状況を総合的に見た上で判断をしてまいることになります。

○井上哲士君 極めて曖昧なんですね。聞いている人は訳分からないですよ。
 ですから、時の多数派である政権が日本の平和と安全に重要な影響を与える事態だと判断をすれば、地域的限定がないということになりますと、地球の裏側だって外国軍の支援に自衛隊を送ることが可能になると、こういうものでありまして、改正というよりも抜本的に私は変えるものだと思います。
 さらに、政府は、日本の平和に直接の関係がなくても、国際社会の平和と安定のためとして、他国軍を支援をする恒久法も作ることとしております。これらの法律で派遣された自衛隊がどんな活動をどこで行うのかという問題です。
 総理に確認をいたしますが、従来、政府は、自衛隊の活動が他国の武力行使と一体化することによって我が国自身が武力の行使を行ったという法的評価を受けるような形態の行為は憲法九条の下では禁止されるとしてきましたけれども、この武力行使一体化論というのは閣議決定でも立場は変わりはないということでよろしいですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) いわゆる武力の行使との一体化論それ自体は前提とした上で、その議論の積み重ねを踏まえ、これまでの自衛隊の活動の実経験、国際連合の集団安全保障措置の実態等を勘案して検討した結果、他国が現に戦闘行為を行っている現場ではない場所で実施する補給、輸送などの支援活動については、支援内容のいかんを問わず、他国の武力の行使と一体化するものではないと判断するに至ったものであります。
 いずれにいたしましても、この武力の行使との一体化論それ自体は前提としているということを申し上げておきたいと、このように思うところでございます。
 今般の安全保障、安保法制の検討においても、他国が現に戦闘行為を行っている現場ではない場所で我が国が必要な支援を実施できるようにするための法整備を進めているところでございます。

○井上哲士君 武力行使一体化論は前提だと、引き続き、こういう答弁でありました。
 果たしてそうなっているのかということでありますが、後方支援というのは前方での戦闘活動に対して武器弾薬や燃料の補給、輸送などを行う軍事活動の一部であります。ですから、基本的に武力行使に含まれるということは国際法上は一般的な解釈です。しかし、政府は、この武力行使を直接行使に狭く限定をして他国軍への後方支援は可能だとしてまいりました。それでも、一方で、イラクやアフガン戦争の際の特別措置法でも、そして周辺事態法でも、他国軍への武器弾薬の提供、それから戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機への給油、これはできないこととされておりました。ところが、今回、政府提案にはこれらの活動が盛り込まれました。
 なぜこれまではできないことができるように、武力行使と一体化論は前提であるにもかかわらず、そうなるんですか。

○国務大臣(中谷元君) 我が国が安全の確保、また国際社会の平和と安定のために活動する他国の軍隊への支援については、安全保障環境の変化等を踏まえて、必要な支援活動を十分に行い得るように検討いたしております。
 そこで、支援活動と憲法との関係については、先般、閣議決定で、いわゆる武力行使の一体化論それ自体は前提とした上で、その議論の積み重ねを踏まえて、これまでの自衛隊の活動の実経験、そして国際連合の集団安全保障措置の実態等を勘案して検討をいたしました結果、他国が現に戦闘行為を行っている現場でない場所で実施する補給、輸送などの支援活動については、支援内容のいかんを問わずに、他国の武力行使と一体化するものではないと判断するに至ったものでございます。

○井上哲士君 いや、全然答えてないんですよ。当時は、非戦闘地域であっても、いいですか、非戦闘地域であっても武器弾薬の補給、そして戦闘発進準備中の航空機への給油はできないとしていたんですよ。それを、今度は地域にかかわらずできるようにしたのはなぜかということを聞いているんです。

○国務大臣(中谷元君) 航空機に対する給油支援、これは安全を確保して行うことが一般的でありまして、仮に戦闘作戦行動に発進中の航空機に対する給油支援であっても、現に戦闘行為を行っている現場においてこの当該活動を行うことは想定をされないために、武力の行使と一体化をするというおそれはないということでございます。

○井上哲士君 ちゃんと答えていただきたい。
 当時はできないと言っていたのが今度できるようになったのは、当時なぜ盛り込まなかったかということを国会でも答弁しているじゃないですか。ちゃんと答えてくださいよ。

○政府参考人(防衛省 防衛政策局 局長 黒江哲郎君) 現行法の制定時におきます事実関係の問題でございますのでお答えいたしますけれども、先生今御指摘の戦闘発進準備中の航空機に対する給油ということにつきましては、当時の整理といたしましては、そのような補給に対するニーズがないという整理がなされたというふうに理解をいたしております。

○井上哲士君 最初からそう答えていただきたいんですが。確かに、当時の国会でニーズがないから盛り込まなかったというふうに説明はされております。しかし、だからといって憲法上の問題がないということではなかったわけですね。(資料提示)
 パネル、準備をいたしましたけれども、この周辺事態法制定当時の大森法制局長官は、こういうふうに一体化問題で答弁をしております。
 今の発進準備中の米軍機への支援でいいますと、武力行使との一体化の問題について延々と議論を重ねたと、要請がないならばもう最後まで議論をし尽くす必要もないじゃないかということになって、憲法上慎重な検討を要する問題であるということまでの共同認識を得て、それ以上の、絶対黒だというところまでの断定はしていないとしながらも、憲法上の適否についての慎重な検討を要する問題であるということを言っているんです。これは上の武器弾薬の提供も一緒であります。
 法制局に聞きますけれども、この大森長官の答弁以降、この問題で政府からどのような検討の要請があって、法制局はどんな検討をしてきたんでしょうか。

○政府特別補佐人(内閣法制局長官 横畠裕介君) この問題につきましては、御指摘のとおり、あるいは大森内閣法制局長官が当時お答えしたとおり、慎重な検討を要する問題であったことは間違いございません。その上で、今般、昨年七月一日の閣議決定に至る過程においてこの問題については検討をいたしました。
 そもそも、他国の武力の行使との一体化の考え方は、我が国が行う他国の軍隊に対する補給、輸送など、それ自体は直接武力の行使を行う活動ではないが、他の者が行う武力の行使への関与の密接性などから、我が国も武力の行使をしたとの法的評価を受ける場合があり得るというものであり、そのような武力の行使と評価される活動を我が国が行うことは憲法九条により許されないという考え方でございますが、それは先ほど総理からも答弁ございましたが、この考え方そのものは変更したものではございません。
 どのような場合がそれに当たるのかという......(発言する者あり)

○井上哲士君 私聞いたのは、どういう検討を行ってきたのか。つまり、今回の閣議決定の変更の議論、その前に十五年間あるわけです、大森さんの答弁から。その間に何か具体的な検討をしたんですかということを聞いているんです。

○政府特別補佐人(横畠裕介君) 今回の閣議決定に至る過程で検討はいたしましたが、それ以前には、ニーズがないという前提でございましたので、具体的な検討には至っておりません。

○井上哲士君 大森答弁以来、昨年の閣議決定の前までの約十五年間、ニーズがないということで政府からの検討の要請も法制局の検討もなかったということなんですよね。にもかかわらず、昨年の閣議決定で憲法上問題なしと結論付けたわけですが、防衛大臣、これで慎重な検討がなされたと言えるんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 武器弾薬でございますが、以前、テロ対策特措法案を作りましたときに、私、防衛庁長官をしておりまして、そのときの答弁によりますと、「米側からのニーズがなかったからでございまして、憲法上それができないというからではございません。」と、憲法上ではないという答弁をいたしております。

○井上哲士君 それは分かっているんです。
 できないとも言っていませんけれども、できるとも言っていない。慎重な検討を要する問題だと。しかし、これを十五年間やっていなかったんですよ。だから、いかに昨年の閣議決定が結論ありきで、これまでの国会の憲法に関する政府答弁の積み重ねを乱暴に覆したものかということ、私は改めて明らかになったと思うんですね。
 その上で聞きますが、今回、弾薬の提供や発進準備中の給油を盛り込んだということは、そういうニーズがあったということなんですか。それはどういうニーズでしょうか。

○委員長(岸宏一君) 黒江防衛政策局長。(発言する者あり)じゃ、中谷防衛大臣。

○国務大臣(中谷元君) 御指摘の質問でございますが、何か根拠があるのではないかと思いますが、現在、与党間でこの問題について議論をしていただいておりますけれども、与党においての御議論の内容等については、私、政府の立場でお答えをすることは控えさせていただきます。

○井上哲士君 いや、だって、ニーズがないから今までやってこなかったと。今回提案しているんです、政府が与党協議にね。
 報道では、十六日の自民党内の会合で、日米ガイドラインの改定交渉を担当する防衛省の幹部が、米国とのやり取りで実際にニーズがあったと明かした、国内の自衛隊基地や海上自衛隊の艦船上で米軍を含む他国軍の戦闘機やヘリコプターへの給油、整備が想定とされております。
 米軍からこういうニーズがあったということですね。

○政府参考人(黒江哲郎君) 先生御指摘の、後段の、米軍からそういったニーズがあったかどうかという点についてのお答えでございますけれども、我々、米側に後方支援、どのようなニーズがあるかどうかということにつきましては、現在行っております日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの見直し作業といったもの、あるいは見直し作業に至るまでの様々なこの十五年間以上の日米協力の中で、様々な形でニーズの確認と、あるいはそれに対する日本側の評価といったものを繰り返してきておるところでございます。
 他方、最終的に、今回の安全保障法制の整備の中で、そういったものにつきまして法制化するための、それに十分なニーズがあるかどうかといった判断につきましては、当然のことながら、これは法制を整備して、法案を閣議で決定いただきまして国会に提出するという、そういう段階で確定するものでございますので、現段階でそれについて云々するということは控えたいと思います。

○井上哲士君 事実上、今、ガイドラインの交渉の中でそういうニーズはあったと。それをどうするかということは検討かもしれませんが、ニーズがあったこと自身は事実上認められました。
 この写真は、二〇一三年の六月にアメリカの西海岸で行われた米軍の大規模な統合訓練であるドーン・ブリッツ、二〇一三年に自衛隊として初めて参加をしてきたときのものなんですね。この甲板の八十一という数字は海上自衛隊のヘリ空母「ひゅうが」であります。上に乗っているのは、しかし、アメリカの海兵隊のオスプレイなんですね。なぜかと。このとき初めて日本の艦船でオスプレイの着艦訓練が行われたと。
 これ、大臣、間違いないですね。

○政府参考人(防衛省 運用企画局 局長 深山延暁君) 事実関係でございますので、私からまず御答弁申し上げます。
 自衛隊の統合運用能力及び米軍との共同対処能力の向上を図るために、御指摘のように、平成二十五年六月十日から二十六日までの間、米カリフォルニア州に三自衛隊の部隊や要員を派遣いたしまして、米軍と共同で実動訓練、ドーン・ブリッツを実施いたしました。その中で、現地時間の六月十四日、日本時間十五日でございますけれども、日米間の相互運用性の向上を目的といたしまして、米軍のMV22オスプレイを海上自衛隊の護衛艦「ひゅうが」、そして輸送艦「しもきた」に発着艦させる訓練、また、「ひゅうが」の艦内にオスプレイを収容する訓練を行ったところでございます。

○井上哲士君 初めてのことでありますが、自衛隊の艦船への米軍機の発着艦の訓練がこの時点でもう行われているということが認められました。
 参加した自衛隊幹部が防衛白書に登場しておりますけれども、米軍との相互運用性の向上を目指すとはっきり述べているわけですね。
 ですから、こうやってもう米軍と一体となった共同訓練にどんどん踏み込んで、それをてこにして給油などの米軍のニーズにより応えられるようにするというのが今回の法制度じゃありませんか。日本の艦船から給油を受けた米軍機が戦闘を行うというのは明らかに武力行使と一体となったものと思いますが、防衛大臣、いかがですか。

○国務大臣(中谷元君) 通常のこれ訓練でございます。この訓練は、MVの22オスプレイと海上自衛隊の艦艇間の連絡手順等を確認して今後の幅広い活動における日米間の相互運用性の向上に資するものでございまして、それぞれの能力向上とか、また指揮、連絡、通信とか、そういうものを向上させるものが目的でございます。

○井上哲士君 問いに答えていないんですよ。
 いいですか、こうやって既に日本の艦船にアメリカのオスプレイが発着艦するという訓練が行われている。そして、先ほどありましたように、ガイドラインの議論の中で給油のニーズがアメリカ側からあるということなんですね。そうなるとどうなるのかと。例えば、テロ特措法のときに、インド洋で米艦船に給油をして、その給油した艦船から飛び立った米軍機がアフガニスタンの空爆で多くの市民の命を奪って大問題になりました。
 今度は船を通じてじゃないんですよ。直接戦闘の準備中の航空機に給油をすることを可能にするということになるわけですね。この発進した戦闘機が武力行使をしても、それでも自衛隊の活動は武力行使と一体化しないと、こんなことが相手から通用するのかということですが、もう一回、防衛大臣、いかがですか。

○国務大臣(中谷元君) もう一度説明させていただきますが、我が国が行う支援活動と憲法の関係において、いわゆる武力行使との一体化論、それを前提とした上で、その積み重ねによりまして、これまで自衛隊の活動の実績、そして国際連合の集団的安全保障等を勘案をいたしまして、他国が現に戦闘行為を行っている現場ではない場所で実施する補給、輸送などの支援活動については、支援内容いかん問わずに、他国の武力行使と一体化するものではないと判断をいたしておりまして、お尋ねの航空機に対する給油支援は、安全を確保して行うことは一般的でございます。
 ですから、戦闘作戦行動に発進準備中の航空機に対する給油支援であっても、現に戦闘行為を行っている現場において当該活動を行うことは想定されませんので、武力の行使と一体化するおそれはないということでございます。

○井上哲士君 あのね、海上の空母から発進するところが戦闘現場でないことは当たり前なんですよ。問題は、そこから直接給油を受けた飛行機が戦闘現場で空爆をして、これで武力行使と一体化していないなんということが相手の国に通用するのかということを言っているんですよ。
 アフガンのときにあれだけ問題になったわけですね。あのときは日本が給油をした船から飛び立った飛行機でも問題になったんですよ。今度は直接給油したものが行けるんですよ。それでも武力行使と一体化でないと。勝手に日本政府が整理したって通用しませんよ、そんなことは。
 総理、いかがですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今写真で示していただいている例えばオスプレイが、「ひゅうが」ですか、「ひゅうが」の上に着艦すると、そういう訓練等につきましては、まさに我が国に対する武力攻撃があったときにおいても共同対処するわけでありますから、ふだんからしっかりと共同対処できるような体制を整えていく、これは抑止力の向上につながっていくんだろうと思います。
 同時に、一体化論というのは、これはあくまでも憲法との関係において一体化するかしないかという判断でございまして、先ほど来法制局長官等が答弁しているとおりでございます。

○井上哲士君 これは海外での他国軍隊支援の法制の枠組みの話なんですね。ですから、アフガニスタンとか、そしてイラクのときのように、日本に直接の影響はなくても平和と安定という理由で海外に行って支援をするときの話なんですよ。
 そして、さっき言ったような、日本が直接給油した飛行機が空爆をするということが起こり得ると、それでも一体化にならないということはおよそ通用しないじゃないかということを私は申し上げているんですが、いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今申し上げましたように、どう見えるかということではなくて、あくまでも憲法上一体化、つまり一体化論というのは、これ世界中で取っているのは、ある意味、憲法との関係においてでございますから、日本だけでございます。そもそも一体化するかどうかという議論は世界中どこでも行われていないわけでありまして、これは憲法との関係において、日本が、言わば一体化しないということにおいては武力行使ではないという見解を言わば法制局が取ってきた中において一体化論が議論されているわけでございまして、ですから、海外からどう見えるかということにおける議論ではないということは申し上げておきたいと思いますし、また、国際法上との関係ではない。そもそも、繰り返しになりますが、一体化論というのは、一体化論そのものを取っているのは、憲法との関係があるので、世界中で日本だけであるということについてはまず申し上げておきたい。
 その上において、一体化するかどうかということについては、先ほど来、そもそも大森長官が答弁した段階においてはニーズがなかったということでございます。まさに現在与党において協議がなされているところでございますし、今後法制化する上においてしっかりと協議をしていくことになるんだろうと、このように思います。

○井上哲士君 憲法上の問題も慎重に検討が必要だと言いながら、十五年間やられてこなくて、この間の閣議決定で言わばそれまでの議論を全部ひっくり返して決めたんです。政府が整理をしたからそれができるんだと、こんな乱暴なことはないんですね。
 しかも、そもそも、こういう安保の問題というのはアメリカが何を言っているのかを見ると大体よく分かるんです。今回の法整備は、日米防衛協力指針、ガイドラインの改定と一体のものだと繰り返し答弁をされてきましたが、これに対して、アメリカのカーター国防長官が十八日のアメリカ下院軍事委員会の公聴会でこう発言をしております。ガイドラインの改定は、地域の安定の維持に当たり、日本が米軍を支援をする契機となる、地域と世界を舞台に米国を助ける新たな方法を日本に与えるものになる、大変有益なことだと、アメリカ側からあけすけに述べているわけですね。
 総理、結局、この閣議決定に基づく法整備というのは、カーター国防長官が述べているように、世界を舞台にアメリカの要求にこれまで以上に応えられるように米軍支援の新たな方法を手にすると、これが目的ということじゃないんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) まず、この安全保障法制については様々な分野があるのは御承知のとおりでございます。グレーゾーンであったり、あるいはPKO活動であったり、そしてまた、今議論をさせていただいた後方支援についてであったり、あるいはまた集団的自衛権の一部行使についてであったりするわけでございます。
 集団的自衛権につきましては、まさに三要件がこれは要件でございまして、この要件の中でのみ認められるということでございます。
 そしてまた、後方支援等につきましては、これはまさに、今までもそうでございましたが、世界の平和と安定に寄与する上において、世界の平和と安定に寄与するということは、すなわち我が国のまさに平和と安定にもつながってくるわけでございまして、その中において判断をしていくということになるわけでございます。

○井上哲士君 全く答えていただいておりませんが、アメリカ側は、要するに、自分たちの要望に日本がより応えられるようになると、こういう期待を言っているわけですね。その下で、まさにこれまでの憲法上できないということをやるのが今回の法改正なわけでありますが。
 先ほど、いわゆる戦闘地域と非戦闘地域というものを分けていた従来の法制度から、戦闘現場以外なら支援活動が可能だというふうに閣議決定をしたと、こういうお話がありました。その際に、この間の自衛隊の実経験、それから国連の集団安全保障措置の実態等々を勘案をして判断をすると、先ほど何回か答弁があったわけですが、なぜそんな判断が下せるのかと。自衛隊はこれまで戦闘地域で後方支援活動をしたことがあるんですか、他国軍の。

○国務大臣(中谷元君) これまで自衛隊は、PKO、国連平和維持活動、またイラク人道復興支援活動、そしてインド洋における補給支援活動等、数多く参加してまいりました。
 こうした活動を通じて、政府としては、国連や諸外国の活動の実態等に対する理解、これが深まってきたわけでございまして、このようなことから、先般の閣議決定において、この自衛隊の活動の実体験、国際連合の集団的安全保障措置の実態等を勘案をいたしまして、今回、他国が現に戦闘行為を行っている現場でない場所で実施する補給、輸送など我が国の支援活動について、当該他国の武力の行使と一体化をするものではないという認識を基本として法整備をすることにしたわけでございます。

○井上哲士君 停戦合意が前提であるPKOと戦闘をしている他国軍への支援を同様に論じること自身がおかしいと思うんですね。
 自衛隊は、実は戦闘地域で戦闘中の他国軍の支援をしたことがあります。航空自衛隊によるイラクでの輸送活動は戦闘地域での活動だったと、二〇〇八年の名古屋高裁が判じたわけですね。バグダッド空港は非戦闘地域だとして、この空港を使って武装米兵などの輸送を行ったわけでありますが、その際に攻撃の危険にもさらされました。名古屋高裁は、バグダッドは非戦闘地域ではなくて戦闘地域だったとして、他国軍の武装兵員を空輸するものについては他国による武力行使と一体化した行動であり憲法違反だと、こう断じたわけですね。つまり、政府が非戦闘地域だと言って派遣をした場所であっても、戦闘地域となって武力行使と一体化した行動になったと、なるんだということをあの高裁判決は判示したわけですよ。
 ですから、この判決からいうならば、これまでの自衛隊の活動の実体験から明らかになるのは、非戦闘地域であれば大丈夫ということも通用しないと。ですから、他国軍の支援のための派遣そのものをやめるということになると思うんですね。
 ところが、政府は、戦闘現場以外は可能だとして、他国軍支援の枠組みを大きく広げてしまったと。この判決からいっても、自衛隊の活動の実体験から明らかなのと、今政府がやっていることは全く逆じゃありませんか。

○国務大臣(中谷元君) まず、名古屋のあの訴訟につきまして、このイラク派遣等の違憲確認及び差止めを求める訴えについては不適法なものであると却下しまして、また、損害賠償請求は法的根拠がないとして却下をしておりまして、国側の全面勝訴の判決でございます。
 航空自衛隊の空輸活動が違憲であると判示した部分は、判決の結論を導くのに全く必要のない傍論であると承知をしておりまして、本件は、自衛隊のイラク派遣等が憲法に違反するかどうかを判断するまでもなく却下あるいは破棄され、棄却ですね、棄却されるべきものであったということで、政府は、裁判において自衛隊のイラク派遣等が憲法に反するかどうかについて主張、立証さえする必要がなく、実際にそのような主張等はしておりません。
 そこで、イラクの復興支援のお話でございますが、これは、国際的にはイラクの戦闘は終了して、国連においても、イラクの復興支援、これの活動に対する決議も行われて、目的はイラクの復興支援でありますし、現に自衛隊の活動、サマーワで行いましたけれども、非常に現地の皆さんから喜ばれ、理解され、そして平和をつくってくれたと。また、米軍のバグダッド等におきましても、一応戦闘が終了した段階での国の支援であったというふうに理解しております。

○井上哲士君 高裁判決は事実認定を重ねてああいう判示を下したわけですね。
 現実に非戦闘地域だと言いながらも、そこはまさに戦闘地域であり、戦闘現場と紙一重であったというのは事実なんですよ。ですから、それを逆にうんと広げるというのは全くあってはなりませんし、今度はもう戦場の紙一重の場所で弾薬の補給までするということになるわけでありますから、こうなれば、相手から攻撃を受け、総理はその場合は身を守るために武器の使用はあるという答弁もされていますから、これは応戦すれば戦闘に突入をするということになるわけですね。
 ですから、憲法上、自衛隊の活動が武力行使と一体とならないということは変わらないと言いながら、今やられている法改正は全く逆のものになっておりまして、戦闘行為そのものにも加わるものにもなっております。
 結局、切れ目のない法整備というのは、アメリカの要求に切れ目なく応えて、どこでもどんな戦争でも支援を可能にすると、こういう中身になっているわけでありますから、私は、憲法九条に反する法整備は直ちに中止をして、閣議決定も撤回をするべきだと申し上げまして、質問を終わります。

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