国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2015年・189通常国会 の中の 外交防衛委員会

外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、まず自衛官募集の問題についてお聞きいたします。
 二〇一三年の十二月に閣議決定された新しい防衛大綱に、初めて自衛官募集に関する内容が盛り込まれました。社会の少子化、高学歴化に伴う募集環境の悪化を踏まえ、多様な募集施策を推進するとしております。その下で、昨年の七月の一日には、集団的自衛権行使容認等の閣議決定が行われました。この日が解禁日だったということで、同日、全国でこの適齢者である高校三年生に自衛官の募集のダイレクトメールが発送されたと。時が時だけに、赤紙が来たかと思ったとか、なぜうちの子の個人情報を防衛省が知っているのかとか、こういう声が全国で上がったのは報道されたとおりであります。
 自衛隊は、このダイレクトメールの送付などの自衛官募集活動のために、市町村から自衛官の適齢者情報の提供を受けております。その形態は二つ、一つは住民基本台帳の閲覧によるもの、それから紙媒体等の名簿の提出によるものということだと思いますが、住民基本台帳の閲覧により提供している市町村の数及びそのうち抽出した名簿で行われている数、それから、紙媒体等で名簿を提出している市町村の数及びそのうち電子データで提出している数はそれぞれどうなっているでしょうか。

○政府参考人(防衛省 人事教育局 局長 真部朗君) まず、各四情報の提供件数、今委員お尋ねのあった件でございますが、全部で、これは二十七年の二月一日現在でございますが、住民基本台帳の閲覧によりますのが千八十八件でございます。それから、紙媒体等での資料の提供を受けておりますのが五百八十一件でございます。

○井上哲士君 閲覧のうちに抽出でやっているものは何件ですか。

○政府参考人(真部朗君) 抽出、いわゆる抽出閲覧の件数につきましては、同じく今年の二月一日の時点で七百五件でございます。

○井上哲士君 この閲覧の場合、それからその名簿の提供という場合ですね、それぞれの法的な根拠はどうなっているのでしょうか。

○政府参考人(真部朗君) まず、資料の提供を受けていると、これにつきましては、直接の根拠といたしましては、自衛隊法の施行令の第百二十条でございます。それから、閲覧に関しましては、自衛隊法の、自衛隊法におきましては第二十九条、それから第三十五条でございます。

○井上哲士君 自衛隊法に基づいて、そして市町村は住民基本台帳法で対応していると、こういうことでよろしいですかね。

○政府参考人(真部朗君) 基本的には今おっしゃったとおりでございます。

○井上哲士君 個人情報を守るという今日の流れ、そして法律の趣旨等からいいますと、私はこの根拠というのは大変疑義がありますし、そういう声があります。同時に、法律そのものに反することが行われております。
 昨年、自衛隊の新潟地方協力本部が、中学生の情報に関する資料提出を市町村に求めました。しかし、高等工科学校生というのは自衛隊員という扱いでもうなくなっているわけですね。ですから、自衛隊法に基づく資料提出を求めることは本来できないはずであります。
 それから、自衛隊の滋賀地方協力本部が県内の中学生本人に自衛隊高等工科学校の募集のダイレクトメール五百一通を送りました。これも大きな問題になりましたが、中学生の場合は本人ではなくて家庭に送るというふうにしている防衛事務次官の通達にもこれ反しているわけですね。
 ほかにこういう同様の違反の事例はなかったのか、なぜこういう違反が起きたのか、再発防止策はどうするのか、大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(真部朗君) 今委員おっしゃったように、中学生に直接ダイレクトメールを送ったその滋賀の例、あるいは中学生の関する情報を市町村に求めた件と、これについてはいずれも適切でない例でございまして、まさにその点につきましては本当に私ども深く反省しているところでございます。
 それで、実際に、原因あるいは理由ということにつきましては、私どもの認識では、基本的には自衛官等に関する募集事務の実施部署、実際の実施いたします各地方協力本部でございますけど、そういうところで根拠となる規則、根拠となる法令等の理解が徹底されていなかったことではないかというふうに考えておりまして、したがって、対策といたしまして、自衛官等の募集事務を行う部署へのそういった法令関係の教育を徹底しまして、関係規則類の周知徹底を図る、それによって再発を防止してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○井上哲士君 ほかに同様の違反例はなかったのかということをお答えいただいておりません。
 それから、今そういう関係部署に徹底を図ると言われていますけれども、そういう会議はどういう範囲で、どこが参加してやっているのか、今回の問題についてはどこで徹底をされたんでしょうか。二点、お答えください。

○政府参考人(真部朗君) まず、今同様の件はなかったかということにつきましては、中学生本人にダイレクトメールを送ったという件につきましては、この滋賀の例だけだというふうに、私ども調べたところでは滋賀の例しかなかったというふうに認識しております。
 それから、市町村に対して中学生に係る資料の提出を求めたと、この件につきましては、残念ながら二十一個の、新潟地本を含め全部で二十一個の地方協力本部からそのようなことを行ったという事例を確認したところでございます。

○井上哲士君 二十一の地方本部でやっていたと、驚くべき数でありまして、報道では新潟の件しか、報道というよりも、これ質問主意書に答弁でこの新潟の件しか認めていなかったのが、今二十一もあったと、私、大変驚いております。
 それで、先ほどの問いですけれども、そういう担当者に対する会議はどのぐらい、どういう参加者でやっているのか、この件についてはどういう形で徹底をしたのか、お答えください。

○政府参考人(真部朗君) 私どもその点を認識いたした後に、地方協力本部からの募集担当者の全国的な会議、そういった場におきまして、こういった事例を示しまして、こういうことが起こらないようにということで周知徹底を図るなどしたところでございます。

○井上哲士君 まさに法律そのものに反するようなことが行われているということでありますが、確認しておきますが、この適齢者情報の紙媒体等での資料の提出について、これ自衛隊からはあくまで依頼であって、これに応じるかどうかは市町村の判断だということが、過去、繰り返し答弁をされてきました。例えば、二〇〇三年四月二十三日、これは当時の石破防衛庁長官の答弁ですけれども、私どもは依頼をしているわけでございますし、そのことについて答えられないということであれば、それはそれで仕方がないとしているわけですけれども、この点に変わりはないでしょうか。
 これ大臣の元々答弁ですから、大臣お答えください。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) 防衛省といたしましては、募集対象者の情報についての資料の提出をいただくことは自衛官及び自衛官候補生の募集事務の円滑な遂行のために必要であることから、資料の提出の根拠となる法令等を丁寧に説明した上で、地方公共団体が実施し得る可能な範囲での協力をお願いをいたしております。
 こうした従来の防衛省の姿勢には、現在も変わりはありません。

○井上哲士君 市町村が可能な範囲で答えるということに変わりはないというお話でありました。
 もう一点、本人やその親などから、適齢者情報名簿から自分の名前ないしは子供の名前を削除してほしいと、こういう求めがあった場合、これもやはり当時の石破長官が、それは自治体の判断だと答弁をされております。この点も変わりないかということと、それから、本人ないしは親御さんなどが防衛省に対して自分や子供へのダイレクトメールの発送はしないでくれと、こう求めた場合はどういう対応をされるんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 募集対象者本人等から市町村に対して、防衛省に提出する資料に当該資料を記載しないでもらいたいとの申出があった場合の対応は当該市町村が判断すると考えますが、防衛省に対して募集に係るダイレクトメールを送付しないでもらいたい等の申出があった場合にはその意向を尊重して対応いたします。

○井上哲士君 この問題で、防衛大臣の地元である高知県の自衛隊の中央本部の対応について更にお聞きいたします。
 高知市ではこれまで自衛官の適格者情報の提供は住民基本台帳の閲覧で対応をしてまいりました。ところが昨年、自衛隊の高知地本が高知市に対して、書面で資料を提出するよう強く求めました。お手元に資料を配付しておりますけれども、昨年の十二月の二十五日に、自衛隊の高知地本募集課長の名前で高知市に対して送付された文書であります。
 この文書の「二 現状の問題点」というところで、「法定受託事務として各市町村長がその一部を行うとされている四情報の提供が自治体判断により執行されていない。代替手段として、住民基本台帳法第十一条に基づく閲覧行為として扱われている現状は、行政の無駄を削減し、効率的な事業の実施を必要とする昨今の行政への期待に反している。」と、こう書いているわけですね。
 地方自治体は、個人情報を勝手に使ってほしくないとかいろんな住民の声がある中で、その期待にも応えていろんな判断をしているわけですね。それを、まるで地方自治体がまともな行政を行っていないかのように述べた上で、「今年度、従来の方針を変更し強く適齢者情報の提供を求める」という内容の文書になっております。
 この文書については一月十日の地元紙でも大きく報道されまして、高知市は法定受託事務を果たしていないなどと指摘されたことはないと、なぜ今になってこんな要請が出るのかとコメントをし、困惑をしているということが紹介をされておりますし、高知市の三月市議会でも問題となっております。
 この文書の関わる事実経過及びこの文書に対する防衛省の見解及び対応について、大臣、いかがでしょうか。

○政府参考人(真部朗君) 今委員御指摘の資料につきましては、経緯といたしましては、昨年の十二月に高知地方協力本部の募集課長から市の方に提出、手交されたものでございます。
 内容につきましては、今おっしゃったとおり、本来、先ほど申し上げました自衛隊法施行令百二十条の趣旨を踏まえて、市町村長に対しては関係の情報について資料の提出を依頼すべきものでございまして、それを越えてそういった内容の、今御紹介あったような内容の文書を出して要求するということは適切でないということでございます。
 この防衛省の依頼と、防衛省からの、実際にその行為につきましては、その後日でございますけれども、これ、三月、今月でございますけれども、高知の地方協力本部長が高知市長に対しまして、防衛省の従来の立場を踏まえずに不適切に資料提出を要請したことについて謝罪をいたしているところでございます。これ、防衛省としても全くそのとおりということでございます。

○井上哲士君 不適切であり、謝罪をしたと、それは当然だと思うんですね。
 私は、本来依頼なのに、強く求めるということを書いた理由の、この(3)のところもまたひどいと思うんですね。「平素から自衛官募集等に関する強固な信頼関係を確立し、地元の地理に精通した高知市出身隊員を多く輩出することは、南海トラフ地震等発生時の円滑な震災対応基盤の構築に繋がる。」と、こう書いているわけです。
 高知市の市民協働部長は、平和新聞の取材に答えて、災害発生時に自衛隊が対応するのは当然のことで、それと自衛官募集のための名簿提出を一緒にするのはどうかと、まさかそれを盾にしてということではないと思うがという不快感を示しております。私も本当にそう思うわけでありますが、まさか大臣、こういう災害発生時の対応と名簿提出ということを盾に取るというふうな考えをお持ちではないでしょうね。

○国務大臣(中谷元君) 自衛官等の募集活動に当たっては、国民の皆様及び地方公共団体の御理解があって成り立つものでございます。このため、自衛隊の活動などについて説明することは重要であると考えておりますが、しかし、高知地本募集課長が高知市に提出した文書は自衛官及び自衛官候補生の募集に必要な募集対象者の氏名等の情報に係る資料の提出の必要性について説明するためのものであったことから、御指摘の点につきましては当該説明に直接無関係な内容であり、不適切であったと考えております。

○井上哲士君 もう一回これ大臣に確認いたしますが、この文書は、法定受託事務が執行されていない、昨今の行政への期待に反しているなど、まるで市町村が怠慢だと言わんばかりの中身の文面になっております。この文書が防衛省の従来の立場を踏まえていないということでありますが、つまり、防衛省としては、現在の市町村の対応が適切でないとは考えていないと、不適切だとは考えていないと、こういうことでよろしいですか。

○国務大臣(中谷元君) 自衛官及び候補生の募集は、自衛隊の人的基盤を支えるとともに、組織の精強性を維持するという観点から極めて重要でございまして、地域社会との深いつながりを有する地方公共団体を通じて確実に行うということも必要不可欠でございます。
 防衛省としましては、募集対象者の情報についての資料の提出をいただくことは、自衛官及び自衛官候補生の募集事務の円滑な遂行のために必要であると考えており、地方公共団体から一定の理解を得ているものと考えております。引き続き、資料の提出の根拠となる法令等を丁寧に説明をいたしまして、地方公共団体が実施し得る可能な範囲においての協力をお願いしていきたいと考えております。

○井上哲士君 防衛庁の姿勢は繰り返しなので分かりますが、その結果、今地方自治体が判断をして、可能な限りの対応をしているというこの現状を、防衛省として適正でないとお考えなのかどうかということをお聞きしているんです。

○国務大臣(中谷元君) 基本的には防衛省からの依頼でございまして、今回、高知地本の募集課長が高知市に対してそういった防衛省の従来の立場を踏まえずに不適切な要請を行ったということは誠に遺憾に思いまして、今後改めて地本に対する指導を徹底してまいりたいと思っております。

○井上哲士君 つまり、現状が適正でないという認識ではないということで、確認しますが、よろしいですか。

○国務大臣(中谷元君) はい。今回は不適切であったということで、今後指導を徹底してまいりたいと思っております。

○井上哲士君 なぜ防衛省のそういう立場と違うこういう文書が現場の課長から発出をされたのかと。ちょっと組織的とか考えられないかと思うんですが、これはなぜなんでしょうか。

○政府参考人(真部朗君) 先ほどの御答弁と少し重なるかもしれませんけれども、私どもはその現場における関係法令、関係規則の理解が十分でなかったということが主なその原因ではないかというふうに考えておりまして、繰り返しになりますけれども、そこら辺の理解をまず現場に徹底させていくということが再発防止のために重要なんだというふうに考えているところでございます。

○井上哲士君 担当部署の会議などで徹底するというお話でありましたけれども、そこの中身がどうなのかということなんですね。
 ここ、私、今持っていますのは、この防衛大綱が閣議決定される直前の、二〇一三年の十一月六日に開かれた自衛隊の募集・援護担当者会議に出された説明資料を今、私、手元に持っております。
 この中身を見ますと、新防衛大綱において強化すべき人事機能として、陸上自衛隊の人事業務の現状や強化方向等が示されております。閣議決定前にもかかわらず既に決まったかのような記述になっているわけでありますが、その資料の二十二ページを見て私は驚いたんですが、地方自治体との役割分担による法定受託事務の適正化と、こういう見出しになっているんですね。そして、法定受託事務において自治体に最も期待する自治体からの適齢者情報の提供は約三割にとどまっていることから、今後の協力を拡大するための方策が必要だと、こういうふうに述べております。
 先ほど、防衛省、防衛大臣は、今の市町村の対応について不適正と考えているのかと聞きますと、そうではないというお話だったわけですね。ですから、にもかかわらず、この自衛隊の内部の会議では、現状は不適正だと、こういう認識を全国の担当者に伝えていると。これ、全く反しているんじゃないですか。

○政府参考人(真部朗君) 恐らく、今委員が御紹介いただきました文書、その趣旨につきましては、私どもの、自身の、先ほど大臣からもございました募集のために必要な資料の提出に当たって、資料を提出いただくために関係の法的根拠を丁寧に説明した上で地方公共団体が実施し得る可能な範囲での協力をお願いする、この努力を強化していかなければならないと、そういう趣旨のものというふうに私ども考えているところでございます。

○井上哲士君 適正化が必要だということは、現状が不適正だと、こういうことの裏返しなわけですね。
 先ほど述べましたように、まさに今の協力が三割にとどまっているということを挙げて、不適正だと、現状がですよ、適正化が必要だと、こういう認識を述べられているのが、先ほど来のこの高知の文書が適切でないといったことの答弁と違うと言うんですよ。
 この資料は、適正化の方向性と幾つかの項目を挙げておりますが、その一つに、地本による自治体の働きかけ(あるべき姿の共有)と、こういう項目があるわけですね。ですから、この会議の提起に基づいて高知地本の課長がストレートに対応したということだと思うんですね。適正じゃないから直さなくちゃいけないということで、この法定受託事務が執行されていないと、こういう強い言い方をして市に迫ったと。ですから、防衛大臣がこの間繰り返し歴代答弁している、そういうことと違う中身をこういう会議で認識を徹底をして現場で進めていると、私はこういうことがあってはならないと思うんですが、大臣、地元で起きていることですから、しっかり対応してほしいと思いますが、いかがですか。

○政府参考人(真部朗君) 確かに、今御紹介いただいた文書、表現ぶり等に誤解を招きかねないところがあり得たものかと思います。今後は、いずれにせよ、そういった関係、現場の募集担当者等に対して、誤解を招かないような形で指導をいたしていきたいというふうに考えております。

○井上哲士君 全国の会議で、適正化が必要だと、こういうことが言われたから、それをやらなくちゃいけないということで、私は、現場の課長が、防衛大臣の地元でもあるし、そういう思惑があったかどうかは知りませんけれども、さっき言ったような高知市の文書になったわけですよ。
 ですから、なぜこういう表現が行われているのか、防衛大臣が答弁していることと違うようなことが自治体の内部の会議で徹底されているとすれば重大問題でありますから、これは大臣、きちっと事態を、事実を調査をして対応していただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

○国務大臣(中谷元君) 今回、不適切な要請が行われたことを踏まえまして、改めて地本、協力本部に対する指導、これを徹底してまいりたいと思っております。

○井上哲士君 この会議の資料自身をきちっと取り寄せて間違いを正すということが必要かと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 改めてこの文書を精査をいたします。基本的には依頼に関して、地方公共団体に対して資料の提出の根拠となる法令等を丁寧に説明をして、可能な範囲で協力をお願いをするということが本意でございますので、それを徹底してまいりたいと思っております。

○井上哲士君 そういう大臣の答弁と違うことが自衛隊の担当者の会議でやられているということを私は問題にしているので、ここはきちっと対応していただきたいと、改めて強く求めておきたいと思います。
 その上で、残された時間、集団的自衛権行使の三要件の問題についてお聞きをいたします。
 集団的自衛権の行使は、攻撃を受けている国からの要請があることが前提とされるわけです。外国から集団的自衛権行使の要請があって、日本がこれに応えるか否かを検討する際に、その要請元の国が自衛権行使と主張して行っている武力行使そのものの正当性というものは、日本政府が検討、判断を行うんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 我が国は、憲法上許容される武力行使を行うに当たっては国際法を遵守するということ、これは当然のことであります。そして、その際に、まずは国際法上、集団的自衛権を行使するために課せられている要件、一般的には、武力攻撃を受けた国からの要請又は同意があること、そして他に適当な手段がないこと、そして必要最小限度の実力行使であること、こうした要件を満たす必要があります。そして、こうした国際法上の考え方を踏まえつつ、我が国が武力行使を行うか否かについては、あくまでも新三要件を満たすか否かによることになります。
 しかし、いずれにしましても、国際法に従っていない国を支援することはあり得ません。ですから、仮に、ある国家が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力の行使を行っているような場合、そういった国を支援することはあり得ないと考えております。

○井上哲士君 つまり、相手国、また要請国の武力行使の正当性については、三要件に合致するかどうかの前に判断をすると、こういうことでよろしいんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 前か後かは分かりませんが、いずれにせよ、先ほど申し上げました国際法上の要件、集団自衛権の要件、そして我が国の新三要件、そして、何よりも国際法を遵守していない国を支援することはあり得ません。正当な自衛権を行使しているかということは、これはしっかり判断しなければならないと考えます。

○井上哲士君 これまでいろんな、周辺事態法であるとか様々な自衛隊の後方支援の議論に関わって、同盟国であるアメリカが国際法違反を行うことは想定されないと、こういうような答弁も多々ありました。
 ただ、実際、アメリカ自身が、イラク戦争は間違っていたと、こういうことをブッシュ大統領自身が言っているわけでありますし、今回は、アメリカ以外の密接な関係のある国の場合でも集団的自衛権行使は可能と、こうしているわけですね。ですから、その武力行使の正当性というものの判断を必ずする必要があると思うんですが、そうしますと、例えば要請国の行った武力行使が先制攻撃であって、それによって反撃を受けた場合、この場合は、先制攻撃は国際法上違反でありますから、日本は集団的自衛権の行使をしないと、こういうことでよろしいんでしょうか。

○政府参考人(外務省 総合外交政策局 審議官 山上信吾君) 委員御質問の件でございますが、国連憲章上は、自衛権の発動が認められるのは武力攻撃が発生した場合であるということが明確に規定されております。したがいまして、単に武力攻撃のおそれや脅威があるだけでは自衛権の発動は認められません。よりまして、いわゆる先制攻撃や予防戦争などが国際法上認められないということは、従来から政府として申し上げているとおりでございます。

○井上哲士君 いや、認められないけれどもやっているわけじゃないですか、多々アメリカは。
 じゃ、更に聞きますが、アフガニスタンに対する攻撃は、これは対テロ戦争だということでアメリカはやったわけですね。NATOは集団的自衛権行使ということで参加をしたわけでありますが、こういう対テロ戦争、自衛権の発動だと言ってきた場合に、日本はそれを正当のものとして考えるということでいいんでしょうか。

○政府参考人(山上信吾君) 個別具体の事情にどのように判断するかというのは、その際の国際情勢とか、攻撃国の意図とか、攻撃の態様等々、もろもろの事情を勘案して判断する必要がございますので、ここで一概に断定するわけにはいきませんが、いずれにしても、先ほど申し上げましたように、武力攻撃の存在というものが自衛権の発動の前提になるという考えに立って、国際法上認められない行為を我が国として支援することはないということでございます。

○井上哲士君 それをどう担保していくのかなどなど、更に今後聞いていきたいと思いますが。
 日本が集団的自衛権の行使をする場合に、現に自国が攻撃を受けている、それを排除するための作戦を行っているところに後から日本が入っていくということが基本的ケースだと思うんですが、その際、日本の自衛隊はそういう作戦行動の指揮下に入るということになるんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 先般の閣議決定におきましても、憲法九条の下で許容されるのはあくまでも国民の命と幸せな暮らしを守るための必要最小限度の自衛の措置のみでございます。海外で我が国の安全と無関係な戦争に参加することは断じてありません。
 我が国に対する武力攻撃に際して日米が共同対処する場合について言えば、我が国は従来から適時適切な形で種々の調整を行いつつ、日米がそれぞれの指揮系統に従って行動することとしておりまして、自衛隊が米軍の指揮下に入るということは想定しておりません。
 この新三要件が満たした場合に、我が国が集団的自衛権を行使する際にも、我が国が主体的に判断して行動すべきことであるから、同様に、自衛隊が外国の指揮下に入るということは想定していません。

○井上哲士君 そうしますと、今出ました第三要件の必要最小限に関わってくるわけですけど、集団的自衛権行使の際のこの必要最小限というのは、他国に対する武力行使を排除するための必要最小限ではなくて、我が国の存立が脅かされ、根底から覆される明白な危険に至っている武力攻撃を排除する上での必要最小限だと、こういうことでよろしいですか。

○国務大臣(中谷元君) 第三要件に言う必要最小限度というのは、我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される原因をつくり出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るための必要最小限度を意味いたします。それは、武力攻撃の規模、態様を始めとする具体的な状況に応じて判断することができると考えております。

○井上哲士君 そうしますと、その必要最小限は日本政府が判断をするということでよろしいですね。

○国務大臣(中谷元君) はい。もちろん我が国が主体でございますので、我が国が判断するということです。

○井上哲士君 しかし、一旦戦闘に一緒に加わった場合にそういう判断が可能なんだろうかと。そもそも他国に対する武力攻撃が行われておりまして、これを排除する作戦が行われていると、そのうちに、じゃ、この作戦は日本の存立を脅かす武力行使を排除する作戦で、こっちはその国に対する武力行使のみを排除する作戦だというような切り分けが実際の現場でできるんでしょうか。どうやってやるんですか。

○国務大臣(中谷元君) 新三要件の第三要件の必要最小限度は、我が国の存立が脅かされて、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される原因をつくり出している、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃を排除し、我が国の存立を全うし、国を守るための必要最小限度を意味しておりまして、その具体的な限度というのは武力攻撃の規模、態様を始めとする具体的な状況に応じて判断すべきであって、一概に述べることは困難ですが、いずれにせよ、個々の戦闘行為について逐一必要最小限度であるか否かを判断するものではございません。
 なお、実際に我が国が武力行使を行う場合には、現実に発生した事態の個別具体的な状況に即して、全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することとなりますが、そのために必要な情報については外交ルートや防衛当局間における情報交換その他の様々なチャンネルなどを通じて得ることが可能であると考えております。

○井上哲士君 法理論的にはそういうことなんだと思うんですよ。それがしかし、現場に行ったときに、この攻撃は日本の存立を脅かす事態だと、こっちの攻撃はそうではないというような切り分けが果たして現実の問題としてできるのか。そして、そういう判断をする上では、武力攻撃を受けている国が全局を当然見ているわけでありますから、そこからの情報ということになってくるわけでありますが、その国がわざわざこの部分は日本の存立を脅かすようなことですみたいな情報を出してくるのか。私は極めて非現実的だと思うんですけれども、大臣、そう思われませんかね。

○国務大臣(中谷元君) あくまでも主体は、我が国が判断をいたします。現実に発生した事態の個別具体的な状況に即しまして、全ての情報を総合して客観的、合理的に判断をすると。そのために必要な情報については様々なルートを通じて得て、適切にしっかりと判断をすることになります。

○井上哲士君 今日、午前中には予算委員会の公聴会もありまして、柳澤さんが来られておりましたけれども、現実にそういう作戦行動が行われるときに、その指揮下に入らない日本の自衛隊が入っていくということが極めて危険であり、かつ問題が多いんじゃないかということであるとか、そして、そういう切り分けが果たしてできるのかということは甚だ疑問だという声も、お話もありました。私もそう思うわけですね。ですから、結局、足を踏み入れれば歯止めなき方向に入っていくのではないかと、こういう疑念をますます強くいたしました。
 この問題は、更に今後質問していきたいと思います。
 時間ですので、終わります。

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