国会質問議事録

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外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 地球温暖化対策の推進のためにGCFでの途上国支援は必要な課題であり、この法案には賛成であります。
 その上で、日本の温室効果ガスの削減目標に関してお聞きをいたします。
 大臣は衆議院の質疑でも、COP21に向けて、全ての国が参加する公平かつ実効的な国際的枠組みに合意できるよう、積極的に貢献してまいりたいと、こういう答弁をされております。
 ところが、先ほど来議論がありますように、四月三十日に政府が示した二〇三〇年の日本の温室効果ガスの削減目標の要綱案では、二〇一三年比で二六%の削減としております。基準年を、京都議定書の基準年である一九九〇年から、排出が過去二番目に多かった二〇一三年にずらしたもので、九〇年比に換算しますと一八%にとどまっておりますし、〇五年比でも二五・四%というものであります。
 一方、既に主要国は削減目標を示しております。EUは二〇三〇年に九〇年比で四〇%の削減、アメリカは二〇二五年に二〇〇五年比で二六から二八%の削減となっております。これら主要国と比べても日本の目標は低いし、しかも基準年を勝手に変える非常に不誠実なものになっている。これでは大臣の言う積極的な役割どころか国際的な批判を浴びると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 御指摘のように、我が国のこの約束草案につきましては、この四月三十日の中環審そして産構審、この合同専門家会合において、二〇一三年度比二六%削減、そして二〇〇五年度比二五・四%の削減という目標を含む要綱案が示されております。
 まず、二つの基準年を示すということにつきましては、先ほど来審議の中で答弁をさせていただきましたように、我が国の二〇一一年の東日本大震災を始め様々な特殊事情の中で我が国がいかに努力をしているのか、これを示すために必要ではないかと考えているわけですが、この削減目標の数値のみをもって野心度を測ることは適当ではありませんが、例えばこの二〇一三年からの削減率で比較すれば、米国は二〇二五年を目標年としているため単純比較はできないものの、今回の我が国の目標値は米国、EUを上回っており、そして一九九〇年度比において米国と同様の削減率となっております。
 加えて、こうしたそれぞれの野心度を測る上において、こうした基準年を設けて比較する、これも一つ大切でありますが、あわせて、GDP当たり、あるいは一人当たりの排出量等を総合的に勘案する、こういったことも重要なのではないかと考えます。このGDP当たり、あるいは一人当たりの排出量ということを考えますと、我が国としても国際的にも遜色のない野心的な水準であるとも考えております。
 いずれにしましても、今申し上げましたような数字等をしっかりと説明できるように、我が国としまして、しっかりと考え方を整理し、国際社会の理解を求めていきたいと考えております。

○井上哲士君 今、二〇一三年比であれば遜色ないという説明がありました。二〇〇五年比では二五・四%なのになぜ二〇一三年という数字を出したのかと。先ほども議論はあったわけでありますが、今の話なんですね。結局、基準年をずらすことによって、例えばEUなどは、〇五年比だと三五%減ですけれども、着実に減らしていますから、一三年比にしますと二四%減と小さくなってしまうんですね。ですから、基準年を変えることによって日本が国際的に遜色ないかのように見せると。
 これは、国際的なNGOのネットワークの気候行動ネットなどが早速、これはもう奇策だと。つまり、基準年をずらして国際的に遜色ないように見せる奇策であって、こんなことをすれば国際交渉における日本の信用をますます失墜させると、こういう厳しい指摘がされているということを私は指摘をしておきたいと思うんですね。
 さらに、先ほどもありました、二〇五〇年に八〇%削減という閣議決定の遂行が困難になるんではないかと。環境省からは、多様な道筋もあるし決して支障を来すものではないと、こういう答弁があったわけでありますが、しかし環境省自身が、この二〇五〇年に八〇%削減をやろうと思ったら三〇年には〇五年比で二九%の削減が必要だと、こういう主張をしてきたんじゃないですか。なぜ変えたんですか。

○政府参考人(環境省地球環境局 局長 梶原成元君) 今おっしゃられるように、二〇〇五年の数値を単純に二〇五〇年八〇%で引きますと今先生おっしゃられるような数字になるわけでございますけれども、ただ、中長期的な温室効果の削減、八〇%の削減という話になりますと、現時点の技術ではない新たな技術あるいは社会構造の変化といったようなものも想定していく必要があると考えてございます。
 先ほどもちょっと申し上げましたけれども、IPCCにおきましてもいろんなシナリオあるいはいろんなパスがあるというふうに考えています。そういう意味では、今回お示しさせていただいた二〇三〇年度に二〇一三年度比二六%減という目標水準でございますれば、将来にわたりまして、低炭素技術の開発普及、あるいは社会構造の低炭素化などの施策を取っていくことにより、二〇五〇年度までに八〇%削減するという長期目標の達成には支障を来すものではないというふうに考えておるところでございます。

○井上哲士君 使用済核燃料の処理ができると言ってどんどん原発を造っていまだにできていない、そういうことを私は思い出すようなことでありました。結局、将来へのツケ回しなんですね。
 更に問題なのは、温室効果ガスの削減目標と一体である電源構成、エネルギーミックスの問題であります。四月三十日のこの削減目標を示した約束草案は、二〇三〇年の電源構成での原発の比率を二〇から二二%としております。しかし、現在ある原発のうち、廃炉が決まった以外の四十三基全ての原発を仮に再稼働させて原則四十年の運転期間で動かしても、二〇三〇年時点では原発依存度は一五%程度になるわけですね。これを二〇から二二といいますと、結局、老朽原発の延長の運転、そして原発の新増設、リプレース、これなしにはできないんじゃないですか。

○政府参考人(資源エネルギー庁大臣官房審議官 吉野恭司君) 原子力発電につきましては、現在、既存の原発の安全確認が進められているところでございます。一方、新増設、リプレースにつきましては、現段階では想定をしておらないと、もう従来から申し上げているとおりでございますが、現在の政府の方針でございます。
 一方、運転期間の延長につきましては、原子炉等規制法に基づき、事業者が申請した場合において、原子力規制委員会が法令に定められた基準に適合するかどうか審査を行い、その判断が尊重されるものになると承知をしております。さらに、今後、事業者の自主的な安全性向上への取組が着実に進むことなどによりまして、稼働率が向上していく可能性もあると考えております。
 こうした様々な要因がございますので、必ずしも二〇三〇年に御指摘の数字になるということにはならずと、また今回お示しした二〇から二二%という数字は、こうした様々な要因も考慮してお示しをしたものでございます。

○井上哲士君 田中規制委員長は、二十年まで運転延長可能の規定という適用は相当困難ではないかということを規制委員会発足時の会見で言っているんですね。それが何かもう当たり前のように二十年延長のようなことを言われますし、四月二十日の毎日の世論調査でも、高浜原発の再稼働を認めないあの福井地裁の仮処分、これ支持する、評価するとしたのは六七%なんです。ですから、規制委員会が適合基準を認めた原発であっても国民の圧倒的多数は再稼働反対でありますから、私はこの数字は国民合意もない非現実的な想定だと思いますし、そもそも福島事故の教訓や国民世論を踏まえれば原発からの撤退が求められるにもかかわらず、エネルギー基本計画は原発依存度を可能な限り低減させるとしておりましたけれども、もうこの可能な限り低減させるということからもこの二〇から二二%というのは反しているんじゃないですか。

○政府参考人(吉野恭司君) お答えします。
 原子力発電の比率に関してでございますけれども、震災前は約三割でありましたものを今回は二割程度に引き下げるというところでございます。これは、電気料金や安定供給、それから環境負荷低減と、今回議論のありますCO2の問題も総合的に考えた上で原発依存度を最大限低減させたものでございまして、現実的な案として審議会にお示しをし、了承をいただいたものでございます。

○井上哲士君 およそ可能な限り削減ということではないということは指摘しておきたいと思うんですね。
 一方、原発再稼働なしで温室効果ガスはもっと推進できるという重要な研究結果も発表されております。お手元に資料を配っておりますが、国立環境研究所の研究チームが四月八日に、原発再稼働を見込まなくても再生可能エネルギーや省エネ対策の積極導入によって〇五年比で三〇%削減できるという試算を発表しております。
 この試算では、再生エネルギーと省エネの導入規模は中央環境審議会が一二年に示した高位、中位、低位の三通りの想定を基礎としております。そして、原発ゼロの場合と再稼働した場合を、経済成長が高い場合、低い場合と組み合わせて八つのケースを想定して温室効果ガスの削減率を試算をしておりますが、この再生エネルギーと省エネの導入規模が高位というのはどういう内容なんでしょうか。

○政府参考人(梶原成元君) 今御指摘の試算につきましては、国立環境研究所が四月の八日にAIMモデルと言われるもの、アジア太平洋統合モデルと言われるモデルを使いまして温室効果ガスの排出量の新しい試算結果として報告したものでございます。
 この試算に当たりましては、経済モデルでございますから、そのモデルに入力するデータについて様々な前提を置いて計算されたものであります。例えば、今御指摘の高位のケースでございますけれども、将来の低炭素社会の構築あるいは資源エネルギーの高騰というものを見据えまして、初期投資が大きくても社会的効用を勘案して導入をすべきだという技術、製品等につきましては最大限の対策を見込んでそれを後押しをするという大胆な施策を想定したケースだと承知をしております。
 一つの例を申し上げますと、入力条件でありますけれども、炭素価格をトン当たり五万円といったようなものを設定をしております。その結果、高位ケースでは、例えば家庭部門の高効率照明が九五%程度普及、業務部門の建築物の断熱化が七三%程度普及、そして最終エネルギー消費が三億一千百万キロリットルと試算され、電源構成につきましては、再生可能エネルギーが四一%、天然ガスの比率が四六%といったような形の想定になっておるというふうに理解をしてございます。

○井上哲士君 こういう高位の対策を取った場合に、年一・六%高い成長率で、かつ原発稼働率ゼロというケースでも二〇三〇年の温室効果ガスの削減が九〇年比で二四%、〇五年比で三〇%になるというのがこの結果なわけですね。もう政府の案よりはるかに意欲的な中身でありますけれども、これが出されたのが四月の八日、この要綱案を検討してきた専門家会議が四月三十日に開かれ、その前が三月三十日でありますから、結果、これは議論の俎上にのっていないわけですね。
 そこで、外務大臣、お聞きしますけれども、私は、今回の削減目標、そしてそれの一体とエネルギーミックスも国民的な幅広い議論を行って、今お示ししたような専門家の知見を酌み尽くしたととても言えないと思うんですね。こういう重要なものがきちっと議論をされていないと。積極的役割を果たすといえば、こういう試算も十分に検討するなど知見を酌み尽くして、四月三十日の政府案は撤回をしてむしろ早急に抜本的な見直しをするべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。

○委員長(片山さつき君) 岸田外務大臣、お時間過ぎていますので、簡潔にお願いします。

○国務大臣(岸田文雄君) 我が国の約束草案につきましては、環境省、経済産業省が提示した要綱案に対する審議会での議論を踏まえて検討を進め、要綱を取りまとめます。そして、その後、要綱に基づいて政府原案を取りまとめ、パブリックコメントを行った上で地球温暖化対策推進本部で決定し、国連に提出する、こういった予定をしております。
 是非、こうした手続の中で、より多くの国民の意見、また関係者の意見をしっかり取り入れた上でしっかりとした決定を行いたいと考えます。

○井上哲士君 終わります。

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