国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2015年・189通常国会 の中の 外交防衛委員会 

外交防衛委員会 

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 まず、西川参考人にお伺いいたしますが、今回の防衛装備庁の設置は、現在議論されている安保法制などとも一体で考える必要があるというお話もありました。この間、武器輸出政策への転換、それから武器の共同開発の推進等が日本で行われてまいりました。一方で、グローバルホークとかオスプレイとか、アメリカの兵器を調達をするということも今回の予算にも盛り込まれているわけですね。こういう今の日本の武器の輸出や調達、アメリカからの調達という状況について、アメリカの全体の戦略とか、それからアメリカの軍需産業の戦略、思惑との関係でどのように御覧になっているか、まずお願いしたいと思います。

○参考人(獨協大学名誉教授 西川純子君) 先ほどオバマ政権のリバランス政策についてお話しいたしましたけれども、この政策の下では、まさにアジア太平洋の中心に日本を据えようという意図が明らかになっていると思います。それは、経済的な側面、つまりTPPもありますけれども、軍事的な側面でアジア太平洋の基地を確保し、軍事的な同盟を行っていくと。そのために武器を提供するのは専ら現在のところアメリカでありまして、非常に日本に対しては優遇措置がとられているのではないかというふうに思います。
 日本はこれに対応して、武器輸出三原則を廃棄いたしました。これは要するに、今まで、武器の輸出を原則禁止して例外としてこれは認めるということであったわけでありますが、今度は原則として自由と、それは可能であって、こういうことをしてはいけないという禁止条項が付いている。まるでポジとネガほど違うものになっているわけでありまして、私はこの防衛装備移転三原則というのは武器輸出促進法だと思っておりますけれども、それがアメリカの利益にかなっているということは言うまでもないことであろうというふうに思います。
 アメリカが日本にどういう要求を突き付けているかというふうな具体的なことは私には分かりませんけれども、しかし、日本が次々に繰り出してくる政策がアメリカにとって非常に満足のいくものであるのではないかというふうに考えております。

○井上哲士君 ありがとうございます。
 続いて西川参考人にお聞きしますけれども、今回の日米ガイドラインの中には宇宙に関する協力という条項もありましたし、この間、日米一体で宇宙における軍事協力の推進ということがあろうかと思うんですが、こういう宇宙の軍事開発などについて、アメリカの軍需産業の戦略、思惑や、その中で日本の軍需企業の思惑、この辺りをどのように御覧になっているでしょうか。

○参考人(西川純子君) 宇宙の場合には協力と競争と二つの側面があると思います。アメリカにとって日本は、現在のところは協力というか、技術的に日本にいろいろと供与しながら日本の協力を得ていくという形を取ると思いますが、しかし、これから日本の技術がどれだけ進んでアメリカを凌駕しないとは限らないというふうな競争関係も当然あると思います。
 そういう意味では、宇宙の軍事開発というのはこれからの問題でありますけれども、しかし、これからの問題であるだけに、日本はいろいろとこの対策を練っている。この防衛装備庁の設立もこれを当然視野に入れているわけでありまして、しかし、これはまたさっきの話に戻りますが、大変にお金が掛かるということでありまして、その予算のしわ寄せは当然ながら国民の福祉に掛かってくるのではないかというふうに思います。

○井上哲士君 ありがとうございました。
 次に、武蔵参考人にお聞きいたします。
 先ほどのお話の中で、現行の十二条があるから自衛隊の運用に関して何らかの支障が生じているという立法事実は存在しないと、こういう指摘がございました。
 一方、しかし、政府はこの改正をしようとしているわけですが、お書きになったものなど読みますと、冷戦後の情勢とかそして自衛隊の役割の変化などが政府がこういう方向を提案している理由ではないかということも分析されているかと思うんですが、その辺もう少し詳しくお話しいただけないかと思うのと、そのことに対する評価も含めてお願いしたいと思います。

○参考人(同志社大学政策学部教授 武蔵勝宏君) ありがとうございます。
 衆議院の委員会で中谷大臣が、この問題はここ十年ぐらい検討されてきたテーマであるということをおっしゃっていました。そういう意味では、恐らく政府の認識としては、九・一一、そしてイラク派遣、東日本大震災、それ以降の自衛隊の運用に関して、政府としてあるいは与党としての立場でこういう検討をされたのではないのかというふうに思っております。すなわち、それは自衛隊を実際に運用する機会というものが海外の派遣も含めて密度が非常に濃くなってきて、じゃ、そのときに、今までのようなやり方でよかったのかという、そういう教訓といったものが反映されているのではないかと思います。
 ただ、そのような教訓が反映されているのであるならば、十二条というものがあれば、それがどういった点で支障があったかという説明は全くなく、そして改正後も旧十二条の趣旨はそのまま維持されるということであれば、それは実は改正の必要がないわけです。そういう点では、十二条があるから何か運用に問題があるということがないならば、この十二条は存置しておくべきではないか、冷戦以降、今日、自衛隊を運用する時代の中にあっても、この十二条というのは意義がむしろあるのではないかというふうに思っています。

○井上哲士君 同様のほぼ同じ質問を渡部参考人にしたいと思うんですけど、この十二条改正を政府がそういう安全保障情勢の変化であるとか自衛隊の任務の変化などを理由にしていることについて、どのようなお考えを持っていらっしゃるでしょうか。

○参考人(東京財団上席研究員 渡部恒雄君) 一つは、防衛装備庁ができまして、文民の方の防衛大臣に対する補佐というのが、装備庁の長官というのができたということが一つのきっかけではあるとは思っていますが、恐らくこれは両方なんです。
 両方、プラスとマイナスの問題があって、プラスの部分は制服自衛官、軍事知識を持っている人、しかも実際に部隊を動かす部門との意見交換や意見が入ってくる、情報が入ってくるということを、なるべく早く、しかも密度の濃い形で防衛大臣が得られるということは非常に重要なんだろうというふうに考えたと。
 逆にそれが武蔵参考人が今日ちょっと懸念しているというか、ちょっと変わってしまうんじゃないかと言われているところで、これは表と裏であって、常に両方のリスクを考えながらどっちが結果的には最適になるかというところの判断で、昨今の国際情勢、あるいは日本の自衛隊を運用するような機会が非常に増えてきていてという中で、これは今までが全く邪魔しているわけではないんだけれども、でも、もう少しより機能的にするにはどうしたらいいかという中での動きだと私は理解しております。

○井上哲士君 もう一点渡部参考人にお聞きしますが、この十二条改正によって、例えば様々な自衛隊の運用の実施に関する計画の指示を起案するのが運用企画局長から統幕長が担うことになるというお話も武蔵参考人からありました。その辺で統幕が自らに対する指示を起案をするというのはいかがかとか、このバランスが崩れるんじゃないかという提起もあったと思うんですが、その辺はどうお考えでしょうか。

○参考人(渡部恒雄君) 先ほど最初にお話ししたとおり、その細かいところでのバランスというのは常にあるわけですね。どっちに傾いたらいいか、心配かというのはあると思うんですが、結局のところ、大きなところでいうと、制服側と背広側がきちんとした情報交換を持ちながら、かつ、シビリアンである防衛大臣が情報をきちんと持って、しかも、最後にその決定に関して内閣総理大臣もありますし、あるいは国会の決定もあるわけですよね。そういうところでのバランスを考えての話なので、今回の細かいところで余りこだわり過ぎることは、むしろ大きなシビリアンコントロールの方向性等を見失うんではないかということが一つ。
 もう一つは、過去の、日本が平和憲法というか専守防衛という意識の中で今までずっと自衛隊を育てて意識を、制服も文官もそうですけれども、両方ともきちんと育ってきている中で、そんなに極端な市民社会に反するようなことをやるようなプロフェッショナルは育ててきていないという前提があるわけで、実はそこの今までの実績と信頼感というのを考えればより機能を向上する方向に行くということで、私は十分心配するべき点は押さえられていると思っております。

○井上哲士君 ありがとうございました。

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