国会質問議事録

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北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。北朝鮮の核問題を中心に質問をいたします。
 報道によりますと、北朝鮮の池在竜駐中国大使が七月の二十八日に北京の北朝鮮大使館で記者会見を行っております。この中で、一方的に核を凍結、放棄することを話し合う対話には全く関心がないと述べ、六か国協議には当面応じない考えを強調したとされておりますけれども、外務省としてはこういう発言があったということは把握されているでしょうか。事実関係はいかがでしょうか。

○政府参考人(外務省アジア大洋州局参事官 大菅岳史君) お答え申し上げます。
 ただいま委員御指摘のとおり、七月二十八日の記者会見で池在竜駐中国北朝鮮大使が発表しました内容としまして、北朝鮮は既に核保有を憲法に定め、その核攻撃手段は小型化、多様化の段階に入っている、二点目、一方的に核を凍結又は放棄することを論じる対話には関心がない、さらに、北朝鮮の核抑止力は、米国の核の脅威と敵視政策に対し、自主権と生存権を守るための必須の手段であると、こういった趣旨を述べたものと承知しております。

○井上哲士君 今、北朝鮮の発言が御紹介ありました。
 これまで、三回の核実験を通じて、北朝鮮は核保有国であることの既成事実化図ろうとしてまいりました。その最大の理論付けが、核兵器は抑止力という核抑止力論なわけであります。北朝鮮は、この論理で核兵器保有を言わば居直っているわけですね。この池大使の発言はその表れなわけで、断じて認められないと思いますけれども、外務大臣の見解を伺いたいと思います。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 御指摘の発言、北朝鮮による核・ミサイル開発の継続は、まずは日朝平壌宣言にも反します。また六者会合共同声明にも反します。それから国連安保理決議にも反します。こうしたことから、これは我が国としてとても容認することはできません。こうした核・ミサイル開発は地域や国際社会全体の平和と安全に対する脅威でもあると我が国は考えております。
 決して容認できないということで、こうした我が国の姿勢につきましては八月のASEAN地域フォーラム閣僚会合においても述べておりますし、また同日行われました李洙ヨン北朝鮮外相との会談におきましても、拉致問題と併せて核・ミサイル開発等の安全保障問題を取り上げさせていただき、我が国の考え方を伝えた次第であります。

○井上哲士君 今、日朝平壌宣言、六者会合共同声明、そして一連の国連安保理決議にも明らかに違反していると、こういうお話でありました。この六か国協議をめぐっては、七月の三十一日に日米韓三か国の次席代表者会議が東京で開かれたと聞いております。
 会合では最近の北朝鮮情勢に関する意見交換が行われたようでありますけれども、どういうような問題が話し合われて、また確認をされたのか、いかがでしょうか。

○政府参考人(大菅岳史君) お答えを申し上げます。
 御指摘のとおり、七月三十一日、外務省内におきまして日米韓の六者会合の次席代表による会合が開催されました。
 会合では、日米韓それぞれの最近の取組について情報共有をいたしますとともに、今後の対北朝鮮政策について意見交換を行い、日米韓三か国で緊密に連携しつつ対応していくということを確認いたしました。また、北朝鮮が非核化に向けた真剣な意思を表明し、そのための具体的措置をとることが重要であると、こういった認識を共有しました。さらに、北朝鮮に対する圧力を維持するとともに、北朝鮮が意味のある、信頼できる対話に応じるよう様々な努力を続けていくと、こういったことの重要性も確認いたしました。さらに、引き続き、日米韓で緊密に連携し、中国やロシアを始めとする他の関係国とも連携協力しながら、北朝鮮に対し、誠実かつ完全に安保理決議や六者会合共同声明を含む国際的な義務、約束を遵守することを求めていくことが確認されました。
 なお、日本側からは日朝関係の現状につきまして各国に説明をいたしまして、拉致問題の解決に向けた取組について改めて米韓両国から理解と支持を得たところでございます。

○井上哲士君 この北朝鮮の核問題は、まさに六か国協議を軸としながら、やはり国際的な圧力、国際的な世論で包囲をしていくということが何よりも大事だと思います。
 その点で、先ほども少しありましたが、八月六日、マレーシアのクアラルンプールでASEAN地域フォーラムの閣僚会合が開催をされております。岸田大臣、それから城内副大臣も出席をされておりますが、この閣僚会合では北朝鮮問題をめぐって各国から核・ミサイル開発について懸念が示されたと聞いておりますけれども、どういう懸念が各国から示されたんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) このARFの閣僚会合では各国から北朝鮮の核・ミサイル開発に懸念が示されたわけですが、幾つかの国から様々な表現で懸念は表明されました。あわせて、安保理決議や六者会合共同声明の遵守、こうしたことも呼びかけられました。我が国がこの核・ミサイル問題について我が国の立場をしっかり表明するのは当然のことでありますが、それ以外にも幾つかの国から北朝鮮問題につきまして今申し上げましたような懸念が示された次第であります。

○井上哲士君 我が国の立場をしっかり表明するのは当然だというお話がありました。具体的には、岸田大臣はこの閣僚会合でどういう立場を表明されたのか、伺いたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) 私の方からは、日本として、まず、日朝平壌宣言に基づいて拉致、核、ミサイル等の諸懸案の包括的解決を目指す方針には変わりはない、これをまず申し上げました。そして、北朝鮮による核・ミサイル開発の継続は安保理決議に明白に違反をしているということ、そして北朝鮮には地域の緊張を高めるような行動を自制するとともに、安保理決議や六者会合共同声明を誠実かつ完全に実施し、非核化に向けた意味のある対話に応じるよう求める、こうした表明をさせていただきました。

○井上哲士君 そういう各国からも懸念が表明され、そして日本からも今のような立場が表明をされたわけですが、その結果、この閣僚会合では議長国であるマレーシアから議長声明が発出をされております。この議長声明では、北朝鮮問題、どういう内容が確認をされたんでしょうか、御説明いただきたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) 八月のARFにおける議長声明、マレーシア、議長マレーシアによるこの声明の内容ですが、まず一つは、朝鮮半島の平和、安全及び安定の重要性や紛争を平和的に処理する必要性、二つ目として、緊張を緩和され、非生産的な行動を自制するべきとの要請、三つ目として、北朝鮮に対し全ての関連する国連安保理決議における義務の完全な履行の要請、そして四つ目として、二〇〇五年の六者会合共同声明の下のコミットメントを関係者が遵守することの必要性、そして五つ目として、平和的な方法による朝鮮半島の非核化を実現する六者会合の再開に向けた建設的関与を行うための全ての努力、こうした内容が示されております。

○井上哲士君 今ありましたように、紛争を平和的に処理する必要性、そして国連安保理決議の完全履行を北朝鮮を始め関係国に、六者会合共同声明の遵守を求めると、大変重要な中身だと思いますが、大臣のこの議長声明についての受け止めはいかがなものでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 今紹介させていただきましたARFの議長声明の内容ですが、この内容につきましては、まずは国際社会の様々な懸念をしっかり受け止めていると思います。そして、核・ミサイル問題に関する重要な要素はきちっと盛り込まれたものであると認識をしております。
 我が国としましても、こうした議長声明を踏まえながら、引き続き北朝鮮に対しまして、まずは地域の緊張を高めるような行動を自制する、これをしっかり求めなければならないと思っていますし、安保理決議あるいは六者会合声明、こうしたものを誠実かつ完全に実施するよう、国際社会とともに働きかけていきたいと考えます。

○井上哲士君 この議長声明にありますように、この問題は、北朝鮮の問題解決は、国際社会の包囲、とりわけ六か国協議の枠組みの中で平和的、外交的に解決する努力、これが何よりも必要だと思っております。
 一方、今、安保特では安全保障関連法案を審議をしているわけでありますが、専ら軍事的対応を強調するということが、むしろ日本の側から緊張を高めていく、こういうことにもなるという指摘もされているわけでありますが、こういう軍事対軍事の悪循環に陥っていくことは、私はこの北東アジアの平和的な環境を整える上でも、この問題の解決の上でも逆行しかねないと、こう思うわけでありますが、その点、大臣いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 今御議論をお願いしている平和安全法制のこの議論の中においても申し上げさせていただいておりますが、我が国のこの外交安全保障の要諦、最も重視すべきものは、まずは、外交を通じて我が国にとって好ましい国際環境をつくることであると考えています。そして、こうした外交努力を続けながら、万が一の場合に備えて切れ目のない安全保障体制をつくっておかなければならない、これが、この平和安全法制の基本的な考え方であります。
 あわせて、今現在、新たな、容易に国境を越えてくる脅威が出現している中にあって、どの国においても一国で自分たちの国を守ることができない、これが国際社会の常識になっている中にあって、国際社会の平和や安定を守っていくことにしっかり貢献していく、このことが自らの平和と安全にもつながっていく、こういった考え方に基づいて国際社会の平和や安全にもしっかり貢献していく、こういった内容を平和安全法制の中に盛り込ませていただいております。こうした取組をしっかりやることによって、我が国のこのリスクを低減していく、不測の事態が発生しない状況をつくっていく、これが基本的な考え方であると思っています。
 基軸は、外交を通じて好ましい安全保障環境をつくる、そして、その上で我が国において不測の事態が発生しない、しっかりとした取組を進めていく、そして、国民の命や暮らしのリスクを低減していく、こうした基本的な考え方を引き続きしっかり御説明させていただきたいと考えております。

○井上哲士君 私は、とりわけ北東アジア地域の平和ということを考えた場合に、日本に足りないのは軍事力ではなくて、平和的な外交力だと思っております。ここに本当に徹して解決をしていくと、このことが必要だということを重ねて述べまして、質問を終わりたいと思います。

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