国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2015年・189通常国会 の中の 北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会(閉会中審査)

北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会(閉会中審査)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 外交、内政課題が山積みの中で、野党としては臨時国会を求めてまいりました。政府が開かないという下で、国会議員の四分の一以上、参議院では六党会派の連名で憲法五十三条に基づいて召集の要求をしたわけでありますけれども、外交等を理由に開かれていないということはもう極めて遺憾だと言わざるを得ません。一方で、しかし、この懸案事項についてしっかり国会でただすということは私どもの責務でありますから閉中審査を求めたわけでありますが、臨時国会に代わるものではないということは重ねて申し上げておきたいと思います。
 その上で、今日は核問題などを中心に質問をしたいと思います。
 核問題そして拉致問題など包括的な解決の場は六か国協議なわけでありますが、二〇〇八年の十二月を最後に七年間にわたって開かれておりません。その下で、今もありましたように、先週の四日に日米韓の六者会合、首席代表者会合がアメリカ・ワシントンで開催をされました。岸田大臣は、十二月一日の会見で、この協議について、北朝鮮をめぐる様々な情勢について情報交換や意見交換がしっかり行われるだろうと、こういう見通しを述べておられましたが、協議の結果はどうだったのか、まず大臣から概要をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 御指摘のように、十二月四日、ワシントンDCにおきまして、日米韓三か国のこの六者会合、首席代表による会合が開催されました。
 そして、その会合の中身、成果ですが、会合では、最近の各国の取組について情報共有を行い、そして今後の北朝鮮政策について意見交換を行い、そして日米韓三か国で緊密に連携していくこと、これをまず確認いたしました。そして、北朝鮮に対する実効的な圧力を維持し、そして、挑発行為の自制、そして安保理決議、六者会合共同声明等の誠実かつ完全な実施、これを求め、そして中国やロシアとも一層協力しながら北朝鮮が意味ある対話に応じるよう様々な努力を続けていく、こうしたことの重要性を確認したと報告を受けております。
 なお、日本側からは、拉致問題の解決に向けた取組について改めて米韓両国から強い理解と支持を得たという会議でありました。

○井上哲士君 この協議に出席した石兼局長にお聞きいたします。
 協議の後の局長の記者団に対する発言で、今おおむね外務大臣がおっしゃったようなことでありますが、北朝鮮が非核化に向けた意味のある対話に応じるよう日米韓が協力していくことを確認したというふうに述べられております。
 具体的に、この協議では今後の対北朝鮮政策にどういうような意見が交わされたのかと、アメリカ側、韓国側からはどのような認識が示されたんでしょうか。

○政府参考人(外務省アジア大洋州局 局長 石兼公博君) 概要につきましては今大臣から御答弁差し上げたところに尽きるかと存じますが、私ども三者の間では、会合の意見交換を通じまして、やはり対話と圧力、そして圧力につきましては様々な制裁の実効的な実施、それから不拡散体制の確保、そういうことが重要であろうと、それから対話については、今委員からもございましたように、非核化に向けた意味のある対話がなくてはならない、単なる対話のための対話ではなくて意味のある対話を行う、こういうことが重要であろうということが確認されました。
 そして、北朝鮮がそうした非核化に向けた真剣な意思や具体的行動を示してくることが、これが重要で、そうした北朝鮮側の具体的な行動を引き出すために日米韓で一体何ができるだろうかというようなことをいろいろな形で話合いをさせていただいた、こういうことでございます。
 それ以上の詳細については控えたいと存じます。

○井上哲士君 先ほどの概要でもありましたが、この会合では中国やロシアと一層協力するということも確認をしたとのことであります。これ、五月に行われた日米韓のやはり協議でも、中国、ロシアを含む五者の団結について確認されたとされております。
 一方、ロシア、中国は会合には参加をしていないわけですね。両国とは今外交上の様々な懸案の課題もあるわけでありますが、この中国、ロシアとは具体的にどういう個別的な協議などが行われ、その中でどういう対応を両国がしているという認識でしょうか。

○政府参考人(石兼公博君) 御指摘のとおり、中国、ロシアの役割、非常に重要でございます。中国は国連安保理の常任理事国であり、かつ六者会合の議長国を務めておりまして、北朝鮮に対して引き続き大きな影響力を有していると、このように考えております。また、ロシアと北朝鮮の間でも、近年、経済あるいは安全保障分野におきまして政府高官の頻繁な往来が見られます。
 こうした観点から、私どもといたしましては、中国やロシアとも一層協力しながら、北朝鮮が意味のある対話に応じるよう努力を続けていくことが、これが重要だと思っております。このために、政府といたしましては、累次の機会を捉えて中国、ロシアと意見交換を行ってきております。
 例えば、本年九月、日ロ外相会談、あるいは本年十一月の日中韓サミット、こういうところでも、挑発行動に反対し、安保理決議等が遵守されるべきであるということで一致をしております。また、本年九月にはロシア、あるいは十月には中国の六者会合首席代表との間で意見交換を行いまして、北朝鮮問題について協力をしていくということを確認いたしました。
 今後とも、日米、日米韓、この連携をしっかりと維持しながら、中国、ロシアを含む関係国と緊密に連携をしていきたい、このように考えております。

○井上哲士君 北朝鮮の核問題に対応していく上で何よりも大事なことは、いかにこの問題を対話による解決のレールに乗せることだと思います。先ほど来、意味のある対話ということが強調されておりますが、このレールに乗せていくという上で、今の中国そしてロシアを含む国際社会が一致して実効ある制裁にしていくということが大事だと思うんですね。
 その場合、こうした制裁が制裁のための制裁ではなくて、北朝鮮を対話のテーブルに着けると、この目的をはっきり据えたことが大切だと思います。この点が今、日本が努力を傾注しなければならない問題だと考えますけれども、この点、局長の認識、いかがでしょうか。

○政府参考人(石兼公博君) 北朝鮮による核・ミサイル開発の継続というのは、先ほど来申し上げておりますように、安保理決議あるいは六者会合共同声明に明白に違反しております。地域あるいは国際社会の平和と安定、これに、安全に対する脅威でありまして、決して容認できません。政府としては、引き続き、関係国と連携して、北朝鮮に対して挑発行動の自制、安保理決議、六者会合共同声明、これの誠実な、かつ完全な実施を求めていきたいと思っております。
 その上で、対話と圧力、こうした方針の下、安保理決議に基づく制裁措置の着実な実施あるいはその実効化、これを通じまして北朝鮮に対する実効的な圧力を維持する、それとともに、中国やロシアとも一層協力をしながら、北朝鮮が諸懸案解決に向けた意味のある対話に応じるよう様々な努力を続けていきたい、このように考えております。

○井上哲士君 繰り返しますが、やっぱり対話のテーブルに着けるという目的をしっかり据えるということを改めて強調をしたいと思います。
 今回の日米韓の協議に先立って九月末に外相会談が日米韓で行われておりますが、その際に、北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射や核実験は明白な安保理決議違反であり、国際社会の断固たる対応を招くとの認識を共有し、北朝鮮に挑発行為の自制、安保理決議や六者会合共同声明の遵守を強く求めていくことを確認したと、こうされておりますが、このことは当然今回の日米韓の協議でも確認をされたということでよろしいでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 今御指摘の九月二十九日の日米韓外相会合においては、北朝鮮の核・ミサイル開発への懸念を共有し、そして北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射や核実験は明白な安保理決議違反であり、そして北朝鮮に挑発行動の自制、安保理決議や六者会合共同声明の遵守、これを強く求めていくことを確認しました。
 そして、十二月四日の日米韓三か国の六者会合首席代表会合においても、日米韓で緊密に連携し、北朝鮮に対し挑発行動を自制し、安保理決議や六者会合共同声明等を誠実かつ完全に実施することを求めていくことが重要である、このような確認を行っているところであります。

○井上哲士君 この安保理決議の遵守、北朝鮮に求めていくという確認でありますが、一方、二〇〇六年の国連の安保理決議一七一八号はこういうふうに言っております。「朝鮮半島の検証可能な非核化を達成し、かつ、朝鮮半島及び北東アジア地域の平和と安定を維持するため、中国、北朝鮮、日本、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国によって二〇〇五年九月十九日に採択された共同声明を迅速に実施するために、外交努力を強化し、緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控え、かつ、六者会合の早期の再開を促進するというすべての関係国による努力を歓迎し、更に奨励する。」と、こうなっているわけですね。
 この加盟国、とりわけ北朝鮮を含む六か国協議の当事者に対して、緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控えるということを明記しておるわけでありますが、これは二〇〇九年の一八七四決議、二〇一三年の二〇八七決議でも同様の点が明記をされております。この点は、当然、日米韓三国もしっかり遵守をしていくということが大事だと考えますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 御指摘の一連の安保理決議ですが、内容を見ますと、この共通している点としまして、まずは北朝鮮が弾道ミサイル計画並びに全ての核兵器及び既存の核計画を放棄すること、そして北朝鮮が核実験や弾道ミサイル技術を用いた発射を実施すべきではないこと、こうしたことを決定し、そしてこれらの箇所は北朝鮮に法的義務を負わせる、こういった内容であると解しております。
 他方、これらの安保理決議における委員今御指摘になられました箇所、要は北朝鮮に係る緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控える国連加盟国の努力を歓迎し、奨励し、またその必要性を強調する、この部分につきましては、今申し上げたようなより緩やかな文言が使われているという内容になっております。
 いずれにしましても、関係各国はこの決議に盛り込まれた内容に従うべきであると認識をいたします。

○井上哲士君 表現のことを言われましたが、最後には当然遵守すべきだと、こういうお話でありました。
 ところが、海外メディアの報道によりますと、アメリカ海軍の制服組トップのリチャードソン作戦部長が十月十六日にソウルで行った記者会見では、北朝鮮の脅威に対抗するため日米韓は合同で軍事演習を行う必要があると述べて、日米韓の合同軍事演習は北朝鮮に対する抑止力をより強固なものにすると強調しております。こういう主張は、この決議の、緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控えるということとは反するものだと考えますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、北朝鮮による核・ミサイル開発の継続は、この安保理決議あるいは六者会合の共同声明、こうしたものに明白に違反するものであります。にもかかわらず、北朝鮮は繰り返し核実験や弾道ミサイル発射等を実施してきております。これは、地域及び国際社会にとって平和と安全に対する脅威であると認識をしています。
 それに対しまして、まずは外交努力を通じて平和を守ることが重要であり、政府としては、北朝鮮の核・ミサイル問題を平和的に解決すること、これを目指しております。しかし、万一のための備えも重要であります。日米同盟を更に強化するとともに、安全保障分野において日米韓三か国で緊密に連携していくこと、これは大変重要なことであります。
 こうした日米韓三か国で緊密に連携していくことと、これは、今申し上げた日米韓の安全保障分野における協力と、一方でこの安保理決議等に明白に違反した北朝鮮の核・ミサイル開発、これは同列に論じることは適当ではないと考えます。

○井上哲士君 時間なので終わりますが、同列云々という問題ではなくて、やはりこの決議自身は、全てのこの加盟国に対し緊張を悪化させるいかなる行動も差し控えると、こういうふうに述べているわけですね。
 今、外交努力が何よりも必要だと言われました。そのとおりだと思いますが、その一方で、こうした対軍事の悪循環に陥るということは、これはやはりこの決議には反するものだというふうに考えます。そのことを強調しまして、質問を終わります。

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