国会質問議事録

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外交防衛委員会(PKO南スーダン宿営地着弾・思いやり予算)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、お手元に配付しました京都新聞の一昨日、三月三十日付けの記事に関してお聞きいたします。(資料提示)
 この記事では、一面のトップで、南スーダンPKOに派遣をされた陸上自衛隊の宿営地に二〇一三年十二月に着弾した銃弾を陸上自衛隊の福知山駐屯地で展示していると大きく報道をしております。展示された銃弾の写真も掲載をされているわけでありますが、日本隊宿営地に着弾した五・四五ミリ小銃弾、平成二十五年十二月十六日未明と明記をされております。
 これ、防衛省は承知をされていたのか、一体何のために展示をされていたのか、まず事実関係を明らかにしていただきたいと思います。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) 当時、派遣をされていました南スーダン派遣施設隊第五次隊長などからこれまでに事実関係について聞き取りを行ったところによりますと、二〇一三年十二月十六日頃、日本隊宿営地において銃弾一発が落ちていたのを警備担当者が発見をしたものの、隊長及び副隊長に対しては報告をせずに、その約半年後の二〇一四年六月十八日に五次隊がジュバを離れる数日前に警備担当者から同隊長に対して、当時銃弾を拾っていたとして現物とともに報告がありました。当該報告を受けた同隊長は、当該銃弾を後進の隊員教育、また啓発用に持ち帰るべきだと判断をいたしまして、私物品とともに日本に持ち帰り、駐屯地司令を務めることになりました陸上自衛隊福知山駐屯地の資料館、ここに展示をされたものであると承知をいたしております。

○井上哲士君 つまり、現地の隊長は知っていたということですね。そして、福知山の駐屯地も当然把握をした上でこれをやっていたと。
 本省は知っていたんですか。

○国務大臣(中谷元君) 承知をしておりませんでした。

○井上哲士君 私は、こういう宿営地に着弾をしていたということがそういう扱いをされていた、そして、それを隊員の教育のために持ち帰って展示をする、この感覚、どれを見ても極めて異常だと思うんですね。
 しかも、この記事をめぐって様々な報道がありますが、現地ではもう十二月の十五日から大統領派と副大統領派の武力衝突が始まっておりました。この記事では、統合幕僚監部の報道官室の説明として、同日、つまり十六日の午前一時過ぎに首都ジュバにある宿営地で複数の自衛官が銃声を断続的に聞いたとしつつ、隊員の安全や警備上の問題から銃声音の公表は差し控えていたと、こういうふうにしておりますけれども、これは事実でしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 当時の模様でございますが、当時、小野寺防衛大臣でございました。当時、南スーダンの施設隊の第五次隊長から、現地時間の十二月十五日深夜から十六日早朝にかけてジュバ市内で銃撃音が確認されたと、これはテレビ会談で報告を受けておりまして、翌十二月十七日の小野寺防衛大臣の記者会見でもその旨公表いたしているわけでございます。

○井上哲士君 今朝の朝日では、同じ報道官室のコメントが出ておりますけど、南スーダンでは銃声が聞こえることが多く、自衛隊員の安全が脅かされる事態ではないと認識していると、だから公表しなかったと言っているんですよ。もう一個の記事は、隊員の安全上の問題から公表しなかったと。今朝は安全上問題がないから公表しなかった、全く正反対のことを言っているんですね。
 これ、どうなっているんですか。

○国務大臣(中谷元君) 事実、銃撃音が聞こえたという点におきましては報告を、現地から報告を受けまして、その翌日の記者会見で大臣が銃声を確認されたと報告をいたしております。
 報道されているような銃声音の公表は差し控えていたとする統幕の報道官の回答がございましたが、これは適切でなかったと考えております。

○井上哲士君 統幕の報道官という広報上の重要なところが、こういう宿営地で銃砲を聞いたとかという安全に関わる重大な問題で公表の基準が全く違っていたと、そして言うことも違っていると、大臣とやったことも違うと。そして、そもそもこういう着弾したと思われる銃弾を拾って、それを持ち帰った方がいいだろうと許可をした。一体どうなっているのかということになるんですね。
 衆議院の質疑で、この間防衛省から提出された二つの内部文書が議論になりました。陸上自衛隊の研究本部が作成をした南スーダンの派遣部隊に関して二つの教訓要報という文書でありますが、この中で、この十二月の十六日以降、一月五日には宿営地の近傍で発砲があって、自衛隊は全隊員が防弾チョッキと鉄帽、鉄の帽子を着用することにしたと。そして一月八日には、派遣施設隊長が緊急撤収計画も決裁をしてきたと、こういうことも明らかになりました。そして、今回、十二月の十六日に、こういう宿営地に着弾をしていたと。
 こういう事実は、政府がこの間言っていた、南スーダンはおおむね平穏で停戦合意などのPKO五原則は守られていると、こういうことはもう全く成り立たないということを示しているんじゃないですか。いかがですか。

○国務大臣(中谷元君) 十二月の十六日当時の状況につきまして、これは大臣の方から記者会見で、現地の情勢として銃撃音が確認されたと、これは発表をいたしております。
 この銃弾の着弾等の報道等につきましては、聞き取りを行ったわけでございますけれども、当時の隊長が、この事実関係におきまして、現状において、当時、この宿営地におきましては、非常に、相当の厚さの防弾壁、また高さ、こういうものを準備しておりまして、この報告を受けた同隊長は、日本の宿営地の警備上の構造の関係から、この自衛隊の宿営地を直接狙って銃撃を行うということは極めて困難な状況でありまして、深刻な状況でなかったと認識をしたために、この後、拾っていたということを受けた隊長は、深刻な事案ではなかったと認識したために特段の報告を防衛省に行わなかったという報告を受けております。

○井上哲士君 私、宿営地に銃弾が落ちていたと、今いろんな判断があったと言われましたけど、それ自身が問われると思うんですね。
 大臣は、そういう判断を現地でしたこと、そして、これを後進の教育のために持ち帰るということをしたことは正しかったと、それとも間違えたと、どっちなんですか、どうお考えですか。

○国務大臣(中谷元君) この点につきましては、適切でなかったと思っております。しかし、安全であるかどうかという判断につきましては、常に現場において報告を聞きまして当時の防衛省としては判断をしたことでございますし、この隊長も、その事件、そういう事案から半年たって、帰隊する際にこれが報告されたということでありまして、その当時の警備の構造などの関係から、日本隊の宿営地を直接狙って銃撃を行うということは極めて困難な状況でありまして、深刻な事案でなかったと認識するためにこれを防衛省に行わなかった結果でございます。

○井上哲士君 私は、そういう事態が起きながら深刻でないなどとその場で判断をした、そして報告もしなかった、そのことが深刻だと思いますよ。
 この間、ジュバを中心とした地域は平穏が保たれていると大臣繰り返し答弁されまして、常時現場に派遣されている要員から治安状況や安全状況の報告を受けていると繰り返し答弁されてきました。しかし、その報告自体がまともに行われていなかったということなんですよ。そして、この報道官も、事態について、先ほどありましたように、安全のためとか、安全の問題ないからと、全く違う理由を言って公表していなかったという、事実とも違うことを言っていたと。でたらめじゃないですか、これ。
 そして、帰国した部隊が堂々と、こんなものが宿営地に来ましたということを、その弾丸を展示をしていると。こんな危険なところで私たちはやっているんですよと、そういうことを堂々と展示したわけですよね。だから、そもそものPKO五原則の問題であるとか、いろんなことに対して全く認識が上から下まででたらめということを私示していると思うんですよ。
 ですから、現地からの報告、常々受けていると言っていますけれども、これ正確性、信頼性に全く疑問を持たせるんですね。こんな状態でどうして治安が保たれると、大臣、明言できるんですか。

○国務大臣(中谷元君) 状況認識、その都度都度判断するものでございますが、一連の状況を見て、当時の派遣の状況から現地の情勢に対する報告を聞きまして、PKOの五原則、これは崩れたものではなかったと判断をされたわけでありますが、私はこれは適切な判断であったと考えております。
 また、この隊長が、帰隊のときに、半年たってこの報告を受けたわけでございますが、当時隊長はこの宿営地の構造などを考えまして、そういう報告を受けた際に、深刻な事案でなかったと認識したために特に報告を行わずに帰隊をしまして、その展示に及んだわけでございますが、現地の情勢等を隠蔽するような、そのような事実はなかったものだと承知をいたしておりますが、こういった事案等につきまして報告がされなかったということは事実でございますので、そのこと自体は適切さを欠く行為であったと考えますが、全体として見れば、現地の派遣施設隊から適切に現地の情勢に関する報告がなされていたと考えております。

○井上哲士君 なぜ全体として適切と言えるのか、全く今の説明聞いて分からないわけですね。これ、深刻と思わなかったという判断をした、そのこと自体が深刻でありますし、そして、その後の一連のことを見ても本当に深刻な事態ですよ。これで現地で本当に安全が守られるのか、こういうPKOに新しい任務を付して、一体、隊員の安全も、そしてまた、今度は場合によっては現地の人を殺傷するということもあり得るわけでありますから、極めて重大なことが起きていると私は思います。
 改めて事実関係をきちんと整理をし、委員会に報告をいただきたいと思いますが、協議をお願いいたします。

○委員長(佐藤正久君) 本件につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきます。

○井上哲士君 その上で、思いやり予算の問題について聞きます。
 昨年十一月の財政制度等審議会の建議でも、先ほどもありましたように、厳しい財政状況の下、財政健全化を進める中で、在日米軍駐留経費負担についても聖域視することなく見直しを行い、その縮減を図る必要があると指摘をしておりますが、にもかかわらず、実際に合意された特別協定は、五年間の経費の総額が百三十三億円も増えて年平均千八百九十三億円となりました。
 なぜこういうような結果になったんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) まず、今般のこのHNSの規模の評価に当たりましては、やはり試算のベースとなる賃金水準が同じである今年度、平成二十七年度の予算と比較するのが適当であると考えます。そして、その同じ試算のベースに基づいて比較をいたしますと、おおむね今般のHNSは今年度の予算額と同水準であると認識をしています。ただ、同水準であるこの水準も、ピーク時、平成十一年度と比較いたしますと約三〇%減の水準であると認識をしております。
 全体の額の評価については今申し上げたとおりでありますが、あわせて、今回の協議に当たりましては、厳しい財政状況を踏まえること、これは当然でありますが、安全保障環境の厳しさ、さらには在日米軍の役割の増大、そして在日米軍の円滑かつ効果的な運用を支えているこのHNSの重要性、こういったものをしっかりと認識し、何よりも国民の理解を得るべく、めり張りのある協議を行ったということであります。
 MLCは増やしましたが、この労働者は減らす、あるいは経過措置も段階的に廃止する、そして光熱水料等につきましても負担割合を下げる、こうした内容においてめり張りを付けた次第であります。
 量においても、また質においても、米側と真剣な協議を行った結果が今回のこの負担の規模になったと認識をしております。

○井上哲士君 実際にどれだけ払うかが問題でありますから、五年間では百三十三億円増えるんですね。
   〔委員長退席、理事塚田一郎君着席〕
 そして、ピーク時から減っていると言われましたが、これ財政審の中でも、この米軍再編経費はFIPと同様の効果が認められると、ですから、合わせると、在日米軍の駐留等に係る我が国の経費負担は急激に増加していると、こういう指摘をしております。
 今、めり張りを付けた、IHAは減らしたと言われました。娯楽施設で働く労働者の労務費負担、これは娯楽施設自身を負担することも含めてこの間問題になってきたわけですから、これは私、当然だと思うんですね。しかし、財政審は、このIHAとMLCなど職種を問わずに問題をしています。こう指摘しているんですね。基地労働者の基本給は本来地位協定に基づいて米軍が負担すべきものであり、廃止も含めて縮減を図る必要があると、IHA、MLCを区別せずにこう指摘をしております。にもかかわらず、MLCは増加をし、全体でも特別協定締結以来初めて増加をしたわけで、この建議とは全く逆行しているわけですね。
 主張すべきことは主張していると、こう言われますが、米国に対して、本来労務費というのは米軍が負担すべきものなんだと、こういうことは正面から主張されたんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、基本的な考え方としましては、この日米地位協定の原則、この原則は原則としながら、我が国としましては、必要な対応を図るために特別協定を結ぶという方針でこの問題に従来から臨んできました。原則は原則でありますが、現実の安全保障環境の中において、在日米軍を円滑的に、そして効果的に、そしてなおかつ安定して運用するためにはどうあるべきなのか、こうした観点から米側と協議を行い、その結果として、この労務費等につきましても先ほど来答弁させていただくような結果になった次第であります。
   〔理事塚田一郎君退席、委員長着席〕
 財政上の観点、大変重要であります。国民の理解も大変重要であります。しかし、この厳しい安全保障環境の中にあって、日米同盟を支える在日米軍を円滑かつ効果的に運用するためにどうあるべきなのか、こうした点もしっかり議論した上での結果であると認識をしております。

○井上哲士君 原則は原則としてと言われましたが、要するに、これは本来アメリカが負担するものだと、財政審でも指摘をされたことについての主張はまともにしていないということが今の答弁で私はよく分かりました。
 その上で、現在、駐留軍等の労働者のうち日本が労務費を負担している割合はどれだけになっているのか。それから、今回新たにこのMLCの部分を増やすわけでありますが、米側が増やす労働者のうちどれだけの部分を日本が負担をすることになるんでしょうか。

○政府参考人(防衛省地方協力局長 中島明彦君) お答え申し上げます。
 在日米軍施設・区域におけます駐留軍等労働者の労務費につきましては、特別協定に係る米側との協議におきまして日本側が労務費を負担する上限労働者数を定めているところでございまして、この上限労働者数を超えた部分の労働者に係る労務費、これは米軍が負担することになるわけでございます。
 現行特別協定期間における駐留軍等労働者の実際の人数と日本側の上限労働者数を比較した場合、平成二十八年、今年の一月末日現在の数でございますが、在籍者数が二万五千四百十四人であるのに対しまして、日本側の負担する上限労働者数、これは二万二千六百二十五人になっております。したがいまして、これを除しますと、日本側としては全労働者数の労務費のうち約八九%を負担しているところでございます。
 新たな特別協定期間中、これは平成二十八年度から三十二年度になるわけでございますが、日本側の上限労働者数、これは二万二千六百二十五人から二万三千百七十八人に段階的に五百五十三人増加させることとなっております。他方、この期間におけます駐留軍等労働者の実際の人数につきましては、米側における例えば業務の効率化あるいは職域の見直しといったことにより増減するということがございますので、現時点におきましてこれの日本側負担割合をお示しすることは困難ということでございます。

○井上哲士君 衆議院の答弁で、横須賀、佐世保では四百六十人増えると、こういうふうに言われておりますが、報道によりますと、米軍は横須賀では非アメリカ国籍で三百五十一人増員すると発表しておりますので、横須賀、佐世保、合計四百六十人ということになりますと、ほぼ増加分は日本が丸々負担をするという中身なんだろうと思うんですね。
 先ほど来、リバランス政策による最新鋭の兵器をアメリカが配備をすると、これへの対応だと、こういうふうに言われるんですね。しかし、アメリカの軍事戦略の変更というのは、あくまでもアメリカが自分の国の利益のために自分の国で判断をするんですね。同盟国にいろんな負担を求めるということはありますけれども、あくまでもアメリカがそういうことで判断をし決めてきたということは皆さんもよく御存じのことだと思います。
 しかも、このリバランス政策自身は、日米安保条約の範囲をはるかに大きく超えた広い範囲を対象にしているわけですね。
 これ、衆議院の答弁見ていますと、リバランスに伴った装備の維持や整備、また、司令部等におけます各種事務に従事する労働者につきましては、米軍の機能発揮を直接支える存在であるということも勘案をして負担をすると。これ、逆だと思うんですね。米軍の機能発揮を直接支える存在というのは、これ米側が負担するのは当たり前じゃないでしょうか。なぜ、これを日本が負担をする、こういうことになるのですか。

○国務大臣(岸田文雄君) 米国のリバランス政策は、アジア太平洋地域の平和と安定の礎であると考えます。
 この地域の安定は、米国にとっても大きな利益でありますが、何よりも、このアジア太平洋地域にある我が国にとりましてもこれは大変大きな利益であります。
 そして、日米同盟は、この地域の安定にも資するわけですが、我が国の外交・安全保障政策においても基本となる関係であると考えます。こうした関係を支えるということ、これは、米国の利益のみならず我が国にとりましても大変大きな利益であり、国民の命や暮らしを守るために大変重要であると認識をしております。
 こうした日米同盟において、在日米軍の活動、誠に重要なものがあります。この在日米軍の活動を円滑的かつ効果的に支えるためのHNSですので、これを両国でどのように負担していくのか、これは様々な観点を総合的に議論した上、日米の間で合意していかなければなりません。こうした全体を考えますときに、日本側が労働者につきましてこの労務費を負担するということ、これは当然あり得る話であり、そういったことから長年にわたって日米の間で日米地位協定の原則に基づきながらも特別協定を結び、両国の負担を明らかにしてきた、こういったことであると考えます。
 日本が労務費等を負担する意味合いにつきましては、このように考えている次第であります。

○井上哲士君 当然あり得ると言われましたけれども、外務大臣は、衆議院の答弁でも繰り返し、安保条約の五条と六条で日米間の義務のバランスは取れていると、こういうふうに言われているんですね。バランス取れていると、日米間で、既に安保条約で。にもかかわらず、条約上の義務のない労務費の負担をし続け、更に増加するという説明には私は今全くなっていないと思います。
 これ、世界から見ましても日本の負担は異常でありまして、これもお手元に資料を配付しておりますが、これは二〇〇四年にアメリカが発表して以来出ておりませんが、それ以外の情報を入れて財政審に出された資料でありますけれども、米軍駐留国における経費負担の国際比較を見ますと、日本は約七五%で突出をしております。労務費でいいますと、ドイツ、イタリアは全て米側の負担と。韓国は、米韓分担をしておりますけれども、しかし上限があって、現状でいいますと七一%の負担となっているわけですね。日本のように突出して負担をするところはありません。
 何でこういう違いが出るのかと。衆議院の答弁などでは、国ごとに様々な事情があって単純に比較できないということでありますが、それでは国民、納得できないわけで、具体的にどういう事情が違うのか明らかにしていただきたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) これまでも度々答弁させていただいておりますように、各国の負担している米軍駐留経費の規模、単純な比較及び評価、これは難しいと考えています。
 その理由ですが、各国の置かれている安全保障環境そのものが実に様々であります。その中にあって、各国が自らの予算の中から防衛費として拠出している金額、これもう様々であります。そもそも経費として計上する範囲、これも国によって様々です。そして、比較する際に当たりまして、各国は米軍の駐留経費について明らかにしている国、明らかにしていない国、様々な国があります。その中で、例えば日本と同じように特別協定を結んでいる韓国との比較においても、在韓米軍の規模は約二万五千人ですが、我が国の場合の在日米軍の規模は約五万二千人ですので、そもそも金額だけ比較してもこれは意味がないわけであります。
 このように、この金額を見て各国と比較するというのはなかなか難しいということは是非御理解いただけるのではないかと考えます。

○井上哲士君 私は負担割合を問題にしているんですよ。日本は七五%、この表で見ましてもドイツは約三三%、イタリアは四一%。これアメリカ自身が言っているんですね。二〇〇八年六月のアメリカの下院公聴会でアルビズ国務副次官補が、アメリカのどの同盟国よりも日本がホスト・ネーション・サポートの領域ではどんな基準を取ってみても寛大なものだと、こういうふうに証言をしているんですね。アメリカには寛大かもしれませんけど、国民にとっては一方で暮らしや福祉の予算が削られてきていると、こういうことでありまして、とても国ごとのそれぞれの事情とか単純に比較できないということで、国民の理解が得られるものではありません。
 日本も最初からこういう負担をしていたわけではないわけですね。条約上は労務費の負担の義務はないと。ところが、八七年に特別協定で一部負担が始まって、その期限も終了しない九一年に新しい特別協定が結ばれてこれが続いているわけでありますが、なぜこの九一年から新特別協定になったのか。九〇年の湾岸危機に当たって日米首脳会談で自衛隊の派兵ができないと拒否した際にブッシュ大統領からこういう負担を求められたと、こういう経過だったと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 我が国はこのHNSに関しまして、日米地位協定の原則に基づきながらも、昭和六十二年度以降、特別協定を締結して負担を行っている、こうしたことであります。そして、その後、一九九一年の特別協定について今委員の方から御質問をいただいたわけですが、この一九九一年の特別協定におきましては、当時の日米両国を取り巻く諸情勢を総合的に勘案した上で、暫定的、限定的、特別的な措置として特別協定を締結し、駐留軍等労働者の基本給を含む経費を負担することとしたものと認識をしております。我が国として諸情勢を総合的に勘案した上で、まずは自主的な判断を行い、そして米国との協議を行った結果であると認識をしております。
 そして、委員の方からただいま湾岸戦争との関係について御指摘がありましたが、この当時、政府としましては国会で様々な答弁をさせていただいております。今申し上げました諸情勢を総合的に勘案したと申し上げた中の諸情勢の中には湾岸危機発生以降の問題は含めない、こうした答弁を政府として当時させていただいている次第であります。

○井上哲士君 国民に絡めると言うと大変なことになりますから、そういうことを言われたんだと思います。
 ただ、最近、九〇年の九月二十九日の日米首脳会談の記録がアメリカ側から公開をされておりまして、なかなか生々しい話をしているんですね。当時の海部俊樹首相が自衛隊の中東派兵は憲法解釈上できないと、こう主張しますと、ブッシュ大統領が憲法上の制約を全面的に理解すると応じたと。そしてその上で、もし接受国支援を九一年に増大すれば、我が国に良いシグナルを送ることになるだろうと、こうブッシュさんが言ったと。それに対して海部さんは、米国のために最大限努力すると、こう応じたと。こういう生々しい記録が会談記録としてアメリカから公開をされているわけでありまして、私は指摘したとおりだと思うんですね。
 聞きますけれども、じゃ、この九一年以降、日本側が負担をした労務費の総額は幾らになるでしょうか。

○政府参考人(中島明彦君) お答え申し上げます。
 防衛省といたしましては、駐留軍等労働者の安定的な雇用の維持を図り、もって在日米軍の効果的な活動を確保するということで、労務費の負担を行ってきているところでございます。
 その駐留軍等労働者の基本給など、手当も入りますけれども、これは、一九九一年、平成三年に締結されました特別協定におきまして、上限労働者数の範囲内で日本側が五年間で段階的に全額を負担していくこととされたところでございます。その後、一九九六年、平成八年に締結されました特別協定以降、現協定に至るまで同じく上限労働者数の範囲内で日本側は全額を負担してきております。
 この中で、日本側が負担する基本給等につきまして、一九九六年以降、毎年おおむね約千二百億円前後となっているところでございます。この結果、日本側が負担した労務費の基本給と一九九一年、平成三年から二〇一五年、平成二十七年までの二十七年間、これを掛け合わせますと、総額約二兆七千五百億円となっているところでございます。あっ、二十五年間でございます、失礼いたしました。

○井上哲士君 九一年以降、前のことも含めますと、約三兆円が支払われてきたということなんですね。
 当時、この特別協定に基づく負担については、八七年に労務費負担が始まったときに、一時的、暫定的なものだと、五年たったら廃止になると、こういう明確な答弁をしていたわけですね。財政審も、当時は円高と米側の財政困難という事情があったけれども、今は円安で米国の負担は軽くて日本の財源は大変厳しいとして縮減を求めてきております。そして、先ほど言ったように、湾岸危機のときの自衛隊派遣が国民の反対の中で行われないという中で、事実上、その代わりにこういう労務費の全額負担が始まりました。
 我々は反対でありますけれども、少なくとも、政府は、政府の立場からすれば、安保法制で自衛隊の活動を広げたと、そういうことでいえば、むしろこれは縮減すべきだと、もっと減らせという主張をするのが当たり前だと思うんですね。それが結果としてこういうことになったということは到底認められないということを申し上げまして、質問を終わります。

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