国会質問議事録

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外交防衛委員会(南スーダンPKO問題)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 南スーダンのPKOについて聞きます。
 政府は来週にも派遣の五か月延長を決め、さらに今後十一月から派遣をする部隊に対して、安保法制、戦争法に基づく駆け付け警護や宿営地の共同防衛などの新任務を付与しようとしております。
 南スーダンはもう事実上の内戦状態になっていて、自衛隊が紛争の当事者となって初めて外国の人を殺害し、また自衛隊員の戦死者が出るのではないか、国民の不安や懸念、何よりも自衛隊員の家族からの不安の声が上がっております。ところが、政府からは、こういう危険な実態を小さく見せるような言葉ばかりが出ているんですね。
 まず、防衛大臣にお聞きしますけれども、十月八日に七時間の現地視察をされまして、ジュバは比較的落ち着いていると、こういうふうに言われました。しかし、同じ日にジュバに向かう幹線道路で二十一人が死亡する襲撃事件が起きましたし、UNMISSは、大臣が訪問された直後の十二日に、ここ数週間、南スーダン各地で暴力や武力衝突が増加しているという強い懸念を示す声明を発表いたしました。さらに、十四日には、南スーダンの政府軍の報道官も、政府軍とマシャール前副大統領派の戦闘等で過去一週間に少なくとも六十人が死亡したと、こういうことも発表しておりますが、これでも平穏と、こういう御認識でしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 十月八日に南スーダンを訪問して、ジュバの市内、トンピン地区からUNハウス地区、さらにはJICAが造っていた橋の地区等々を視察をしたところですが、現地は落ち着いているということはこの目で確認をしたところです。ジュバ市内の状況については、現時点でも同じ認識をいたしております。
 しかしながら、七月には大規模な武力衝突が、また、今御指摘になったように、ジュバ以外の地方においては武力衝突、さらには一般市民への襲撃が度々発生しているということは把握をいたしております。南スーダンに訪問したときに、ロイ国連事務総長特別代表と会談をしたときにもこの点については言及がございましたが、更に加えて、衝突解決の合意の履行は維持されていて、衝突はあるもののエスカレートはしていないという旨の発言もあったところでございます。
 南スーダンは独立から間もない世界で最も新しい国家の一つであり、日本のような国と比較すれば治安情勢は比較にならないほど悪いというのは事実でございます。だからこそ、国連はPKOを設立して、我が国は自衛隊の施設部隊を派遣して、国際社会が協力して南スーダンの安定に向けて汗を流しているところであります。
 いずれにせよ、引き続き現地情勢については緊張感を持って注視をしていきたいと考えております。
○井上哲士君 先ほどPKOの派遣継続の一つの基準に安全が確保できるのかという話がありました。まさに大臣の判断に自衛隊員の命、安全が懸かっているわけでありますが、十四日の夜にも北東部のマラカルで事件が発生し、死者が六十人発生しております。大体、過去、政府が楽観的な答弁をした後に、それを覆す深刻な事態が発生してきたわけですね。
 今年二月四日の衆議院予算委員会で当時の防衛大臣は、政府、反政府勢力、双方共に敵対行為の停止について合意に達するなど、事案の平和的解決を求める意思を有していると、こう言いました。ところが、その一週間後に、マラカルの国連キャンプで少なくとも二十五人が死亡して、百二十人が負傷する武力衝突が起きました。同じ予算委員会で、やはり当時の中谷防衛大臣は、ジュバは平穏であると報告を受けていると、こう言ったわけですが、その半年もたたないうちに、七月にこういう大規模な戦闘があって三百人以上が死亡したわけですね。
 楽観的な答弁をして、それを覆す深刻な事態が発生するということを私は繰り返してはならないと思いますけれども、改めていかがでしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 先ほど答弁申し上げたとおり、ジュバ市内、私はこの目でも比較的安定をしているというふうに確認をさせていただきました。
 しかしながら、委員御指摘のとおり、例えばマラカル、ジュバから北にかなり離れたところですけれども、そこで武力衝突があり、また南側で襲撃があったりしていることも事実でございます。しっかりと緊張感を持って、PKO五原則は維持をされている状況だと思いますが、隊員が安全を確保しつつ、施設隊として有意義な活動ができるかどうか、緊張感を持って情勢を見極めていく必要があると考えております。
○井上哲士君 その瞬間は落ち着いているように見えても、実は非常に極度の緊張状態の上にある状況だと思うんですね。そこをしっかり見なくてはいけないと思うんですが。
 外務大臣にもお聞きしますけれども、これまで和平合意は保たれていると、停戦合意履行を監視する合同監視評価委員会の設立をその一つとして、努力として答弁をされてきました。ところが、この評価委員会のフェスタス・モハエ委員長が、九月二十九日の国連の南スーダンのパネル報告でこういうふうに言っているんです。我々は、両当事者及びそれと同盟する他の部隊が引き続き南スーダン全土でより大規模な戦闘の可能性を高めつつ衝突するのを承知していると、こう述べております。こういう状態でも和平合意が保たれているという認識でしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) 委員の方から先ほど七月の衝突についても御指摘がありました。そして、南スーダンの地方においては散発的な、偶発的な衝突が発生している、これも事実であると思います。
 ただ、先ほど防衛大臣からお答えさせていただきましたように、ジュバ周辺においては比較的平穏な状況にあると我々認識しておりますし、こうした衝突の後において、南スーダンにおきましては、これも先ほど御指摘ありましたが、昨年八月に合意されました衝突解決合意、この合意に基づいて反主流派から副大統領が指名をされて、そして政府が維持されているという動きがあります。キール大統領とタバン・ダン第一副大統領、主流派と非主流派が昨年八月のこの合意に基づいて解決合意を履行していく、こういったことを繰り返し述べながら政府を維持している状況にあります。
 こうした政府の状況等も考え合わすときに、我が国としましてジュバの状況は比較的落ち着いているという認識に立っていると考えております。
○井上哲士君 私、今の認識は間違いだと思うんですね。
 去年の八月の和平合意にサインしていたのはキールとマシャールなんです。ところが、片方の当事者であるマシャールをもうやっていけないということでキールが武力で排除したというのがあの七月の事件ですよ。そして、その代わりにこのダバン・ガイ氏を任命をしたわけですけれども、これ現地では寝返ったと言われていますよ。ですから、これに対してマシャール派が反発を強めて、九月二十五日までに声明を発して、キール大統領の独裁政治に武力で抵抗すると、こういう宣言をしているんですよ。ですから、和平合意の片方のものを武力で排除しておいて、ほかのものを据えて、これで合意が維持されているなど私はとても言えないと思います。こういうことをしっかり見ることが今必要だと思うんですね。
 そして同時に、こういう問題だけじゃありません。現に起きている武力紛争の評価も小さく小さくすると。戦闘と認めず衝突と言い張ってきたわけでありますが、七月のジュバでのこの大規模武力紛争の際に、当時の中谷防衛大臣は散発的発砲事案と記者会見で述べましたけれども、防衛大臣、今も散発的発砲事案という認識でしょうか。
○国務大臣(稲田朋美君) 今年七月に首都ジュバにおいてキール大統領派とマシャール第一副大統領派との間で武力の衝突が発生をして、治安は悪化したところです。中谷前大臣が会見で散発的に発砲事案が生じていると発言をされましたが、これは、当時ジュバでキール大統領派とマシャール第一副大統領派との発砲事案が複数発生したことを捉えて発言をされたということでございます。七月の武力の衝突が発生した後、現在新たな武力紛争が発生したとは考えていないという評価は当時も今も変わりがないというところでございます。
 しかしながら、引き続き、現地情勢については緊張感を持って見極めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 いや、当時の会見で、ヘリとか戦車まで出ている、それでも散発的発砲事案なんですかと聞かれても、そうだと言っているんですよ。そういう、つまりヘリや戦車まで出るような事態なのに散発的発砲事案という認識は変わらないのかということをお聞きしています。
○国務大臣(稲田朋美君) 七月の衝突に関しては、政府軍が戦車を出した、武力による、武力衝突であったこと、で、治安が悪化したことはそのとおりでございます。
 しかし、それがPKO法上の武力紛争が新たに発生した、すなわちPKO法上の三条のロを崩すような武力紛争が発生したとは考えていないという意味においては当時も今も変わらないということでございます。
○井上哲士君 過去の答弁では、過去の武力紛争で政府全体が関与したものでない、だから散発的だと、こういう答弁もあるんですね。これは、私はとんでもない認識だと思うんですね。
 国連のやはりパネル報告は、この七月の事案についてこのように述べております。比較的大規模な敵対的行為は、地上部隊と調整され、装甲部隊で補強されたMI24攻撃ヘリの展開を特徴としたもので、戦闘が政府軍の指揮構造の最高レベルによって指示されたものであったとの結論を裏付ける、政府軍の多くの上級将校が本パネルに対して認めたところでは、このようなヘリコプターの展開はサルバ・キール及び政府軍のポール・マロング参謀総長のみが命令する権限を有しているとされ、さらに、本パネルは政府軍の上級の人員及び南スーダンの有力な政治家からキールの完全な承知の下でマロングが七月十日及び十一日の戦闘を指図したとする数多くの報告を受けたと。つまり、キール大統領の承認の下で、軍の最高司令官のその指揮の下で行われているということなんですよ。これがまさに政府全体の関与じゃありませんか。これでも散発的だと。国連の報告読んでいないんですか。大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(稲田朋美君) 先ほども山口代表に答弁いたしましたように、PKO法における、PKO五原則における武力紛争、すなわち国又は国に準ずる組織が新たに出現をしたという状況における武力紛争ではないという評価でございます。
○井上哲士君 いや、散発的かどうかということをお聞きしているので、全く今の答弁になっておりませんけれどもね。
 こういう事態の下で本当に不安が高まっているという中で、今、自衛隊の家族への説明が行われております。第九師団司令部の家族説明会の資料もいただきましたけれども、私、これとは別に家族の質問に答える応答要領を示した平和安全法制家族説明資料というのを入手をいたしました。これは部内限りとされている二十ページの資料でありまして、八月下旬に新任務の訓練開始が発表されたのに合わせて全国の部隊に配付されたものと聞いております。
 この文書の中で、南スーダンの治安情勢が悪化している中で自衛隊自身が駆け付け警護を行えば、自衛隊自身が武力紛争に巻き込まれることになるのではないか、こういう質問が家族から出たら、南スーダンが国連PKOの活動に同意し受け入れている状況においては、武力紛争に巻き込まれることはないと答えるように指示をしております。
 しかし、現実には、今、例えば国連事務総長の報告によりますと、今年の二月から六月の間に、UNMISS要員及び関連パートナーに悪影響を及ぼすような活動制限が四十二件あったと。その中には、国連の要員に対する攻撃や脅迫及び嫌がらせがあったと報告されているんですね。この違反行為は政府機関によるものだとしておりますし、二月のマラカル・キャンプでの襲撃は政府軍だと国連報告書は指摘しているんですね。ですから、この政府が同意しているからということではなくて、政府軍によるPKOの敵対行為が続発していると。
 こういう中で、駆け付け警護や宿営地共同防衛で政府軍と交戦するような、そういう可能性があるんじゃないですか。このこと示しているんじゃないですか。いかがですか。
○国務大臣(稲田朋美君) 様々今御指摘になられましたので、まずPKO法上の五原則の武力紛争は七月も発生をしておりませんし、今も発生していない。また、ジュバ市内については比較的落ち着いているということは私もこの目で見てきたところでございます。その上で、隊員が安全を確保しながら有意義な活動ができるかということはしっかりと見極めていかなければならないと思っております。
 その上で、今御指摘の政府軍によるPKO、NGOに対する敵対行為が続発しているということでございますけれども、国連や人道支援関係者に対する脅威があるとの報告がなされていることは承知をいたしておりますが、南スーダン政府等からUNMISSの撤退を要求するような発言等はなされておらず、このような妨害は現場レベルの偶発的なものであり、南スーダン政府としての組織的な行為ではないというふうに認識をいたしております。
 また、我が国のUNMISSへの貢献に対しては、私が先日南スーダンを訪問した際も含め、数次にわたり南スーダン政府高官から謝意が示され、我が国の活動は高く評価をされていることも事実でございます。
 いずれにいたしましても、南スーダンに派遣される部隊にいかなる任務を付与するかは、現地の情勢、さらには訓練の進捗状況等を慎重に見極めながら政府部内で総合的に検討してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 ちゃんと答弁に答えてほしいんですよ。
 確かに、政府がPKO帰れとは言っていませんよ。しかし、現実には、先ほど言いましたように、あの七月の戦闘もキール大統領の承認の下に軍の司令部がやっていたと。
 そして、深刻なのは、この七月の武力紛争のときに、政府軍が国連施設の近くにあるホテルを襲撃しているんですね。これは、先日、いろんなテレビの報道もありましたけれども、海外のNGOなどの関係者が略奪や傷害、レイプなどの被害に遭って、現場にいた記者は副大統領派の民族だという理由で射殺されているんです。そして、そのときの襲撃を受けたフィリピンの国連職員が言っていますけど、兵士はもう国連に敵意をむき出しにしたと、ある兵士は、俺たちは国連が嫌いだ、国連は反政府軍に肩入れしていると、こういう発言をしたと。こういう形で様々な攻撃が行われているんです。
 ですから、日本のPKOは、例えばそういう自衛隊、難民のキャンプなどで駆け付け警護とか宿営地防衛をやったときに、その相手が政府軍であると、こういう可能性がないんですかと、戦闘に巻き込まれると、ないと断言しているんですよ、家族の説明では。何でそういうことが断言できるのかと、このことを聞いているんです。
○国務大臣(稲田朋美君) まず、最初に述べられた、七月十一日、武力衝突のさなかに、ジュバ市内のテレインホテルにて人道支援関係者及び報道関係者が南スーダン軍兵士等によって襲撃され、一名が死亡した等の被害に遭ったという報道は承知をいたしております。これについては、国連事務総長の指示の下、本件に関する特別調査を実施しているというふうに承知をいたしております。
 南スーダン国内において、人権、人道上の問題が生じていることを憂慮しており、引き続き、人権、人道状況を含め、南スーダンの情勢は注視してまいります。
 その上で、駆け付け警護の実施については、これは平素は施設活動等の業務を行う部隊が国連やNGO関係者等から緊急の要請を受け、その人道性及び緊急性に鑑み、本来の業務とは別に、その人員、装備などに応じ、あくまでも安全を確保しつつ対応できる範囲内で行うものであります。
 また、駆け付け警護の実施に当たっては、まずは相手方と粘り強く交渉することが大事であり、直ちに武器の使用を行うものではありません。
 いずれにいたしましても、南スーダン政府軍と交戦するということは想定されないと考えております。
○井上哲士君 大臣がジュバで視察されたときの画像がニュースで流れていましたよ。難民施設を見下ろしながら現地の自衛官から説明を受けていた。そのときにどう言ったかといいますと、反政府軍の兵士もPKOサイトの方に逃げ込んできて政府軍側が反撃する、そういうことをしたのは、若干この辺で戦闘が起きたと自衛隊員、説明したじゃないですか。あなた、それ聞いていたじゃないですか。
 ですから、そういう、難民施設に反政府軍が逃げ込んできたり、そこを政府軍が攻撃することが起きているんでしょう、それ聞いている、聞いたんでしょう。そのときに自衛隊が新しい任務を持っていたら、交戦する可能性があるじゃないですか。ちゃんと視察したのなら、私は現実を見るべきだと思います。
 こういう、憲法に違反し、危険な新任務の付与はあり得ませんし、私は、もう派遣の前提も崩れている以上、派遣延長ではなく撤退をして、そして非軍事の人道・民生支援に徹底すべきだと、そういうことを強調しまして、時間ですので質問を終わります。

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