国会質問議事録

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外交防衛委員会(米国のシリア攻撃について)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 総理は、本会議での私の質問に、国際法上違法な武力行使を行う国に対し、ACSAの下での物品、役務の提供を含めて協力を行うことはあり得ないと答弁をされました。しかし、今回の米国によるシリア空爆への日本政府の対応を見ておりますと、この答弁は甚だ疑問であります。
 化学兵器の使用は、誰によるものであれ、人道と国際法に反する重大で許されない残虐行為であります。だからこそ、真相解明を行って、使用した者に厳しい対処を行って、二度と使われないようにするための国際社会が国連を中心に一致協力することが必要です。
 アメリカ自身も、英仏とともに提示した安保理の決議案の中で、シリアでの化学兵器使用の責任者と特定の処罰を求め、化学兵器禁止機関、OPCWと国連による軍事施設を含むシリアでの化学兵器攻撃の調査を提起をして、同国への軍事制裁にはこの決議は言及をしておりませんでした。
 にもかかわらず、アメリカが自ら提示した決議の内容にも反して、アサド政権が使用したと断定をし、安保理決議もないままに一方的に攻撃を行ったことは極めて重大だと思いますが、政府は今回の問題でアサド政権が化学兵器を使用したと、こういう認識をお持ちなんでしょうか。
○国務大臣(岸田文雄君) まず、シリアにおいて化学兵器による甚大な被害が発生したこと、これをまずしっかり認識をしております。その上で、それ以上の事実関係の詳細については国連機関が調査中であると承知をしており、その結果を待っている次第であります。
 そして、先ほど総理の方から答弁もありましたが、このOPCWそれから国連共同調査メカニズムによりまして、二〇一四年以降、すなわちシリアが化学兵器禁止条約を締結してから後、このシリア軍による化学兵器の使用、これは三件結論付けられているということも確認されています。
 いずれにしましても、化学兵器の使用、いかなる場合でも許されるものではなく、我が国は真相究明に向け、今委員の方から御指摘がありましたそうした動き等もしっかり念頭に国際社会と連携していきたい、このように考えております。
○井上哲士君 アサド政権が使用したという断定を政府としてはできないということでありまして、今もありました、OPCW自身が六日に調査に着手したというふうに発表して、既に情報収集や分析を開始をしている、シリア当局とも連絡を取っていると、そういう国際的な真相究明の努力が始まったそのやさきにこの空爆が行われた。まさしく私は国際的努力にも逆行するものだと思います。
 そして、国連憲章で武力行使が許されるのは安保理の決議がある場合と自衛権行使の場合でありますが、およそこれが自衛権行使ということは言えないのは自明の理でありますが、安保理の決議もありません。ですから、国際憲章と国際法に反する空爆であったと言わざるを得ないと思うんですね。
 総理は、このアメリカの空爆に対して、米国政府の決意を日本政府は支持すると表明をされました。一方、菅官房長官は十日の記者会見で、このアメリカの攻撃の国際法上の根拠についてアメリカから考えを聴取しているところだと、こういうふうに述べられました。つまり、国際法上の根拠も不明なまま支持をしたということになるわけですね。なぜそんなことができるんでしょうか、総理。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 先ほども答弁をさせていただいたわけでありますが、シリアで再び化学兵器により罪のない多くの一般人が犠牲になったのは事実であります。幼い子供たちもが犠牲となった惨状を目の当たりにして国際社会全体が大きなショックを受けているわけであります。このような行為は極めて非人道的であり、安保理決議にも反する。化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという米政府の決意を日本は支持をしたわけであります。その上で、今回の米国の行動は、これ以上の事態の深刻化を食い止めるための措置として理解をしているところでございます。
 そこで、米国政府のこの行動、また米軍の行動の国際法上の根拠等については、既に官房長官からも記者会見等で日本の考え方を表明させていただいているわけでございますが、日本は軍事行動の当事国ではなく、米国の行動の法的評価については、まず米国の考えを聴取しているところであります。米国は、今回の行動は、シリア軍のこれ以上の化学兵器による攻撃能力を低下させ、アサド政権に対して化学兵器の使用や生産をしないよう忠告し、これによって地域の安定に寄与し、これ以上の人道危機悪化に歯止めを掛けるために行ったものであるとの説明を行っていると承知をしております。
○井上哲士君 忠告じゃないんですよ。現実に空爆を行っているんですね。武力行使を行う場合には自衛権か安保理の決議が必要だと、これが国際法なんですよ。にもかかわらず、それを確かめもしないままに支持をしたと。しかも、単なる決意に基づいて支持をすると言っていますけれども、単なる決意表明したわけじゃないですね、アメリカは。決意をしただけではなくて、現実に空爆をやっているんですよ。それについてその決意を支持するといったときに、それがどういう意味を持つのかと。
 先ほど来、決意について支持をしたと言っていますけれども、じゃ逆に聞きますが、アメリカのシリア空爆そのものについては日本政府としては支持をしないということでよろしいんですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 日本政府の立場は先ほど申し上げたとおりでございまして、このような行為は極めて非人道的であり、安保理決議にも反すると。化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないという米国の決意を日本は支持をする。その上で、今回の米国の行動はこれ以上の事態の深刻化を食い止めるための措置として理解をしているというのが日本政府の立場であるわけでありまして、これ以上でもこれ以下でもないところでございますが。
 同時に、シリアによって化学兵器が使われたということにつきましては既に結論付けられているということにおいて、G7の共同声明の中にも入っているということを私も答弁をいたしましたし、外務大臣からも答弁をさせていただいているとおりでございますが、今回の米軍の対応については、日本だけではなく、英国、イタリア、カナダ、ドイツ、豪州等の西側諸国や、トルコ、ヨルダン、サウジアラビア、UAE、イスラエル等の中東諸国など多くの国が支持又は理解を示しているというのは御承知のとおりであろうと思います。
○井上哲士君 アメリカのシリア攻撃を受けて開かれた国連安保理の緊急会合でも、例えばボリビアの代表などが、シリアでの化学兵器攻撃をどう調査するか議論しているときに一方的にアメリカがやったことは平和と安定を脅かすという批判をされました。様々な声が出ているんですね。
 先ほど来、シリアにおける化学兵器の使用は安保理決議に反すると、こういうふうに言われています。もちろん、使われたことは、これは国際人道法にも反します。しかし、まだ政府が使ったかどうかという断定ができていないという状況があるんですね。先ほどから言われていますけれども、じゃ、この空爆を、武力行使を容認をする、そういう国連の安保理決議、そういう法的根拠は何かあるんですか。
○国務大臣(岸田文雄君) 国連において武力行使を容認する根拠としましては、この安保理の決議のほか、国連憲章五十一条あるいは第七章の集団安全保障、こういったものがあると承知をしておりますが、今現在はまだ、五十一条に基づいて米国からこの武力行使について何らかの報告があったということまでは承知はしておりません。
○井上哲士君 シリアへの空爆を認めるような決議が、安保理決議があるのかということです。
○国務大臣(岸田文雄君) まずは今、米国政府がこうした法的根拠等について説明をすることをしっかりと聞かなければならない段階であると考えております。
 手続等については先ほど申し上げたとおりであります。
○井上哲士君 つまり、いまだに国際法上の根拠は何も示されていないということですよ。
 トランプ大統領は六日夜の声明で、国際法上の根拠も示さずに、化学兵器の使用と拡散を防ぐことはアメリカの安全保障上の重要な利益だと、こういうふうに合理化をいたしました。つまり、アメリカの利益だと、アメリカ自身が必要だと判断をすれば、国際憲章や国際法の根拠がなくてもこういう攻撃ができると、こういう立場なんですよ。これを私は日本が支持をし理解をする、とんでもないことだと思います。
 総理はこの間、アメリカと共通の価値観、法の支配という価値観があると繰り返してきましたけれども、まさに法の支配そのものを突き崩すような、こういうようなことに対しての支持、理解はあってはならないということを強く強調しまして、質問を終わります。

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