国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2019年・198通常国会 の中の 外交防衛委員会(デジタル課税、国際連帯税について)

外交防衛委員会(デジタル課税、国際連帯税について)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、昨日の日米首脳会談についてお聞きいたします。
 先ほど来、トランプ大統領のTPPに縛られないという発言についても議論がありました。これ、一般論でトランプさんは述べたわけではないんですね。会談の冒頭でトランプさんは、八月に両国によって良い発表ができるだろうと、こう述べました。そして、会談後の記者会見では、日本とは何年もの間、信じられないほどの大きな貿易不均衡があると、日本とはディールができると、こう述べたわけですね。
 その後に、安倍総理が質問に答えて、八月に発表があるのかと聞かれて、これには答えなかったんです。そして、TPPの線は譲れないと言ってきたことは変わらないのですかと問われたことに対しては、過去の共同声明に基づくと述べるだけで明確なお答えがなかった。その後にトランプさんがTPPは関係ない、私は何も縛られないと、こう言ったわけですね。
 この流れを見れば、日本が大幅な譲歩をするけれども参議院選が終わるまで黙っておこうと、こう示し合わせたと思われても仕方がない流れだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君) 全くそうは思いません。

○井上哲士君 これ、全く国民は納得しておりません。今朝の報道でも、いろんなところでそういうことがあったんじゃないかと、こういう声が広がっているわけですね。これを明らかにしないまま、私は、参議院選挙まで黙っておこうと、これ許されないと思います。
 農産物の問題でどのような協議がされたのか、国民と国会に明らかにするべきでありますし、今参議院では野党が規則に基づいて三分の一以上で要求しておりますけれども、開かれておりません。このまま予算委員会から逃げ回って山積みする問題を明らかにしないまま参議院選挙に臨む、許されないことと思います。
 官邸がなかなか応じないという話もありますけれども、是非、河野大臣、こういう問題も含めてきちっと国民と国会の前に明らかにするためにも、予算委員会、応ずるということで官邸としても進めるべきじゃないですか。総理にそう言ってくださいよ。どうでしょうか。

○国務大臣(河野太郎君) 日米共同声明の枠組みの中で、茂木大臣とライトハイザー通商代表が交渉をこれからするところでございますので、その時期について予断をすることはできないと思いますが、この貿易交渉を加速させよう、そういうことで首脳は合意をしたというふうに認識をしております。

○井上哲士君 そういう従来の説明では違うようなことを現に首脳会談の前、トランプさんが言って、そのことに対して国民が疑問を持っているわけですから、きちっと国民の前に明らかにしていただきたい。予算委員会の開催を改めて強く与党にも求めたいと思います。
 その上で、国際的な課税の問題についてお聞きいたします。
 多国籍企業の国際的な租税回避を解決するBEPSが取り組まれてまいりました。その基本的な考え方は、価値が創造されたところで税金を払うべきということであります。租税回避の手段として代表的なタックスヘイブンに加えて、この間問題になってきたのがPE、恒久的施設なければ課税なしという国際的な課税原則を悪用した課税逃れでありました。
 外資系のネット通販大手が、日本に倉庫はあって巨額の売上げがあるけれども、一方、従来のルールでは、商品の保管、引渡しのみを行う場所はPE認定できないということになってまいりました。その結果、例えばアマゾンの場合に、二〇一四年の報告書では日本の売上げは八千三百八十七億円ですけれども、その九割をアメリカで計上して、アマゾン日本法人の二社の法人税額は十一億円だったと、こういうことになっております。
 去年承認したBEPS防止措置実施条約では、こうしたPEの人為的回避を規制するために、このPEの定義を変更して、倉庫についてもPE認定して課税をするということも可能になりました。
 今問題になっているのは、いわゆるデジタル課税と。つまり、PEの定義を広げても、そもそもそういうものがないという場合に全く課税されないという問題だと思います。つまり、このPEなければ課税なしという国際的税務ルールそのものの見直しが必要になっていると思いますが、これ具体的にはどういうような事業がどのような問題になっているのか、財務省、お願いします。

○財務省大臣官房審議官(住澤整君) お答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、経済の電子化に伴いまして様々な課税の問題が生じてきております。そうした中で、BEPSプロジェクトの議論も踏まえまして、我が国におきましても、例えば海外からの電子的なサービスの配信に対する課税の問題でありますとか、ただいま御指摘がありました倉庫のPEの定義の見直し、倉庫に関するPEの定義の見直しの問題、こういったことにも取り組んできているところであります。
 そうした中で、今御指摘がありましたように、これまでの国際課税原則におきましては、自国内に物理的な恒久的施設、PEがなければ課税ができないという原則の見直しが問題になってきております。その背景として、経済のデジタル化、電子化が進展している中で、外国企業が物理的なPEなしに事業を様々な市場で展開することが可能になっているという背景がございます。
 そういった中で、御質問は、具体的にどのような産業において課税上の課題が発生しているのかという点でございますが、この点につきましては、まず検索エンジンですとかソーシャル・ネットワーク・サービスといった典型的な高度に電子化されたビジネスにつきまして、現行のPEなければ課税なしという課税原則がユーザーによる価値創造への貢献を適切に考慮していないという点で課税上の問題が生じているという見方がございます。
 その一方で、こうした経済の電子化に伴う課税上の問題は、こういう高度に電子化されたビジネスに限定されずに、それ以外にも、価値のある無形資産、マーケティングインタンジブルズと呼ばれているようなものを持っている企業一般にも関係する問題であるという見方もございまして、多様な見方が存在するところでございます。

○井上哲士君 検索とかして、SNSサービスを無料でインターネット利用者に提供する一方で、利用者の関心に応えた広告を表示して世界中の企業から広告料を得ていても、ユーザーがいるところではなかなか課税にならないと、そういうようないろんな問題があるんだと思うんですが。
 この問題を解決する議論の中で、このBEPSの価値が創造されたところで税金を払うべきと、こういう基本的考え方そのものはどう取り扱われているんでしょうか。

○政府参考人(住澤整君) お答え申し上げます。
 BEPSプロジェクトにおきましては、経済の電子化に伴う課税上の課題について二〇二〇年までにグローバルな長期的解決策を取りまとめるということを目標といたしまして、OECDを中心として国際的に議論が行われております。
 そうした中で、本年の二月にOECDが経済の電子化に伴う課税上の課題に関するコンサルテーションペーパーというものを公表いたしまして、民間部門からも意見を聴取するなど取組を進めております。
 そういった中で、今御指摘のありました価値が創造された国で十分な課税が行えるように、商品ですとかサービスが提供された市場国、あるいはデジタルサービスのユーザーが所在している国に対しまして、そういったサービスを提供する多国籍企業の所得に対する課税権を配分するような国際課税原則の見直しということが一つの柱として議論をされているところでございます。
 また、もう一つ、この二つ目の柱といたしましては、他国がその多国籍企業の所得に対して極めて低い税率しか課税をしていない、いわゆるタックスヘイブンと呼ばれるような国々に代表されるような事例に対する対応といたしまして、そういった国の存在によって税源浸食を受けている国に対して課税権を認めることで対応していこうという第二の柱、こういった方向についても議論が行われているということでございます。

○井上哲士君 今お話のあったコンサルテーションペーパーはお手元に配付しているわけでありますが、今のその第一の柱について言いますと、課税権の決定ルールや課税対象所得の算定及び配分のルールについて三つの概念が示されて議論がされていると思いますが、簡潔にこの三つの概念それぞれについて御説明いただけますでしょうか。【配付資料190528.pdf】

○政府参考人(住澤整君) 簡潔に申し上げます。
 この配付していただいている資料の真ん中辺に①から③ということで三つの案がございます。
 このうち、ユーザーの参加とありますものは英国が提案している考え方でございまして、先ほど申し上げたSNSですとか検索エンジン等の高度に電子化されたビジネスにおいては、ユーザーが何らかの形で自らのデータを提供する等の貢献を行っていると、それによってその多国籍企業による価値の創造がなされているという、その点の貢献が十分に認識されていないという問題意識から、ユーザーのそうした参加により生じた利益に対する課税権をユーザー所在地国に対して配分するという考え方の提案でございます。
 また、二番目のマーケティング上の無形資産、これは米国が提案しているものでございますが、企業が利益を上げるためには必ずその当該市場国におきまして顧客基盤などのマーケティング上の無形資産を形成する必要があるという考え方から、特定の市場に密着あるいは特化して行われる企業のマーケティング活動などに着目をいたしまして、そういった無形資産から生ずる利益に対する課税権を市場国に対して配分するという考え方でございます。
 最後に、重要な経済的存在と呼ばれている考え方、これはインドを始めとする途上国の案でございますが、これは外国企業であってもその市場国から定期的に収入を得ており、また、かつデジタル又はその他の手段で市場国と持続的な関係を構築していると認められるような場合には、重要的な経済的存在が認定されるという考え方で、市場国で課税できるような見直しを行うという考え方でございます。

○井上哲士君 巨大なIT企業を抱えて、これまではこうしたルールづくりに否定的だったアメリカが提案をしてきたということは前進と思いますが、一方、この二番目のアメリカ案では、課税対象となるのは多国籍企業の利益の一部にすぎないという指摘もありまして、途上国などはこの三番目の案、雇用や市場の資産などの経済的実態に基づいて行うことが必要だという声が強くあるわけでありまして、今後、やはり公正な課税を実現をしていく上で、こういう第三の案の中に示された考え方もしっかり生かしていくことが必要かと思いますが、それも含めて、公正なデジタル課税を進める上で日本としてはどう取り組んでいくんでしょうか。

○政府参考人(住澤整君) 現在、この三つの考え方につきましては、ある意味抽象的な考え方の提示にとどまっている段階でございまして、具体的にそれでは執行可能な制度とするにはどういう制度としていけばよいのかといったようなことも含めて議論がこれからまさに行われていこうという段階でございます。
 そういった意味で、その各案についての具体的な評価を申し上げられる段階にないことは御理解いただきたいというふうに存じますが、いずれにしても、価値の創造された国で課税するという基本的な考え方を重視しながら、本年の我が国はG20の議長国でございますので、解決策の合意に向けて国際的な議論に引き続き貢献してまいりたいというふうに考えております。

○井上哲士君 是非、公正なデジタル課税実現へと取り組んでいただきたいと思いますが。
 もう一点、国際連帯税について大臣にお聞きいたしますが、貧困や環境問題などの地球規模の問題に対策する財源確保を目的としたもので、最近はSDGsの目標を達成するための資金確保としても議論がされております。大臣の所信でも強調されておりました。
 是非実現をしていただきたいんですが、二〇一〇年の税制改正大綱以来、外務省からこの新設が出て大綱に盛り込まれておりますが、二〇一〇年の大綱では国際連帯税の検討を早急に進めますと、こうなっておりましたが、翌年からは今後新規に検討を行いますという表現になりまして、かつ実際進んでおりません。
 国際的には、まず第一歩として航空連帯税なども取り組まれ、導入されてきたわけでありますが、日本は去年、この航空券への課税は創設しましたけれども、使途は観光基盤の強化などに、三分野に限定した国際観光税にとどまったということになっていまして、どうも政府全体としては姿勢が後退してきているのではないかという印象を私は持っております。
 是非、これ、実現に向けて政府全体で推進させるように転換させる必要があると思います。そういう政府全体の問題と、そして今後、今回、この問題での国際会議の議長国に日本はなっているわけでありますが、今国際的に何を突破して、実現のためにどう力を発揮していこうとお考えなのか、併せてお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(河野太郎君) SDGsの達成のためには年間二兆五千億ドルの資金ギャップがあるという推計もございます。そういう中で、二〇一七年、一八年、七千万人近い難民、避難民の方が出ていて、こうした方への人道支援、あるいは気候変動による自然災害の被害者への支援、様々なニーズがこれから増えていくことが予見されているわけでございます。
 日本は、今年手を挙げて、革新的資金調達のためのリーディンググループの議長国になりました。グローバリゼーションの光と影の中で、光から影の部分にやはり何らかの手当てをする必要があるというふうに考えておりまして、まずは国際的な議論をしっかりと盛り上げてまいりたいというふうに考えているところでございます。
 G7あるいはAPEC、様々な場でこの国際連帯税の問題提起をしてきておりますが、海外からも非常に多くの反響をいただいているところでございます。また、外務省の中にもこのための有識者会議を立ち上げて議論をしていただいて、少しいろんなものを詰めていきたいというふうに考えておりますので、日本の税制ということだけでなく、国際的にできればいろんな議論を経て統一した課税ルールというのを作っていきたいというふうに考えているところでございますので、息の長い取組になろうかとは思いますが、しっかり前進をさせてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○井上哲士君 是非、公正なデジタル課税も、そして国際連帯税も推進をしていただきたいと思います。
 以上、終わります。

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○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日本・アルゼンチン投資協定、日本・スペイン、日本・クロアチア、日本・コロンビア及び日本・エクアドルの四つの租税条約に反対の立場から討論を行います。
 本投資協定は、安倍政権が経済政策の柱とする成長戦略に基づき、日本の多国籍企業が海外で最大限の利益を上げるための投資を促進する協定です。日本の経済界は、国内にあっては法人税の減税や労働法制の改悪を要望し、国外においては日本の多国籍企業が多額の収益を上げられるよう条件整備を求めています。本投資協定は、こうした経済界からの強い要望も受けて、投資の更なる促進を行うものにほかなりません。
 租税条約についても、日本の大企業とその海外子会社は、当該国内の外資優遇税制のメリットを十二分に受けつつ、投資に対する源泉地国課税の軽減によって税制優遇措置を二重三重に享受することが可能となります。
 このように、四つの租税条約は、国際課税分野における日本の大企業優遇税制を国内外で更に拡大強化するものであり、容認できません。
 以上、反対討論とします。

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