国会質問議事録

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外交防衛委員会(新防衛大綱・中期防に関する参考人質疑)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 三人の参考人の皆さん、ありがとうございます。
 まず、岩崎参考人にお聞きいたしますが、大綱は、米国が同盟のコミットメントを維持するとともに責任分担を要求していると、こういうふうに述べておりますが、アメリカがこの責任分担を強め、要求を強めてきた背景、そして、それが、日本に対する要求はどのように変わってきたのか、その結果、大綱や中期防にどのように反映をされているのか。まず、これをお願いいたします。

○参考人 元統合幕僚長(岩崎茂君) 長年の我が国と米国の条約関係を考えていくと、例えば、その都度その都度、アメリカの国力、国の強さ、それから日本の国力、こういったものによってそれぞれのときの役割分担があるんだろうなというふうに思っています。一番大きく日米の役割分担が変わったのは、ガイドラインの見直しのときだったというふうに思っています。これを反映して今回の大綱がそれぞれの役割を変えてきているというふうに思っています。
 私は、トータルで日米で、どこがどういうふうにとかということは具体的にはなかなか申し上げられないところもあるんですけれども、トータルで、それぞれ、その都度その都度、体力によって変えていくべきものというふうに思っています。今回は、アメリカは、例えばオバマ大統領がアメリカはもはや超一流国じゃないというふうな発言をたしかされて、これ正確じゃなかったと思いますけれども、そういった趣旨の発言をされましたけれども、アメリカでさえも相対的に若干弱くなっている部分もある、それを当然同盟国というのは話合いによって補っていくべきだというふうに思います。
 この同盟国というのは、やはり私たちに何かいろいろな形で脅威になる、又は何らかの圧力を掛ける者に対してこれを拒否する能力だというふうに思いますので、それぞれの国がその都度その都度話合いで決めていくべきものというふうに考えています。

○井上哲士君 新ガイドラインが大きなポイントだったと言われましたけれども、当時オバマ政権ですが、その後、トランプ政権に発足をしているわけですね。
 そこで、柳澤参考人にお聞きしたいと思うんですが、トランプ政権の下で今回の、というか、が発足後に今回の大綱が作られている考えたときに、そういう今のいわゆるアメリカン・ファーストとかやってきたトランプ政権の姿勢が今回の大綱にどのように影響しているかというのはどうお考えでしょうか。

○参考人 元内閣官房副長官補(柳澤協二君) さっき申し上げました運用面で日米の一体化を図っていくというのは、実は日本側の一貫した追求するところであったと思います、一五年のガイドラインも含めて、オバマ政権当時からですね。
 他方で、今回の大綱に、例えば宇宙、サイバー、電磁波といった新しいドメインが強調されているようなところは、実は、これは私はやはり昨年の秋口から始まった米中の技術をめぐる確執というのか、アメリカの、中国が技術にキャッチアップしてくることへのアメリカの非常に強い警戒感が反映されてこうなった部分かなというふうに、特にその部分は一番大きなところではないかというふうに思っています。

○井上哲士君 全体として、日本がアメリカとの軍事的一体化の強化がされていると思うんですが、それは一体何をもたらすのかという点で岩崎参考人と柳澤参考人にお聞きしたいんですが。
 安保法制で、戦闘行為に発進準備中の米国戦闘機にも給油が可能ということになりました。今回、「いずも」型の護衛艦が空母化をするに当たって海上自衛隊が行った調査は、米国の後方支援を目的として、そしてF35Bの垂直着艦が行われるということを前提とした検討をした上で空母化というのが進められているわけですが、まさに空母化される「かが」に先日両首脳が乗り込んで様々な発言したわけでありますが、安倍総理は、西太平洋からインド洋に及ぶ広大な海で米海軍と密接に連携してきたと、こう言い、トランプ氏は、この地域とより離れた地域で複雑な脅威から我々を守ると、こういうふうにも述べました。
 実態として、この間、インド洋などへも行って様々な訓練も既に「いずも」などが行ってきたわけですので、こうなりますと、まさに専守防衛の枠を超えて地球的な規模での様々な紛争に両国が介入をしていく、そういうものになってきているんじゃないかと思うんですが、そこの評価と、それがどういうことをもたらすのかということをそれぞれの参考人からお願いしたいと思います。

○参考人(岩崎茂君) 多分、太平洋、インド洋にわたるような活動というのは、インド洋については、最近始めましたマラバールというインドとの演習のことを言っていると思いますけれども、専守防衛を超えるか超えないかというのは、それはまさしく私たち自衛隊の判断ではなくて政治の判断だというふうに思っています。
 私たちの行動が、別に政治的に隔離されたわけではありませんし、全てが公表された形で政治に報告されて私たちの訓練、それからいろいろな対処、こういったことが行われていますので、私は専守防衛内の中でしっかりとやられているというふうに認識しております。

○参考人(柳澤協二君) ちょっと二つの点を申し上げたいと思うんですが、一つは、インド太平洋というビジョンが盛んに語られるんですが、本当に実態があるんだろうかということを考えたときに、特に海上自衛隊の船の数が五十四隻、五十四隻で、船っていうのは、常時高練度で動ける船って三分の一しかありませんので、そうなると、日本を防衛する本来のミッションを果たしながらインド洋まで出かけるというのは、これはもうそれだけで私は多分オーバーストレッチになってくるんだろう。そこは、だから本当に何に重点を置くのかということをよほど決めてやらなければいけないんだろうと思うんですね。
 そして、もう一つ、専守防衛ということでいいますと、もう既に、一般論として、兵器というのはいつでも攻撃にも使えるだろうということではあるんですが、特に私が注目しているのは、長距離巡航ミサイルとさっき申し上げた高速滑空弾なんですけれども、そういうものは使いようによっては敵国の奥深くも攻撃することができるようになるわけですね。それを、だからその運用をどうするかということを、別途どう縛るのかということを考えなければいけないわけですけれども、専守防衛というのは、守っているだけじゃ勝てないだろうと、こう言われるんです。しかし、その勝てるって一体何なんだろうかということなんですね。
 まさに、相手国の意思を力ずくで変えるということが戦争に勝つということであれば、そういう姿勢は取らないというのが本来日本の専守防衛の一番よって立つ原点の国家像だったと思うんですね。そこを本当に全体としてどう守っていくのか、変えていくのかということが政治に課せられた大きな論点だろうというふうに思います。

○井上哲士君 今のことに関して、運用のことというのがあるわけですけど、そういう敵攻撃能力を考えたときに、能力を持っていても運用でカバーしたらいいんだという考え方と、そもそもそういう敵に脅威を与えるような、そういう能力そのものを持つべきでないという両方の議論があると思うんですけれども、その点、参考人どうお考えでしょうか。

○参考人(柳澤協二君) それは、ですから、例えば今までの政府見解でも、ICBMとか攻撃型空母は持っただけで憲法に反するんだという見解を出していました。
 実は、ここで挙がっている装備はそれほどの装備ではないと思うんですね。そうしますと、脅威というものは、こちらが受け止めるときもそうですが、相手が受け止めるときも、能力と意図の掛け算で成り立つ概念であるとすると、そうすると、そういう能力を多少持っていたとしても、別途それは運用上の工夫といったような実は生易しい言葉では足りないと思うんですが、本当に政治的にそういう使われ方をしないという担保が別途あれば、理屈の上では相手国に脅威を与えないということもあり得るんだろうというふうに思います。

○井上哲士君 政治や外交の役割を柳澤参考人、強調されているんですが、先ほどから配られている資料と言っているのは、週刊金曜日の二月八日号の論文が私ども資料でいただいているんですけど、そこで強調されているのは、もはや力ずくで中国と張り合うやり方を再考して、いわゆる対立緩和の努力が必要だということを強調されています。そこで、米朝交渉が一つのヒントになるのではないか、それから、今おっしゃった攻撃する能力と意図ということを考えて対応することが必要だというのが書かれているんですが、この点、もう少し詳しくお述べいただけるでしょうか。

○参考人(柳澤協二君) 一つは、さっきも申し上げた、冒頭でも申し上げた際限ない運用の一体化と際限ない軍拡のようなその循環に入ってしまうんではないかという危惧を私は感じざるを得ないんですけれども、それはあくまでも能力に着目すれば、相手の能力がどんどん大きくなる、よってもってこちらの能力もどんどん増やさなければいけないという対抗関係、バランス勘定になっていくわけですね。
 そうではなくて、相手がどんなものを持ったとしても、それを我が国を害するために直接使うのかどうかというその意思の部分、動機の部分にどうアプローチするかということを考える、それが、米朝交渉を引き合いに出させていただきましたのは、まさにアメリカは制裁と圧力でもって北朝鮮の意思を変えようとしたけれども、かえって相手の動機を強めて、結束を強めてうまくいかなかった。そこで、去年の六月、強制というよりは、相手が欲しがっている体制保証というような御褒美を先に出すことによって、自発的に相手が意思を変えるようにするという手法が取られようとしたわけですね。
 そういうことを考えると、力あるいは軍事力によって解決するということを目指すだけではなくて、あるいは、少なくとも日本のような軍事的に比較的に大きくない国は、それを狙うよりは、もっと相手の国家の意思なり動機にどう働きかけるかということを考えるというのが米朝交渉からのヒントとしても得られるのではないかというふうに考えるということであります。

○井上哲士君 ありがとうございます。
 佐藤参考人にお聞きしますけれども、FMSの問題などにもお触れになりました。FMSもそうですが、同時に、この間のアメリカからの武器購入の経過を見ますと、大体、日米首脳会談の後などに、F35の追加購入であるとか、そしてイージス・アショアの購入などが決められると。トランプ氏が、日米貿易赤字は駄目だと言ったことに対応して安倍総理がたくさん買ってくれたというような発言も度々されているわけですね。
 ですから、どうもそういう言わば貿易赤字の解消とかいうことをもって一連の様々な大量の高額の武器購入がされているということに対する国民的批判も大きいと思うんですけど、この辺の実態をどのように御覧になっているか、お願いしたいと思います。

○参考人 拓殖大学国際学部教授(佐藤丙午君) 日米会談の後に武器の取引が成立する、若しくは会談を通じて日米の武器の取引が喧伝されるというのは、経緯の事実としてはそのとおりだと思いますけれども、そこに因果関係があるかということになると、それは不明確、若しくは因果関係はないと考えるのが適切なんではないかなというふうに思います。
 やはり、武器を購入し、それをそれぞれの国の中で運用するというのは、国家の戦略若しくは安全保障政策の中で合理化されるものですので、政治的なショーアップとしてそういうふうな文言が使われたとしても、それと安全保障政策における武器の購入というのは別のものだというふうに考えるべきなのではないかというふうに考えます。

○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。

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