国会質問議事録

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ODA特別委員会(インドネシア、バングラデシュでのODA石炭火発事業)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 海外の石炭火力発電所への支援についてお聞きいたします。
 まず、外務大臣にお聞きしますが、パリ協定以来、温室効果ガスを多く発生させる石炭火力発電所を廃止する動きが強まっております。グテレス国連事務総長は三月の二日、脱石炭連盟サミットに寄せたメッセージで、気温上昇を一・五度に抑える目標を達成するためには、石炭火力発電についてOECD加盟国は二〇三〇年までに、それ以外の国も二〇四〇年までに段階的に廃止することを求めました。さらに、主要排出経済国の指導者に対して、本年中の最も早い機会に石炭への自国の国際的な資金支援の終了を表明するよう求めております。
 外務大臣、先日の所信で気候変動問題については国際社会の取組をリードをしていくと、こう述べられました。逆に今、日本が主要七か国の中で唯一輸出支援をしている国としての批判も上がっております。国連事務総長のメッセージやこうした批判をどう受け止め、どう対応されるんでしょうか。

○外務大臣(茂木敏充君) 気候変動問題への取組、今、国際社会、日本を含め主要国だけでなく各国が最優先で取り組むべき今喫緊の課題だと思っております。
 昨年の十二月に決定をしましたインフラシステム海外展開戦略二〇二五におきまして、世界の実効的な脱炭素化に責任を持って取り組む観点から、今後新たに計画される石炭火力輸出支援の厳格化を行ったところであります。また、海外で新設される石炭火力発電所に対するODAによる支援について、現時点でこの新方針が適用されるODAプロジェクトはない、このように理解いたしております。いずれにしても、相手国のエネルギー政策や気候変動政策にエンゲージを深めることで脱炭素化を促すという基本方針を踏まえて取組を進め、脱炭素社会の実現をリードしてまいりたいと思っております。
 国際社会の声は私なりには十分理解をしています。そして、そういった声にはしっかり応えていかなきゃいけないと思っています。

○井上哲士君 今ありましたこのインフラシステム輸出戦略の中で、輸出相手国の脱炭素化への移行方針等が確認できない場合は原則支援しないということになりました。これ、国内外のいろんな声に応えたものだと思いますが、しかし抜け穴だらけだという指摘もあるんですね。その大きなものが、現在進行中の案件には適用せずに支援を続けるということであります。
 JICAとして、今進行中の案件は一体何で、これはどうして継続をするんでしょうか、お答えください。

○独立行政法人国際協力機構(JICA)理事長(北岡伸一君) 御質問ありがとうございます。
 私は平成三十年から三十一年にかけてパリ協定と日本の経済成長をいかに両立させるかという委員会の座長をやっておりまして、この問題の重要性は十分認識しているつもりでございます。そのときは、委員会の、懇談会の中の意見が十分まとまりませんで、必ずしも十分な明快な結論は出せなかったと記憶しております。したがって、昨年の十月に総理が新方針を打ち出されたというのは大変私は明快で、歓迎、喜ばしいと思いましたし、また、私はかつて国連大使を務めておりましたが、国連関係者からも歓迎のメッセージが届けられて、大いにちょっと面目を施した次第でございます。
 ところで、その中で昨年十二月にインフラシステム海外展開戦略二〇二五が決定されまして、世界の実効的な脱炭素化に責任を持って取り組む観点から、今後新たに計画される石炭火力輸出支援については厳格に対応するという方針であるということを承知しております。
 これで委員が抜け穴と言われたものの多分念頭に置いておられるのは、バングラデシュに対するマタバリ超超臨界圧石炭火力発電計画フェーズ2及び対インドネシア円借款インドラマユ石炭火力発電計画ではないかというふうに想定しながらお答えを続けたいと思うのですが、政府の方針が以上のものであるという中で、我々独立行政法人で政府が決めたことを何でもすぐそのとおりやるというわけではございません。それはちょっと実行困難だとか、少し事情は違いますよといって意見を申し上げることはあります。しかし、その政府との十分な協議の下にやっていくと。外務省及び政府との関係は大変順調、円滑にやっております。
 また、もう一つ申し上げたいのは、我々、要請主義というのを取っておりまして、相手国からの要請に応じてやると。一部の国がやるような、これはしてやると、上から目線で押し付けるというような援助はしないという立場を取っております。言い換えれば、相手国との合意は守ると、やっていくというのが私どもの立場でございます。
 インドネシアについては後ほどより詳しい前インドネシア所長でありました理事からお答えすることにしまして、バングラデシュについて申し上げますと、バングラデシュはかつて世界最貧国と言われました。最貧国の一つでありました。ところが、現在、二〇一八年のレベルで一人当たりGNIが千七百五十ドルまで来て、二〇二六年には、後発開発途上国、LDCを卒業するという勢いでやってきているわけであります。この成長の過程でやっぱり一定の電力が必要だというのは否定できない事実だろうと思うんですね。
 ですから、そういう国からの要請があって我々話合いはしますけれども、引き続き要請があるものを、既に一度約束して進めているものをこちらから、あれはやめたいとはなかなか言えないというのは、あるいは言うべきでないだろうというふうに考えております。

○井上哲士君 政府間合意、強調されるんですけど、政府間の大筋合意後に相手から取り消した例はあるわけですね。インドネシアとの関係で言いますと、過去、気候変動対策プログラムローンをフランスと三期にわたり協調融資した後に、四期目についても大筋合意後にインドネシア側から突然取り消されたということもありました。
 これ、両計画とも様々工事に関わる環境や農業、漁業への深刻な問題もあるわけでありますけど、私は、もちろんODAは相手の要請必要です。ニーズ必要です。だけど、こういう地球温暖化という国際的な課題で取組も続いている中で、それだけでいいのかということが問われると思うんですね。
 冒頭述べたように、OECD以外の国も四〇年までの石炭火力発電所の廃止が求められております。今の案件で言いますと、マタバリ2は二〇二八年、インドラマユは二〇二六年が稼働開始の計画になっているわけですね。そうしますと、二〇四〇年まで十数年しかありません。だから、それを超えて稼働させることになりますとパリ協定の目標と整合しないんじゃないか、逆に、そこで稼働停止となりますと座礁資産となりまして、売電収入のないままに数十年掛けて返済をすることで国民の重い負担になると、こういう問題が起こると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○参考人(北岡伸一君) お答え申し上げます。
 二〇四〇年までに途上国でも石炭火力発電を廃止する必要があるというのは、これは国際的な合意というよりはそういう意見を持っている、おられる団体、方々もあるということだと思います。更に申し上げますと、私は、地球温暖化というのはグローバルな課題でありまして、それぞれの国がそれぞれの国の立場に応じた責任を果たすということだと。これは国際合意でございます。
 そうしますと、より大きな責任を持っているのは、第一に、産業革命以来、膨大な二酸化炭素を排出してきた欧米の先進国、それから、現在、多くの二酸化炭素を排出している国々であって、現在途上国でまだ発展しつつある国の責任は割合小さいと。したがって、彼らにはまだ発展の権利があり、これに、二酸化炭素削減に協力する責任は相対的に、あるとは思いますよ、でも、相対的に少ないというふうに考えるわけであります。
 したがって、この我々の制度、非常に、石炭火力としては二酸化炭素排出の少ないものに取り組んでいくということを支援するというのは、今のところ正当であるというふうに考えております。

○井上哲士君 超超臨界といいましても、液化ガスの発電と比べますと倍のCO2排出になりますから、私はパリ協定と整合しないと思うんですね。それで、私申し上げているのは、むしろそういうものを途上国の支援としてやっても、逆に座礁資産となって、その国にとってもプラスじゃないのではないかということを申し上げているんです。
 今、ダイベストメントの動きが大きく広がっております。イギリスのスタンダードチャータードやイギリスHSBCは、ベトナムのビンタン3の融資から撤退いたしました。アメリカエネルギー経済・財務分析研究所によりますと、既に世界で百三十以上の大手銀行、保険会社が石炭火力発電への関連投資に制限を掛けていると、こう言われております。日本でも、三菱商事がベトナムでのビンタン3計画から撤退する方針という動きがある。
 結局、投資家は、将来見通して、こういう国際的な批判があるものに投資するのがいいのか、そして事業としてもこの再生エネルギーのコストが下がる中で成り立つのかと、こういう判断をして、投資をするべきでないという投資家が声を上げていることがこういうダイベストメントの背景にあると思うんです。
 こういう流れを見れば、石炭火力発電所が座礁資産になると、こういう可能性は私は高いと思いますけれども、改めていかがでしょうか。

○参考人(北岡伸一君) ダイベストの動きが非常に加速している状況はよく存じております。ですから、我々は国際会議ではこれまでやや肩身の狭い思いをしておったんですが、少しほっとしたという感じがございまして、実は、先ほど申し上げました懇談会でも、ある委員の方が、お名前は出しませんが、自分ほどこれまで石炭火力を造ってきた人間はいないと思うと。しかし、これはもう無理だということを言っておられて、そういうトレンドがあったのはよく承知しておりまして、今はそれが広がっているということは確かであります。
 ただ、先ほど要請国主義で申し上げましたとおり、後ほどお尋ねがあるかもしれませんが、相手国とよく相談して、幸い、私ども、バングラデシュともインドネシアとも非常に良い関係がありますので、おたくの将来にとって本当に何がいいかを一緒によく考えましょうということをやっていくと。これを併せてやりたいというふうに思っております。
 一方的にやるのは非常にまずいと思っておりますし、外交関係からも、また、もし電力が必要だと、しかし石炭火力できないということになったら、彼らは違った国、違った方法に行くかもしれないと。それはやっぱり一緒に考えていくという姿勢は崩さないでやっていきたいというふうに思っております。

○井上哲士君 日本が撤退したら中国がということを言う方もいらっしゃいますが、中国はバングラデシュでの石炭火力発電事業に投資することを撤退したと、先日報道もありました。
 いわゆる座礁資産ということでいいますと、コストの問題もあるんですね。先ほどのグテレス事務総長のメッセージの中では、石炭の経済的に見た生存可能性は低下している、パンデミックによってこれは加速してきたと、事実上、全ての市場において、今や新たな石炭火力発電所を造るよりも新たな再生可能エネルギー能力を使った方が安価であると、こういう強調をしております。
 実際、二〇二〇年にイギリスのシンクタンクのカーボントラッカーが発表した分析では、バングラデシュとインドネシアを含むアジアの多くの国と地域では、新設の石炭火力よりも再生可能エネルギーの新設の方が安いと、こう指摘をされているわけですね。
 ですから、長期的に見ても、こういうコストがどんどん再生可能エネルギーが下がっている下で高い石炭火力を造ることが結果としては相手国の重荷にもなると、そういう立場から日本がこの見直しを図るということが相手国にとっても必要だと思うんですけれども、併せてどうでしょうか。

○参考人(北岡伸一君) 再生エネルギーがどれほど経済的かどうかというのはその国の置かれた条件にも非常に関わりまして、ヨーロッパの特にオランダとかデンマークの辺りと日本とではいろいろな条件が違うのは御存じのとおりであります。
 したがって、それから、先ほど言われた、中国と言われましたが、私は中国とは言っておりませんが、他の国の他の方法、つまり原子力ということもあり得ます。いろんな方法で出てくる可能性もあるという、そういう外交的な配慮も私はするべきではないかと思っております。
 いずれにしても、どちらがより長期的に効果的だということは、最終的に判断をするのは向こうの政府であります。よく相談して、我々はこういう方法ならこういう支援ができるということを相談しながらやっていきたいというのが我々の基本方針であり、また政府の御方針だというふうに理解しております。

○委員長(松下新平君) 時間が参りましたので、おまとめください。

○井上哲士君 インドネシアもバングラデシュも、この電気余剰というものもあるわけですね。本当に今必要なのかということが問われております。
 イギリスは、昨年十二月に海外の石化燃料プロジェクトへの公的資金の投了を宣言いたしました。日本も世界をリードしていくということであるならば、改めてこういう方向を、今の方向を見直して、再生可能エネルギーの推進こそ支援をするべきだということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。

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