国会質問議事録

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ODA・沖縄北方特別委員会(ジェンダー平等主目的ODA案件の拡充)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 外務大臣からのODAの予算説明で、SDGsの達成に向けた取組を主導していくとされました。政府のSDGsアクションプラン二二では、そのトップで、あらゆる人々が活躍する社会・ジェンダー平等の実現を掲げております。
 そこで、ジェンダー平等推進と、促進とODAについてお聞きいたします。
 外務省は二〇一六年に女性の活躍推進のための開発戦略を策定しています。その内容、及びこの戦略に基づいてどのようにODAにおけるジェンダー平等や女性のエンパワーメントも進めてきたのか、いかがでしょうか。

○外務大臣(林芳正君) 二〇一六年の五月に策定をいたしました女性の活躍推進のための開発戦略では、特に重視する取組として、女性と女児の権利の尊重、女性の潜在力を引き出すこと、そして政治、経済、公共分野における女性のリーダーシップ向上、これを三つの大きな柱として掲げまして、これら重点分野を中心とした開発協力を行っております。
 その後、二〇一六年の十二月に開催されました第三回の国際女性会議、WAW!でございますが、この女性の活躍推進のための開発戦略の下で、女性の権利の尊重、能力の発揮、リーダーシップの向上を重点分野として、二〇一六年から二〇一八年までの三年間で総額約三十億ドル以上の支援を行う旨を表明し、着実に実施をしたところでございます。
 また、二〇一九年の三月に開催いたしました第五回の国際女性会議、WAW!では、二〇二〇年までの三年間で、最低四百万人の途上国の女性たちに対して質の高い教育や人材育成の機会を提供するということを表明し、これも着実に実施してまいったところでございます。そして、昨年五月のG7外相会合で合意されました女子教育宣言、これも踏まえまして、七百五十万人の途上国の女子の教育及び人材育成のための支援を約束し、既に拠出や支援を開始したところでございます。
 政府としては、ジェンダー平等の実現と女性、女児のエンパワーメントは全てのSDGsの目標とターゲットの進展において重要であると考えておりまして、引き続き取組を進めてまいりたいと考えております。

○井上哲士君 このODAでのジェンダー平等の推進は国際的にも重視をされてきました。OECDの中で途上国支援について専門的に議論し検討を行っている組織としてDAC、開発援助委員会があって、現在二十九か国とEUがメンバーです。
 このDACでは、国際的な指標として、このODAのジェンダー案件をプリンシパルそしてシグニフィカント、この二つに分けておりますが、それぞれの定義はどういうことでしょうか。

○外務省大臣官房 地球規模課題審議官(赤堀毅君) お答えいたします。
 政府開発援助のジェンダー案件に関し、経済協力開発機構開発援助委員会が定める指標のプリンシパル、すなわち主要目的とは、ジェンダー平等がプロジェクト又はプログラムの主な目的であり、また計画の設計と期待される結果において根幹的であることを意味しております。
 一方、シグニフィカント、重要目的には、ジェンダー平等が案件形成を成り立たせる主要な理由ではないものの、案件においてジェンダー平等を重要なかつ意識的な目的として掲げているものが該当いたします。

○井上哲士君 お手元にJICAの今のに基づく分類表もお配りをしております。【220315配付資料①.pdf
 そして、二枚目、グラフ一を御覧いただきたいんですが、これ二〇二一年三月のOECDの報告書にあるものですが、このDAC各国のODAにおけるジェンダー案件の比率を比較しております。二〇一八年から二九年の日本のODA実績額の約半分がジェンダー案件となって、DAC平均値を超えております。しかし、プリンシパル、ジェンダー平等主目的案件で見ますと、日本の比率は〇・八%で、DAC平均値四%から大きく下回って、このDAC加盟国の中では最下位レベルになっているんですね。
 なぜこのように日本の比率は低いんでしょうか。

○政府参考人(赤堀毅君) お答えをいたします。
 OECDの報告書に基づけば、御指摘に加えまして、二〇一八年から二〇一九年にかけて日本政府が実施したジェンダー平等を主目的とする支援の金額ベースでは二十九か国十一位でございます。
 このような結果、このような支援の結果は、限りあるODA予算の中で被援助国のニーズや要望に基づき決定した、し、実施した結果でございます。

○井上哲士君 減ったとはいえ、日本のODAの総額は五番目なんですね。ですから、金額多いのは当たり前だと思うんですよ。やっぱり、その条件に応じた、日本の力に応じたこの支援というものがどういう比率でやられているかということをちゃんと見る必要があると思うんですね。このジェンダー平等主目的案件の比率がこのDAC平均の五分の一にすぎない、DAC加盟国の中で最下位レベルになっているということをやっぱり率できちんと私は見るべきだと思うんですね。なぜこうなっているのかと。
 日本のODAは経済インフレ、インフラ分野が半分を占めており、教育や保健分野の比率が低いということがこれまでも問題になってきました。そのことがジェンダー平等主目的案件の比率の低さに表れていると思います。特にジェンダー案件ではやはり教育分野の配分が低いと。
 インフラ整備でも、例えばジェンダー案件の女性に優しいインフラとしてODA白書で紹介されているのが、インドのデリーの高速輸送システム建設事業です。これ見ますと、女性専用車両とか防犯カメラ、非常通報装置の設置など、これ、女性が安心して利用できる公共交通機関としての整備を行っています。こういうインフラ整備の中でジェンダー平等をしっかり位置付けるということは、これは私は大事だと思うんですね。女性や女児の権利の尊重や脆弱な状況の改善のために役割を果たしていると思うんです。
 しかし、一方、ジェンダー平等や女性のエンパワーメントを推進をするためには、そういうインフラ整備にとどまるんじゃなくて、ジェンダー平等主目的案件とされている事業、特に、女性たちが教育を受ける権利や、機会や権利が保障されるようにする教育分野の比率を更に増やしていくということが必要だと思うんですね。
 ところが、実態はどうか。グラフ二を見ていただきたいんですが、日本のジェンダー平等主目的案件の比率は、二〇一〇年は一・九%、二〇一一年は二・八%でした。ところが、減り続けて、直近の二〇一九年は〇・八%で、二〇一八年の一・〇%より更に下がっているわけですね。ですから、このジェンダー平等主目的案件の割合は、OECD平均よりも大幅に少ないにもかかわらず更に減少していると。【220315配付資料②.pdf
 私はこれ大きな問題だと思いますけれども、いかが、大臣いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) このジェンダー平等を主要目的とする開発援助案件比率、これを上げていくことは重要だというふうに考えますが、限りある予算の中で被援助国自身のニーズや要望等も踏まえながら様々な支援を行う必要があると考えております。
 持続可能な開発のための二〇三〇アジェンダ、これ国連サミット二〇一五年だったと思いますが、これに記載されておりますように、ジェンダー平等の実現と女性、女児のエンパワーメントは全てのSDGsの目標とターゲットの進展において重要であると理解しておりまして、人間安全保障の推進の観点からも、引き続き、被援助国のニーズや要望を踏まえながら、ジェンダー平等を主要目的とする案件の重要性にも留意して取り組んでまいりたいと考えております。

○井上哲士君 相手国のニーズや要望は必要なんですけど、どうしてもやっぱりインフラ整備が大きく要望されることあるんですよね。本当にこれ引き上げていこうと思ったら、明確な目標を持って日本が取り組むことが必要だと思うんです。
 で、手元の資料の丸、三つ目は、この女性の活躍推進のための開発戦略に掲載されている図なんですね。【220315配付資料③.pdf】先ほど、三つの目標ということ、重点ということを言われましたけども、この表を見ましても、この権利の尊重を土台にしながら、あっ、済みません、この表を見ましても、女性に優しいインフラの整備とか差別の撤廃と暴力根絶は、この女性や女児の権利の尊重、脆弱な状況の改善のために役割を果たしていると思うんです。
 しかし、これ、これを踏まえて、この矢印は、この権利の尊重を土台にしながら、女子教育、職業訓練など能力の発揮のための基盤の整備は、政治、公共分野でのリーダーシップの強化を進めてこそジェンダー平等、女性のエンパワーメントが進んで、持続可能な開発を推進し、地域と国際社会の平和と安定に積極的に貢献できると、そういう流れをこの図がはっきり示していると思うんですね。
 ですから、やっぱり女子教育やリーダーシップ強化などのジェンダー主目的案件の重要性を政府の開発戦略自身が強調しているわけです。にもかかわらず、先ほど示したように比率はむしろ減少傾向でありますし、先ほどの最初の答弁でいいますと、教育は額が多いんだと、こういうことが発言があって、やっぱり比率がやっぱり少ないということを余り問題に思っていないというのは、こういう自ら決めた開発戦略への姿勢も問われると私思うんですね。
 大臣、是非こういう姿勢を改めて、目標を持ってこのジェンダー主目的案件の比率を引き上げるべきだと思います。少なくとも、その比率を現在の〇・八%からDAC加盟国の平均値四%まで引き上げるという努力をするべきではないでしょうか。それでこそ私はSDGsに向けた取組を主導できると思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) ジェンダー平等の実現と女性、女児のエンパワーメント、これは、先ほども申し上げましたように、全てのSDGsの目標とターゲットの進展において重要でございまして、今委員からの御指摘のありましたように、DAC加盟国の平均値に近づけていけるよう努力するということは重要であるというふうに考えております。
 他方、先ほど申し上げましたように、限りある予算でございますから、具体的な対応について被援助国のニーズや要望を踏まえながらしっかりと検討してまいりたいと考えております。

○井上哲士君 平均値へ近づく努力は重要であるという答弁がありました。是非、明確な目標を持って取り組んでいただきたいと思います。
 政府は、二〇二〇年三月に、女性のエンパワーメント推進に関わるODAの評価、第三者評価を出しておりますが、これはこの開発戦略改定への提言となっております。この評価の中で、開発戦略は二〇年以降に改定予定とされておりますが、まだ改定はされておりません。国連NGOや、国際NGOや開発関係団体が求めているように、改定プロセスを明らかにしていただきたい、そしてその上で、是非、市民社会が参加をしていくと、直接、そのことを是非お約束いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 女性の活躍推進のための開発戦略、この改定の具体的な時期や方針につきましては、新型コロナが及ぼす影響を含め、関連する様々な議論を踏まえて検討しておるところでございます。
 現在の国際社会では、政府だけでなく、民間企業、地方自治体、NGOといった多様な主体が開発途上国の持続的な開発において重要な役割を果たしております。そうした状況も踏まえまして、市民社会や専門家などの外部有識者の方々の意見は重要だと考えておりまして、戦略の改定においてはしかるべく意見交換等の場を設けたいと考えております。

○井上哲士君 本当にNGOの皆さんなど、そういう意見交換の場を求めていらっしゃいますし、是非、直接その改定の作業に関われるような、そういう参加を強く求めたいと思います。
 この第三者評価は三つの提言をしております。一つは日本のジェンダー分野を代表する案件の形成、二つ目は成長重視型マネジメントの導入、三つ目が人材、資金の拡充と体制強化ということであります。この三つの提言をこの新たな開発戦略の改定にどのように生かしていかれるのか、この点もお願いします。

○国務大臣(林芳正君) この第三者評価でございますが、今委員から御紹介いただきましたように、日本のジェンダー分野を代表する案件の形成、また成果重視型マネジメントの導入、人材、資金の拡充と体制強化、この三点について提言いただきました。この提言に基づきまして高評価を受けてきた女性支援案件を国際会議の場で周知をいたしまして、他国との連携等に努めておりますほか、開発援助案件に係る企画立案、実施、評価含め、あらゆる段階でのジェンダー主流化、これを更に推進すべく努めておるところでございます。
 また、この女性のエンパワーメント推進のためのリソースの拡充と、そして体制強化の観点から、外務省では、経済協力に係る担当課への研修プログラム等におきましてジェンダー平等推進の重要性に係る認識の向上、これを進めておるところでございます。
 いずれにいたしましても、女性活躍推進のための開発戦略、これを改定するに当たっては、ジェンダー平等、また女性のエンパワーメント推進に向けた取組、これ、より効果的に実施できますように、第三者評価でいただいた提言を踏まえながら作業を進めてまいりたいと考えております。

○井上哲士君 是非、繰り返しになりますが、NGOを始めとした関係団体の皆さんの声を広く聞いて、そしてやっぱり主目的案件の比率を上げるという目標を持ってしっかり取り組んでいただきたいと思います。
 強く要望して、質問を終わります。

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