国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2022年・208通常国会 の中の ODA・沖縄北方特別委員会(第8回アフリカ開発会議に向けたODAの在り方に関する参考人質疑)

ODA・沖縄北方特別委員会(第8回アフリカ開発会議に向けたODAの在り方に関する参考人質疑)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今日は、お二人の参考人、ありがとうございます。
 まず、池上参考人にお伺いいたします。
 去年の六月にプラン・インターナショナル・ジャパンで、女性の活躍推進のための開発戦略の改定に係る要望書を出されました。あのときに、プランの方から説明を聞いて懇談をする機会もありまして、お世話になりましてありがとうございます。
 この要望書も参考にして今年三月にこの委員会でも質問をしたんですけど、やっぱりODAにおけるジェンダー案件を拡充をするということ、先ほど、例えば医療にかかる場合でも橋がないというお話もありましたけど、やっぱりそのインフラも含めて拡充をするということが女性の社会参加等に大事だということがアフリカで具体的にどういうふうに現れているのかということをまずお聞きしたいと思います。

○参考人 公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン理事長(池上清子君) まず、プランのこと、お話聞いていただいたとのことです。ありがとうございました。
 ジェンダーというのは非常に幅広くてどの分野にも共通しているものなんですけれども、課題なんですけれども、ODAというオフィシャルなものというか、中で、じゃ、ジェンダーをどう取り扱ったり、どういうふうなプログラム、プロジェクトにして支援ができるかというのは、本当にちょっとなかなか難しいかなという気がいたします。
 ですから、例えばジェンダーの中で男女共同参画みたいなシステムを強化するとか、それから女性の、何というのかな、次世代、つまり子供を産み育てるというところに女性たちがそれぞれ相互で支援をし合う、つまり助産師さんが、男性じゃなくて女性で支援をしていく。日本は男性の助産師さんいるわけですけれど、そういう意味では、もう少し、何というのかな、女性と女性の間で支援ができるというのがいいかなという気がします。
 それで、一つ事例として思い浮かべるのが、アフリカは、固定の電話、つまり固定電話というか線がつながっている電話というのは非常に少なくて、今や携帯電話の方が、サテライト使った携帯電話の方が多いわけですよね。そうすると、そのサテライトの電話を使って、おしゅうとめさんとそれから若い人とを一緒に、何というのかな、教育というよりは啓発活動の中で一緒の話をして、おしゅうとめさんに言いにくいこともお嫁さんが、若い人が言えるようにというふうな形を含めて、息子である男性を取り合うんじゃなくて、息子も一緒に入れながら家族の中で話ができるようなという、そういうシステムができつつあるんですね。ですから、それは一つのモダンな技術、つまり携帯電話というふうなものを使いながらうまくできることの一つかなというふうに思います。これは、やはり間接的には教育ということにつながってくるのかなという気がいたします。
 ありがとうございます。

○井上哲士君 続いてお聞きするんですけど、この質問の中で、ジェンダー案件の比率を高めると同時に、いわゆるジェンダー主目的、プリンシパル案件を上げることが必要だと、この皆さんの要望書にもあったわけですけど、これ、OECDの平均で見ますと、日本の比率が全体の〇・八パーで、DAC平均の四パーから非常に少ないということも外務大臣に申し上げますと、平均に向けて上げていくことは重要だと、こういう御答弁はあったんですね。
 どうしても、先ほどもありましたけど、その国やその社会の現状からくる要望だけでいきますとやっぱりなかなか上がっていかない。この主目的案件の比率を高めるということの重要性とか、そういう具体的に何かこういうことが必要だとかというのがあればお願いしたいと思います。

○参考人(池上清子君) なかなか難しい御質問です。
 具体的にどういうことが本当にできるかというのは、私たちも日々考えてトライをしていますけれども、やはり重要なことというのは、やはり、アフリカだとか途上国の方がもしかすると、ある意味、議員さんの段階では男女が結構バランスがいいと思うんです。一方、ビジネスの方でいくと、圧倒的にやはり男性が強い、アフリカはそういう感じです。ところが、プライベートな、何というんですかね、マーケット、普通の市場なんかで活躍しているのは、マーケットマミーと呼ばれるお母さんとかおばあさんたちなんですよね。
 ですから、そういう意味でいうと、彼女たちが頑張って経済活動をある部分支えているというふうな認識を持って、社会の中で活動するという自分の位置付けというのをもう一度再認識してもらう教育とか情報の発信というのがあると、彼女たちはもう少し社会の中で自分たちの役割というのを考えるということができるのではないかなという気がします。
 ですから、それは、自分で考えるというよりも、客観的に外の人に言ってもらうというプロセスがあると、もしかすると考えやすいのかなという気がいたします。
 ありがとうございます。

○井上哲士君 日本のODAが全体としてインフラ偏重で、やっぱり教育とか保健の分野が非常に少ないと言われてきましたけど、ジェンダー平等を前進させる上でもやっぱりそのところが必要だなということをお聞きしながら感じておりました。
 次に、加藤参考人にお聞きいたしますけど、ナカラ回廊開発の一つで行われてきたモザンビークのプロサバンナ開発についてお聞きいたします。
 私も何度かこの委員会や外交防衛委員会で質問をしてきたんですが、小農が大部分を占めるこのモザンビークの農業を大規模化して大豆などの輸出用穀物の一大生産拠点とするという構想で、二〇一一年から始まりましたけど、結局、マスタープランが完成しない状態で二〇二〇年に終了した、まあ事実上中止ということになったわけですね。
 これ、二〇一三年のTICADⅤの目玉とされましたけど、当時、現地から小農民の皆さんとか市民社会の方が横浜まで来られまして、結局、農民の土地収奪につながるとかいうことで反対をされたという経過がありました。結果としてマスタープランに行かないまま中止になったわけですけど、ちょうどこのTICADⅤというのが、先ほどありましたように、援助から投資へという大きな転換だったということを言われたんですね。
 その結果として、やっぱりこの現地の住民や農民の皆さんのきちっとしたやっぱり合意とか実態というのよりもその投資ということが重視をされた結果ではないかというふうに私は見ておるんですけど、結果としてこの事実上の中止になったということについては、JICAとしては、どういう問題があり、どういう反省をされているんでしょうか。

○参考人独立行政法人国際協力機構上級審議役 (加藤隆一君) 御質問ありがとうございます。
 委員御指摘のございましたプロサバンナ事業につきましては、モザンビーク北部の小規模農家を中心とした地域住民の農業の生産性向上を目指した農業開発事業でありまして、その事業自体は大きく進展したというふうに考えております。
 モザンビーク政府から、日本の本事業への支援をモザンビーク農業政策に十分生かせるようになったということで、本事業の一環として行われたコミュニティレベル開発モデル策定プロジェクトが二〇二〇年の五月に終了したということをもって本事業を完了したと、したいという申出があったということで、これを受けまして、二〇二〇年の七月十六日に、日本、モザンビーク両国の間で事業の完了を確認したということであります。
 JICAといたしましても、日本政府とも相談しながら、今後もモザンビーク政府の開発努力を支援していく考えでございます。
 ありがとうございます。

○井上哲士君 これ税金三十五億円が投じられたわけですけれども、今もお話ありましたように、結局まあ途中で、完了と言いながら、やっぱり中止になったわけですよね。
 経過の中では、例えば、同国の弁護士会がこの同事業が憲法の知る権利を侵害しているということで行政裁判にかけて、その主張を認めるような判決もありましたし、これ、JICAの資金でいろんなこの現地のコンサルタントを雇っていろんな市民社会を分断するような工作をしていたということも、現地の市民社会からの告発もありました。私もこちらで現地の方の訴えを聞いたことありますけど、JICA資金によって市民社会が分断がつくり出されて人権侵害が行われていると、こういう訴えもされたわけですよね。
 やっぱりJICA自身の環境社会配慮プログラムにやっぱりそぐわないことが起きていたんじゃないかと、私、こういうことへの反省が必要かと思いますけれども、いかがでしょうか。

○委員長(青木一彦君) 時間が参っておりますので、簡潔にお願いいたします。

○参考人(加藤隆一君) はい。
 ありがとうございます。
 まず、マスタープランの件でございますけれども、二〇一六年十一月に、地域住民、農民から得た意見を反映したマスタープランの案をモザンビーク政府に提出済みでございます。一般に、JICAの協力を経て作成されたマスタープラン案の扱いにつきましては被援助国が決定しているわけでありますけれども、モザンビーク政府の方としましては、マスタープランの内容はモザンビークの農業政策に既に生かされており、今後も参考にするというふうな立場でありまして、ODA事業として実質的な目的を果たして完了したというものと認識をしております。
 また、行政裁判の件でございますけれども、この行政裁判自体、御指摘の判決につきましては、マプト市の行政裁判所がモザンビーク憲法で保障された知る権利に基づいて農業省にプロサバンナ事業に関する情報開示を命じたものであり、そのプロサバンナ事業そのものが違憲あるいは違法だと認定したものではないというふうに認識しております。
 以上でございます。

○井上哲士君 ありがとうございました。終わります。

ページ最上部へ戻る