国会質問議事録

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外交防衛委員会(ロシアのウクライナ侵略/旅券申請のデジタル化と大規模災害被災者への減免)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、ロシアによるウクライナ侵略に関わって国連改革についてお聞きいたします。
 安保理では、ロシアが拒否権を発動して非難決議を葬りました。しかし、国連加盟国の多数が拒否権の濫用だとして、特別会合を開いて、加盟国の七割を超える百四十一か国の賛成でロシアの非難の総会決議を上げ、その後、人道決議も上げました。もはや大国だけで世界を動かせるものではないということを、核兵器禁止条約の採択に続いて示したと思います。一方で、安保理が必要な機能を果たしてないということもあるわけでありまして、本当に今改革が必要になっていると思います。
 日本は、フランス等が提案している安保理の拒否権を抑制する提案を支持しておりますけれども、先ほども指摘がありましたが、常任理事国が拒否権を使った場合に国連総会を開いて説明を求める決議についても共同提案国になっております。
 この決議、どういう効果を期待しているのかということと、やはりこの大国の横暴や覇権主義の正当化を許さないような国連改革の必要性について、大臣の認識を伺いたいと思います。

○外務大臣(林芳正君) 国連は、さきの大戦後、二度と戦争を起こさないための組織として創設をされたわけでございますが、常任理事国に拒否権がございまして、特に米ソの冷戦時代には、国連が国際の平和と安全の維持の機能を果たすことができないと、こういう事例が数多くあったこと、これも事実でございます。そして、今回のロシアの一連の行動が、こうした国連が抱える問題を改めて浮き彫りにしたということだろうと思います。安保理改革や総会を通じた対応が大変重要であると考えておるわけでございます。
 安保理について、その構成が現在の国際社会の現実を反映するように改革することで、正統性と代表性、これを改善してより効果的な安保理にすべく、引き続き多くの国々と協力してリーダーシップを取っていく考えでございます。
 国連総会において、今、井上委員からお話がありました、リヒテンシュタインが、安保理の常任理事国が拒否権を行使する場合にその説明を求める国連総会の会合を開催すること等を主な内容とする決議案を出したところでございます。
 この決議案は、拒否権の問題への一定の手当てとなり、拒否権行使は一般に最大限自制されるべきであると、こういう日本の問題意識、これに合致するものであることから、岸田総理の指示によりまして共同提案国になることを決定をいたしたところであります。共同提案国数が今、日本、米国、ドイツ等を含めて現時点で五十以上でございまして、できる限り早く採択されるように調整されているところでございます。
 我が国として、米国や他の多くの共同提案国とも連携しながら、決議案がより多くの賛成を得て採択されるように各国への働きかけを行い、積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

○井上哲士君 国連が、この世界の平和の秩序の維持にふさわしい、求められる役割を発揮できるような改革を是非求めていきたいと思います。
 その上で、旅券法の改正について質問をいたします。
 まず、旅券の電子申請を可能にすることについて。
 かつて、二〇〇三年度から取り組まれたものの、申請者の利用が伸びずに、二〇〇六年に事実上の廃止、財務省が事実上の廃止を要請して終了になった経過がある。その経緯や、また、今回どういう反省があるかというのは先ほど答弁もありましたので、これはちょっと飛ばしますが。
 その上で、先ほど大臣からも、この政府のデジタル社会の実現に向けた重点計画の中で、様々な行政手続のデジタル化の一つとして旅券申請を挙げていて、この計画に沿った法改正ということでありますが、利便性があるとしても、プライバシーへの懸念などからマイナンバーカードは持ちませんという選択をする国民がまだ大勢いるということも忘れてはならないと思うんですね。旅券は国民の海外渡航の自由に関わる制度でありますから、政府のデジタル推進に左右されることなく、通常の申請というのは今後も保障していかなければならないと思いますけれども、この点での認識はいかがでしょうか。

○外務省 領事局長(安藤俊英君) お答え申し上げます。
 マイナンバーカードにつきましては広く普及しつつあると認識してございますけれども、また、スマートフォンやパソコンを所持していない申請者あるいはそういった機器に不慣れな申請者などの利便性を考慮いたしまして、引き続き紙媒体による旅券の発給申請手続を維持しつつ、新たな申請方法として電子申請を実施するということにいたしております。

○井上哲士君 繰り返しますが、国民の海外渡航の自由に関わる制度でありますから、従来の方法を取られる方の利便性が後退することがないということも求めておきたいと思います。
 その上で、大規模災害被災者の減免についてお聞きします。
 大規模災害の被災者の手数料の減免を可能とする改正が盛り込まれたわけですが、これまでに、自然災害が発生した際に複数の県が独自に手数料の免除を行った事例があって、それも参考にしたということでありますが、その実績について、いつどの災害であったのか、実施した都道府県、免除の対象とした被災者や災害の基準について御説明いただきたいと思います。

○政府参考人(安藤俊英君) まず、国におきましては、平成二十三年の東日本大震災を受けまして震災特例旅券法を制定いたしまして、旅券の発給の申請に係る手数料の免除を行ったところでございます。
 今回の法改正は、今後大規模な災害が発生する際に迅速に被災者に対する支援を実施できるよう、こうした災害の被災者について手数料の減免を行うために一般規定を新設するものでございます。
 委員御指摘のとおり、都道府県によっては、大規模な災害に際し、都道府県が徴収する旅券手数料の免除を行っている場合があるというふうに承知してございます。幾つか例を挙げるとしますと、平成三十年の西日本豪雨災害の際には岡山県や広島県など、それから令和元年の台風十九号等の際には福島県や長野県等において県の旅券手数料の免除を行ったというふうに承知してございます。
 免除に当たりましては、都道府県ごとにその地域の災害の規模や被災状況等を勘案したものというふうに承知しておりまして、その被災者や災害の基準について一概にお答えすることは困難ではございますけれども、例えば、条例等に基づきまして、罹災証明書等をもって適切な手続を経て免除が行われたものというふうに承知してございます。

○井上哲士君 今回の法案での減免は大規模な災害の被災者が対象ということでありますが、今紹介があったような県が独自に手数料を免除した災害は、今回廃止される特例法の東日本大震災と比べますとかなり規模としては小さいわけですよね。一方、被災者にとってみれば、その災害が規模が大きいかどうかにかかわらず、旅券を紛失をするというこの困難は全く同じだと思うんです。
 様々災害の問題でいろんな取組してまいりましたけど、私いつも強調しているのは、制度に被災者を当てはめるのではなくて、やっぱり被災者を救済するためにこの制度を柔軟に適用するということが大事だと思います。そういう立場から、幅広く災害を対象としてこの旅券の減免ができるようにすべきだと考えますけれども、大臣のお考え、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 今回の法改正は、今後大規模な災害が発生する際に迅速に被災者に対する支援を実施できるように一般規定を新設するものでございますが、減免の基準等は政令等で定めることとしておりまして、罹災証明書の発行を受けていることや災害救助法の適用などを勘案しつつ、これを定めることとしております。
 今、井上委員からいただいた御指摘も踏まえつつ、発生した災害の規模や態様を含む様々な要素、総合的に勘案して適切に判断していく考えでございます。

○井上哲士君 是非、被災者に寄り添った中身にしていただきたいと思うんですが。
 大規模災害の被災者への対応は、できるだけ負担を少なくするとともに迅速さも求められます。減免に当たり、今もありました、仮に罹災証明書を求めるとなると一週間程度掛かる場合もあるわけですね。一方で、急な海外渡航が必要になるという場合もあるわけで、こういうことへも対応が必要と思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(安藤俊英君) お答え申し上げます。
 ただいま大臣の方からも答弁いたしましたとおり、今回の法改正というのは、今後大規模な災害が発生する際に迅速に被災者に対する支援を実施できるよう一般規定を新設するものでございます。
 御質問にありました、罹災証明書発行の例えば一週間を待たずに海外渡航の必要があるという場面においてはどのような対応が可能か、適切に判断してまいりたいというふうに考えてございます。

○井上哲士君 是非、被災者に寄り添ったことを繰り返し求めたいと思います。
 二〇一三年の改正の際に当時の岸田外務大臣は、手数料について、国民の負担軽減という見地から絶えず見直すべき課題としておりますが、今回は据え置かれました。
 国に対する手数料一万四千円のうち一万円は外国での邦人保護活動諸経費等に充てられる間接行政経費だとお聞きしておりますが、年間でこの間接行政経費に充てられる手数料の総額及び実際の支出はどうなっているんでしょうか。

○政府参考人(安藤俊英君) まず、旅券手数料収入のうち間接行政経費に相当する額でございますけれども、平成三十年度が約三百二十八億円、令和元年度が約三百十一億円、令和二年度が約五十八億円というふうになってございます。
 一方、旅券発給に係る間接行政経費の需要、つまり実際に邦人保護活動に要した経費の総額でございますけれども、こちらの方は平成三十年度が約三百八十三億円、令和元年度が約四百二十一億円、令和二年度が約五百十九億円というふうになってございます。

○井上哲士君 まだ支出の方が上回っているようでありますが、様々な努力もして、負担軽減を求めたいと思います。
 最後に、旅券失効に係る例外規定の問題でありますけれども、国外において申請者が旅券を受領できないやむを得ない事情があるときに、六か月を超えても効力を失わないということが含まれました。これ、やむを得ない事情とは申請者の責任に帰することができないということでしょうが、これまでは、病気とか事故などはどういう対応がされていたのか。今回の改正で、具体的にはほかにどういうようなケースが対象になるのか。例えば諸外国での政情不安など、様々あると思いますけれども、その点いかがでしょうか。

○政府参考人(安藤俊英君) お答え申し上げます。
 まず、現行の旅券法上でも、病気、身体の障害など、真にやむを得ない理由によって申請者が旅券の交付を受けるために出頭することが困難な場合には、代理人による受領を認めるといった措置を講じているところでございます。
 それから、今回の法改正における旅券の失効に係る例外規定につきましては、そのやむを得ない事情として、まあ様々な事情が想定されますけれども、例えば、一昨年来の新型コロナウイルス感染症の流行に際しまして、一部の国において外出禁止等の措置が講じられたことが挙げられます。委員御指摘の諸外国での政情不安につきましても、例えば治安状況の深刻な悪化により外出禁止措置が講じられて申請者が在外公館に出頭する手だてがない状況に置かれるといった場合には、やむを得ない事情に該当することもあり得るというふうに考えてございます。

○井上哲士君 旅券は国民の海外渡航の自由に関わる制度だと繰り返し申し上げましたが、そういう点では、本当にいかなる場合でもしっかり保障されるということと同時に、負担の軽減を更に進めていくということを求めまして、質問を終わります。

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