国会質問議事録

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外交防衛委員会(国際連帯税/デジタル課税)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 租税条約の質疑に併せて、多国籍企業による国際的な課税逃れを防ぐBEPSプロジェクトについて毎年聞いてまいりました。
 まず、昨年十月に合意された経済のデジタル化に伴う新たな国際課税ルール、デジタル課税について聞きます。
 今回のデジタル課税の新たな国際ルールの概要及びこれによって国際的に新たな税収の見込額はどれだけなのか、まず財務省、いかがでしょうか。

○財務省 主税局国際租税総括官(武藤功哉君) お答えいたします。
 OECD、G20のBEPS包摂的枠組みにおきまして、昨年十月、経済のデジタル化に伴う課税上の対応として、まず第一の柱として、物理的拠点を置かずにビジネスを行う多国籍企業に対しても市場国で課税を行えるようにするための国際課税原則の見直し、それから第二の柱として、法人税の国際的な引下げ競争に歯止めを掛ける観点等からのグローバルミニマム課税の導入について合意がなされました。この合意の実施に向けて、現在、詳細なルールや多国間条約の策定に向けた国際的な議論が進んでおります。
 日本政府としましては、引き続き国際的な議論に積極的に貢献するとともに、今後の議論の進展を踏まえつつ、令和五年度以降の税制改正における国内法の整備に向けて検討を行ってまいりたいと考えております。
 第一の柱、第二の柱による税収への影響につきましては、昨年十月にOECDが発表した試算では、第一の柱により市場国に配分される利益は年間千二百五十億米ドル超であり、第二の柱に......

○委員長(馬場成志君) ちょっとマイクを、マイクを近づけてみて。

○政府参考人(武藤功哉君) 第二の柱により世界的に生じる追加的な税収は年間千五百億米ドルとされておりますが、この試算は、あくまでもその時点で議論されていた制度設計を前提に、一定の仮定を置いて機械的に全世界としての税収を算出したものと承知しており、その詳細は把握しておりませんことから、日本政府として税収への影響について確たることは申し上げられないと考えております。
 また、その後、制度設計の詳細に関する議論を踏まえた試算は行われていないものと承知しております。

○井上哲士君 今回の新たな国際課税ルールは、歴史的に画期的と評価もされております。
 一つは、国際連盟が成立以来、百年間構築されてきた国際課税システムからの歴史的転換だと。恒久的施設、PEなしに課税なしというこれまでの大原則からの転換であり、この租税の課税権の配分の基準を転換をしたこと。もう一つは、やっぱり国家主権の専決事項とされていた課税権に対して、国際社会によって提起をされた租税ルールが各国税制を制約する存在として台頭してきたということが言われております。
 これまでの課税ルールは専らOECDだけで検討されてきましたけど、今回は百三十を超える国の参画と合意が得られました。そのことの意義及びこの多くの国が参画、合意するに至った背景について、どうお考えでしょうか。

○政府参考人(武藤功哉君) お答え申し上げます。
 日本政府はBEPSプロジェクトの立ち上げ時から国際課税改革に関する議論を一貫して主導してきたところでございまして、委員御指摘のとおり、百年近くにわたり築き上げられてきた国際課税原則の見直しが今般グローバルな枠組みで合意されたことを高く評価しております。
 このように多くの国が合意するに至った背景として、約百四十か国が参加するBEPS包摂的枠組みにおきまして、経済のデジタル化に伴う課税上の課題について各国で問題意識を十分に協議、共有し、その対応について十分に検討してきた成果であると考えております。

○井上哲士君 先ほどありました、今後実施に向けて多国間条約や国内法整備もあるわけでありますが、着実に進めていただきたいと思います。同時に、今回の合意については、対象企業が狭過ぎるんではないかとか最低税率が低過ぎるという意見もありました。そういうことも踏まえて、今後更に実効性あるものにするための努力を政府に求めたいと思います。
 今回、合意に至る最終段階でコロナパンデミックになりました。先ほどありましたように、新たな税収が増えるということは企業の負担増になるわけですが、コロナで国際経済が厳しいときにそういうことは行うべきでないと、こんな議論で合意が遅れたというような影響はあったんでしょうか。

○政府参考人(武藤功哉君) お答えいたします。
 経済のデジタル化に伴う課税上の課題への対応につきましては、BEPS包摂的枠組みにおきまして過去数年間にわたって議論が行われてきたところでございます。
 こうした検討が始まった背景としましては、現在の国際課税ルールが世界経済の急速なグローバル化、デジタル化に十分対応できていないのではないかという問題意識の高まりに加えまして、リーマン・ショック等を契機とした世界的な経済危機により各国の財政事情が悪化したことなどがあったものと考えております。
 また、これに加えまして、委員御指摘の新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりまして各国で多額の財政需要が生じたことも、昨年十月の合意に至った背景の一つだというふうに認識をしております。

○井上哲士君 つまり、コロナパンデミックというものがむしろこのデジタル課税を推進をしていく言わば追い風になったということだと思うんですね。
 そこで、外務大臣にお聞きしますが、このコロナパンデミックは、このSDGsの柱の一つである保健福祉分野で掲げられた感染症対策や途上国支援、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成の重要性を一層明らかにしたと思います。政府は、このSDGsの推進のための課題に革新的資金調達を挙げておりますけれども、なぜこの資金調達が必要なんでしょうか。

○外務大臣(林芳正君) SDGsの達成には世界全体で年間約二・五兆ドル、これが不足すると言われておりましたが、この新型コロナの影響でこの資金ギャップはより一層拡大しているという推計も出てきておるところでございます。
 この不足分を埋めていくためには、従来の資金調達のみでは困難であるところから、革新的資金調達というものは重要であるというふうに認識をしております。

○井上哲士君 この資金ギャップの克服の革新的資金調達が求められている、その検討のために当時河野外務大臣が二〇一九年七月に立ち上げたのが、SDGsの達成のための新たな資金を考える有識者懇談会でありました。この懇談会のテーマの大きな一つが、先日も議論のありました国際連帯税なわけですね。当時の河野大臣も導入への意欲を度々表明されましたし、多くの報道も、懇談会の設置で国際連帯税も検討というふうに見出しでも大きく書かれました。
 先日の質問の際に林大臣は、国際連帯税創設を求める議員連盟の会長も務められてきたということでありますが、大臣はこの連帯税の意義、必要性というのをどのように把握をしてこられたんでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) 前回もお答えしたように、初代の会長であられました津島先生の後、津島会長の御指名もあって会長をお引き受けした経緯があったわけでございます。
 議連でも随分いろんな議論をいたしたところでございますが、この、まさに先ほど申し上げましたように、革新的な資金の調達というものは大変重要であるわけでございまして、このSDGs達成のための資金ギャップを埋めるということで、この税に加えて、民間資金の導入を含む様々な手段を活用するということが重要であるというふうに考えております。
 前回も御答弁いたしましたように、外務省の要望することをしておりませんけれども、この新型コロナの影響による経済状況等を見極めながら、引き続き適切な資金調達の在り方について検討してまいりたいと考えております。

○井上哲士君 外務省は、二〇一〇年度の税制改正要望として国際連帯税の新設を提出して、以来十年間これを出してきたわけですね。そういう経過の中で設置された有識者会議でしたから、国際連帯税実現への役割が非常に期待されました。私も大いに期待いたしました。
 ところが、先日の答弁ありましたように、逆に、二〇年七月の報告書で、新型コロナ感染症の流行により日本経済全体が大きな打撃を受けている状況下での新税の導入が現実的と言えるのかと、こう述べて、それを受けて外務省はこの国際連帯税の税制改正要望の提出をその年見送ったわけですね、それ以来。しかし、UNCTADの世界投資報告書における資金ギャップに関する分析は、資金ギャップは後発開発途上国や脆弱な経済を持つ国々においてより大きくなると指摘していますし、先ほども大臣から、むしろコロナパンデミックでこの資金ギャップが拡大していると、こういう話もあったわけですね。
 元々、従来のやり方では資金調達が困難だから新しい資金調達が求められてきたのに、コロナ禍を理由にその大きな柱である国際連帯税、検討もやめるということになりますと、ますます資金不足になると思うんですね。
 先ほどのデジタル課税の経緯の中でも、むしろコロナパンデミックの下での経済の国際化で利益を上げている企業への適切な課税の必要性が高まったと思うんです。そうした下で、この国際的な合意の下でデジタル課税も実現した、大変重要だと思うんですね。
 今、国際連帯税も、むしろコロナ禍だからこそ私は必要性が高まっていると思いますけれども、大臣の見解はいかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この国際連帯税につきましては、平成二十二年度から税制改正要望を行ってきたところでございましたが、制度の具体化には至らなかったところでございます。
 先ほどお触れになっていただきました有識者懇談会でございますが、まさにこの二〇年の七月に提出した報告書に、新型コロナ感染症の流行によって日本経済全体が大きな打撃を受けている状況下での新税の導入が現実的と言えるかという指摘がなされておりまして、この提言を踏まえて、令和三年度及び令和四年度税制改正要望においては提出を見送っておるところでございます。
 一方で、冒頭にお答えしたように、このSDGsの達成のための資金の不足分について埋めていくためには革新的資金調達は重要であると、こう認識しておりますので、外務省として引き続き適切な資金調達の在り方について検討してまいりたいと考えております。

○井上哲士君 二〇一九年五月のODA特で、TICADに向けた決議を全会一致で上げているんですね。
 この中で、SDGs達成に向けて、国際連帯税等の革新的資金調達メカニズムの検討において、我が国が議長国を務めるG20や開発のための革新的資金調達に関するリーディンググループの機会も活用し、議論が行われるように努めることと、こうしております。これは全会一致で、与野党一致で上げた決議なわけですね。こうした流れに沿った議論が期待された有識者会議だったのに、先ほど申し上げたような、ちょっと違う結論になってしまったと、逆になったと。
 実はこの有識者会議の最後の段階で、メンバーであったグローバル連帯税フォーラム代表理事の田中徹二さん、辞任されているんですね。彼はブログの中で、率直に言って九月に外務大臣が替わる前後から懇談会の性格が変わったと、自民党税制調査会の幹部から税制に対する圧力があり、外務省がこれに抵抗できない面もありましたと率直に述べられております。外務大臣が替わったと。誰かとは言いませんが、茂木大臣ですよね。こういう経緯もあるんです。
 だけど、やっぱり今コロナ禍の下で一層国際連帯税の必要性高まっていると、そういう中、改めてしっかり検討して要望にも上げるべきだと思うんですね。この意義について、国際連帯税の意義についてよく御存じの大臣の、私、リーダーシップ大いに今発揮していただきたいと思うんですけれども、改めて、再び要望に上げていくという点で、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この有識者懇談会は、その報告書で、出入国時の課税は新型コロナウイルスの流行により国際航空事業が危機を迎えている状況を考慮する必要があるとかいろんなことについて提言をしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、現在のこのコロナ禍の状況、現在というのはこれ二〇年でございますので、あくまでその時点での判断と、こういうことでございますので、冒頭申し上げましたような革新的資金調達の必要性というのは重要であるという認識は変わっておりませんので、状況も踏まえながらしっかり検討してまいりたいと考えております。

○井上哲士君 改めて、大臣のリーダーシップ、強く求めまして、質問を終わります。

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