国会質問議事録

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外交防衛委員会(地位協定改定要望を敵視する自民党機関紙記事)


○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 ロシアによるウクライナ侵略から三か月となりました。深刻な被害が続いておりまして、一刻も早く終わらせるために今何が必要か、問われております。
 国連では、国家体制や宗教、文化の違いを超えて、百四十を超える国々がロシア非難決議に賛成をいたしました。国連憲章を守れというこの声で世界が団結することが何よりも大事だと思います。
 一方、バイデン・アメリカ大統領は、民主主義対専制主義の戦いだと表明し、岸田総理も、価値観を共有するG7主導の秩序の回復と繰り返しておられます。
 これに対して世界から様々な声が上がっています。五月下旬に来日したシンガポールのリー・シェンロン外相はこう述べています。私は民主主義対専制主義の問題とは言わない、なぜならウクライナで危うくなっているのは国連憲章だからだと、民主主義対専制主義の枠にはめるなら自らの身を終わらない戦争に置くことになると、こう言われています。重要な指摘だと思うんですね。
 このあれこれの価値観で世界を二分することは、ロシアは国連憲章を守り侵略やめよと求める国際社会の団結の妨げになるんではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○外務副大臣(小田原潔君) 井上委員にお答え申し上げます。
 今回のロシアによるウクライナの侵攻は、確かに、委員の御指摘のとおり、国連憲章第二条四が禁じる違法な武力の行使であります。明確な国際法の違反でありまして、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。国際の平和と安全の維持を目的としている国連憲章の考え方は、国際秩序の基礎となるものであります。国際秩序の根幹を守り抜くために国際社会が結束して毅然と対応することが、御指摘のとおり、重要であります。
 同時に、岸田内閣では、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を重視し、これを守り抜くために、同盟国、同志国と連携し、声を上げていくことを基本方針としています。ウクライナ危機を乗り越え、平和秩序、自由と民主主義を守り抜き、国際社会の様々な課題に取り組むため、同盟国、同志国との連携を重視し、我が国ならではの最大限の貢献を行ってまいります。

○井上哲士君 同盟国、同志国を重視するという言い方で、バイデン大統領が言うような民主主義対専制主義の戦いと、こういう図式にすることがむしろ団結の妨げになるんではないかということでありますけれども、その点いかがでしょう。

○副大臣(小田原潔君) 他国の首脳の発言とは別に、我が国ならではの最大限の貢献を行っていくものであります。

○井上哲士君 我が国ならではといえば、私は、やっぱり国連憲章を更に前に進めた憲法九条を持つ日本としての貢献だと思うんですね。
 あの英国のミリバンド元外務大臣もCNNの討論番組でこう言っています。ウクライナ問題は欧州の安全という枠を超えて世界の秩序をどうするかの問題だと指摘し、西側は民主対専制という構図を取るべきでないと、こういう警告もしています。これも重要な指摘だと思うんですね。
 東アジアの平和と安定を考えても、あれこれの価値観での分断ではなくて、国連憲章を守れと、この一点での団結を広げることが重要でありまして、やっぱり九条を持つ日本がこの点で外交努力を重ねるべきだと思いますけれども、重ねて、いかがでしょうか。

○副大臣(小田原潔君) 井上委員にお答え申し上げます。
 委員御指摘のとおり、ロシアによるウクライナへの侵略は、欧州のみならずアジアを含む国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。国際の平和と安全の維持を目的としている国連憲章の考え方は、国際秩序の基礎となるものであります。
 我が国として、G7を始めとする普遍的価値を共有するパートナーと連携をしながら、力による一方的な現状変更の試みに対抗する国際社会の取組を主導してまいります。
 また、委員の御指摘にもありましたけれども、国連憲章を守るということに関しましては、百四十一か国が賛成したウクライナに対する侵略決議、これは、国連憲章に違反するロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾とし、ロシア軍の即時完全無条件の撤退を求めました。一刻も早くロシアが侵略をやめるよう、国際社会が委員御指摘のとおり結束して毅然として対応し、この決議の実施に至ることが重要であると考えます。
 そのために、我が国として、普遍的価値を共有するパートナーと連携しながら、力による一方的な現状変更の試みに対抗する国際社会の取組を主導してまいります。

○井上哲士君 結局、最後はその話になってくるんですね。私は、今や回復すべきなのはG7主導の国際秩序ではなくて、国連憲章に基づく国際秩序だと思うんですね。そういう点で、それこそがやっぱり新興国や途上国を含めて世界が結束できる秩序でありますから、その立場で日本が取り組むことが必要だと思います。小田原副大臣は六日から訪米をされて、ウクライナ情勢への対応などの意見交換もされるそうでありますから、是非その立場での努力を求めたいと思います。
 続いて、日米地位協定の改定についてお聞きします。
 この国会でも、米軍機による低空飛行訓練や陸地上空での空中給油訓練、PFOSの汚染、コロナ対応、米軍人による事件など、様々な問題で日米地位協定の抜本改定が問題になってまいりました。これを、日米地位協定の改定を求める意見書は、二〇一八年の七月から今日まで、九道県二百二十六市町村議会で採択をされています。これ多くは自民党系の会派も賛成して採択をされておりますが、まず防衛大臣にお聞きしますが、この意見書がなぜこのように広がっているとお考えでしょうか。

○防衛大臣(岸信夫君) 様々な自治体が日米地位協定に関する意見書を採択している、このようなことは承知をしております。各自治体は、このように意見書が採択されている背景、理由について、各自治体の事情、異なる事情がありますので、一概に申し上げることは困難でございますが、御意見についてはしっかりと受け止めさせていただいております。
 その上で、日米地位協定は、同協定の合意議事録等を含んだ大きな法的枠組みでありまして、政府としては、事案に応じて効果的かつ機敏に対応できる最も適切な取組を通じて、一つ一つ具体的な問題に対応してまいります。今後とも、目に見える取組を積み上げることにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。

○井上哲士君 やっぱり米軍訓練の被害が全国に広がって激化しているから意見書も広がっているんですね。
 都道府県レベルでは、かつては米軍基地が存在する都道府県でつくられた渉外知事会として改定を求めていました。しかし、全国知事会は、二〇一六年に米軍基地負担に関する研究会を設置をして、一八年に日米地位協定の抜本的見直しを求める提言を採択をして政府に提出をいたしました。そのときの全国知事会長が上田清司議員だったわけですよね。その後、二〇二〇年にも、再度、抜本改正を求める提言を提出をしています。まさに、改定は全国民的な声になっていると思うんですね。
 ところが、自由民主党の機関紙の「自由民主」のインターネット版五月二十四日号に掲載された、この地位協定のあるべき姿を目指すという記事が、今大問題になっています。この記事では、日米地位協定は日米安全保障体制にとって極めて重要なものですと指摘をした上で、米軍人による犯罪や不祥事が起こると、度々、日米地位協定の改定を求める意見書が共産党系等の会派から提出されます。共産党は日米安全保障条約の廃棄を主張する政党ですから、日米同盟の不安定化を狙ってこうした主張を繰り返しているものと考えられますと、こういう記事なんですね。
 政府の見解をお聞きしますが、政府は全国の地方自治体からの意見書とか全国知事会の提言が日米同盟の不安定化を狙っていると、こういう認識でしょうか。

○国務大臣(岸信夫君) 御指摘の記事につきましては承知をしているところでございますが、まず、私の立場として、個別の記事の一つ一つにコメントすることはいたしませんが、いずれにいたしましても、私としては、様々な御意見をいただきながら、今後とも関係自治体、外務省を始めとする関係省庁、米側と緊密に連携をし、在日米軍に関する諸問題の解決に全力で取り組んでまいります。

○井上哲士君 我が党は、国民合意の下で、日米安保条約を廃棄をして日米平和友好条約を結ぶべきだと主張をしております。しかし、地位協定の改定というのはそのためのものではありません。現に起きている米軍基地に関わる様々な事件や事故などの被害から住民の命と安全、人権を守るために、安保条約への立場の違いを超えて力を合わせているわけですね。それをねじ曲げて、全国で広がる意見書への不当なレッテルを貼って敵視をして、国民の分断を持ち込むものだと言わざるを得ません。
 とりわけ、今沖縄では憤りの声が上がっております。玉城デニー知事を始め歴代知事が改定を求めてきました。沖縄県議会も繰り返し意見書を上げて、先日の復帰五十年の意見書でも、自民党を含め全会一致で抜本改定を求めているんですね。沖縄タイムスも琉球新報もこの問題に社説を掲げました。
 沖縄タイムスの社説は、改定要求、県民の総意だとの見出しで、自民党機関紙の記事は正確ではないとして、改定の必要性を指摘する声は一部の党に限ったものだと読める、問題を矮小化していないかと指摘。さらに、日米同盟を認める立場からの地位協定改定を求める声が上がっているとしています。そして、国民の声をどう捉えているのかと、県民の声に耳を貸さないのはなぜかと、こう述べているんですね。
 改定を求める声は一部の党に限ったものではない、日米同盟を認める立場が曲がっていると、そういう認識は政府としてちゃんと持っていますか。

○国務大臣(岸信夫君) 御指摘の記事については承知をしております。繰り返しになりますけれども、私としては、様々な御意見をいただきながら、今後とも関係自治体や外務省を始めとする関係省庁、米側と緊密に連携をし、在日米軍に関する諸課題の解決に全力で取り組んでまいります。
 引き続き、国民の皆様の声にしっかりと耳を傾けていきたいと考えております。

○井上哲士君 私聞いていますのは、例えば沖縄県議会でも全会一致で決議上げているんです。ですから、日米地位協定の改定を求める声は一部の党に限ったものではない、日米同盟を認める立場から曲がっていると、そういう認識を政府として持っていますかということをお聞きしています。

○国務大臣(岸信夫君) 私としても、皆様の、国民の皆様の声をしっかり耳を傾けながら、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。

○井上哲士君 やはり与党である自民党の機関紙に堂々とこういう記事が掲載されていると。この表題は日米地位協定のあるべき姿となっているんですね。この間政府が繰り返してきた答弁と同じ言葉使っているんですよ。
 しかし、なぜ全国知事会も二回目の提言を出し、意見書が広がっているかといえば、結局、この全国知事会は、一八年の提言後も全国的にこの提言内容が実現したとは言い難い状況だといって出しているわけですね。政府が地位協定のあるべき姿だといいながら、事態改善しないどころか悪化していると。だからこういうのが出ているんですね。それに頬かむりをして、この安保条約への立場を超えて住民の命、人権を守る立場での地位協定の改定を求める意見書を敵視するというのは私はあってはならないと思います。
 政府としても、こういうこの一部の党に限ったものではないし、日米同盟を認めるという立場から曲がっているということを認識しているのであれば、こういう記事はやっぱり正すべきだと、是正を求めるべきではないかと思いますけれども、大臣いかがでしょうか。

○国務大臣(岸信夫君) 日米地位協定につきましては、様々な御意見があるものと承知をしております。私としては、そういった御意見をいただきながら、関係の自治体、外務省を始めとする関係省庁、米側と緊密に連携をし、地元の皆様の御理解を得つつ、その御懸念や御不安に少しでもお応えできるように努力をしていくことが重要だと考えております。今後ともそのための努力を続けてまいります。

○井上哲士君 明確に修正を求めなければ、政府も自民党のホームページと同じ立場だと思われかねないですよ。
 本土復帰五十年の参院本会議の決議も、自民党が一旦、日米地位協定の見直しの検討という文言を盛り込むことを合意しながら、それをほごにしたと。そのために、合意に至らず上げられていないという状況なんですね。
 住民の命と暮らし、人権を守るために、地位協定の抜本改定すべきだと、こういう全国民の声に真摯に向き合うべきだということを重ねて強く申し上げまして、終わります。

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