国会質問議事録

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内閣委員会(男女賃金格差の公表義務化、是正へ具体的措置を/国家公務員非常勤職員の処遇改善)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 まず、女性活躍推進法に基づく男女間の賃金格差の開示に関して、小倉担当大臣にお聞きいたします。
 七月八日に、同法に基づく女性の活躍に関する情報公表項目に、男女間の賃金差異を新設する厚生労働省令の改正が施行されました。これは、生涯賃金で一億円近い差が生じている異常な男女間の賃金格差を、是正を求める女性たちの長年の闘いが勝ち取った成果だと思います。私どもの党も繰り返しこの間求めてまいりました。
 まず、今回のこの措置について、その趣旨、意義を担当大臣としてどのようにお考えか、お願いします。
○国務大臣(小倉將信君) 男女間の賃金格差について、我が国の現状を見ますと、女性の賃金は男性の賃金の約四分の三でありまして、OECD諸国と比較しても格差が大きくなっており、その是正は女性の経済的自立の実現に向けた最重要課題だと思っております。
 男性と女性が同じ組織で働いていても職務や職責が異なることなどから、女性はより低賃金となる傾向が指摘をされております。こうした社内格差、いわゆる垂直分離に対しては、各組織においてそれぞれ要因を詳細に分析をして、女性の処遇改善につなげることが重要だと思っております。
 こうした認識の下、委員御指摘のとおり、先般、女性版骨太の方針二〇二二に基づき、女性活躍推進法に基づく厚生労働省令改正が施行され、常用労働者三百一人以上の事業主について、男女間賃金格差の開示を義務化したところであります。
 賃金格差の開示は、格差是正のための第一歩として極めて重要な意義を持つと考えております。また、こうした取組を通じて、企業の持続的成長のためには、女性を含め多様性を確保し、それを外部に発信することが不可欠であるという意識を広げていきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 男女間の賃金格差の是正は最重要課題だという御答弁もありました。
 非正規雇用の七五%は女性が占めており、この正規と非正規の間の賃金格差が大きいわけですね。ですから、女性は男女間の格差に、この正規、非正規の雇用形態間による格差という二重の意味で虐げられている現状があるわけです。
 今回の公表は重要な第一歩でありますけれども、男女賃金格差を全労働者、正規、非正規という三つの区分ごとにその割合をそれぞれ公表するというものであります。しかし、割合ですから、これですと、正規雇用の男性と非正規雇用の女性の格差というのは直ちには分からないわけですね。
 私は、今、非正規の多くが女性占めて、二重の意味で虐げられているという現状にある中でいいますと、この状況を改善するためには、正規雇用の男性とそして非正規雇用の女性との賃金格差が明らかにされるべきだと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
○国務大臣(小倉將信君) この男女間の賃金格差の開示につきましては、委員御案内のとおり、一般事業者は厚生労働省で、私ども内閣府は特定事業者、いわゆる政府や地方自治体を担当しております。そういう意味では、民間部門における男女の賃金の差異の公表につきましては、基本的には厚生労働省の所管となりますが、その上であえて申し上げれば、女性活躍推進法に基づく民間事業者による男女の賃金の差異の公表については、全労働者、正規雇用労働者及び非正規雇用労働者の三区分で開示することとされております。これは、従来、男女間賃金格差の国際比較などにおいて、フルタイム労働者の男女間賃金格差を用いることが通常ですが、我が国においては、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、それぞれの不合理な待遇の格差の是正を進めていること等も踏まえ、比較可能性を確保する観点から、この三区分で開示することとしたものであると承知をしております。
 したがいまして、所管の厚生労働省においては、御指摘の男性の正規雇用労働者と女性の非正規雇用労働者の間の賃金の差異の公表を義務付けることについては、現時点では考えていないというふうに承知をしております。
○井上哲士君 国際的にはフルタイムの比較だけれども、日本の現状に合わせてこの区分をしたということなんですね。そうであれば、やっぱりそういう現状があるわけですから、私は、この区分ごとの公表に加えて、やはり正規の男性と非正規の女性というもののこの差を明らかにしないとやっぱり大きな問題の解決にならないと思うわけで、これは是非、担当大臣として厚労省ともしっかり話合いをしていただきたいと思うんです。
 同様に、今回の対象は、労働者が三百一人以上の事業者が対象になっております。百一人から三百人の事業主を対象にすることについては、施行後の状況を踏まえ検討を行うと政府はしております。しかし、女性労働者の約半数が三百人以下の企業で働いているわけですね。これを踏まえますと、本当にやっぱり実態を把握し是正をする上でいえば、速やかに対象を広げるべきだと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
○国務大臣(小倉將信君) お答えいたします。
 繰り返しで恐縮ですが、民間部門における男女の賃金の差異の公表につきましては、厚生労働省の所管でありますが、お答えをいたしますれば、今般、常用雇用労働者三百一人以上の事業主について本情報公表が義務付けられておりまして、まずは当該事業者が適切に情報公表を行うことができるよう支援することで法の履行確保を図ることとしていると承知をしております。
 その上で、今後、厚生労働省において、本制度の施行状況を踏まえつつ、常時雇用労働者百一人から三百人の事業主における公表の義務付けについて検討することになるというふうに承知をしております。
○井上哲士君 それはやっぱり速やかにやるべきだと思うんですね。
 大臣は先日の所信的挨拶で、男女間賃金格差の是正など、女性の経済的自立を政府一体で推進してまいりますと述べられました。まさに、政府の中で、いろんな各省に関わる問題であっても、この男女間の様々な格差の是正をするという、やはりその一番の責任が私はやっぱり大臣だと思うんですね。そういう点で、是非、イニシアチブを発揮をしていただきたいということで、今回の賃金格差の公表は大事な一歩でありますけれども、ゴールでなくスタートですから、しっかりこれを推進をしながら、同時に、この賃金格差の是正のための具体的措置をとるところまでは進める必要があると思います。
 OECDは、男女間賃金格差の国際比較に関する資料を公表しております。これは、正規、非正規を合わせたフルタイム雇用の比較値でありますけれども、それによりますと、OECD平均の八八・四%に対して日本は七七・五%と、国際的に見ても男女間の格差は大きいわけですね、先ほどもありました。やはり、これ、日本の是正の取組が、にもかかわらず遅れていると、国際的に。これ、正す必要があると思うんです。
 例えば、EUは、一九七五年の男女同一賃金指令、一九九七年のパートタイム労働指令等によって男女間の賃金格差の縮小を図ってきました。イギリスは、二〇一七年の平等法で、従業員二百五十名以上の企業に対する男女間賃金格差のデータ公表などの情報公開を義務付けるとともに、是正命令に従わない場合の罰金も規定をされております。フランスは、二〇一九年に施行された男女間の賃金格差是正に関する施行令で、従業員五十人以上の企業に対して賃金格差の指数公表を義務付けております。この指数は、男女間賃金格差の有無、昇給昇格差などの基準に算定をされて、指数の合計が七五ポイントに満たない企業は三年以内に格差を是正しなければならないとされて、それが実施できない場合は、賃金総額の一%に相当する過料が科せられると、こういうふうなことも行われているわけですね。こういう取組によってEU全体では男女間の賃金格差は八五・九%まで縮小しております。
 こうした経験に学びますと、この公表の徹底とともに、日本においても、このような国際的な水準に基づいて男女間の賃金格差を解消するために、是正計画の策定と実施する仕組みなど、是正措置をしっかり進めていくということが検討すべき課題だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(小倉將信君) お答えをいたします。
 今般の男女間賃金格差の開示義務化につきましては、諸外国において企業に対し男女間賃金格差の報告や分析の義務化を進めている状況も踏まえまして、格差是正に向けた取組として新たに決定したものであり、まずは本制度を着実に実行していくことが重要であると考えております。
 また、賃金格差の是正に向けては、女性の正規雇用比率を増加させるなど、質の高い雇用の拡大に向けた対応も鍵となります。このため、女性デジタル人材の育成を通じた成長分野への労働移動、女性に多い非正規雇用労働者、御指摘いただきました、の正規化や処遇改善、男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備などに取り組んでまいります。
 私も、関係者の御理解をいただきながら、先月ドイツで行われた男女共同参画担当大臣G7会合に出席をいたしました。大きなテーマが、やはり女性の経済的な自立や男女間の賃金格差でありまして、委員御指摘のとおり、中でもとりわけ格差が大きいのが我が国でございます。
 そういう意味では、今後とも、委員が挙げられたイギリス、フランスを始めとした諸外国の動向も参考にしつつ、男女間賃金格差の是正に向けまして関係省庁と連携をしながら、まあ連携しながらというよりも、強力に私どもとして後押しをしながら、実効性のある施策について議論を進めていきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 強力に後押しをしたいという御答弁でありました。
 やはり今回のこの公表は、しっかり進めながら、やはり国際的にも非常に大きな格差を是正するという上で特別な取組が要ると思うんですね。先ほどあのイギリスやフランスの例も挙げましたけれども、EUは、そういう各国の独自の施策に加えて、更に踏み込んで、昨年の三月に賃金透明化指令案が提出されて、議論が進んでおります。この中で、同じ企業の労働者の男女別の賃金水準を、これは知る権利があるんだと、労働者に、このことを定めて、さらに是正しない企業への罰金やペナルティーも含まれているわけですね。
 先日のドイツの会議のお話もありましたけど、来年は、六月に開催される、G7の男女共同参画・女性活躍大臣会合が行われるわけですよね。まさにそこで大臣は重要な役割を果たされていただかなくちゃいけないわけで、先日の所信でも、この会議で国際的な議論や取組への貢献するということも言われました。そうであれば、今の公開制度をしっかり実施をしながら、本当に国際的な基準に沿って取組が前進するように政府が連帯してやる上で大臣の役割は大きいと思うんですね。
 改めて、その点での決意と、そして方向を伺いたいと思います。
○国務大臣(小倉將信君) まずは、今般からスタートをいたします企業ごとの男女間賃金格差の開示について、恐らく業種ごと、企業ごとに状況が分かると思います。それをしっかりと分析をして、我が国でこれだけ男女間の賃金格差が拡大をしている原因は何かということをきちんと見極めなければならないと思います。
 その上で、御指摘いただいたように、六月には、来年の六月には、我が国で初めて男女共同参画担当大臣・女性活躍担当大臣会合、G7開かれますので、そこに向けて、我が国としてこれから先どういった取組ができるのか、しっかり発信できるだけの検討を内部で進めていきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 是非強く進めていただきたいと思います。
 大臣はこれで結構でございます。ありがとうございました。
○委員長(古賀友一郎君) 小倉大臣はここで御退席いただいて結構です。
○井上哲士君 政府は、国家公務員についても民間と同様に女性活躍推進法に基づく開示を行うとしておりますけど、一方、公務労働の職場では、この常勤職員と非常勤職員は民間以上に賃金など処遇の格差が指摘をされております。国家公務員法は一般職の常勤職員と同様に非常勤職員にも適用されるわけですが、同じ法律が適用されるのに格差が生じていると、こういう事態であります。
 この間、労働組合の粘り強い運動で様々是正をされてまいりましたけども、現在でも、常勤なら有給の病気休暇や生理休暇は、非常勤の方は無給なわけですね。それから、住居手当や扶養手当、寒冷地手当などは支給をされません。こうした現状は一刻も早く改善されるべきだと思いますが、人事院総裁、いかがでしょうか。
○政府特別補佐人(川本裕子君) お答え申し上げます。
 非常勤職員の処遇改善に関しましては、委員御指摘のとおり、人事院としては、これまでも順次取組を進めているところです。休暇については、これまで、業務の必要に応じその都度任期や勤務時間が設定され任用されるという非常勤職員の性格を踏まえ、民間の状況などを考慮し、必要な措置を行っているところです。
 非常勤職員の病気休暇等については、今後、民間企業の勤務条件制度等調査などを通じて引き続き状況などを注視し、必要に応じて検討を行っていきたいと思っています。
 給与に関しては、給与法第二十二条第二項において、各庁の長は常勤の職員の給与との権衡を考えて予算の範囲内で給与を支給することとされ、人事院が発出した非常勤職員の給与に関する指針に基づき、各府省において取組が進められています。
 人事院としては、今後も引き続き、各府省や民間の状況などにつきまして注視し、必要な検討を行っていきたいと考えております。
○井上哲士君 是非改善を強く求めたいんですが、今回、今後議論になる一般職給与法の改正で、一般職の初任給と若年層の俸給月額が引き上げられます。これが施行されますと、この措置は今年の四月に遡って適用されますけれども、非常勤職員の場合はどうなるんでしょうか。
○政府参考人(窪田修君) お答え申し上げます。
 国の非常勤職員の給与につきましては、今ほど人事院総裁の方から御紹介ありましたように、各府省において常勤職員の給与との権衡を考慮して予算の範囲内で支給することとされておりますが、非常勤職員の基本給の改定時期につきましては、職務内容等が常勤職員に類似する非常勤職員につきましては、平成二十九年に、常勤職員の給与改定に準じて改定することを基本としつつ、当面は、遅くとも改正法の施行月の翌月の給与から改定するということを各府省で申し合わせております。
 今回の法案が成立した場合には、各府省等において申合せの趣旨も踏まえて適切な対応がされるものと考えております。
○井上哲士君 かつては明確なルールがなくて、今の申合せで一定の改善はされたわけでありますが、しかしこれ、やっぱり差があるんですね。しかも、当面というのが五年前の申合せでありまして、もうこれ五年たっているわけで、やはりこれは、いつまでたっても当面の措置を続けるのではなくて、もっと抜本的改善が必要と思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(窪田修君) この申合せを決めましたのがたしか平成二十九年ということで、それから時間もたっております。最近の、ここ二年ぐらいは給与の引上げも勧告されておりませんでしたが、最近の物価・賃金情勢を見ますと変化の兆しも見れますので、まずは人事院とも相談しながら、実態の調査をどうするかといった辺りから検討したいというふうに考えております。
○井上哲士君 一刻も早く常勤職員に準じた支給にするべきだということを求めたいと思います。
 今、様々指摘しましたけれども、一般職の常勤職員と非常勤職員の間に処遇や給与などの格差があります。一刻も早く改善する必要があると。にもかかわらず、今年の人事院勧告と一緒に出された職員給与に関する報告は、非常勤職員の処遇改善は全く触れていないんですね。これでは、労働基本権の代償措置としての人事院の役割を果たしているのと言えるのかと私は思うんですが、非常勤の皆さんの処遇改善へ人事院として積極的役割を果たすべきかと思いますが、総裁、いかがでしょうか。
○政府特別補佐人(川本裕子君) お答え申し上げます。
 非常勤職員の処遇改善に関して、人事院としては、これまでも順次取組を進めているところです。最近の例を挙げれば、休暇について、本年一月に出生サポート休暇、配偶者出産休暇及び育児参加休暇をいずれも有給で新設したほか、産前休暇及び産後休暇を有給にしています。
 給与については、昨年七月に非常勤職員の給与に関する指針を改正いたしました。すなわち、期末手当及び勤勉手当に相当する給与について、任期が相当長期にわたる非常勤職員について、常勤職員と職務や勤務形態の類似する非常勤職員については、常勤職員に支給する期末手当及び勤勉手当に係る支給月数を基礎として、勤務期間、勤務実績などを考慮の上支給するよう努める要旨を規定しています。
 公務における人材の確保が非常に厳しい状況にある中で、本年の報告はそれらについて言及させていただきました。非常勤職員の処遇改善について、人事院といたしましては、今後も引き続き各府省や民間の状況などについて注視し、必要な検討を行うなど、適切な役割を果たしてまいりたいと思っております。
○委員長(古賀友一郎君) 時間が来ておりますので、質疑をおまとめください。
○井上哲士君 コロナの中で、公務労働の非常に大切さ、その中で非常勤の方の役割、非常に浮き彫りになったと思います。是非積極的な改善へ役割を果たしていただきたいと重ねて申し上げて、質問を終わります。

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