国会質問議事録

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内閣委員会(PFI法改定案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 PFI法が施行されて二十年以上が経過をいたしました。しっかりとした検証が必要です。
 衆議院の質疑で大臣は、PFIの目的について、法律に国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供をすることと定められていると述べられました。しかし、午前中も話題になりました昨年の会計検査院の報告書では、二〇〇二年度から二〇一八年度までに国が実施した七十六事業のうち、事業期間が終了した公務員宿舎や庁舎の二十七の整備事業でPFI事業の方が従来方式よりも維持管理費相当額が高額になった、このことや、二十六事業で二千三百六十七件の債務不履行が発生していた、このことが明らかにされました。
 大臣、こうした現実を前にしてもなお法の目的は果たされているという認識でしょうか。
○国務大臣(岡田直樹君) お答え申し上げます。
 井上委員御指摘の会計検査院報告において、維持管理費相当額がPFI事業の方が高額となっていたことや債務不履行が発生したことを指摘されましたのは、これ、今も委員御紹介になりましたけれども、検査対象であった各府省のPFI事業の一部であり、地方公共団体を含む全てのPFI事業に必ずしも当てはまる指摘ではないと考えております。
 その上で申し上げれば、PFIは公共の施設とサービスに民間の資金と創意工夫を最大限活用するものであり、行政にとっては公共サービスに係る財政負担が軽減され財政健全化に資する、住民にとっては民間の創意工夫を生かした良好なサービスを享受できる、地域経済にとっては新たな民間の事業機会の創出につながるといったメリットがございます。
 具体的に財政負担の軽減については、平成二十五年度から令和二年度までの八年間で、合計約二兆円の歳出削減及び歳入増加の効果がありました。そして、約三・二兆円の運営権対価収入も計上されております。また、歳出削減等の定量的な効果だけではなくて、住民満足度の向上、地域のにぎわい創出、地域課題の解決など、定性的な多様な効果も見込まれるところであります。
 こうしたことを勘案いたしますと、現状において、国民に対する低廉かつ良好なサービスの提供を確保するというPFI法の目的は総じて達成されているものと考えております。
○井上哲士君 過去の審議の際も、政府は、問題が指摘されても、それは一部の問題だと言ってきたわけですね。しかし、私は、今回の会計検査院の報告書では相当こういう問題があるということが明らかになったと思うんです。そもそも、PFIによって低廉かつ良好なサービスが果たして成り立つのかと。
 内閣府が策定したPFI事業契約との関連における業務要求水準書の基本的考え方という文書がありますが、これ、わざわざ留意点として、サービス水準が高くなれば一般的にコストも増大することから、安易に高い水準を規定することはVFM実現の観点から望ましいとは言えないとしております。
 サービス向上させるとコストが増大すると政府自ら認めているということではないでしょうか。
○政府参考人(英浩道君) お答えします。
 国が定めるPFIに関する基本方針において、PFIを選定する際の基準としましては、まず、サービス水準が同じ場合において財政負担の縮減が期待できること、又は財政負担が同じ場合においてサービス水準の向上が期待できることと、こういうことを定めておりまして、基本的にはそのコストとサービスの両方が高くなるといったPFI事業というのは想定しにくいところでございます。
○井上哲士君 いやいや、安くていいサービスになりますとさんざん言われてきたと思うんですよ。両方はなかなか難しいというお話でありました。
 さらに、PFIが民間事業者が収益拡大を目的に附帯事業を行うことを可能にしております。
 そこで何が起きているか。例えば、東海地方のある自治体では、屋内プールを備えた健康増進施設をPFIで整備をして、特別目的会社、SPCを構成するスポーツ事業に取り組む企業が子供たちのスイミング教室も附帯事業として運営するようになりましたけれども、この間利用料が一・八倍に跳ね上がっているんですね。
 当初は市内の幼稚園、保育園児を対象とした水泳教室と三歳児を持つ親子を対象にした親子教室を市が直接実施する予定でしたけれども、これは現在行われておりません。ですから、幼児向けの水泳教室は全て民間企業の附帯事業で行われているんですね。市民にしてみれば、公共施設利用しているのに、予定されていた直接実施の水泳教室は行われずに、企業が附帯事業で行われているスイミング教室だけで、しかも利用料は一・八倍に値上がりになったと。
 結局、民間企業が収益を上げるために、非営利で住民の福祉の増進という公共施設の本来の目的に沿った施設の利用が犠牲にされているという実態ではないでしょうか。
○国務大臣(岡田直樹君) お答えいたします。
 PFI事業の実施に当たっては、PFI事業との相乗効果が期待できるような収益事業を附帯的に行うことを認めるケースがございます。委員御指摘の附帯事業ということであります。例えば、PFIによる体育館の整備事業において、レストランや店舗等の建設や運営を行うような場合が考えられるわけであります。
 先ほど井上委員が東海地方のある自治体の例というのをお挙げになりましたが、委員御指摘の事例がただいま私が申し上げたような附帯事業に該当するものかどうか今にわかには分かりかねますが、PFI事業の実施に当たっては、当然ながら住民利用などの公共サービスの提供が確保されることが大前提であります。このことを申し上げておきたいと思います。
 そのため、ガイドラインにおいて、地方公共団体に対し、住民の意見を聞きながら事業者が提供すべき公共サービスの水準を示すとともに、事業期間中にモニタリングを実施するように要請をいたしております。
 地方公共団体においてガイドラインを踏まえて適切に取り組んでいただくとともに、制度所管の官庁として、その取組状況等を適切に把握し、制度上の改善等が必要と考えられる場合は、有識者の意見等を踏まえながら必要な検討を行ってまいりたいと考えております。
○井上哲士君 相乗効果が認められる場合で公共サービスの提供の確保が前提だと答弁でありましたけど、先ほど申し上げた例は、当初やると言っていた、直接やると言っていた幼児用の水泳教室などが行われずに、民間だけが行って、そして一・八倍になっているという例なんですね。
 さらに、このPFIは、収益向上のために従事する労働者の労働条件を悪化させるんじゃないか。
 先ほど紹介したこの施設でスイミング教室を運営する民間企業は、同じ施設で別のスポーツ関連の教室の運営も行っております。六十六人の職員が働いていますが、正社員は九人です。残り五十七人は契約社員とアルバイト。求人サイトで確認しますと、アルバイトの時給は九百九十円で、愛知県の最低賃金を数円上回る程度なんですね。契約社員は時給千二百円と。月百五十時間換算しますと月十八万円程度にすぎませんから、ここから税金や社会保険料が差し引かれますと大変苦しい生活になりますし、しかも、契約社員は期間の定めのある不安定雇用ということであります。
 この間、政府は、官から民へと称してこうしたPFIや指定管理者制度を始めて公共施設の民営化を進めてきました。しかし、民間が担うようになりますと、公共が実施していたときには必要なかった利益の配当であるとか役員の報酬などの利益をどうしても確保しなくてはなりません。必然的にこれが働き手や担い手を非正規に置き換えて民間事業者が利益を確保していくということにならざるを得ないんじゃないでしょうか。PFIにこうした構造上の問題があるということについての認識はいかがでしょうか。
○国務大臣(岡田直樹君) お答え申し上げます。
 労働条件については、これは労働基準法等の関係法令に反しない限りにおいて労使が自主的に決定することとされていると、これは原則と承知しております。一方で、PFI事業に限らないことでありますが、事業を効率的に行うとともに適切な品質やサービス水準を維持、継続するためには適切な人件費等を見積もっていくことが必要と、これも認識をしております。また、PFI事業は価格だけで競争を行うのではなくて、サービスの質を含めた総合評価落札方式により事業者選定を行うこととしているため、コストダウン以外の評価が反映されやすく、この旨はガイドラインでも周知を行っております。
 先ほど申し上げた人件費等を適切に見積もっていくことが必要であること、これは今のガイドラインに明記しているわけではありませんけれども、これを私は明記することも検討してもよいと思っておりまして、こうしたことを考えれば、PFIの活用により労働条件を低下させるという構造上の問題はないというふうに考えております。
○井上哲士君 現に、先ほど紹介したように、非常に非正規の方が多いという状況が生まれているわけです。構造上の問題にしてはならないというんであれば、例えば自治体とSPCが事業契約を結ぶ際に、SPCが業務委託をする先の企業との間での労働者の適正な労働条件の確保等を明記させるなど、ルールを検討するべきではないかと思います。
 今、ガイドラインというお話もありましたけれども、こういうルールについてもう一回明確な答弁をお願いします。
○政府参考人(英浩道君) PFIで実施する場合につきましてのその賃金等の労働条件は、労働基準法等の関係法令に違反しない範囲、限りにおいて労使が自主的に決定することとされております。法律によりその賃金等の基準を新たに設けることについては、既に公契約条例の制定している地方自治体等の状況なども注視しながら、今後も幅広い観点を踏まえた慎重な対応が必要というふうに考えております。
○井上哲士君 やっぱりこれはまさに公契約なわけで、そこまで構造的なこの言わば賃下げの状況ができているということは、きちっと私はやっぱりルール化で正すべきだと思うんです。
 今、公契約条例というお話がありました。自治体は適切な労働条件確保のために様々な努力をしております。発注する公共工事や業務委託等に従事する従業員の賃金の報酬の下限額などを決める公契約条例の制定が進んでいるんですね。ところが、一部には、このPFI事業をこの公契約条例の対象にしていないところがあります。
 PFI法の第七十六条は、国及び地方公共団体は、特定事業の実施を促進するため、民間事業者の技術の活用及び創意工夫の十分な発揮を妨げるような規制の撤廃又は緩和を速やかに推進するものとしております。
 公契約条例でPFI事業も対象にするのは、この七十六条に言う撤廃とか緩和の対象ではないということで確認してよろしいでしょうか。
○政府参考人(英浩道君) お答えします。
 委員御指摘のように、PFI法の第七十六条は、PFI事業の促進のために民間事業者の技術の活用や創意工夫の十分な発揮が行われるよう、これらを妨げるような規制の緩和や撤廃を推進するという規定を設けておるところでございます。
 この公契約条例においてPFIを対象にするか否かを含め、どのような事項を規定するかについては、これはその条例を定める各地方自治体の判断だというふうに考えておりますが、PFI法の第七十六条では、その人件費の過度な制限等を、失礼しました、人件費の過度な削減などを防止する自治体の取組を撤廃することを直接的に求めているものではないというふうに考えております。
○井上哲士君 つまり、確認しますけれども、自治体の判断で公契約条例の対象にPFIを入れるというのは差し支えないということですね。
○政府参考人(英浩道君) これは、自治体の判断によってそのようなことは可能というふうに考えております。
○井上哲士君 是非徹底をしていただきたいと思うんですが。
 PFI事業の妥当性を判断する上で、地方議会や地域住民に対する情報開示が非常に重要でありますが、PFIでは、民間企業であるSPCや、SPCが業務委託をする他の企業との間でどのような契約が行われているのか等の情報が企業秘密を理由にほとんど公開をされないんですね。
 PFIの基本方針では、この事業の原則の一つに透明性原則を掲げているわけですが、この透明性原則というのは一体誰のための原則なんでしょうか。
○政府参考人(英浩道君) お答えします。
 PFI事業につきましては、透明性原則として、特定事業の発案から終結に至る全過程を通じて透明性が確保されなければならないというふうにしているところでございます。これは、一般の国民のための透明性の確保を意図したものというふうに認識しております。
○井上哲士君 果たして国民のためになっているのかという問題なんですね。
 基本方針は、情報開示に関して、法第十五条第三項に規定するもののほか、公開することにより民間事業者の権利、競争上の地位その他の正当な利益を害するおそれのある事項を除き、事業契約の内容を公表することとしております。これは、やっぱり企業の利益擁護を原則にした情報開示の在り方だと言わざるを得ないんですね。もちろん、開示できない情報があることは承知をしております。否定はしません。ただ、この規定が障害となって、住民自治の観点から当然公開されるべき情報まで非開示にされることにつながっているんではないかと。
 情報開示の在り方を住民自治を原則にした在り方に改めるべきではないでしょうか。
○国務大臣(岡田直樹君) ただいま御指摘のPFIの基本方針では、民間事業者の選定に関する資料や契約内容については公表を原則としております。その一方で、公表することにより民間事業者の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれのあるものについては例外として非公表にし得ることを認めておりますが、このおそれのあるものというのは、企業の独自の技術、ノウハウ等の含まれる資料や契約情報、こういったものであるというふうに認識をしております。こうしたことによって、民間事業者は安心してPFI事業に参画でき、自治体も民間事業者から事業の検討に必要な情報を提供してもらいやすくなり、幅広い事業の検討が可能になると考えられるところであります。
 なお、住民自治を前提に定められた一般的な情報公開条例においても、民間事業者の権利や競争上の地位に関する情報等は非開示情報とすることができるとされておりまして、このPFIの基本方針と同様の書きぶりになっております。したがって、この自治体における情報公開の基本的な考え方に照らしても、これは適切なものと考えております。
○井上哲士君 実際に何が起きているかと。これは愛知県岡崎市の例なんですけど、こども発達センターという事業があるんですけど、その妥当性を検証するためにSPCがどんな投資計画や収支計画を持っているか情報公開請求を、開示を求めたんですけど、出てきたのは全て黒塗りの資料と。そこで、不服審査請求をして、市の情報公開・個人情報保護審査会からも公開が妥当とされたんですね。でも、まだ出してないんですよ、市当局は。これは、やっぱりこういうのはふさわしくないと。
 第三者機関であるこういう保護審査会などが開示が妥当とした情報は速やかに出るのが当然だと思いますけど、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(岡田直樹君) ただいまの岡崎市の例については、この場で御教示をいただきましたので、その詳細については承知をしていないところでありますが、それは自治体の運営、これもまた地方自治でございますから、地方公共団体の運用によるところとは思いますけれども、やはりそういう御指摘の例があるのかどうか、これは私、確かめてみたいと思います。
○井上哲士君 しっかり確かめていただきたいと思うんですね。
 法案は、この事業に投資するインフラ投資市場が未形成であることから、機構の期限を五年間延長をいたします。
 大臣は、衆議院の答弁で、このインフラ投資市場において商品となり得る収益性のあるPFI事業の数が十分でないということも言われておりますが、公共施設は本来は非営利で、住民の福祉を増進することを目的としているわけで、それを投資家にとって魅力ある収益性の高い商品にしていくというのは、やはり公共施設の公共性を否定しなければ成り立たない方向ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(岡田直樹君) 先ほども申し上げたように、PFI事業の実施に当たっては、住民利用などの公共サービスの提供が適切に確保され、公共性が維持されていることが大前提となります。そうした前提条件を堅持しつつ、民間ならではの目線を生かして、施設を利用する方々や住民の利便性の向上に資するサービスを有償を含めて提供していただくことも可能としているところであります。
 この点については、公共サービスの水準を維持した上で、民間事業者の創意工夫を生かし実施されるものとして、PFI法や基本方針においても明記されているところでありまして、このようにPFI事業において公共性と収益性は両立するものであり、公共性を否定しなければ収益性を確保できないといったものでもないと、このように認識いたしております。
○委員長(古賀友一郎君) 時間が参りましたので、おまとめください。
○井上哲士君 じゃ、もう終わりますが、近江八幡市が全国に先駆けてPFIを導入した市立総合医療センターは二年半で契約解除したんですね。その前に病院側が出したPFIの検証という報告書では、病院経営は本来非営利目的であり、病院が追求しようとする医療の効率と営利活動を目的とするSPCが追求する効率化性とは根本的に異質のものであると、こういう報告書を出しております。
 そのことを指摘いたしまして、質問終わります。

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