国会質問議事録

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内閣委員会(日本学術会議法改定の提出断念を求める)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 昨日の議運理事会に官房副長官が来られまして、閣法の提出期限は三月十四日までとしていたけれども、日本学術会議法改正案についてはこの期限までには出せないと、こういう報告がありました。
 この法案について岸田首相は、二月二十七日の衆議院の予算委員会で、我が党の宮本徹議員に対して、今国会への提出を目指しているところではありますが、期限ありきということではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めていきたいと、こう答弁をされました。一方、一昨日の後藤大臣の所信表明では、今国会に提出しますと、こう言われたわけですね。
 この総理の答弁に反して、学術会議の同意なしに提出をすると、こういうことなんでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) これまでも学術会議に対して丁寧に説明をし、意見を聞きながら検討を進めてきたところでございますけれども、引き続き学術会議としっかり意思疎通を図りながら進めていきたいと考えております。
 二月二十七日の衆議院予算委員会での総理答弁は、御指摘のとおり、今国会への提出を目指しているところではありますがと明確に述べた上で、期限ありきということではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めていきたいと答弁されたものと承知をいたしております。
 いずれにしても、今国会に日本学術会議法の改正案を提出したいと考えておりますけれども、期限ありきということではなく、学術会議に対して丁寧に説明し、十分に意見を聞きながら検討を進めていきたいと思っております。
○井上哲士君 十分に意見を聞くということになりますと、学術会議が政府の案に根本的な疑念を呈しているまま法案提出などはあり得ないと言わなければなりません。
 日本学術会議法の見直しの大きな問題の一つが、会員選考に新たに第三者委員会を関与させようとしていることです。
 日本学術会議は昨年十二月の二十一日に、内閣府日本学術会議の在り方についての方針について再考を求めますという声明を総会で採択をしました。その中で、会員選考のルールや過程への第三者委員会の関与が提起されており、学術会議の自律的かつ独立した会員選考への介入のおそれがあると指摘をしております。
 お手元の配付資料一ページを御覧いただきたいたいんですが、今年二月の十四日に五人の元学術会議の会長が連名で、岸田文雄首相に対し日本学術会議の独立性及び自主性の尊重と擁護を求める声明を公表をしております。この中で、学術会議の独立性は会員選考の自律性を不可欠とするが、内閣府が企図する第三者から構成される委員会の介入システムはこれと全く両立しないと述べております。
 大臣は、今回の学術会議法の見直しの中で、独立性に変更を加えるという考え方は一切ない、三条をしっかり守った運営をしていくと答弁をされておりますが、それではなぜこのような批判が出てきているとお考えでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 選考諮問委員会、これは仮称でありますけれども、その設置は会員選考等の透明化を推進するためのものでありまして、会員選考に政府が介入するというようなことは、全くそういう考えはありません。
 その上で、一言申し上げますと、学術会議につきましては、諸外国のアカデミーは、独立した民間団体でありながら、国を代表する地位を認められて、国から財政的支援を受けることも含めて国民に説明できるように運営されているということでございます。日本では、主要先進国、G7参加国では唯一、国費で賄われる国の機関として、委員は公務員として政府から独立して職務を行うことになっております。このため、学術会議が国民から理解され信頼される存在であり続けるためには、活動を担う会員等の選考も透明なプロセスで行われることは必要であろうというふうに考えております。
 選考プロセスの見直しについては、学術会議においても、自ら令和三年四月のより良い役割発揮に向けてに基づいて改革を進めておられるところであると承知しておりますけれども、学術会議が自ら示された改革の方向性も踏まえて、今回の政府としての会員選考等の透明化を図るものでございます。
 具体的には、会員等以外の有識者から成る選考諮問委員会、仮称を学術会議に設置しまして、会員等の選考に関する規則及び選考について意見を述べることによりまして、これまでの学術会議が取っておりますコオプテーション方式を前提としつつ、選考プロセスの透明化を促進することを考えております。
 詳細の手続は検討中ではございますけれども、委員の選考も任命も、これあれですね、選考委員会の委員の任命もそして選考も学術会議会長自らが行うことを想定しておりまして、当然のことながら、会員候補者の推薦については従来どおり学術会議自らが行うことといたしております。
 このような選考諮問委員会の趣旨や制度設計、これは学術会議の自らの提言に沿う形のものだというふうに考えておりますので、できるだけ制度設計についても速やかに検討を進めつつ、学術会議に対してより丁寧に説明し、十分意見を聞きながら進めていきたいと考えております。
○井上哲士君 長々と御説明いただきましたけれども、十二月の二十一日の学術会議の声明の後に、二月十六日の学術会議の臨時幹事会で内閣府から検討状況について説明がされております。今のような御説明をされているわけでありますけれども、全く学術会議からの疑念は払拭されていないんですね。ですから、それに対して学術会議の懸念事項が発表されております。資料の五ページ以降であります。
 この中で、選考諮問委員会に対する懸念について、具体的説明はなかった、今回の説明で丁寧な説明とみなすことはできないとしております。そして、内閣府の説明が全体として、十二月二十一日の学術会議の声明で示した懸念事項について、解消するどころか、むしろより深めるものだとしているんですね。そして、声明が求めた見直しについても、実質的にはなされてない、法定化に疑問があると指摘した事項については、立法事実は示されないままに終始したと、こう述べております。
 これでは、丁寧な説明がされているとか意思統一が、意思疎通がされている状況とは、大臣、到底言えないんじゃないでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 今も少し貴重なお時間をいただいて長い答弁をさせていただいたのは、この選考諮問委員会の考え方がどういう枠組みの中でどのように提案されているのか、そしてその自律性を担保していくために会長自らがその選考委員も指名、そして決定をすると、そういう自律的な仕組みになっているということを国会では何度も申し上げておりますし、先方にも伝えているつもりでございますけれども、努力は足りないのかもしれないということで、また改めてこの場でも時間をいただいて説明をさせていただきました。
○井上哲士君 最初にも申し上げましたけれども、第三者委員会のこの設置そのものが、言わば自律性を損なうという指摘をされているわけであります。
 資料の七ページにありますように、学術会議がこの懸念事項の中で、一旦、今国会への法案提出は断念した上で、より丁寧な検討を進めるとともに、アカデミアなど多様な関係者を交えた協議の場を設けて、広く日本の学術体制の在り方も含めてこの問題の議論を行うべきであると、こう言われております。このとおりですね、私は、法案提出は断念をして広く議論を求めるべきだと、こう思っております。
 その上で、さらにこの学術会議法見直しの問題点について聞きますけども、この会員選考に当たって、会員等に求める資質を新たに盛り込もうとしております。
 資料三ページの内閣府の説明資料には、会員等に求められる資質について、多様な分野の科学に関する知見を総合的に活用して科学、行政、産業及び国内生活の諸課題に取り組むための広い経験と高い見識とか、行政、産業界との連携による活動の業績などが示されております。現在、会員選考に当たっては、学術会議法第十七条にある優れた研究又は業績がある科学者と、こういう基準しかありません。これにこういうものを新たに導入をするということになるんですね。
 これに対して、先ほど示した学術会議の懸念事項、資料五ページで、こう述べております。現行の日本学術会議法に定められた最も基本的条件としての優れた研究又は業績がある科学者を超えたところについては、現在進行している次期会員の選考方法に既に明示していると。また、考慮されるべき案件は、その折々の日本学術会議が社会において果たすべき役割と活動に応じて可変的であり得ることから、法定することはなじまないと言っているんですね。
 既に学術会議は実質的にやっている、その上、そもそも法定することはなじまないんだと。にもかかわらず、なぜ今回の見直しで法定をする必要があるんですか。
○国務大臣(後藤茂之君) グローバル社会が直面している地球規模の課題や新興技術と社会との関係など、政策立案に科学的な知見を取り入れていく必要はますます重要になってきていると思います。このため、学術会議には、中長期的、俯瞰的、分野横断的な課題に関しまして、広く社会と問題意識や時間軸等を共有しつつ、時宜を得た質の高い科学的助言を行うことが期待されておりまして、このこと自体は学術会議自身も自己改革の中で述べております。
 そして、今委員御指摘のとおり、学術会議のまとめたより良い役割発揮においても、分野横断的な見識と異分野間の対話能力を含む、そうした個別分野の深い学識に加えて、そうしたものを求めるべきというふうに自ら述べられているとともに、さらに、会員候補者の選考方針においても、国内外の学術及び社会の動向を的確に把握し、科学技術の発展方向を広い視野から展望しつつ、異なる専門分野間をつなぐことができること、政府や社会と対話し、課題解決に向けて取り組む意欲と能力を有することを学術会議の選考方針自身が挙げております。
 そういう学術会議が示されておられる方向性を踏まえまして、今回、多様な分野の科学に関する知見を活用して科学、行政、産業及び国民生活の諸課題に取り組むための広い経験と高い識見が求められることを法律上はっきりと明記するということでございまして、今後の安定的な運用を担保するための改正であるというふうに考えております。
 なお、先ほど申されましたところの、今回の法改正、判断基準、考慮事項などの明確化、透明化を図る趣旨であるわけでございますけれども、具体的にどういうことを求めていくのかということについては、選考諮問委員会の意見を聞きながら、どのような資質、どのような判断基準等が必要かということを学術会議において自らお定めいただければよいというふうに考えております。
○井上哲士君 また長く答弁されましたけど、今おっしゃったように、学術会議が既に次の会員選考で自らやっているんですよ。それを法定するのはなじまないと言っているんですね。
 資料の五ページを見ていただくと、会員等に求められる資質として、あえて行政、産業界との連携や研究成果の活用を例示することは、一定の学術領域、例えば、基礎研究の分野にはなじまないと、これらを明記することは、会員の選考、ひいては日本学術会議の性格にも関わると強い懸念を示しているんですよ。今大臣が答弁されたことは、法定化をする理由には全くなっておりません。学術会議が独立した組織として自らやっているんです。そして、法定化になじまないとこれだけ具体的に言っているのにまともなお答えがないんですね。
 そもそも、自律的な会員選考というのは、各国のアカデミーの独立性の根幹に関わる問題であります。先ほど諸外国のアカデミーのことも御答弁ありましたけど、二〇〇三年、日本学術会議がまとめた各国アカデミー等調査報告書では、会員の選出方法については、ほぼ全ての機関において、そのアカデミー内の会員により推薦、選出される方法、コオプテーションを採用しているという調査結果が明らかにされております。日本学術会議も、各国のアカデミーと同様にコオプテーション方式で会員を選考しているわけですね。
 内閣府も諸外国のアカデミーの調査を行っており、その結果を資料に配付をしております。九ページに会員の選考における会員以外の者からの意見聴取の欄がありますが、調査の結果、今回の見直し案のように、会員選考に第三者機関が関与するという仕組みを取っている国は、事務方で結構ですけど、あるんでしょうか。
○政府参考人(笹川武君) お答え申し上げます。
 内閣府において、昨年、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの四か国のアカデミーについて、日本学術会議事務局の協力も得て御指摘のような調査を実施いたしました。
 ナショナルアカデミーの設置形態にはそれぞれの歴史的経緯を踏まえた多様性がございます。ここは学術会議もそのようにおっしゃっていますが、アカデミーが民間の団体ではなく国の機関というのは日本だけでございました。それから、学術会議の会員は特別職の国家公務員として任命されているということでございます。
 したがって、私どもといたしましては、国の機関であり会員が公務員である学術会議と国とは別の法人格を有する海外アカデミーとでは、そもそも前提が異なるのではないかと考えているところでございます。
 済みません、その上で、先生御指摘の点につきましては、アカデミーの内部に会長などから諮問を受ける独立的な機関を置いている例というのは確認できませんでしたけれども、ちなみに申し上げますと、会員の選考において会員以外から意見を聴取している例として、ドイツにおいては、候補者の選考に当たって必要に応じて会員以外の専門家の助言を求めることができる、そういう旨の規定があるということは承知しております。
 いずれにいたしましても、各国のアカデミーの状況はそれぞれ歴史的経緯を踏まえて多様だったということでございます。
 国の機関として類例のない日本の学術会議の在り方については、今回調査いたしました四か国のアカデミーの状況も参考にしながら、一番大事なことは、やはり国民から理解され、信頼され続ける、そういった存在であってほしいということでございますので、そのような観点から、学術会議の意見も聞きながらしっかり検討してまいりたいと思っております。
○井上哲士君 いろいろ言われましたけれども、内閣府の調査でも、諸外国のアカデミーで会員選考に第三者機関が関与している国はないということでありますね。大臣、それでいいですね。
○国務大臣(後藤茂之君) 今申し上げたように、ドイツのように意見を外部の者に聞くという、そういう制度を持っているところはあるという今答弁をさせていただいたということでありますけれども、単純に外国との比較をするときに、やっぱり民間団体が国を代表するアカデミーであるということを国民から長きにわたり認められ、そして国民がその団体を支援し、そして補助金を投入することについて納得をしている、それだけの民間団体としての透明性を確保しつつ活動していると思います。
 コオプテーション方式を日本の学術会議、取っておりますし、これからもコオプテーション方式を取るわけでありますけれども、そのときに自分の後、誰を推薦をしていくのかということについて、その基準なり、それなりの国民に対する透明性を示すことは最低限必要なのではないかというふうに考えておりまして、そうした内容の対応をすることは学術会議自らがつくりました改革の中にも書かれているということを申し上げているわけでございます。
○井上哲士君 質問に答えていただいていないんですよ。
 あれこれね、いろんなその設置形態が多様であるということをいろいろ言われますけれども、ナショナルアカデミーの独立性のポイントは、会員選考における自主性、独立性なんです。意見を聞くといえば、この資料でも日本の学術会議だって意見聴取はしているんですよ。しかし、問題は自律的に選ぶということであって、アカデミーにおいて設置形態はいろいろあっても、こういうナショナルアカデミーにおいて第三者委員会が関与する仕組みを取っている国はないと、これが調査ですから、それを認めてくださいよ。何で認めないんですか。
○国務大臣(後藤茂之君) 全く同じような形で前提となる制度が異なるので評価は難しいと申し上げましたけれども、形式的に見れば、そこだけ切り取れば委員のおっしゃる指摘はそうだとは思いますけれども、ドイツのように部外者に意見を求めているそういう国の例はあるということは申し上げております。
○井上哲士君 日本のノーベル賞受賞者八人が連名で声明を出されております。今回の法改正が学術会議の独立性を毀損するおそれのあるものになっていることに対し、私たちは大きな危惧を抱いておりますと。これは、単に内閣府と日本学術会議との二者の問題ではなくて、学術の独立性といった根源的かつ重要な問題だと言われています。私、重く受け止めるべきだと思うんですね。学術会議がこれだけ、学術界からこれだけ懸念の声が上がって、広がっている中で、なぜ第三者を関与させようとしているのかと。
 内閣府が昨年十二月二十一日に明らかにした具体化検討案では、この選考諮問委員会の設置は選考、推薦及び内閣総理大臣の任命が適切かつ円滑に行われるために必要な措置だとしておりますけれども、これまで会員任命で適切かつ、また円滑に行われなかったと、こういう例はあるんでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 二十五期の会員の任命も含めまして、これまでに行われた任命は、日本学術会議法に基づき任命権者である内閣総理大臣が適切に判断したものであり、適正かつ円滑に行われてきたものと承知をいたしております。
○井上哲士君 適正かつ円滑に行われてきたわけですよ。そして、今のいろんな課題に応えて、学術会議自身が、会員選考については先ほど大臣が述べられたように様々なことをやっているわけですね。じゃ、全く立法事実ないじゃありませんか。
 そして、更に言えば、私は適正、円滑でなかったのは二十四期のあのときの六人の任命拒否だと思いますよ。透明性とか国民の理解と言われますけれども、一番透明性欠いているのはあの任命拒否じゃありませんか。
 例えば、二〇年の当時の十一月の共同通信の世論調査では、任命拒否についての菅政権の説明は不十分だと答えた人は実に七二・七%ですよ。時の政権が最も不透明で最も国民に説明しないやり方をやっておきながらですよ、今学術会議が様々な国民の声に応えて自主的に改革をして、そして自律的に選ぶことをやっておきながら、何でこんな法改正やる必要があるんですか。そもそも日本学術会議法改正の立法事実はないということじゃないですか、いかがですか。
○国務大臣(後藤茂之君) 今委員御指摘のように、我々は、二十五期の会員の任命も含めて、これまでの内閣総理大臣が推薦に基づく判断により任命をしたことに、適正かつ円滑に行われてきたものというふうに答弁をいたしました。今先生のお話でいえば、二十五期の任命は適切ではないと先生はおっしゃっているというふうに私には聞こえました。
 いずれにしても、我々、今回の改正で求めていることは、学術会議自らが指摘をされていることでありますけれども、候補者の視野を広げていくこと、また選考プロセス、それは選択の基準等が明確になることによって、選考、推薦、そして内閣総理大臣による任命も含めて、より適正、円滑に、透明化される手続の中で行われることが国民の理解を得ていくためにも良いことなのではないか、学術会議にとっても良いことなのではないのかということを申し上げているわけです。
○井上哲士君 いや、それは学術会議がやっているんです。それをあえて法定化をしたりする。
 衆議院の答弁では、学術会議の取組を後押しするという答弁もありましたけど、後押しじゃないんです、やっているのは。横やりじゃないですか。これは、私は、先ほどの問題でいえば、任命を拒否した、いまだに欠員がある、これは極めて不適正な任命拒否だったということは申し上げておきたいと思うんですね。
 私は、問われているのは学術会議の在り方ではなくて、この科学、学術と政治の関係についての政府の認識だと思うんですね。政治は、やっぱり社会の様々な利害を調整して方向を選択しなければなりません。しかし、科学というのは、学問の自由の下に、この政治的、経済的思惑から独立して社会を客観的に判断をする、そういう基準を示すものだと思うんですね。日本学術会議法が定める日本学術会議の独立性というのは、やはり学術会議が時々の政府の利害からは独立をして、そして学術的に自主的に科学的助言を行って、それが政府を受け入れ、尊重するという、科学と学術と政治の関係を私は規定をしていると思うんですよ。
 大臣は、こういう学術会議法に定めている科学、学術と政治の関係の在り方を認めるんですか、そうじゃないんですか。
○国務大臣(後藤茂之君) 基本的に、今委員がおっしゃった学術会議と政治との関係について、私も意見を異にするところではありません。
 日本学術会議は、科学が、その前文に、学術会議前文にあるとおり、日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信に立って、科学者の総意の下に、我が国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と連携して学術の進歩に寄与することを使命としていると認識していると、そういうことでございます。
 また、日本学術会議法第三条において独立して職務を行うと規定されているのは、その意味においては政府、各省の制肘を受けないという趣旨であると、過去において国会において度々答弁をしてきたとおりでございます。このような学術会議法に定める独立性については十分認識をしておりますし、そうした独立性に変更を加えるという、そういうことでは全くございません。
 私も、単に科学技術、学術というものが社会や政府の役に立つかどうかという観点だけではなくて、人間がいかに生きていくべきか、人類社会がどうあるべきかなど、自然科学や、あるいは人文科学を問わず、幅広い観点から自由闊達に御議論、御提言をいただいて、我々もそれに真摯に耳を傾けて、それを実現しようとする、そういう国づくりや社会づくりを目指していくべきものだというふうに認識をしています。
○井上哲士君 その認識と出されようとしている法案が違うんですよ。
 学術会議の元会長五人の声明の資料二ページの部分には、内閣府の案は、政府と科学者が科学技術政策とその課題遂行のために問題意識や時間軸を共有して協働することを求めているが、それは言わば、サイエンティスト・イン・ガバメントの仕事であると述べているんです。要するに、個々の科学者が政府の諮問会議や審議会のメンバーとして政府の政策決定に専門家の立場から関与すると、これはこれで必要なんです。しかし、日本学術会議と政府の関係は、こういう各種諮問会議とか審議会とは全く異なるものだと。
 声明は、引き続き、科学者コミュニティーの代表機関が課題とする政府への科学的助言は、そのような協働とは異なり、時々の政府の利害から学術的に独立に自主的に行われるべきものであると。その独立性を保障することこそが科学の人類社会に対する意義を十全ならしめる必要条件であり、一国の政府が恣意的に変更してよいものではないと。大変重要な指摘だと思うんですよ。
 大臣は、時々の政府の利害から学術的に独立し、自主的に助言を行う学術会議が、その時々の政府の課題に対する諮問会議とか審議会とか、そんなものに変えたらいいと、そういうお考えですか。
○国務大臣(後藤茂之君) 我々、問題意識の共有を求めるということは、これ度々これも申し上げていることでありますけれども、政府等と結論の共有を求めているということは全くありません。
 そしてその上で、これは学術会議自身も自分の改革案の中で認めておられることでありますけれども、政府等への科学的助言を公務として行うことを役割とする機関である以上、受け手側の問題意識や時間軸や現実に存在する様々な制約等を十分に踏まえながら審議等を行っていただく、そういう必要はあるのではないかというふうに思っておりますし、そうしたことが学術会議の社会に対する科学的助言の実効性を上げることにもつながっていくのではないかというふうに考えているところであります。
 また、学術会議には、中長期的、俯瞰的、分野横断的な課題に対して時宜を得た質の高い科学的助言を行うことを期待しているわけでございまして、学術会議の独立性に変更を加えるというつもりも、それから具体的な審議会やあるいは特定の調査会のような個別の政策課題を政府と一緒につくっていくような、そういう役割を求めようというつもりでも全くありません。
○委員長(古賀友一郎君) 時間が参りましたので、おまとめください。
○井上哲士君 時間で終わりますが、結論は共有しなくても、結局、法定をしてしまえば、その時々の政府の問題意識や課題の範囲内で提言や勧告を行えということになっちゃうんですよ。これはまさに独立性を損なうものでありまして、日本が学術を通じて人類に貢献するという役割を失うことになると。法案の提出はやめて、幅広い議論を進めるべきだということを強く申し上げまして、質問を終わります。

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