国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2023年・211通常国会 の中の 予算委員会(安保3文書と平和の外交について)

予算委員会(安保3文書と平和の外交について)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 冒頭、ロシアによるベラルーシへの戦術核配備について、国際的な緊張を激化させ、そして核使用のリスクを高めるものとして、撤回を強く求めたいと思います。政府は、このロシアによる配備撤回を求めることはもちろん、核兵器そのものをなくすための禁止条約の署名、そして批准に取り組むことを強く求めたいと思います。
 参議院の予算審議ももう大詰めであります。本予算の最大の問題は、専守防衛を投げ捨てて敵基地攻撃能力を保有し、五年間で四十三兆円という空前の軍事費の拡大になっていることです。衆参の議論を通じて、その恐るべき内容が浮き彫りになってまいりました。(資料提示)
 敵基地攻撃能力について、安保三文書で政府が導入するというスタンドオフミサイル、一二式地対艦誘導弾は射程を千キロ以上に延伸をする、迎撃困難な高速滑空弾は射程二千キロ、さらに極超音速誘導弾も三千キロとされております。沖縄に配備をすると東アジアがすっぽり入ると。音速の五倍に飛んで、そして相手の国の奥深くまで攻撃できると。守るためではなくて攻めるための兵器であります。総理は、相手に脅威を与えるものでないと答弁をしてこられましたが、これが脅威でなくて何なのかということなんですね。
 しかも、外務省のホームページ、軍縮・不拡散と我が国の取組にはこう書いています。軍備拡張競争や兵器の拡散は国際の平和と安全を損なうことにつながりかねません。無制限に増大した軍備や兵器は、たとえ侵略や武力による威嚇の意図がなくても、他の国の不信感を高め、不必要な武力紛争を引き起こすことになりかねないのです。(資料提示)
 幾ら首相が相手に脅威を与える意図はないと言っても、ここにあるとおり、日本の大幅な軍備拡大が他の国の不信感を高め、不必要な武力紛争を引き起こしかねないんじゃないですか、いかがですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 重要なことは、我が国の国民の命や暮らしを守り切れるか、政治の責任を十分果たし得るか、これが大切なポイントであります。
 近年、我が国周辺では、ミサイル関連技術と運用能力、飛躍的に向上し、質量共にミサイル戦力が著しく増強される中で、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつある、これが現実であると思っています。こうした状況において国民の命や暮らしを守り抜くため、反撃能力の保有を決定いたしました。これにより、抑止力、対処力を一層向上させ、武力攻撃そのものの可能性を低下させることができると考えています。
 その上で、大切なことは、諸外国に対して、自国の安全保障政策の具体的な考え方、これを明確にし、透明性を確保することであると思っています。反撃能力を含む我が国の安全保障政策に関する透明性の確保について、今後とも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
○井上哲士君 今、武力攻撃の可能性を低めると言いました。だけど、ここにあるように、不必要な武力紛争を引き起こすことになると、こういうことを言っているんですよ。外務省が書いているんですから。
 そして、元自民党の総裁である河野洋平元衆議院議員が、最近サンデー毎日のインタビューでこう述べていますよ。これまでは専守防衛で攻撃の意思はないとされてきたと。ところが、敵基地攻撃能力の保有で、今度は意思ありと変わる。それに加えて、トマホーク四百発や足の長いミサイルを持つという。これは周辺国への明らかな脅威だ、九条で禁じる脅威になると。しかも、脅威を抑え込むとなると、更なる軍拡につながるおそれがあると。河野さんは、敵基地攻撃能力の保有そのものが攻撃の意思とみなされる、明らかな脅威になると。
 これがそもそも政府や外務省が言ってきた見解なんじゃないですか、逆行しているじゃないですか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) ですから、先ほど御説明したように、これ、無制限なこの軍備の拡大などということを申し上げているわけではありません。現実の中で国民の暮らしや命を守るために何が必要なのか、現実的なシミュレーション、これを行うことによって具体的な装備を積み上げた、この結果であるということを申し上げています。そして、それを透明性を持って説明することが重要である。是非、そういった透明性の確保に向けて努力をすることは重要であると考えています。
○井上哲士君 いや、無制限でないとおっしゃいますけど、これまで持てないと言った敵基地攻撃能力を持つんですよ。五年で二倍にするんですよ。世界で第三位の軍事大国になるんですよ。ほかの国から見たら無制限ですよ、脅威ですよ。
 しかも、この敵基地攻撃は相手の報復攻撃を招くことになります。日本が攻められていなくても、集団的自衛権行使として敵基地攻撃能力をした場合にどうなるのかと。報復攻撃を想定をして防衛省が準備していることが明らかになりました。
 三月二日の当委員会で、我が党の小池書記局長が防衛省の内部文書を示して、全国二百八十三地区の自衛隊の基地、防衛省施設の約二万三千棟の強靱化を進める計画を明らかにいたしました。その内容を防衛大臣も認められました。強靱化とは、生物化学兵器や核兵器などでの攻撃に耐えられるように、地下化、構造強化、フィルターの設置などを行うものであります。(資料提示)
 二百八十三地区は、四十七都道府県全てに分布をしております。地図で表しました。赤が陸上自衛隊、青は海上自衛隊、緑は航空自衛隊。まさに全国どこでも攻撃対象になり得ると、こういうものなんですね。軍事で、軍事で対抗すれば、果てしない軍拡競争となります。集団的自衛権の行使として米国の戦争に加わって敵基地攻撃を行えば、日本全土が報復攻撃で戦場になる可能性がある、そのためにこんな強靱化までやっているんですね。だけど、そうなれば自衛隊基地だけが残ると。周りの住民一体どうなるかという問題なんですよ。
 私は、日本がウクライナの情勢から学ぶ教訓は、一旦戦火になれば、もう国土が戦場になって大量の犠牲者が避けられないことだと、そうであれば、絶対に戦争を起こさないためのその外交強化こそ最大の教訓だと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 複雑かつ不透明な安全保障環境の中で国民の命、暮らし、命や暮らしをいかに守っていくのか、こうした観点から取組を検討いたしました。そして、そのために、先ほど御指摘があった反撃能力の保有も、ミサイル関連技術あるいは運用能力の飛躍的な向上に対しては必要であるということを考えたわけですが、そうした国民の命や暮らしを守るために必要な防衛力の強化においてこの自衛隊施設の抗堪性の向上により継戦能力を高めることも重要であるという観点に基づいて、御指摘にありますような強靱化を検討するということとしたわけであります。
 そして、このロシアによるウクライナ侵略における教訓として、外交こそ重要であるという御指摘がありました。これ、外交が最も重要であるということ、これはもう従来から我々もしっかりと国家安全保障戦略の中に明記をし、訴えさせていただいています。外交をしっかり進めると同時に、何よりも、このロシアによるウクライナ侵略における教訓、これは、国連憲章を始めとする国際法、ルール、これを守る国際秩序をつくっていくことであると私は考えております。
 是非、そうした秩序をつくるための外交努力、G7議長国としてもしっかり取り組んでいきたいと考えています。
○井上哲士君 外交努力と言われますけれども、この安保三文書のどこにも、ウクライナの事態を引き起こした外交上の問題はどこにあったかという言及ないんですよ。
 一方、国家防衛戦略では、ロシアがウクライナ侵略するに至った軍事的な背景としては、ウクライナのロシアに対する防衛力が十分ではなく、ロシアによる侵略を思いとどまらせ、抑止できなかった、つまり、十分な能力を保有していなかったことにあると、こう書いています。
 こうなりますと、要するに、ウクライナのようなことにしないためには、敵基地攻撃能力の保有を始めとした軍事力の強化しかないと、こういう話になっちゃうんですよ。
 私は、ウクライナ侵略の責任は挙げてロシアにあると思います。当然、私たちは即時無条件の全面撤退を求めています。
 その上で聞きますけど、ウクライナのような事態をもたらした背景として外交の失敗という認識はないんでしょうか。今日の午前中の本会議でも総理は責任はロシアにあるという答弁のみで、それを前提にして外交の失敗について聞いているんです。是非ちゃんと答えていただきたいと思います。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 外交の失敗についてどう考えるかということでありますが、まず、このウクライナの、今回のロシアによるウクライナ侵略においてこの外交が大事だと先ほど申し上げましたが、外交の裏付けとして、自らの国民の命や暮らしをしっかり守っておく、そういった備えが重要であるということは申し上げております。
 そして、外交において何が大事なのか。今回、ロシアはあからさまに国際法違反を犯したわけであります。それに対して国際社会が一致してしっかりと批判をする、こうした国際秩序をつくっておくこと、これこそ外交において重要だということを考えています。外交の失敗というのであるならば、国連の常任理事国である国があからさまに国際法に違反した、このことを国際社会が一致してこれ批判する、こうした国際秩序をつくっていく、これこそ外交のあるべき姿であり、そういった国際秩序をつくるべく努力することが外交において求められているんだと考えます。
○井上哲士君 起きたロシアの侵略に対して国際社会が一致して国連憲章違反だと世論を高めろ、当たり前ですよ。問題は、それがなぜ起きたのかと、そこに至る外交の失敗は何かということを聞いている。何も答えておられません。その一方で、今日のウクライナは明日の東アジアと、こういうことを繰り返して危機をあおって、大軍拡を推進されております。
 今朝の午前中にもありましたけど、ヨーロッパにはロシアも含めた欧州安全保障協力機構というのがあります。OSCE、今もあるんですよ。欧州安全保障憲章が作られて、欧州における紛争を平和的に解決すると宣言をしました。しかし、NATOもロシアもこれを横に置いて、とにかく軍事力で抑止する戦略の下で、力対力の悪循環で徹底的な対立に至ったんです。
 総理、幾ら聞いても外交の失敗について答えられませんので具体的に聞きますが、こういう軍事対軍事の対立、ブロック対立に陥ったことが戦争を招いてしまったと、これが私はヨーロッパの教訓と思いますが、総理、いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) 今、OSCEにもお触れいただきましたけれども、今回のウクライナ侵略、ロシアによるですね、背景について様々な見方、議論があるということは我々も承知をしておりますが、この委員がおっしゃる欧州安全保障協力機構、これが機能するためには、やはり国際法を遵守すると、これが大前提になるわけでございます。国連であれOSCEであれ、国際法を遵守するという前提が崩れてこのロシアがウクライナ侵略を行ったわけでございまして、そこを国際法違反であると先ほど総理がおっしゃったとおりであるわけでございまして、これはいかなる背景があってもこれを許してはならないということでございまして、これを厳しく非難されるべきだと考えておるところでございます。
○井上哲士君 いや、我々はそんな国際法違反はあってはならないと最初から厳しく批判していますよ。しかし、そうなったその背景には何があるかということを見なければ、結局抑止力だと、軍拡だという話になっちゃうじゃないかというわけですね。
 なぜ、ヨーロッパはブロックの対立になりました。しかし、アジアにはどういう条件があるかというのをよく見る必要があると思うんですね。
 かつて東アジアは、ベトナム戦争など紛争の地域でした。しかし、この地域に存在したCENTO、SEATOといった軍事同盟は次々と解体をされて、現在ある軍事同盟は日米と米韓のみですよ。NATOのような多国間の軍事同盟はアジアにありません。ここがまず違う。
 それから、アジアにおける安全保障の主要な担い手は、東南アジア諸国連合、ASEANであります。一九七六年に東南アジア友好協力条約を結んで、徹底した話合いを半世紀積み重ねてこの平和と協力の地域に変えてきたと、その大原則は、特定の国を排除しない、包摂的であるということなんですね。(資料提示)
 こういうASEANのような平和の大きな源泉があって、それを中心とした平和の枠組みが発展しつつあると、これもヨーロッパにない大きな特徴なんですよ。こういうアジアにあるヨーロッパと違う平和の条件、これをどう考え、そして、九条を持つ日本が本来の外交力を発揮をしてこのアジアに平和をつくっていく、そういう役割について総理はどうお考えでしょうか。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) アジアの地域、この域内各国の発展段階、政治経済体制など、多様性があります。
 そうした中で、このASEANが地域協力の中心としての役割、これをASEANが担い、そして、東アジア首脳会議、EAS、ASEAN地域フォーラム、ARF、あるいは拡大ASEAN国防相会議、ADMMプラスなど、多層的な地域協力の枠組みがあります。同時に、ASEANは、自由で開かれたインド太平洋、FOIPと、本質的な原則を共有するインド太平洋に関するASEANアウトルック、AOIP、これを打ち出しています。
 我が国としては、FOIPの推進とAOIPの支持、これを強力に打ち出し、何よりも国際法違反の蛮行、これは決して許さない、こうしたインド太平洋地域においても法の支配に基づく国際秩序を守り抜き、もって地域の平和と繁栄を確保するため積極的に貢献していく、こうした努力が重要であると考えます。
○井上哲士君 今もお話ありましたけれども、ASEANの加盟十か国に、日本やアメリカ、中国、韓国、ロシアなど八か国で東アジア・サミットというのがつくられてきました。ASEANはこれを強化して、行く行くは東アジア規模の友好協力条約を展望して、このASEANインド太平洋構想、AOIPというのを進めております。日本共産党は、この構想を目標に、地域の全ての国を包摂する平和の枠組みをつくろうと提案をしております。
 今、総理は、このAOIPとFOIPは共に推進すると、こう言われるんですね。しかし、これ果たして両立できるのかと。AOIPは中国も含めて地域の全ての国を包摂した平和の枠組みです。一方、FOIPはどうか。日米豪印のクアッドであるとか、NATO軍のインド太平洋関与を正当化する理念として用いられてきました。事実上のアメリカ主導の中国包囲網の構想だと言わなければなりません。
 総理は、先日、インドで、FOIPの四つの柱を発表して、包摂性、陣営づくりはしないと述べられました。しかし、例えばこの四つ目の柱ですよね。これを見ますと、自衛隊と各国軍の共同訓練、円滑化協定、物品役務相互提供協定などの整備、豪州、これは、豪州や英国軍との連携強化を進めるものであります。さらに、同志国の軍に対する無償資金協力、インドや米軍との共同訓練の強化、これ中国包囲の、包囲の陣営づくりそのものじゃありませんか、総理。(資料提示)
○内閣総理大臣(岸田文雄君) まず、FOIP、これは特定の国を対象にするものでもなければ、特定の国を排除するものでもありません。同じ考え方に立つ国と協力をしていく、こうした枠組みであります。
 そして、御指摘の点についても、各国において法の支配を貫徹するために協力をしていく様々な取組、この空や海を通じて、こうしたこの法の支配を貫徹していくための取組を強力に、向けて努力をしていく、こうしたことを申し上げているわけであります。
 法の支配、国際法、あっ、国際法、これは、弱い立場の国のためにこそあるものであると思っています。脆弱な国が自由を、自らの自由や国益を貫徹するためにこそ、こうした法の支配が重要であるということで、この国際法を遵守する、こうした国際秩序をしっかりつくっていかなければならない、こういった考え方に立つものであります。
○井上哲士君 事実上の陣営づくりじゃないかと聞いたんですけど、お答えありませんでした。
 先ほど言いましたように、クアッドとか、そしてNATO軍のインド太平洋関与を正当化する理念として用いられて、実際にこの間、急速に共同訓練などが行われてきたわけですね。AOIPの中にはこんな軍事的な中身はありませんよ。
 先日、先ほど紹介した河野洋平衆議院議長はこういうふうにも言われています。日本は自由で開かれたインド太平洋と言うが、中国が入らないと自由で開かれた地域にはならないと、こういう指摘もされてきたんですね。
 私は、一方、AOIPっていうのは、中国もアメリカもオーストラリアもEUもサインしています。先日の日米共同声明でも支持が盛り込まれました。そして、今、このASEANとの協力関係を望む国が東南アジア友好協力条約に加入する動きが世界に広がって、もう既に五十か国、これウクライナも加わったわけですよ。排除による包囲網ではなくて、こうやって地域の全ての国を包摂した平和の共同体、AOIP、これこそ日本が本気で取り組むことだと思うんですね。
 今政府が進めているようなそういう排除のやり方ではなくて、安保三文書は撤回する、戦争の準備ではなくて戦争を回避するための外交努力こそするべきだと、そのことを強く申し上げまして、質問を終わります。
○委員長(末松信介君) 以上で井上哲士君の質疑は終了いたしました。

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