国会質問議事録

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内閣委員会(インフル特措法改定案ー看護師の抜本的増員を、国立病院で横行する労働法違反ただせ)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 先日の本会議質問で、コロナ感染拡大で深刻な医療逼迫が生じたことについて、緊急時の対応には平時の医療体制に余裕が必要だということが明らかになった、これについての認識を総理に問いました。総理は、地域の医療機関の役割分担、連携の強化、そして医療従事者への弾力的配置が必要と言うのみで、この人員体制の強化、人を増やすということには言及がありませんでした。
 で、弾力的配置と言いますけれども、コロナ感染拡大の下で、医療機関がコロナ対応ベッドを確保しても看護師不足で配置できずに稼働しなかったという例が多数生まれたわけですね。ですから、幾ら司令塔機能強化と言いましても、この医療提供を担う個々の医療機関で人を増やすことをしないで次の感染症拡大に対応できるのかと思いますけれども、いかがでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 医療人材の不足につきましては、昨年六月の有識者会議の報告書におきまして、感染拡大期において医療現場を支える医師や看護師等の確保が困難となったこと、潜在看護師の確保が進められたが、新型コロナの入院患者を受け入れる医療機関で就業しているケースは少なかったことなど、指摘を受けたところでございます。
 こうした御指摘を踏まえまして、感染症に対応する人材を確保するために、昨年十二月に改正された感染症法におきまして、都道府県が策定する予防計画の記載事項として感染症の予防に関する人材の養成と資質の向上に関する事項を盛り込むこととしたほか、予防計画に基づき都道府県が医療機関とあらかじめ締結する協定のメニューの一つに人材派遣を位置付け、まずは県内での人材の融通を行うこととするとともに、都道府県内だけでは人材確保が難しい場合の国による広域調整の仕組みも規定されたと承知しています。
 内閣感染症危機管理統括庁においては、感染症危機対応における政府の司令塔機能を担う組織として、厚生労働省と連携してPDCAサイクルを着実に推進することで、感染症危機管理に必要な医療人材の確保も図りながら、医療、感染症危機対応の強化に取り組んでまいりたいと思います。
○井上哲士君 今のお話でも結局人材派遣なんですよね。そもそも増やすということがありません。幾らそういう協定を結んでも看護師の人数が足りなければ対応できないわけです。しかも、人を増やさなければ悪循環になるわけですね。
 全国の病院で、コロナ前からの慢性的な看護師不足、人手不足で外来診療や病棟看護の仕事が回らない、そこに三年以上もの新型コロナ対応の影響が重なって、耐え切れなくなった看護師の皆さんが次々に辞めていくと。そうしますと、残された看護師の皆さんの負担が更に重くなって、休職、退職者が大量に出るという事態も生じております。
 こうした悪循環によるこの大量退職、休職を防がなくては医療供給体制の崩壊に私直面すると思うんですね。司令を強化すると言ったって絵に描いた餅になりかねないと思いますけれども、大臣、認識いかがでしょうか。
○国務大臣(後藤茂之君) 長期にわたる新型コロナ対応におきまして、医療提供体制を支えていただいた看護師の皆さんの献身的な御努力に心から敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。
 医療提供体制を安定的に運営していくためには看護職員の方々が働き続けられる環境整備を図っていくことは極めて重要なことであるというふうに認識いたしております。
 こうした観点から、厚生労働省において、地域医療介護総合確保基金を通じて看護職員の勤務環境の改善を推進するとともに、看護職員の処遇改善に取り組むために、昨年十月から、現場で働く方々の給与を恒久的に三%程度引き上げるための措置を講じたと承知しています。
 今後は、五類感染症への変更に伴い、幅広い医療機関で新型コロナの患者に対応する医療体制に段階的に移行を進め、特定の医療機関に負荷が掛かることのないように取り組んでいきたいと考えております。
 引き続き、医療現場において必要な看護職員が確保されるように、感染症危機への対応を強化する観点から、厚生労働省とも連携して、統括庁としてもしっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○井上哲士君 勤務環境の改善の重要性は語られましたけれども、実際現場がどうなっているかという問題であります。
 今年の二月以降、週刊文春で五回にわたって、全国百四十の国立病院機構で横行するブラック労働と報道をされました。この報道では、例えば国立病院機構本部がある東京目黒の東京医療センター、これ病床数六百九十床ですけれども、昨年、退職、休職合わせて看護師が百人も減っていると報道されました。
 昨年十二月にコロナ感染拡大の第八波が猛威を振るった頃に、四十人から五十人の一般病床の病棟で、夜勤での看護師が四人体制だったのが三人夜勤へと減らしたことが看護師の過酷な勤務を強いていると。記事では、三人夜勤がとどめを刺したと病院幹部のコメントを紹介をしております。この三人夜勤の問題への声は文芸春秋だけではありませんで、この国立病院機構の労働組合、全日本国立医療労働組合、全医労にも数多く寄せられております。
 若干紹介しますと、エッセンシャルワーカーも人間、コロナにもなるし、無制限に働けるものではない、自分が元気じゃないと期待に応えられません、夜勤を四人以上にしてほしい、ICUレベルの重症患者を病棟で看護することでリスクが上がっている、夜勤人数を減らすことで患者の安全が保てず自分の資格をなくすかもしれない恐怖と闘っている等々、本当に深刻な声が寄せられております。
 こうした職場環境の実態が大量の退職や休職につながっているということへの認識、副大臣、いかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 当該事案におきましては、本年二月上旬に、この国立病院機構の病院において看護職員の勤務実態が労働関係法令の違反の疑いがあるというふうに報道されたものでございまして、その後も、委員の御指摘のとおり、類似の事案が報道されているということでございます。
 現在、国立病院機構におきまして、この報道内容に関して事実関係の精査を行っております。
 厚労省としては、この事実関係の結果を踏まえまして、必要に応じて適切に対応してまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 これ、二月十七日の衆議院の予算委員会でも取り上げられました。今おっしゃったように、国立病院機構が事実関係を確認しているというのが厚労大臣の答弁だったんですね。それからもう二か月たっているんです。
 厚生労働大臣は主務大臣としてこの独立行政法人である国立病院機構に対して監督指導義務があるにもかかわらず、これ二か月間、五度にわたって報道されているのにまだ確認をしていると、こういうことでいいのかという問題なんですね。当然、労働組合は病院ごとの労使交渉や国立病院機構に是正を求めてきておりますけれども、結局されていないんですね。
 例えば、この東京医療センターでいいますと、二〇二二年の年間の中途退職は百十三人です。一方、二三年度の採用予定は八十八人にとどまっておりますから、二三年の常勤看護職員は、二三年始まった時点で、定数六百二に対して現員は六百四なんですよ。ところが、先ほど言いましたように、去年は百十三人の退職。大体、最近でいいますと八十人前後、退職が出ています。ところが、中途採用は常勤はやらないんですね。そうしますと、もう今年は始まったらすぐにもう定員割れが起きるというような事態が起きているわけですよ。
 こういうことは、私は、主務大臣である厚生労働大臣ですから、厚労省がそんな機構が事実関係を確認している二か月も放置しているんじゃなくて、直ちに正すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 委員の方から二か月も既に経過がしているという御指摘がございました。これ、報道がありましたのは二月の上旬、最初ございましたが、その後も累次の報道がありまして、三月上旬頃まで報道がなされておりました。それまでに様々な指摘がございましたので、それらも含めて今事実関係の精査を現場で行っていただいております。
 国立病院機構は、独立行政法人制度で独法と規定をされておりまして、法人の自主性、また自律性を尊重した業務運営を基本とした法人形態でございます。不適正な業務運営が行われているともし認められる場合には、厚生労働省から国立病院機構に対しまして自主的な改善に取り組むように要請をするというふうに考えております。その上で、自主的な取組の結果改善が図られないというような場合には、さらに改善命令も行う必要があるというふうに考えております。
 いずれにしましても、主務省庁として、事実確認の結果を踏まえて必要に応じて適切に対処してまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 繰り返しますが、もう二か月たっているんですね。その職場環境のその勤務だけの問題でありませんで、様々なこの法律違反が横行しているということもこの文春も書いておりますし、全医労にも現場から告発や相談が寄せられております。いわゆる賃金不払残業、サービス残業、それから申請しても妊婦の深夜勤務免除を認めないであるとか、そして、特定の条件がなくても就学前の子を養育する労働者への深夜業務免除を認めないなどなどが横行しております。
 これも生の声紹介しますと、残業は事前に自主申告して上司に認めてもらわないといけないが、本当にそんなに掛かるのかと言われて残務をこなすのに必要な時間が一部しか認められず、本当に残業した時間は認めてくれない、勤務時間より前に来て担当患者の情報収集や確認を行わなければ仕事を始められないので前残業を行っていて申告するが、認められずサービス残業になっている、未就学児の子育ての中で夜勤を免除してもらいたいことを育休復帰前の面談で伝えていても、病棟配属になって夜勤は二回以上やることになっているはずと、夜勤に入るように、言われたなどなど、たくさんの告発が寄せられていますが、こうした法令違反が横行しているという告発が多数寄せられているのは本当に大問題だと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 御指摘のありました例えば前残業におきましては、これ、労働時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを申しております。使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に該当いたします。
 一般論で申し上げれば、使用者の明示又は黙示の指示によって勤務時間前に来て患者の情報の収集あるいは引継ぎ事項の確認などを行う時間は、これは労働時間に該当すると。その時間が法定労働時間を超えてもし行われるのであれば、当然、時間外、休日労働の協定、三六協定の締結、そしてまた割増し賃金の支払が必要になるというふうに認識をしております。
 今現状につきましては、先ほど答弁させていただきましたとおり、現場で今精査を行っておるところでございます。
 ただ、一般論で申し上げれば、看護師の方も含めて、現場で働く方々の職場環境が適正に保たれることは重要であります。労働関係法令違反がもし疑われるような場合には、労働基準監督署又は労働局において指導を行うといった必要な対応を行って、法の履行の確保を図っていきたいというふうに思っております。
○井上哲士君 厚労大臣が主務大臣である独立行政法人で法律違反がこれだけ告発されていると。文春の連載見ますと、もう次から次へといろんな声が出ていますし、労働組合にも寄せられているんですね。何かこの監督指導義務があるのに人ごとのような話にしか私には聞こえないんです。
 この機構の問題は、今回だけじゃありません。二〇〇七年度には、国立病院機構二十の病院が労働基準監督署から臨検を受けて、そのうち十一病院が行政指導になって、労働時間の適正管理や、サービス残業、未払賃金を支払うように指摘をされております。その直後の二〇〇八年の十二月に、我が党の小池議員に対して当時の医政局長が、時間外労働に対して超過勤務手当を適正に支給するなど、指摘事項に対して改善を図ったと聞いていますと、こういう答弁したんですよ。ところが、その後の報道で、二〇〇四年から一〇年に国立病院機構の二十の病院が七十一件の是正勧告を受けていることが明らかになりました。ですから、この二〇〇八年の答弁以降も事態は続いていたわけですね。是正されていなかったわけですよ。さらに、先ほど言いましたように、今日も様々な告発がされていると。
 普通の病院じゃありません。厚労省が管轄している、大臣が主務大臣のそういう独立法における国立病院でこういうことがやっぱり続いている。一刻も早く私は是正すべきだと思いますけれども、改めていかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) 先ほど御答弁申し上げたとおり、この法人の中で今精査をしているところでございます。その上で、この違法行為を行っているかどうかというような判断になろうかというふうに思っておりますが、このもし法人の中でその違法行為がもしあると、疑いがあるということになれば、当然その指導を行っていくと、また、法に基づいた対処を行っていくということになろうかと思います。
 独法として、独法を所管する厚生労働省としての観点を申し上げれば、先ほど申し上げたとおり、基本的には、独法通則法において、自主性に十分配慮されなければならないというふうにされておりますので、自主的な取組を行った結果、なお改善が図られない場合には、罰則を背景とした強力な是正措置として大臣が改善命令を行うことになるというふうに承知をしております。
○井上哲士君 これだけの声が寄せられているわけですから、私は一刻も早く、現に毎日働いていらっしゃるわけですから、是正が必要だということを申し上げたいと思うんですが。
 そもそも、この独立行政法人化が進められたときに、当時の政府は、国立施設としての制約がなくなって国家公務員の総定員の枠が外れると、こんな答弁もしていたんです。ところが、実際には慢性的な人員不足が続いていますし、人勧の対象ともならなくて国家公務員よりも低賃金という実態もあります。
 一方、国立病院機構は、筋ジストロフィーとか重度心身障害、結核など、国が国民の健康のために取り組まなければならない政策医療を提供しています。ですから、赤字経営となる病院も多いわけですよね。さらに、災害時の医療スタッフの派遣、コロナ禍では国や都道府県からの要請で一般病床から転用して感染症病床を確保しました。さらに、機構以外の病院でも、クラスターが発生した病院等に看護婦の派遣までしているわけですよ。ですから、民間病院では採算が取れないような医療を担っているわけですから必要な支援が必要なのに、一方では運営費交付金は毎年削減をされて、診療事業に関しては二〇一二年度から皆無という状況になっています。
 私は、担っている役割にふさわしく運営費交付金を拡充をすべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) この国立病院機構では、先ほど委員の御指摘もあったセーフティーネット分野、あるいは国の政策医療である五疾病五事業、こうした医療の提供をしていただいておりまして、ほかの設置主体では必ずしも実施されないおそれのあるような、こうした医療の提供に重要な役割を果たしているという認識をしております。
 ただ、運営費交付金につきましては、この診療事業において、診療事業においては、診療報酬等による自己収入により事業を行っていることを踏まえて、平成二十四年度以降は措置をしていないという状況にございます。
 ただ、先ほど申し上げた様々な役割がございますので、こうした政策医療に対しては、都道府県が医療計画に基づきまして、救急医療施設あるいは周産期医療施設、地域で必要となる施設の運営等に対して、そこには国としてしっかりと財政支援を行っていくと。それに加えて、国立病院機構については、公共法人として法人税を非課税とするというような税制措置も講じさせていただいております。
 いずれにしましても、この地域医療における役割を適切かつ確実に果たす運営を行うことができるように、経営状況を注視して、必要に応じて対応してまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 現実には、先ほど言いましたように、採算の取れない医療を分担をする中で、赤字のところもあって、様々な労働環境にしわ寄せが来ているわけですね。ですから、地域の医療機関の役割分担とか連携強化といっても、そこを、本当に大きな責任を担っている、ここがしっかりしなければ、私はやっぱりこれは絵に描いた餅になると思います。
 さらに、最後ですね、今、支援するのとは逆に、政府は、国立病院機構の積立金四百二十二億円を大軍拡の財源として前倒しで国庫に返納させようとしております。
 政府は四百二十二億円の積立金を不要見込みといいますけども、そうではないんですよね。老朽化した施設の改修とか職員の処遇改善のために計画的に積み立てていた財源でありまして、四年間積み立てて五年でやる、それを前倒しで返納すると。省令で定める三十九年の耐用年数を超える病院は百四十病院中七十七あるわけで、計画的な建て替えも必要であります。
 コロナ禍で必死で頑張ってきた職員の皆さんからは、何でこれを流用するんだという声も上がっています。これ、本来の目的どおり、職員の処遇改善や医療設備の更新のために使われるべきだと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○委員長(古賀友一郎君) 時間となっておりますので、簡潔に答えてください。
○副大臣(伊佐進一君) では、簡潔に。
 まず、積立金につきましては、先ほど御指摘いただいたとおり、特例的に前倒しで国庫納付に御協力いただくということでございますが、まず設備整備につきましては、これ五年間の中期計画で整備計画を作らせていただいておりますが、そこでは、自己収入また財政融資資金の借入れ等を財源として安定的に実施できるように取り組んでいるというふうに承知をしております。
 また、処遇改善につきましては、臨時特別一時金の支給や、あるいは同年十月からの診療報酬による手当の引上げ等々、様々な処遇改善にも取り組んでおりますが、いずれにしましても、現場の処遇改善また環境改善に引き続き厚労省としてもしっかり取り組んでまいりたいというふうに思っております。
○委員長(古賀友一郎君) まとめてください。
○井上哲士君 時間で終わりますが、命守るための予算を、軍事流用じゃなくてしっかり本当に命守るために使っていただきたいと思います。
 終わります。

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