国会質問議事録

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本会議(フリーランス取引適正化法案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 会派を代表して、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案について質問します。
 本法案は、独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法など、事業者間の取引を規制する取引法の一つとして、フリーランスに業務や作業を委託する事業者を対象に、優越的地位の濫用を防止するための規定や、就業環境の整備を求める規定を定め、情報量や交渉力の面で弱い立場にあるフリーランスとの取引の適正化を図るものです。
 政府の調査では、フリーランスは年々増加し、四百六十二万人と推計されています。三年以上に及ぶコロナ禍の下、収入減や解雇によって、インターネットのウェブサイトやスマートフォンのアプリを介して単発、短期の仕事を請け負う、ウーバーイーツなどのいわゆるギグワーカー、クラウドワーカーも急増しています。こうしたフリーランスの多くは、一方的な報酬カットや未払、契約打切りなど、弱い立場に置かれているだけでなく、最低賃金や労働時間規制、解雇規制、労災など、労働者保護法制の枠外とされています。
 昨今、労働者性が認められるべき労働者を個人事業主として就業させる雇用偽装とも呼ばれる状況も広がっています。我が党は、こうしたフリーランスの実態を告発し、労働法制を適用して保護をすることを繰り返し求めてきました。
 二〇一八年末に閣議決定された労働政策基本方針は、フリーランスなど雇用によらない働き方が拡大している現状を踏まえ、法的保護の必要性を含めて中長期的に検討するとし、厚生労働省による検討が進められてきました。
 しかし、本法案は、その検討途上で、内閣官房によってフリーランスの適正な拡大を図るためのルール整備を行うとの政策方向が示され、取引適正化のための法制度として提出されたものです。
 一方、厚労省では、雇用類似の働き方に係る論点整理等に関する検討会が二〇一九年六月に中間整理を公表したきり、議論が行われていません。なぜ厚労省での検討を打ち切って、取引適正化の法制度に矮小化したのですか。
 法案には、業務委託事業者に対するハラスメント対策や出産、育児、介護に対する適切な配慮など、労働政策審議会で議論されて当然の内容も含まれています。にもかかわらず、なぜ労働政策審議会での議論を行わなかったのですか。
 ギグワーカーの法的保護については、連邦労働裁判所がギグワーカーの一部を労働者として認定をしたドイツを始め、労働者性を求める方向で保護を図る流れが世界で広がっています。日本がこうした世界の流れから遅れていることをどう受け止めていますか。
 我が国では、労働基準監督署の下で、正社員から個人請負に一方的に契約変更された結果、始業時間や業務内容は正社員時代と変わらないのに労働者性を認めない、業務遂行の内容をマニュアルで指示をされ業務に関する許諾の自由もないのに、現場における直接の指揮命令がないため、労働者性を認めないという現実があります。
 後藤大臣は、衆議院の答弁で、労働者性の認められる方について言えば、それはどんな法律形態であろうとも、労働者として必要な保護をしていくと答弁しています。そうであるなら、労働基準監督署の対応を直ちに改善させるべきではありませんか。
 以上、後藤大臣に答弁を求めます。
 フリーランスの労働者性が認められないのは、一九八五年の労働基準法研究会報告、「労働基準法の「労働者」の判断基準について」が、今日の働き方の実態に合わなくなっているからです。この基準を実態に即したものに見直すべきではありませんか。
 また、厚労省で中断されている検討を直ちに再開するべきではありませんか。
 以上、加藤厚労大臣、お答えください。
 後藤大臣に法案について伺います。
 通常、業務委託では、募集、契約、発注という流れになります。一方、本法案は、第十二条で募集時の的確な情報表示、第三条で発注時の給付の内容、報酬の額、支払期日等の明示義務を定めているものの、業務委託契約締結時の条件明示義務がありません。これでは、募集時より発注時の報酬額が減額されていても、フリーランスは応じざるを得ず、不利益を被るケースが避けられません。契約時の条件明示を義務化するべきではありませんか。
 法案は、従業員又は役員のいる特定業務委託事業者に対し、契約内容の明示や六十日以内の報酬支払期日等の義務規定を設けています。しかし、従業員又は役員のいない業務委託事業者には契約内容の明示以外の規定がありません。なぜこのような違いを設けるのですか。
 さらに、特定業務委託事業者に課せられる給付の受領拒否や返品、報酬減額、著しく低い報酬額の設定の禁止、育児介護との両立支援への配慮、契約の中途解除の予告義務は、業務委託が継続的である場合に限られています。単発、短期の業務委託は、報酬減額や著しく低い報酬額が設定されても構わないのですか。答弁を求めます。
 業務委託が継続であるとする期間は、政令で定める期間以上とされていますが、どのくらいの期間を想定しているのですか。
 フリーランスの取引では、元委託者から委託を受けた個人事業者が、特定受託事業者に再委託するなど、ブローカー的フリーランスが数多く存在し、取引に介在している実態があります。また、デジタルプラットフォームを通じて、業務の委託と受託を媒介するプラットフォームビジネスでは、不当な手数料設定や一方的な損失負担の強制、過剰なペナルティー、一方的な契約変更など、優越的地位の濫用が問題となっている事例が数多く生まれています。このような仲介事業者は、本法案でどのように規制されるのですか。
 最低報酬規制について伺います。
 法案では、特定業務委託事業者に対し、特定受託事業者への継続的な発注に関し、著しく低い報酬を定めることを禁止しています。条文は、通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額としていますが、通常支払われる対価をどのように判断をするのですか。
 再委託のように仲介事業者が介在する取引では、仲介事業者が利益を確保するため、フリーランスの報酬が切り下げられるおそれがあります。二〇一八年に在宅ワークの実態等を踏まえて改正された厚生労働省の自営型テレワークの適正な実施のためのガイドラインは、最低賃金を一つの参考として自営型テレワーカーの報酬を決定することも考えられるとしています。これをフリーランスにも適用することについて、後藤大臣は衆議院で、事業者間取引における契約自由の観点から、事業者に対する行政の介入は最小限にとどまるべきと答弁し、最低賃金を参考にした最低報酬規定を否定しました。年収三百万円未満という低い報酬で働かされているフリーランスの実態を放置するつもりですか。お答えください。
 フリーランスの業務には労働時間の規制が及ばず、何日も徹夜で作業しなければ間に合わないような短期間の納期設定や、過大な業務量を委託事業者から要求されるケースも多数あります。自営型テレワークのガイドラインが、成果物の納期は自営型テレワーカーの作業時間が長時間に及び健康を害することがないように設定すること、通常の労働者の一日の所定労働時間の上限八時間を作業時間の上限に目安とすることとしているように、フリーランスの長時間労働を是正するためのルールを定めるべきではありませんか。
 以上、フリーランスの働き方を保護するためには、取引関係を適正化するだけでは不十分であり、労働法制による保護の仕組みを可能な限り広げることが不可欠です。そのことを重ねて強調し、質問を終わります。(拍手)
   〔国務大臣後藤茂之君登壇、拍手〕
○国務大臣(後藤茂之君) 井上哲士議員の御質問にお答えいたします。
 法制度の検討についてお尋ねがありました。
 厚生労働省では、雇用類似の働き方に係る論点整理等検討会について、令和二年十二月にこれまでの御意見を整理したことをもって一区切りとし、フリーランス・トラブル一一〇番の設置、運営など、フリーランスの方が安心して働ける環境整備に取り組んできたところと承知しています。
 一方、内閣官房においては、令和二年に関係省庁と連携し、フリーランスの実態を把握するための調査を実施しました。調査によると、取引先とのトラブルを経験したことがあるフリーランスのうち、そもそも取引条件に関する書面、電子メールが交付されていない者や交付されていても取引条件が十分に明記されていなかった者が六割となっています。こうした状況を改善し、フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスとの取引について、書面での契約のルール化など、法制面の措置を検討してきました。
 また、令和三年に内閣官房が関係省庁と共同で実施したアンケート調査によると、フリーランスは報酬の不払や支払遅延を始めとしたトラブルを経験する方が多く、かつ特定の発注者への依存度が高い傾向にあることが確認できており、発注事業者との関係において不当な不利益を受けやすい立場にあると考えられます。
 本法律案は、こうした調査や政府での検討を踏まえて国会に提出したものです。
 法案に関する労働政策審議会での議論についてお尋ねがありました。
 本法案は、我が国でフリーランスが直面しているトラブルについて、報酬の支払遅延や取引上の不当な行為など、事業者間取引において見られるものが多く、ハラスメントなどのトラブルについても取引上の力学関係に、力関係に由来しているものと考えることができることから、取引の適正化等を図る法制として立案したものです。
 昨年四月の新しい資本主義実現会議では、取引適正化のための法制度の整備について御議論をいただくとともに、昨年九月には法案の素案についてパブリックコメントを実施し、広く意見を求めてきました。
 このように、本法案は取引の適正化を主な目的とするものであることを踏まえ、労働政策審議会への諮問、答申は行っていませんが、本法案にはフリーランスの方々の就業環境の整備に関する事項も含まれることから、労働政策審議会雇用環境・均等分科会に法案の検討状況等の報告を行いました。
 今回御審議いただいている法律案は、様々な立場の皆様からいただいた多様な御意見を踏まえたものになっていると考えています。
 いわゆるギグワーカーの法的保護についてお尋ねがありました。
 海外におけるギグワーカーの法的保護について、例えばEUでは、デジタル労働プラットフォームを通じて働く者の雇用契約関係について、一定の要件を満たせば雇用契約と推定する規定を盛り込んだ指令案が提案されていると承知しています。
 この指令案については、雇用契約を機械的に推定することの是非やその要件の内容において各国間で立場の隔たりがあり、いまだに成立に至っていないものと承知しており、我が国としては、引き続きその動向に注視していく必要があると考えています。
 他方、現在我が国でフリーランスが直面しているトラブルについては、報酬の支払遅延や取引上の不当な行為など、事業者間取引において見られるものが多く、ハラスメントなどのトラブルについても取引上の力関係に由来しているものと考えることができることから、取引の適正化等を図る法制として本法案を立案し、速やかに対応策を講じることとしたものです。
 労働基準監督署の対応についてお尋ねがありました。
 いわゆるフリーランスと呼ばれる方であっても、実態を勘案して総合的に判断した結果、労働者性があると判断されれば、労働基準関係法令に基づき労働者として必要な保護が図られるものと承知しています。
 労働基準監督署においては、フリーランスを含め、労働基準関係法令違反がある旨の申告がなされた場合には、相談者の方から丁寧に話を聞くなど事実確認を行い、労働者性の有無を判断していると承知しています。
 引き続き、労働基準監督署において労働者性の判断が的確に行われるようにするとともに、調査の結果、労働者に該当し、労働基準関係法令違反が認められる場合には、厳正な監督指導が行われるよう、厚生労働省において適切に対応することが重要であると考えています。
 契約時の条件明示についてお尋ねがありました。
 フリーランスと発注事業者間の取引は、事業者間取引として当事者が自由に取引条件の提示、変更等を行うものでありますが、本法案では、取引条件に関するトラブルを防止するため、募集情報や的確表示や業務委託契約直後の書面等による取引条件の明示を義務付けています。
 一方、事業者間取引における契約自由原則の観点から、事業者取引に対する行政の介入は最小限にとどめるべきものであることに留意する必要があります。
 御指摘のように、契約時の取引条件の明示を義務付けた場合、契約直後の書面等の交付と合わせて、極めて近接した二つの時点で条件明示を義務付けることになります。
 また、この場合、契約直後の書面等の交付のみを義務付ける下請代金法と取扱いが異なることとなり、発注事業者において実務上の混乱が生じるとともに、契約時の条件明示等が特に小規模な発注事業者にとっては負担となり、フリーランスへの発注控えにつながるおそれもあると考えます。
 こうした点を踏まえ、本法案においては、契約時の条件明示は盛り込まないこととしたものであり、まずは募集情報の的確表示や業務委託契約直後の書面等による契約取引条件の明示の遵守定着を図ってまいります。
 禁止行為の規制対象となる契約の期間等についてお尋ねがありました。
 一般的には、契約期間が長くなるほど発注事業者と受注事業者との間で経済的な依存関係が生じ、それを利用されて不利益を受けやすい傾向にあり、内閣官房が関係省庁と共同で実施したアンケート調査でも同様の実態が見られます。こうした実態を踏まえたフリーランス保護の必要性と過度な負担による発注控えを回避する観点も含めて、本法案では、一定の期間にわたって継続する業務委託のみを対象として報酬減額の禁止などの義務を課すこととしています。
 御指摘の政令で定める期間については、内閣官房が関係省庁と共同で実施したアンケート調査では、主な取引先との契約関係が三か月を超えて六か月といった長期となるほど取引先から不利益行為を受けやすいという傾向が見られるため、これも一つの参考として検討することとしています。
 具体的な期間は、規制対象となる小規模な発注事業者の負担や規制の実効性などのバランスを踏まえ、今後、関係者の意見をよく確認しながらフリーランス取引の実態に即した期間を設定してまいります。
 デジタルプラットフォーマー等の仲介事業者に対する規制についてのお尋ねがありました。
 御指摘のブローカー、デジタルプラットフォーマー等の仲介事業者については、単に発注事業者とフリーランスとの間の業務委託契約をあっせんしている場合には、契約形態上は業務委託契約には該当しません。
 一方で、契約形態だけでなく、取引実態も踏まえて総合的に判断した結果、実質的に仲介事業者が業務委託を行っていると評価できる場合には、仲介事業者は本法案における特定業務委託事業者に該当し、本法案の規制が課されることになります。
 通常支払われる対価の判断についてお尋ねがありました。
 法案第五条第一項第四号では、通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めることを禁止しています。通常支払われる対価とは、特定受託事業者の給付と同種又は類似の給付について、その特定受託事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価を言います。
 ただし、一般に支払われる対価の把握が困難な場合には、通常支払われる対価は、特定受託事業者の給付と同種又は類似の給付に係る従来の取引価格となります。
 フリーランスの最低報酬規制の必要性についてお尋ねがありました。
 本法案では、いわゆるフリーランスを保護する観点から、下請代金法では規制対象にならない小規模な発注事業者であっても、従業員を使用し、フリーランスを委託行う場合には、特定業務委託事業者としての規制が課されることになります。
 他方、事業者間取引における契約自由の観点からは、原則として事業者取引に対する行政の介入は最小限にとどめるべきであることに加え、小規模な発注事業者に対して過重な義務を課した場合、発注事業者に、業務履行に係る負担を避けようとして特定受託業者に取引することを避ける言わば発注控えが生じること、財務基盤が脆弱な発注事業者も多く、義務が負担となり経営に支障を来すことが懸念されることにも留意することが必要です。
 さらに、特定受託事業者の役務や成果物は多種多様であることから、一律の最低報酬を定めることは困難であると考えられます。
 したがって、本法案においては特定受託事業者の最低報酬に係る規制は盛り込んでいませんが、本法案第五条第一項第四号で禁止する買いたたき等に該当するような報酬が設定された場合には、勧告等の措置により是正を図ることになります。
 フリーランスの長時間労働を是正するためのルール設定についてお尋ねがありました。
 フリーランスの方についても、働き過ぎにより健康を害することのないよう配慮することは重要です。
 このため、現在、厚生労働省では、個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会を開催し、議論していると承知しています。
 この有識者検討会における検討結果も踏まえ、厚生労働省において適切な対応が取られるものと考えております。(拍手)
   〔国務大臣加藤勝信君登壇、拍手〕
○国務大臣(加藤勝信君) 井上哲士議員より、労働者性の判断基準などについてお尋ねがありました。
 労働者性の判断基準については、令和三年三月に策定したフリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドラインにより周知を図っております。
 また、雇用類似の働き方に係る論点整理等検討会については、令和二年十二月にこれまでの意見を整理したことをもって一区切りとしております。
 検討会の御意見などを踏まえ、フリーランス・トラブル一一〇番の設置、運営など、フリーランスの方が安心して働ける環境整備に取り組んでいるところであり、現時点で再開することは考えておりませんが、現行の労働者性の判断基準の枠組みが適切なものとなっているか否かについては、今後、ガイドラインの運用状況や裁判例等の動向、労働者の働き方の変化などの状況を注視しながら不断に確認をしてまいります。(拍手)

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