国会質問議事録

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財政金融委員会(軍拡財源確保法案ー復興特別税の増税、軍拡財源に転用)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 政府は、復興特別所得税の税率を一%引き下げた上で期間を延長して、引き下げた分の一%を新たに軍事費の目的税として、事実上、復興特別所得税を軍拡財源に転用しようとしております。これについて、鈴木大臣、そして総理も繰り返し、様々な意見や世論調査があることは承知している、理解を深めていただけるように丁寧な説明をすると述べてこられました。
 しかし、世論調査でも、東北の被災地を始め、軍事増税反対の世論は広がるばかりなんですね。最近の共同の世論調査でも、政府の復興財源の一部転用の方針に七三%が反対です。それから、防衛力強化のための増税を支持するかの問いには、支持しない、八〇%というのが結果であります。
 大臣、なぜ国民の理解が広がらないのか、被災地の理解が広がらないのかとお考えでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 所得税を含めまして、今般の税制措置について、井上先生御指摘のように、国民の中には反対の意見がある、世論調査を含めましても、ある程度の皆さん方が反対の意見であるということは私も承知をしているところであります。そのことについては、我々のこの思いがやはり伝わっていない、これ説明が十分でないということもあるんだと思いますが、私どもの立場といたしましては、決して復興特別所得税を転用をしているわけではないということ、それから合計の付加税率は現在と変わらないこと、また、夫婦、そして子供二人、四人で給与収入が五百万円のモデル世帯で、所得税付加税一%分で、給与収入の約〇・〇一%程度の負担を二〇三八年以降もお願いすることになりますけれども、この点についても、この賃金上昇あるいは経済成長という中で負担感を払拭できるように努力することなど、私どもの思いはあるわけでありますが、そうしたことが国民の皆様方に十分伝わらず、また御理解もいただけていない面があること、これはそういうことは否定できないと、これは考えております。
 引き続きまして、丁寧な説明に努めまして、御理解、御協力をいただけるように努力しなければいけないと、そのように改めて感じております。
○井上哲士君 そういう答弁をずっと繰り返してこられたんですが、その説明そのものに国民は理解をしておりませんし、政府の立場が伝わっていないと言われましたが、政府の立場そのものに理解がないから、私は反対の声が広がっていると思うんですね。
 東日本大震災について、岸田総理は、昨年十月の所信表明演説で、震災という未曽有の国難から立ち上がったと述べました。まるで復興が完了したかのように聞こえると、被災地からは批判の声が上がりました。地元紙などの調査では、岩手、宮城、福島三県の沿岸部の被災者で、東日本大震災の風化をとても感じる、やや感じると答えた被災者は七三・一%に上るんですね。そこに持っていって、今国会の施政方針演説では震災後初めて震災に一切総理は言及いたしませんでした。私は、震災の風化に一層拍車を掛けるものでありますし、被災地の皆さんの思いに本当に反するものだと思うんですね。
 施政方針演説というのはこれ閣議決定でありますけども、鈴木大臣は、被災地出身の大臣として、これは震災風化させることになると異議は唱えられなかったんでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 御指摘のとおりに、今国会冒頭の総理の施政方針演説に東日本大震災という文言自体がなかったこと、これは御指摘のとおりでございます。他方で、施政方針演説におきましては、政権の最重要課題として福島の復興に取り組むことについてはっきりと言及をしているところであります。
 政府といたしましては、総理の施政方針演説で言及のあった、この原子力災害被災地域である福島の復興に加えまして、地震・津波被災地域である宮城、岩手などにつきましても心のケアなどの被災者支援、産業、なりわいの再生など、残された課題、これについては引き続きしっかりと支援を行うことといたしているところであります。政府として、東日本大震災の復興に政府を挙げて取り組む姿勢には全く変わりはなく、私としては、今回の施政方針演説が東日本大震災の復興を軽視しているとは考えていないところでございます。
 震災発生から十二年を迎えました。復興のステージ、それぞれ地域によって違うわけでございますが、それぞれの被災地のニーズにきめ細かく対応して、被災地が一日も早く復興をし、安心して被災者の方が生活できる環境を取り戻せるように、復興庁を中心に関係省庁ともしっかり議論し、今後とも財務省として必要な予算を措置してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 震災という言葉が初めてなくなった、これはもう紛れもない事実なわけでありますし、被災地の皆さんがこの風化ということをどう感じておられるのは先ほど紹介したとおりですね。
 この復興特別税の転用について、政府は年間二千億円の増税と試算しておりますから、先ほどありましたように延長期間が十三とか十四年となりますと、三兆円近い金額の転用となるわけであります。この間、復興特別所得税の十年間の税収総額は約三・五兆円ですから、それに匹敵する金額となります。
 国民は、東日本大震災の甚大な被害を目の当たりにして、その早期復活を願って特別税を受け入れてきたわけですね。復興のために税を掛ける、全く別次元の軍事費に使うのは国民との約束違反であって、私は震災の風化に拍車を掛けるものになると思いますが、大臣、いかがでしょう。
○国務大臣(鈴木俊一君) 復興特別所得税につきまして、家計の負担増にならないように税率を引き下げ、期間を延長するといった中身につきましては、もう何回もお答えしておりますのでここでは繰り返しはいたしませんけれども、肝腎なことは、この課税期間が延びる、それは復興財源を確実に確保できる間を延ばす、それから、復興債を発行ができますので、それによって必要な財源を確保すると、こういうことでございまして、毎年度の復興事業の円滑な執行には問題が生じないところでございます。
 こうしたことから、復興特別所得税を防衛財源に転用しているというものではなくて、御指摘のように、国民との約束違反であり、震災の風化に拍車を掛けているものであるとは考えていないところでございます。
 今後とも、復興の完遂、それに向けまして、復興庁を始めとする関係省庁と十分連携をしながら、復興の完遂に向けて努力を政府としてしてまいりたいと思いますし、また、この復興特別所得税のことにつきましては、被災地の皆さん、そして若い世代の皆さんにも御理解を深めていただけるように丁寧な説明に努めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 総理は、防衛財源について、将来世代に先送りすることをしないとしてきました。ところが、この復興特別所得税は、元々、この復興特別所得税は二〇一三年から二〇三七年までの二十五年間の時限措置として徴収されました。今も財務省のホームページには、先ほども紹介ありましたけど、今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うことを基本とすると、これが考え方だと書いてあるわけですね。ところが、これ十三年程度延長することになりますと、震災のときに生まれていなかった、やっぱり震災後の若い世代、つまり次世代の若者が相当期間負担するということになるんですね。
 財務大臣は二十四日の本会議の答弁で、このことは将来世代への負担となると認められました。そうであれば、総理がやらないと明言してきた将来世代に先送り、これと矛盾するんじゃないでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 繰り返しになりますけれども、所得税につきましては、現下の家計の負担増にならないよう配意する観点から、復興財源の総額を確実に確保することを前提といたしまして、新たな付加税と復興特別所得税を合わせた付加税率が現在と変わらないような仕組みとさせていただいたところであります。
 また、その結果、二〇三八年以降も付加税が続くこととなり、将来世代に御負担をいただくということにつきましては、先ほど来申し上げましたけれども、今回の税制措置では、例えば夫婦、そして子供二人で給与収入が五百万円のモデル世帯では、所得税付加税一%分で給与収入の約〇・〇一%程度の負担を二〇三八年以降もお願いすることとなりますが、これにつきましては、賃上げ、構造的な賃上げ、また経済成長、こうしたことを実現することで、税制措置による将来世代の負担感を払拭できるよう、政府として努力をしていくこととしているわけでございます。
 いずれにいたしましても、国民の皆さんの負担というものをなるべく抑えるという観点から、税制措置についてもお願いを申し上げているところであります。
○井上哲士君 賃上げによって負担を吸収する、負担感を払拭できると繰り返されるんですが、何の保証もないんですね。大体、この間、この復興特別所得税が始まったのとアベノミクスの開始が同時期でありますけれども、以来どうなったかといえば、物価の影響を考慮した実質賃金は二十万円以上減少しているわけですよ、さんざん賃金上がる上がると言いながらですね。むしろ、この間、税の負担感は一層重くなってきたわけです。先日発表された昨年度の実質賃金も前年比一・八%の減少でした。
 どうしてこれで今後、負担感が払拭できると、こんな、そういう保証がどこに一体あるんですか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 先ほど申し上げましたとおり、経済成長と構造的な賃上げ、これを実現することで税制措置による将来世代の負担感を払拭できるよう政府として努力をしていくということを申し上げたところであります。
○井上哲士君 さんざんそういうことを言われたけれども、実際そうでなかったからこそ、国民は一層の不満を高めているわけであります。
 是非この問題は被災地の声を聞くべきだと思います。地方公聴会の開催を強く求めたい。委員長、お取り計らいをお願いしたいと思います。
○委員長(酒井庸行君) 後刻理事会で協議いたします。
○井上哲士君 終わります。

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