国会質問議事録

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本会議(軍拡財源確保法案に対する反対討論)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 会派を代表して、軍拡財源法案に断固反対の討論を行います。
 日本共産党は、昨日の委員会での質疑終結、採決そのものに反対しました。
 政府は、今日決定する骨太の方針に、二〇二四年度からとなっている軍拡財源確保のための増税の開始時期を二〇二五年度以降への先延ばしを可能とすることを盛り込んでいます。自民党の防衛関係費の財源検討に関する特命委員会の提言を受けたものです。
 しかし、法案審議の中で鈴木財務大臣は、防衛財源に繰り入れる税外収入について、二四年度以降、具体的に見込めるものはないと答弁してきました。昨日の委員会で、増税開始時期の先延ばしに財源の見通しがあるのかとただしましたが、大臣は期待を述べるだけでした。見通しもないのに先送りだけを示すのは、選挙をにらんで国民を欺くものにほかなりません。
 大体、今、増税開始時期の先送りを言うことなど、これまでの審議が何だったのかということになります。更にただすことは国会の責務です。にもかかわらず、審議を終局し、採決をしたことは、到底認めることはできません。
 本法案は、専守防衛を投げ捨て、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有を含む、五年間で四十三兆円の大軍拡を推し進めるものです。
 審議を通じて、敵基地攻撃能力は、日本独自ではなく、米国の先制攻撃戦略、統合ミサイル防衛、IAMDの下、米軍の指揮下で運用される危険な実態が浮き彫りになりました。我が党が明らかにした、防衛省が内閣法制局に示していた内部文書では、日米の敵基地攻撃の共同作戦の具体的内容として、攻撃計画の立案から攻撃目標の分担、指揮統制に基づく実際の攻撃や再攻撃などを繰り返すサイクル図が示されています。これを示して、日米一体ではないかとの我が党議員の質問に、浜田防衛大臣は、この図で見ればそういうふうに見えるかもしれないと答弁せざるを得ませんでした。
 内部文書は、敵基地の情報や攻撃の成果の情報を日米で共有するとしています。しかし、日本には独自にそうした情報を把握する能力がありません。米国の情報は正しいという前提で対応せざるを得ません。政府は、敵基地攻撃は必要最小限度の実力行使にとどまるとしてきましたが、米国がよしと言うまで、文字どおり、際限のない戦争に巻き込まれてしまいかねません。相手国からの反撃を受け、日本が深刻な被害を受けることは避けられません。
 専守防衛に徹する、日本を守るためという大軍拡の論拠はもはや崩れ去っており、その財源確保のための本法律案を成立させることは許されません。
 しかも、敵基地攻撃能力の保有は、天井知らずの軍拡に道を開き、浪費や談合をも生じさせるものになっています。
 価格も納期も契約解除も米国政府が一方的に決め、米国製兵器を爆買いする有償軍事援助、FMSについて、参議院は二〇二〇年の本会議で改善を求める警告決議を上げましたが、改善は遅々として進んでいません。ところが、米国の要求を受けて、今年度予算では、FMSは一気に昨年度の四倍の一兆四千七百六十八億円に急増しています。
 日米首脳会談でのトランプ政権の要求で急遽導入を決めたイージス・アショアはずさんな計画で破綻しましたが、防衛省はFMSで契約したSPY7レーダーに固執して、艦船への搭載に変更し、費用は大幅に増大した上、今後どこまで膨れ上がるか示すこともできません。
 現在のイージス艦八隻体制となる中、新しい艦船の導入ごとにFMSによる装備の割合が増え続け、元防衛大臣が自著の中で、FMSによって日本製武器が駆逐されていると苦言を述べる有様です。
 九年前にFMSで三機を契約した無人偵察機グローバルホークは、やっと昨年三月に二機納品されたものの、残る一機の納品はいまだに決まっておりません。納品されないうちに、米国は、日本が購入するのと同型機を時代遅れとして退役させることを決めてしまいました。にもかかわらず、本体価格は当初の五百十九億円が六百十三億円に、維持整備費は二千七百二十二億円から三千五百十九億円へと米国の都合で大幅に膨れ上がっています。いずれも、およそ通常の取引では考えられないものでありますが、大軍拡の下で今後もFMSが青天井で膨れ上がることは必至です。
 かつて防衛施設庁を解体にまで追い込んだ談合の動きが大軍拡の下で復活していることは重大です。防衛省は、核攻撃までも想定し、五年間で四兆円も掛けて全国二百八十三地区、約二万三千棟の自衛隊施設の強靱化事業を始めています。ところが、予算成立前の昨年の十二月から、一部のゼネコン等を集めて意見交換会を行い、受注可能な事業の数や額、希望する発注方法などについてアンケートを取るという前代未聞のことが行われています。
 驚くべきことに、このアンケートの実施を防衛省から受託している防衛基盤整備協会には、施設庁談合で有罪となった三人の施設庁OBがそろって役員に就いています。しかも、施設庁談合では天下り先確保のためにゼネコンに事前に意向を聞いて、発注の割り振り表、すなわち談合表を作ったその本人がこのアンケートの中心を担っています。官製談合への反省もなく、発注前にゼネコンの意向を聞くことが繰り返されているのです。
 談合につながるという指摘に、鈴木大臣も、予算執行段階でも適切な対応を防衛省に求めると答弁されましたが、事業そのものを抜本的に見直すことを強く求めます。
 さらに、大軍拡の財源確保のために、将来にわたり国民に負担が押し付けられることは重大です。
 新たに創設される防衛力強化資金は、複数年度にわたり自由に使えるものです。予算の単年度主義、財政民主主義を壊すものです。軍事費を確保するために、暮らしや復興支援、社会保障、中小企業に充てるべき資金をかき集め、流用しようとしていることは断じて許されません。
 政府は、中小企業の資金繰りのセーフティーネットの役割を果たしている商工中金の政府保有株式について、当分の間保有するとしていました。ところが、今国会で唐突に、二年以内に売却するとした法案を成立させました。鈴木大臣は、その売却益について、防衛力強化資金への繰入れは可能と答弁しました。さきに述べた自民党特命委員会の提言の中にも、商工中金やNTTの政府保有株の売却益も防衛財源候補として挙げられました。中小企業向け金融や公共性の高い通信事業が軍事費のためにゆがめられることは絶対にあってはなりません。
 東日本大震災の復興所得税の軍拡財源への転用には、福島市で開かれた地方公聴会でも、被災者の願いに真っ向から反するものであり、受け入れ難いとの声が公述人から出されました。
 医療体制の強化や職員の待遇改善に使うべき国立病院機構と地域医療機能推進機構の積立金を軍拡財源に回すことも到底認められません。
 さらに、四十三兆円の軍事費が優先されることにより、岸田政権が子育て対策を目玉に打ち出しながら、財源を示すことができない事態となっています。
 決算剰余金も軍事費に充てられますが、その元となる巨額の予備費は赤字国債が原資です。未来の世代に莫大な増税を強いることになりかねません。
 地方公聴会では、ウクライナで原発が攻撃対象になった姿と福島の原発を重ねてみれば、一旦戦争になれば原爆に等しいとてつもない被害になるという声が公述人からありました。
 やるべきことは、大軍拡ではありません。軍事の悪循環で一層の危険をつくり出す大軍拡ではなく、憲法九条を生かし、地域の全ての国を包摂する平和の枠組みを発展させる外交努力であることを強く申し上げ、反対討論とします。(拍手)

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