国会質問議事録

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財政金融委員会(軍拡財源確保法案ー医療の積立金は軍事費転用でなく医療体制の拡充に)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 法案では、五年間で四十三兆円の軍拡財源の確保のために、国立病院機構の積立金約八百十九億円のうち四百二十二億円、地域医療機能推進機構、JCHOの積立金約六百七十五億円のうち三百二十四億円を一年前倒しで国庫に返納させて防衛力強化資金に繰り入れようとしております。
 新型コロナの感染拡大で深刻な医療逼迫が広がる中で、国や自治体の要請に応えてコロナ病床の確保や感染患者を受け入れ続けてクラスターが発生した一般病棟、病院であるとか、ワクチン接種のための看護師派遣にも対応して、過酷な状況の中でも献身的な努力で地域医療体制の中核を担ってきたのが全国各地の国立病院機構やJCHOの病院なわけですね。
 私は、本来、こうした公的病院の積立金は職員の処遇改善や医療体制の強化にこそ使われるべきと思いますが、財務大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(鈴木俊一君) 先ほど来申し上げておりますが、今回の防衛力抜本強化に要する財源確保、これに当たりましては、国民の負担をできる限り抑えるべく、あらゆる行財政改革の工夫を行う中で、独立行政法人の積立金につきましても一定の基準に基づき精査をし、その結果として、国立病院機構及び地域医療機能推進機構の積立金の一部を活用させていただくこととしたところであります。
 その上で、両法人の国庫納付後の積立金は、国立病院機構で三百九十七億円と直近八か年で最高の水準、それから地域医療機能推進機構で三百五十一億円と過去最高の水準となっておりまして、これまでの実績との比較でも極めて高い水準となっていることから、経営上、一定の余力があるものと考えているところでございます。
 今般の国庫納付は、安全保障環境が厳しさを増す中で、政府の方針として、防衛力を維持強化していくに当たって、国民の御負担をできるだけ抑えるべく、あらゆる工夫を検討する中で行うこととした対応でありまして、御理解を賜りたいと、そのように考えているところであります。
○井上哲士君 この間、政府はコロナ病床の確保のための補助金を原資としているから返還と、返納と言ってきたわけでありますが、これは、国や自治体の要請に応えて、一般医療を縮小し、コロナ病床を確保してきたことに対するものであり、全ての医療機関に共通した正当な補助金であって、返納を迫る理由にはならないと思うんですね。過去最高だとおっしゃいましたけど、それだけこうした病院が大きな役割を担ってきたことの私は裏返しだと思うんです。原資はコロナの補助金というんであれば、それは、この間のコロナ禍の教訓を踏まえて、医療体制の拡充にこそ使われるべきだと思うんですね。
 厚労副大臣、来ていただいておりますが、独立行政法人の中期計画は五年計画であって、国立病院機構の現在の中期計画は二〇二三年の三月までの五年目の最終年度に今入ったところであります。二〇二四年四月からの新しい中期計画は今年の夏以降に検討すると聞いております。最後の事業年度に積立金があるときは、そのうち厚労大臣の承認を受けた額を次の中期計画の期間の医療提供義務に充てることができるとされているわけですね。それを一年前倒しで返納させるというのが今回の法案であります。
 この二つの機構は、昨年の感染症改正で、パンデミック時の医療提供義務が課せられることになりました。ですから、新しい中期計画は、コロナ感染拡大、浮き彫りになったもう脆弱な医療提供体制を克服する課題とか、新しい感染症対策に対応する課題があると思うんですよ。政府は積立金を一年前倒しで国庫返納しても病院運営や施設整備計画などに支障はないと言いますけど、まだその次の中期計画の検討すら始まっていないのに、この時期から返納させるというのは、やはり来年からの新しい中期計画の内容に影響しないわけがないと思うんですよ。
 積立金の前倒し返納をさせて、両機構の施設整備や改修、医療機器の更新、老朽化病棟の計画的な建て替え、そして医療提供体制の拡充など、コロナ禍の教訓を踏まえた新しい感染症対策に対応するにふさわしい中期計画の策定を困難にするんじゃありませんか。
○副大臣(伊佐進一君) 国立病院機構と地域医療機能推進機構の施設設備整備につきましては、これまでも、繰り越された積立金の多寡にかかわらず、当期の診療報酬等の自己収入あるいは財政融資資金の借入れ等を財源といたしまして、中期計画に位置付けられた整備計画に基づいて計画的に取り組まれたというふうに承知をしております。これまでの中期期間の中でも、五百億円繰り越したときもあればゼロだったときもございます。ただ、安定的に整備の実績額を見れば、三千五百億円程度で既に推移をして、これまでも推移をしてまいりました。
 次期整備計画は令和五年度中に法人において計画されるものでありまして、現時点で具体的な内容については承知してございませんが、令和三年度の法人の財務状況は、税務、財務状態は、今般の積立金の返納があったとしても、令和元年度と比較して改善をしておりまして、自己収入や借入金等によりまして必要な投資が直ちに困難になるとは考えていないところでございます。
○井上哲士君 これまでと比較って言いますけど、これまでと違うんですよ。コロナ禍を体験をしたんですね。ですから、JCHOの山本修一理事長は、メディアファクスの報道では、積立金は二〇二四年以降の第三期中期計画に充てたいと。次期中期計画では、感染症対策を見据えたハード面の改修、老朽化対策、医療DX推進でICT基盤整備にも速やかに着手する方針だと。政府は感染症法改正で体制整備を医療機関に求めているだけに、社会的責任を果たしたいと述べられております。そして、次期中期計画に向けて六百七十五億円あっても足りない状況だと述べられているんですね。ですから、その中から結局召し上げるということになれば、結局必要なことやれば借金をするということにもなりかねないと思うんですね。そういう問題、どうお考えですか。
○副大臣(伊佐進一君) この次なる新興感染症への備えにつきましては、今委員御指摘していただきました感染症法の改正に基づいて、都道府県、医療機関と平時に協議を行いまして、各医療機関の機能、役割に応じた協定締結を行っていただくと、そしてまた、感染症医療を担う医療機関をあらかじめ適切に確保することとしておりまして、例えばこうしたNHOあるいはJCHOがその履行に要する費用については、協定に基づいて一定の財政支援を行うということにさせていただいております。
○井上哲士君 私は、まさにこういう問題は、医療の拡充、まさにJCHO自身が言っているように、この社会的責任を果たしていくというためにこそしっかり使われるべきだと思うんですね。
 そして、この問題は、こういう機関で働く皆さんの労働条件にも関わっております。四月十三日の内閣委員会で国立病院機構の東京医療センターの事例等を取り上げました。国立病院は、筋ジストロフィーとか重度心身障害、結核など、国が国民のために取り組まなければならない政策医療を提供しておりますから、赤字経営が多いわけですね。従来から慢性的な人手不足に加えて、コロナ対応で疲弊をして大量退職や休職が起き、そして残された職員にしわ寄せが起きると、こういうことも、悪循環も指摘をいたしました。さらに、国立病院機構での労働基準法違反のサービス残業の横行や妊娠した看護師や未就学の子供がいる看護師にも夜勤の強要があるなど、様々な告発を取り上げたわけですね。
 当時、伊佐副大臣は、機構本部が事実確認を行っている最中なので、報告をもって対応したいということでありましたけども、その後、どういう報告があったのか、厚労省はどういう対応をされたんでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) この国立病院機構において報道内容に関する事実関係の確認等を引き続き行っております。現時点で超過勤務手当の未払が確認されまして、未払分の追加支給を含め対応した事例があったというふうに承知をしております。また、報道があった十七病院については、看護部長等から事実関係を確認するという調査も実施をしたと、また、病院長等の管理職に対して労働関係法令の遵守について周知を行った、さらにまた、環境改善に向けて勤務時間の取扱いを明確化するための通知を各病院に対して発出したという報告を受けております。
 厚労省としては、引き続き、国立病院機構の再発防止を含めた対応状況を把握しまして、適切な勤務環境が確保されるように必要な助言を行うなど、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 週刊誌が報道したのは二月ですよね。私質問したのは四月なわけで、それからもう一か月半たっておりますけども、まだ聞き取りが行われている最中ということなんですね。全職員のアンケートは九月にやるとお聞きをいたしました。
 今、従来の通知を再度徹底しているというようなお話ありましたけど、それが、通知があったにもかかわらず、それに違反する事態がたくさん起きている、告発が起きていると。そのことの原因にメスを入れなければ、私解決をしないと思うんですよ。
 こういう医療現場での深刻な実態というのはやはりぎりぎりの人員体制が原因なわけでありまして、このコロナ感染で医療従事者の絶対数が不足をして、感染しても入院できないという、自宅や高齢者施設で亡くなる方が続出をした。やはり平時に余裕がなければ緊急時に対応できないということが浮き彫りになったと思うわけです。
 あのコロナ禍の三年間、こうした機構の皆さんが本当に必死の思いで対応した、だからこそ、各病院に補助金が下りたんですね。これ、現場の献身的な努力があったからなんですよ。ところが、その積立金を一年前倒しをして召し上げてしまうと。私は、本当にこれ、職場の皆さんがどんな思いで受け止めていらっしゃるか、政府、受け止めているのかと思うんですね。
 国立病院機構が担う役割にふさわしく、人員体制の強化とか働きに見合った処遇改善、物価高騰を上回る賃上げと、こういうことに使えという医療現場の皆さんの声にこそ応えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○副大臣(伊佐進一君) この国立病院機構、また地域医療機能推進機構を含め、多くの医療機関におきましてコロナ対応に御尽力をいただいたこと、本当に深く厚労省としても感謝をしております。
 御指摘の人員体制の確保、また処遇改善につきましては、今回の一連の報道を踏まえた再発防止策の実施、そしてまた、適切な勤務環境の確保に取り組むことと、こうしたことを通じて人材確保につなげていくというふうに伺っておりますが、また同時に、処遇改善については、令和四年十月、昨年十月に診療報酬改定によりまして介護職員の処遇改善をさせていただいたと。また、臨時特別一時金の支給、そしてまた基本給の引上げなども行っておりまして、継続的に処遇改善に取り組んでいるものというふうに承知をしております。
 厚労省としては、両機構又は積立金の国家納付の特例的な前倒しにかかわらずに、引き続き地域医療における役割を適切かつ確実に果たす運営を行うことができるように今後もしっかりと注視をしてまいりたいというふうに思っております。
○井上哲士君 時間なので終わりますが、現場では矛盾が渦巻いております。この積立金の返納というのはやめるべきだということを強く申し上げまして、質問を終わります。

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