国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2023年・212臨時国会 の中の 内閣委員会(保育士の賃金引き上げ、配置基準の見直し)

内閣委員会(保育士の賃金引き上げ、配置基準の見直し)

【配付資料】

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 六月にこども未来戦略方針が閣議決定をされて、その前段として、三月に、当時の小倉大臣が、こども・子育て政策の強化について試案を発表をいたしました。
 お手元に配っておりますけれども、この試案の冒頭では、少子化対策の目指すべき基本的な方向として、「個人の幸福追求を支援することで、結果として少子化のトレンドを反転させる」と述べております。
 私は大事な考えだと思うんですね。しかし、このこども未来戦略方針にはこの記述が見当たりません。なぜ削ったのでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 御指摘のこども・子育て政策の強化についての試案におきましては、「結婚やこどもを産み、育てることに対する多様な価値観・考え方を尊重しつつ、若い世代が希望通り結婚し、希望する誰もがこどもを産み、育てることができるようにすること、すなわち、個人の幸福追求を支援することで、結果として少子化のトレンドを反転させること、これが少子化対策の目指すべき基本的方向である。」とされております。こうした考え方、考えを受け継ぎ、こども未来戦略方針におきましては、「結婚、妊娠・出産、子育ては個人の自由な意思決定に基づくものであって、これらについての多様な価値観・考え方が尊重されるべきであることは大前提である。その上で、若い世代の誰もが、結婚や、こどもを生み、育てたいとの希望がかなえられるよう、将来に明るい希望をもてる社会を作らない限り、少子化トレンドの反転はかなわない。」とされております。
 このように、若い世代の希望の実現と幸福追求を支援することで、結果として少子化のトレンドを反転させるという考えには変わりはないと認識をいたしております。
○井上哲士君 変わりはないとおっしゃるんですけれども、こども未来戦略方針がお手元にありますけれども、基本的な考え方として、急速な少子化、人口減少に歯止めを掛けなければ我が国の経済社会システムを維持することは難しく、世界第三位の経済大国という我が国の立ち位置にも大きな影響を及ぼすとした上で、経済、この少子化対策と経済成長実現に不退転の決意で取り組まなければならないと、こうしているんですね。
 これでは、まるで経済大国日本の地位を守るための出産奨励政策のように読めるわけですよ。その上で、その考えの上で、多様な価値観を尊重するということと個人の幸福追求を支援をすることで、結果として少子化のトレンドを反転させるというのは、私は大きな違いがあると思うんですけれども、大臣、もう一度いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) 個人の幸福追求を支援することでの記述のところでありますけれども、こども未来戦略方針の取りまとめの過程で整理されたものと承知をしております。
 いずれにせよ、若い世代の希望の実現と幸福追求を支援することで、結果として少子化のトレンドを反転させるという考えには変わりはないと認識をいたしております。
○井上哲士君 変わりはないなら、この幸福追求を支援をすると、こういう言葉を削る必要もなかったと思いますし、これも含まれているならば、それにふさわしい支援策を求めたいと思います。
 その上で、この子育て支援の大きな柱である保育について今日はお聞きをいたします。
 保育士は、女性の就業者が大半で、賃金は全産業平均より月額で五万円以上低くなっています。保育士の賃上げや処遇改善は、働く子育て世代の支援にとっても、ジェンダー平等にとっても大変重要だと思います。保育士については、二〇二二年の十月以降は、コロナ対策の中で、処遇改善等加算Ⅲとして、三%程度、月額九千円の賃上げが実施をされております。この三%程度というのは、この根拠は何なんでしょうか。全産業平均との格差を抜本的に正すということは目標ではないんでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 御指摘の処遇改善加算につきましては、保育士等の給与が他の職種に比べて低い状況にあり、その人材確保に向けて処遇改善に取り組む必要があることから、令和三年十一月の経済対策におきまして、看護、介護、保育、幼児教育など現場で働く方々を対象として、まずは収入を三%程度、月額九千円を引き上げるための措置として、令和四年二月から実施をすることとしたものであります。保育士の給与につきましては、これまでも累次の処遇改善を行ってきており、全産業の平均賃金との差は縮まってきております。
 引き続き、処遇改善を進めていくことは重要と考えており、公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえまして、費用の使途の見える化など、必要な検討を進めてまいります。
 また、こども未来戦略方針におきましても、民間給与動向等を踏まえた保育士等の処遇改善を検討することとしており、人事院勧告を踏まえ、更なる処遇改善の対応を行ってまいります。
○井上哲士君 抜本的に格差を正すということをお聞きしたんですが、その言葉はありませんでした。
 この月額九千円といいますけれども、実態がどうかということなんですね。保育の現場からは、大半が手当で基本給の引上げにはつながっていない等々の声が寄せられております。
 特に、公立の施設では、保育士だけ賃上げするわけにはいかないので、自治体職員の給与を全部を見直さなければならないと、それはとても無理だからということで一時的な手当として支給されたという話も聞いていますし、公立の賃上げ分は、地方交付税措置のために、自治体によっては全く賃金に反映をされていないところもあるというお話も聞きました。そもそも九千円の賃上げ水準では間尺に合わないわけでありますが、今申し上げましたように、保育現場ではそれすら実現をできていないわけですね。
 先ほど、公的価格評価検討委員会のお話もありましたけれども、実態をこれはしっかり把握する、そして改善する必要があると思います。
 実際にどれだけの保育士が幾ら賃上げをされたか政府として把握をしているのか、これからどういうふうな検証を行うんでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 保育士等に対する三%程度の処遇改善につきましては、公的価格評価検討委員会におきまして、職員の給与にどのように反映されているか等の検証を行うべきとされております。
 このため、現在、実施施設から市町村に提出いただく賃金改善実績報告書によりまして確認をしているところでございまして、内容を取りまとめ次第、速やかに公表する予定としてございます。
○井上哲士君 確認中というお話でありますけど、こども未来戦略方針でも今がラストチャンスといっているんですね。これ待ったなしなんですよ。ですから、本当に速やかに検証して改善をする必要があります。
 この公定価格による保育士の人件費は、国家公務員の俸給表が基となっております。国家公務員の場合は、役職や経験年数によって号級や号俸が上がるために年々給与額は上昇しますけれども、公定価格の場合は、これ勤続年数に関わりなく常に同じ号級、号俸に固定化をされております。
 資料の二枚目見ていただきたいんですが、これ民間の女性保育士の年収がどのように推移しているか、二〇〇一年、二〇一三年、二〇二二年を比較したグラフです。これ見ますと、二〇〇一年の頃は年齢上がるごとに年収も右肩上がりで推移しているんです。ところが、二〇二二年見ますと、四十歳から四十四歳をピークに右肩下がりになっているんですね。これ二〇一三年以降、年齢給に相当する対応として処遇改善等加算Ⅰが実施をされています。しかし、この勤続年数に伴う加算率が勤続十一年以上は一二%で固定されているんですね。ですから、十二年以上の経験は加算率に反映をされない、これが私は二二年以降での右肩下がりになっていると思うんですね。
 厚労省の保育所の保育指針でも、保育に関する専門性を有する職員が家庭との緊密な連携の下に養護及び教育を一体的に行うことを特性としていると書いているんです。保育士の専門性を重視しているんですね。
 そうであったら、それにふさわしく保育士としてのキャリアが正当に評価されるように、こうした加算率の頭打ちなど改善をする必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) お答え申し上げます。
 高い使命感と希望を持って保育士という職に就いていただいた方々に長く勤めていただけるよう、専門性の向上あるいはキャリアアップを行いながら処遇改善を図っていくことは大変重要であると考えております。
 今御指摘いただきました処遇改善等加算のⅠでございますけれども、これは長く働くことができる職場を構築するためという趣旨から、職員の平均経験年数に応じて二%から一二%までの加算率を増加する仕組みでございます。
 おっしゃるとおり、その十一年というところで一つ段差が切れているという状況は事実でございます。ただ同時に、処遇加算のⅡというものもございます。副主任の保育士や職務別の分野リーダーなどの技能、経験に応じた処遇改善加算等のⅡも実施をしておりますので、双方併せてキャリアを正当に評価をしていくというふうな仕組みになっているところでございます。
○井上哲士君 いろいろおっしゃいましたけど、現実の問題として今右肩下がりという実態が生まれているわけですね。
 実は私のめいっ子も前保育士していたんですけど、この間、話聞いていましたら、自分たちのキャリアが本当に評価されていないという憤りを持って語っておりました。これは本当に改善する必要があると思うんですね。
 さらに、配置基準の問題でありますが、公定価格による保育士の人件費は、職員配置基準を基に算定をされます。しかし、公定価格上の配置人数と実際配置されている人数には乖離があるんですね。
 令和元年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査集計結果によりますと、私立の保育所では常勤換算の保育士の公定価格上の配置人数は十一・四人です。ところが、実際には十五・七人と、一・五倍の人員が配置をされているんですね。
 今年四月に当委員会で、七十五年ぶりの配置基準の改善ということが出たときに、これ基準そのものを改善する必要があると私質問しましたら、当時の小倉大臣は、新しい基準に見合うだけの保育士等を確保することが必要になるために保育の現場に混乱が生じると答弁をされて、加算で対応するとされているんですね。
 しかし、今申し上げましたように、配置基準を上回る保育士が既に配置をされているんです。そうしなければ現場が回らないというのが現実なわけですよ。ですから、この保育現場の実態に今の配置基準が見合っていないということこそが問題だと思うんですけれども、大臣、そういう認識はおありでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 教育、保育の質の向上のためには、保育士等の配置の改善を図っていくことは重要な課題と考えております。保育所等の現場において、公定価格上の配置基準を超える職員が実際に配置されていることも承知をしてございます。
 こども未来戦略方針におきましては、公的価格の改善につきまして、費用の使途の見える化を進め、保育人材確保、待機児童解消その他関連する施策との関係を整理しつつ取組を進める。一歳児及び四、五歳児の職員配置基準について、一歳児は六対一から五対一へ、四、五歳児は三十対一から二十五対一へと改善することを盛り込んでおり、その具体化について今後の予算編成の中で検討し、着実に実現をしてまいります。
○井上哲士君 つまり、現状の配置の状況と今の配置基準に矛盾があると、見合っていないという認識だということでよろしいですね。
○国務大臣(加藤鮎子君) 教育、保育の質の向上のために保育士等の配置の改善を図っていくことは重要な課題だと考えております。
○井上哲士君 現状で配置基準以上に配置されているということをお認めなんですから、やっぱり基準が合っていないということをしっかり見据えた改善が必要だと思うんですね。
 資料三、四は、愛知の保育関係の皆さんによる、子どもたちにもう一人保育士を!実行委員会の皆さんが九つの提言をまとめておりまして、その中から抜粋をいたしました。
 提言の一番目が、この配置基準をゼロ歳児は二対一、一歳児は三対一、二歳児は五対一、三歳児は十対一、四歳児と五歳児はそれぞれ十五対一に改善をするということなんですね。なぜそれが必要かということは資料四にるる書かれておりますのでお読みいただきたいと思うんですが、同時に、現行の配置基準であっても職員数の算定方法の改善も提言をされているんです。それは一、二歳児、四、五歳児という包括ではなくて、年齢ごとに配置人数を算出するということなんです。
 現行の職員数の算定方針は、その保育所全体で必要とされる最低限の職員数を再現するものになっています。ですから、一、二歳児六人に保育士一人、それから四、五歳児三十人に保育士一人とされておりまして、これ年齢ごとのクラスに配置される職員数となっておりません。
 しかし、乳幼児の子供は、年齢差、月齢差も非常に大きいわけですし、先ほどの保育所保育指針でも、「一人一人の発達過程に応じて保育すること。」と、明記をされております。
 実際に、基本は、同じ年ごとのクラスになっているわけですね。そうしますと、五歳児と四歳児で二つのクラスなのに、職員配置の算定は合わせて一人になってしまうということが起きるわけですよ。本当に実態と全く合っていないと思います。
 来年度概算要求で、配置基準の改善は事項要求になっている。先ほども予算編成の議論の中で盛り込むということを言われておりますが、いわゆる加算ではなくて、配置基準そのものを見直すとともに、今申し上げたような、保育現場が実際に必要としている保育士がきちんと配置をできて、ふさわしい賃金が保障されるように必要な予算を確保するべきではないかと思いますが、大臣、御決意いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 繰り返しになりますが、こども未来戦略方針におきましては、公的価格の改善について費用の使途の見える化を進め、保育人材の確保、待機児童解消その他関連する施策との関係を整理しつつ取組を進める。また、一歳児及び四、五歳児の職員配置基準につきまして、一歳児は六対一から五対一へ、四、五歳児は三十対一から二十五対一へと改善することを盛り込んでおり、その具体化について、今後の予算編成の中で検討し、必要な予算を確保した上で、着実に実現をしてまいります。
 あわせて、こども未来戦略方針では、民間給与動向等を踏まえた保育士等の処遇改善を検討することとしており、今般の令和五年人事院勧告を踏まえ、更なる処遇改善の対応を行ってまいります。
○井上哲士君 その検討の一つとして、今申し上げたこの包括ではなくて、年齢ごとのクラスに配置される職員数で配置をするというのも検討事項の一つとしてなっているでしょうか。いかがでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) 先ほど来御紹介いただきましたように、現在、保育所の現場においては、公定価格上の配置基準、実際の配置が最低基準よりも上回る配置がなされているという状況がございます。これ、恐らく、自治体の独自の補助事業であったり、各施設における質の向上へのお取組だったり、様々あると思います。
 ただ一方で、施設によって、あるいは地域によって実情は様々であると思いますので、まずは、この未来戦略方針に掲げております一歳児、四、五歳児の配置基準の改善、こういったものをしっかり取り組んでいきたいと思っておりまして、その具体化について今後の予算編成の中で検討して、着実に実現をしていきたいと考えております。
○井上哲士君 その配置基準の改善について、先ほど申し上げたように、四月に質問した際には、この基準そのものを変えると新しい基準に見合うだけの保育士等の確保をすることが必要になるために保育の現場に混乱が生じるというのが当時の小倉大臣の答弁だったんですね。
 基準そのものではなくて加算での対応ではないかと言われておりますが、現場の声は、そういう加算ではなくて、基準そのものを変えてほしいということなんですね。そのことは、今、予算編成過程の中でしっかり検討されているということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(藤原朋子君) ただいま申し上げました実際の配置が最低基準よりも平均すれば高いという状況はございますが、それは平均でございますので、地域ですとか施設によって実情が様々であると。
 そういった中で、今回の未来戦略方針の中に書いてございます一歳児、四、五歳児の配置の改善につきまして、最低基準を引き上げた場合には、これは全ての施設でこの基準に見合うだけの保育士を確保することが必要となります。これができないところは法令違反、基準違反というふうになってしまうわけでございますので、そういった意味で現場が混乱しないようにということで、基本的には加算措置により職員配置基準の改善を実施するということを我々予定をしておりますけれども、いずれにしましても、具体的には今後の予算編成の中で検討していきたいと考えております。
○井上哲士君 資料五を見ていただきますと、四、五歳児以外の年齢の子供たちに対する配置基準は順次改善をされてきたんですね。過去も一定の加算をやって、その後に、それを経過を経て基準そのものが変えてきたというのがこの表を見ていただければ分かると思うんですよ。
 基準を変えたら混乱をすると言いますけど、まず配置基準を変える年度を決めて、そこに向けて経過措置を設けて、その間に処遇改善を進めながら職員を確保しておければ、私は問題なく配置基準そのものを変えれると思うんですね。
 それ是非やってほしいんですけれども、大臣、最後いかがでしょうか。
○委員長(大野泰正君) 時間が来ております。大臣、簡潔にお願いします。
○国務大臣(加藤鮎子君) はい。
 御指摘のように配置基準をあらかじめ定めることに関しましては、将来に向けて、職員の処遇改善の進捗や保育士の確保の状況、保育所を利用する子供の状況などについて一定程度正確な見通しを立てることが必要となるところ、これらの見通しを立てることは難しいものと考えております。このため、こども未来戦略方針で示しているように、現状を踏まえた改善を着実に進めていくことが必要であると考えます。
○委員長(大野泰正君) 時間が来ております。
○井上哲士君 はい。
 終わりますが、配置基準そのものを変えてほしいというのが現場の強い要求であることを重ねて申し上げます。
 終わります。

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