国会質問議事録

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内閣委員会(犯罪被害者・遺族への支援について)

【配付資料】

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 お手元の資料にありますように、政府は、六月の六日に、第十六回犯罪被害者等施策推進会議の決定で、犯罪被害者給付金制度の抜本的な強化の検討、犯罪被害者等支援弁護士制度の創設など五点にわたり取組を実施することとしております。
 この土台となるのが、二〇〇四年の制定された犯罪被害者基本法であります。三条三項では、その基本理念として、全ての犯罪被害者等の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するとうたっております。
 私、先日、犯罪被害者補償を求める会の皆さんにお会いをして、犯罪被害者やその御遺族からお話を伺いました。皆さん痛切に訴えられたのは、この理念、権利が実現をしていないということなんですね。
 今年四月に自民党も提言をされておりますが、その中でも、現在の施策が犯罪被害者の権利をうたった基本法の理念の実現に及んでいないと、こういう指摘をしております。
 今般の施策の見直しは、こうした声を踏まえて、犯罪被害者基本法の基本理念の実現に沿った形で検討されるのが当然だと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 井上委員にお答え申し上げます。
 本年六月六日の犯罪被害者等施策推進会議決定におきまして、犯罪被害者等基本法の基本理念に基づきまして、犯罪被害者等が、被害原因や居住地域にもかかわらず、その置かれている状況に応じ、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援を適時適切に途切れることなく受けることができるようにするため、各取組を実施することとされており、これに沿って、現在、警察庁においても、犯罪被害者給付制度につきまして、給付水準の引上げに向けた検討が行われているところでございます。
 犯罪被害者等基本法の基本理念にのっとりまして犯罪被害者等のための施策が実施されることは、これは必要であると考えておりますので、しっかりと考えて実行してまいります。
○井上哲士君 そこで、今もありました犯罪被害給付金制度の抜本的な強化についてお聞きをいたします。
 被害者や家族からの声は、現行制度の給付金が余りにも少な過ぎる、基本法が基本理念で述べているとおり、被害者が再び平穏な生活を営むことができるように、自賠責の損害賠償額と同等水準に給付額を引き上げてほしいというものでありました。
 二〇〇八年の秋葉原の無差別殺傷事件は、加害者がトラックで通行人をはねた後に、ダガーナイフで通行人を次々に襲撃をするという、本当に凄惨な事件でありました。この事件では、ナイフで刺された十代から二十代の犠牲者は、犯罪被害給付金が三百から四百万円の間で支払われただけでした。一方、トラックにはねられて亡くなった方には、自賠責保険で六千万から七千万円が支払われたと言われております。
 同じ加害者の起こした事件ででもこれほど大きな違いが生まれる今の犯罪被害給付金の現状は、余りにも理不尽だと思うんですね。この格差を早急になくすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) お答え申し上げます。
 個別の事案における給付金の支給状況についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論で申し上げれば、犯罪被害者給付制度と自賠責保険制度はその性格が異なることから、一概に比較することは困難であると考えております。おりますが、なお、犯罪被害者、犯罪被害給付制度については、現在、警察庁において有識者検討会を開催をいたしまして、来年五月の取りまとめを目指し、給付水準の引上げに向けた検討がなされているところでございます。
○井上哲士君 制度違うとおっしゃいましたけれども、被害者にとってみれば同じ加害者なんですね。何でこんな差ができるのかと、余りにも理不尽だと思うんですね。
 そこで、この制度、どう改善をするのかと、今議論中でありますけれども、問われていると思います。
 二年前の十二月の十七日に起きた大阪西梅田のクリニック放火事件で夫を亡くされた御遺族からもお話を伺いました。事件当日に遺体と対面したときに、警察から、犯罪被害者や遺族のための支援のサポートがあること、給付金もあることをパンフレットとともに教えてもらって、助けてくれるところがあると知ったときには、絶望と悲しみでパニックになって一人で子供を育てていかなければならないと不安でいっぱいだった心に、小さな光が差した瞬間でしたと、こう言われておりました。ところが、その小さな光もこの給付金を申請をする段になってははかなく消されてしまうんですね。
 こうも言われておりました。加害者が死亡し、損害賠償を請求する当てもないと。給付金の申請のことで電話をすると、御職業はと聞かれたと。夫は病気で仕事を離れておって、このクリニックに通院して復職すること目指して頑張ってきたと。無職ですねと言われて、そのとき初めて、被害に遭ったそのときの収入で給付金の算定額が変わるということを知って、あなたの家族の命の価値はこんな軽いんだと言われたように感じてとっても理不尽だと思ったと、こう言われておりました。
 犯罪被害者給付金は、社会連帯共助の精神に基づいたものであって、損害を賠償するものではないとされていて、いわゆる逸失利益が考慮をされていません。しかし、この、を放置したのでは、これ自賠責との差や、犯罪被害者や御遺族が救われないと思います。
 推進会議決定のこの一のところでは、民事訴訟における損害賠償額も見据えて、算定方法を見直すことによる給付水準の大幅な引上げの検討を掲げておりますが、これは給付金の算定に逸失利益を考慮するように見直すというふうに考えてよろしいでしょうか。
○政府参考人(江口有隣君) お答えを申し上げます。
 犯罪被害給付制度につきましては、現在、警察庁におきまして有識者会議を開催をし、来年五月の取りまとめを目指しまして給付水準の引上げに向けた検討が行われているところでございます。
 これまでの、これまで、検討会におきましては、犯罪被害者への給付の支給水準につきましては、民事訴訟における損害賠償があるべき姿ではないか、犯罪被害について第一義的責任を負うのは加害者であることを踏まえた議論が必要ではないかなど、幅広い御意見をいただいているところでございます。
 いずれにいたしましても、現在、有識者の皆様に御議論いただいている段階であり、見直しの方向性について予断を持ってお答えするのは差し控えさせていただきたいと存じます。
○井上哲士君 逸失利益の考慮というのも重要な検討課題の一つになっているというふうに受け取ってよろしいですか。
○委員長(大野泰正君) 江口審議官、手挙げてお願いします。
○政府参考人(江口有隣君) お答え申し上げます。
 繰り返しになりまして恐縮でございますが、現在、警察庁におきまして有識者会議、検討会を開催をいたしまして、来年五月の取りまとめを目指して給付水準の引上げに向けた検討がなされているところでございます。
 現在、有識者の皆様に御議論いただいている段階でもございますので、見直しの方向性について予断を持ってお答えするのは差し控えさせていただきたいと存じます。
○井上哲士君 これまでも最高限度額とか最低額の引上げなど一定行われましたけれども、やっぱりここを解決しないと、無職だった方の給付額が少ないという問題は解決しないんですよね。
 お手元の資料の二枚目見ていただきますと、これ、新全国犯罪被害者の会、新あすの会の機関誌に掲載されたものでありますが、各国の犯罪被害者への補償の総額を人口比で換算しているんですね。日本の八億二千万円に対して、アメリカ百七十八億九千二百万円、イギリス四百四十六億四百万円、フランス九百三十四億九千二百万円、ドイツ七百四十五億九千二百万円、スウェーデン百六十二億五千四百万円と、これ日本の補償額は二桁違いで余りにも少ないんですよ。
 イギリスは、逸失利益を含めて民事の損害賠償額と同程度の金額が支給をされているわけです。先ほど紹介した四月の自民党の皆さんの提言もこのイギリスの制度を参照したとしています。
 世界から見ても余りにも立ち遅れた実態の抜本的改善が必要だと思うんですね。その点で、大臣、やはりそういう思いを示していただけないでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) 諸外国における制度につきましては、それぞれの国の犯罪の発生状況や社会保障制度全体の在り方等の社会的背景が大きく異なることから、我が国の制度と一概に比較することは困難であろうかと考えております。
 いずれにいたしましても、犯罪被害者給付制度については、現在、警察庁において有識者検討会を開催をいたしまして、来年五月の取りまとめを目指しておりますので、給付水準の引上げに向けた検討がなされているところであると思います。
○井上哲士君 余りにも少ないこの実態というのはしっかり見て、抜本的改善を求めたいと思うんですね。
 犯罪被害者やその遺族の皆さんがもう一つ切実に訴えられたのが、損害賠償命令額の国による立替え制度の創設ということでありました。
 お話を伺った犯罪被害者は、出張先で四人組のグループとトラブルになって後頭部を地面に打ち付けられて、緊急手術を受けたけれども二十日間意識不明になったと、その後、幸い一命を取り留めたという方でありました。電気工事会社の社長だったんですが、けがが原因で障害が残って、働けない体になってしまった。民事裁判では損害賠償の判決を得たわけですが、加害者からは、謝罪の一言ももちろん、賠償金の支払もないということなんですね。
 四年後に加害者が仮釈放されたので、捜し当てて賠償金督促の通知を送ったけれども、不在通知で返ってきたと。働くところを捜し当てて給与の差押え、強制執行の手続を開始したけれども、執行官が会社に出向いたその日に退職をしていたと。十年で時効になりますから、弁護士費用百万円掛けて継続したけれども、現在も一円ももらえていないと、こういう実態があるわけであります。
 しかも、この方の場合は、犯罪被害者給付金は、被害者が障害を抱えたために刑事裁判の法廷に出れなかった、加害者の一方的な言い分で、犯罪被害を受ける原因となった不注意又は不適切な行為があったということで、給付金が三分の一削られたと、こういうことになっているんですね。本当に、今、無収入の中で大変な暮らしされておりますけど、被害者が何でこんな苦しみを味わわされなければならないのかということだと思うんですね。
 この方は、民事裁判で損害賠償の判決を得ても、逃げられたら泣き寝入りするしかないのですかと。裁判での損害賠償金額を国が立て替えて被害者に払って、国がその額を加害者から徴収する制度を実現してほしいと切に訴えられておりました。
 推進会議の決定にはこの制度の検討は一言も触れられておりませんけど、是非、私は有識者会議の議題として検討していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(江口有隣君) お答えをいたします。
 有識者検討会におきましては、議論に制約を設けず構成員の皆様に御議論をいただいているところでございます。
 これまでの検討会におきましては、犯罪被害者への給付の支給水準について、民事訴訟における損害賠償があるべき姿ではないか、犯罪被害について第一義的責任を負うのは加害者であることを踏まえた議論が必要ではないかなど、幅広い御意見をいただいているところでございます。
 引き続き、犯罪被害給付制度の給付水準の引上げにつきまして、有識者検討会において十分に御議論いただきたいと考えているところでございます。
○井上哲士君 それ、やっぱり、被害者に尊厳にふさわしいこの権利があるんだということを土台にした議論をしてもらわなくちゃいけないと思うんですね。
 そもそも、今どうなっているのかと。政府は、この民事訴訟で損害賠償の債務名義を得た被害者やその遺族が実際どれほど損害賠償を受けたのか、実態把握されているんでしょうか。
○政府参考人(江口有隣君) 犯罪被害者等からは、加害者の損害賠償責任が果たされず、十分な被害を受けることができていないという声を寄せられているところでございます。
 警察庁におきましては、今年度、関係府省庁と連携をし、犯罪被害者等が損害賠償を受けることができない状況につきまして、その実態把握のための調査を実施する予定でございまして、現在、調査の準備を行っているところでございます。
○井上哲士君 二〇一八年の日弁連のアンケートでは、殺人等の被害者死亡事案に限りますと、全く支払われなかったというのが七三・六%なんですね。是非、こういう実態を早くつかんで、今の見直し議論の中にしっかり生かしていただきたいと思います。
 更に聞きますけれども、二〇二二年度の殺人や傷害、傷害致死の件数は二万件以上に上りますけれども、この犯罪被害者給付金の申請件数は合わせて四百四十五件なんですね。なぜこんなことになっているのかと。制度の一層の周知が当然ですけれども、それだけではないと思うんです。給付申請の窓口が警察であることが大きなハードルになっているというお話も聞きました。警察は、当然、犯罪捜査上必要ですから、全ての関係者を被疑者として扱います。重大な被害を受けて、打ちひしがれて悲しみに沈んでいる被害者やその遺族が事情聴取を受けて、遺族が第一発見者の場合は犯人としても疑われるわけですよ。こういう対応をされた被害者の皆さんがなかなか警察官に心を許してこの給付金の申請を相談できるんだろうかという議論、声をお聞きしました。
 警察とは別に犯罪被害者支援を専門的に行う公的機関を創設してほしいという強い要望もお聞きしましたけれども、これ検討するべきではないでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) お答え申し上げます。
 本年九月二十六日に閣議決定をされました犯罪被害者等のための施策の推進に関する業務の基本方針に基づきまして、十月一日以降、国家公安委員会が政府全体の司令塔として犯罪被害者等施策の推進に関する総合調整役を担うこととなったところでございます。
 現在、同基本方針を踏まえまして、私を議長といたします関係府省庁連絡会議を開催をいたしまして、犯罪被害者等施策の推進状況に関するまず点検、検証、評価を進めており、この結果も踏まえまして、関係府省庁、自治体、民間被害者支援団体との連携を更に深め、施策の一層の推進、充実を図ってまいりたいと考えております。
○井上哲士君 全体の司令塔のお話ありましたけど、実際に被害者と向き合う、ここが今、私、本当問題だと思うんですね。
 先ほど紹介した電気工事会社の社長さんだった被害者の方は、加害者の一方的な言い分で給付金が三分の一削られたのは納得できないということで、県警本部まで異議申立てに行かれたそうなんですね。すると、女性の担当者から、これでも支給額は多い方だと、異議申立てなどすれば支給額がもっと少なくなる可能性があると、こう言われたということで憤っておられました。やっぱりいろんな、本当に寄り添うという点で様々な問題があると思うんですね。
 そこで、最後に、こういう犯罪被害者や御遺族から、長期にわたり苦しみが続いているのに制度が改善されても過去の被害に遡及されないと、せめて基本法が制定された二〇〇四年以降の犯罪被害に遡及適用してほしいという切実な訴えもありました。こういうことも踏まえ、含めてですね、大いに検討していただきたいと思うんですが、そのためにも、是非、国家公安委員長自身がこの犯罪被害者やその御遺族にお会いをして直接お話を聞いていただきたいと思うんですけれども、是非そうした機会を持つべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(松村祥史君) お答え申し上げます。
 私自身も就任以来、着任以来、犯罪被害者週間中央イベントでありますとか全国犯罪被害者支援フォーラムに出席をさせていただき、職務の中で犯罪被害者の御遺族の方に接する機会もございました。また、警察庁の担当者からも、犯罪被害者や御遺族の声を含めまして、犯罪被害者等施策に関する報告も受けているところでございます。
 引き続き、犯罪被害者やその御遺族の声に思いを致しながら、国家公安委員長として、犯罪被害者やその御遺族のための施策を進めてまいりたいと考えております。
○井上哲士君 これまでも接してきたということでありますけれども、今こういう見直しがされているさなかでありますから、改めて、被害者や御遺族の方と向き合ってその声を聞いていただきたいと強く求めまして、質問を終わります。

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