国会質問議事録

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内閣委員会(公益法人法改正案、公益信託法案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 今回の公益法人、公益信託制度の見直しは、新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画に基づいて行われました。この実行計画は、民間が公的役割を担える社会を実現していくとしております。
 民間非営利法人が社会や地域の諸課題に取り組む上での法律、税制の整備は必要ですが、本来政府や地方公共団体が担うべき公的な役割を民間に担わせる、言わば肩代わりをさせるというようなことはあってはならないと思うんですね。
 大臣、この点での認識は共有されるでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 少子化、少子高齢化や地域社会の疲弊、また環境問題など、今対応すべき社会的課題は複雑化をしており、日々新たな課題が生まれてきております。
 そうした中で、今回の改革は、行政や営利企業のみでは担い切れない多様なニーズや、公益信託が取り組みやすく、失礼しました、多様なニーズに応えた社会的課題解決に公益法人や公益信託が取り組みやすくなるよう、両制度を使い勝手良く見直すものでございます。
 したがいまして、国や地方公共団体が担っている役割を縮小し、民間に委ねるものとは考えておりません。
○井上哲士君 国や地方公共団体が役割をしっかり担いつつ、さらにこの民間の非営利法人の力も発揮をさせていくということだろうと思います。それにふさわしい運用がされることを強く求めたいと思います。
 これ、二〇〇六年の公益法人法の審議の際に、我が党は、施設の補修、それから事業の拡充、資産の取得、災害への備えの四つを挙げて、このために公益法人が資金を留保することも必要なので、こういう資金を吐き出させて公益事業に使わなければ公益法人として認定しないと、そういう基準であれば、真面目に活動する民間の非営利法人の活動実態に合わないということを当時指摘をいたしました。
 その後、運用の中では様々あったわけでありますが、今回の見直しに向けて開かれた有識者会議で、日本芸能実演家団体協議会、芸団協の大和滋参与が発言をされております。この芸団協加盟のトレース可能な六十九団体のうち、旧公益法人制度で二十七団体であった公益法人が現行制度は十六団体に減っていて、このままでいいという組織もありましたが、やはりこの規制では公益法人に行きにくいという感覚がかなりあって行かなかったのが正直なところでありますというふうに述べられております。
 前回改正後のやはりこの活動実態に合わない基準によって、公益法人を望みながらも認定申請をしなかった法人があって、結果として認定が限定をされたと、こういう実態があると思いますが、いかがでしょうか。
○政府参考人(北川修君) お答え申し上げます。
 公益法人にならず一般法人のままを選択している理由につきまして、民間団体の調査結果では、公益法人になったら収支相償原則や行政による監督のために事業活動が制限されるですとか、定期的に行政に提出する書類の作成負担が大きいなどといった声が上がっております。
 今回の改革では、御指摘ありましたように、芸術団体さんからも十分ヒアリングして進めてまいりました。そうしまして、財務規律を柔軟化する、行政手続を簡素化するということによって法人の経営の自由度を高め、また行政に提出する書類の簡素化等負担の軽減も図ってまいります。
 こうした改革によりまして、公益法人となることをちゅうちょするという意識が軽減していくことを期待しておる改革でございます。
○井上哲士君 そういうことを期待した改革、逆に言えば、現状は様々そういうこの足かせになっていたということだろうと思います。
 先ほど挙げました、前回改正時に指摘をした公益法人が留保を必要とする四つの資金のうち、施設の改修、事業の拡充、資産取得に充てるための資金については、これ運用上、特定費用準備資金や資産取得資金として扱って、収支相償上の費用とみなされてきました。さらに、一年分まで保有できる遊休財産とは別に、公益目的事業費として保有しておけるようにされました。
 一方、これ、災害への備えはこの特定費用準備資金の対象にならずに、災害対応の予備資金を十分に持っておくことができなかったという実態があります。しかし、この間、特にコロナ禍での深刻な事態はこういう財政規律では対応できないということを示したと思うんですね。
 今回の改正の一つには、こういうコロナ禍の実態というものを踏まえたということでよいのか、そして、その辺、法案ではどういうこの間の教訓が生かされているのか、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 使途の定まっていない財産の保有制限につきましては公益目的事業費一年分という規制がありますが、今回のコロナ禍で、法人の事業内容等によってはそれでは不足し、事業の継続に不安が大きいとの声がありました。委員御指摘のとおりでございます。
 このような事態に備え、多種多様な法人が、自らが、自らの事業内容などに照らし必要な財産を確保ができるよう合理的に説明し、公表した財産を予備財産として保有できるような制度にしてまいります。
○井上哲士君 芸術団体などで聞きますと、例えばコロナ禍のときでは、公演収入が中心の法人は、収入源は途絶えると。一方、団員給与なども必要でありまして、一年分の遊休財産では足りないということが、様々声が上がっております。
 今、改善をするということでありますけれども、具体的にそのどこまでこれを保有、項目や中身でできるかということは、今後、先ほどありましたけれども、ガイドラインとかそういうことで示されていくということで、参考人、よろしいでしょうか。
○政府参考人(北川修君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおりでございます。一年分を超過して保有することが可能なその予備的な財産のその保有の合理性に関する基準ということにつきましては、今後、内閣府令やガイドラインでより明確化すべく検討してまいります。
○井上哲士君 是非、分かりやすい、使い勝手のいいガイドライン等を示していただきたいと思います。
 それから、先ほど来議論になっております収支相償原則でありますが、現行法の十四条で、公益目的事業の実施に要する適切な費用を償う額、補う額、償う額を超える収入を得てはならないとだけ規定をされております。
 運用では、収支均衡の判定において、過去の赤字が考慮されず、黒字も二年間で解消するということとされてきたわけですが、これも有識者会議で、先ほど来出していますこの芸団協の大和参与が発言をされていますが、コロナ禍での減収の際の借入金について、寄附金を集めてそれを原資にして返済しようとしても、寄附金は収入とみなされる一方で、返済は支出とみなされないということによって収支相償上は返済した分だけ黒字になってしまうということで、理論上返せないということも指摘をされております。
 今回の改正によってこの問題は解消されるんでしょうか。そして、されるのであれば、このコロナ禍のときの借金、借入金の分まで遡って対応することが必要だと思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
○政府参考人(北川修君) お答え申し上げます。
 芸術団体からもそういった声はよく聞いてまいりました。今回の制度改革では、公益法人の収支について、過去の赤字も通算した五年間で均衡を図ると、赤、赤、黒、黒というのは通算してのみ込むと、赤字があった部分をですね。で、赤字発生時の損失をその後の収入の回復で補填するといった対応が新制度では可能となります。
 では、遡って、過去のコロナによる運転、不足について遡って適用できるかということにつきましては、収支均衡状況の判定をする上で過去の分も考慮をできるように、することができるように検討しているところでございます。
○井上哲士君 できるように検討しているということでありますが、やはりここ数年で未曽有の事態が起きたわけでありまして、とりわけそういう芸術家団体などは大変御苦労をされました。そういう声にしっかり応えていただきたいと思うんですね。
 以上、幾つか述べましたけど、やはり現行の財政規律が公益的活動を行う民間非営利法人の活動実態に合っていなかった部分があるということだと思うんですね。
 先ほど来出ている収支相償についても、内閣府のまさに公益法人行政担当室が二二年八月に出した文書でも、翌年度までに無理に記帳しなければならないものではない旨を繰り返し説明したけれども、その考えは公益法人に浸透していないとか、特に都道府県の指導の現場においても誤った硬直的な指導が行われている可能性は否定できないと、こういうことも言われているわけですね。
 今回、実態に合わせて改正をするわけでありますけれども、こういう、そういう硬直的指導が過去否定できないという実態を見れば、内容の正確な徹底とともに、非営利法人の実態、要望を常に把握をする努力が必要かと思いますけれども、これもちょっと追加して、参考人、いかがでしょうか。
○政府参考人(北川修君) お答え申し上げます。
 先生のおっしゃるとおり、現行では、やはり法律の規定から見ると、これを厳しく運用するか緩やかに運用するか、ちょっと幅があり得るところであり、国の方針と都道府県の一部ではちょっと対応に差があったところは否めないと思っております。
 そこで、いろいろ相談の受付も拡充しまして、例えば、収支相償でしたら、収支相償一一〇番なんという相談窓口を現在は設けております。
 制度改革によって、もう収支相償の一一〇番どころか、もう中期収支均衡にもう塗り替えられるわけでございますが、法人からの生の声をより良く反映して検討してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 是非しっかり声を聞いていただきたいと思います。
 公益信託の法案についてお聞きしますが、公益信託法案では、税法上の措置と相まって、受益者を、受託者を拡大をいたします。
 公益信託では、自己信託はできないけれども、委託者の親族や関連企業が受託者となることは排除されておりません。課税逃れとか身内の利益の確保に制度が使われるんじゃないかという懸念の指摘もあるわけでありますが、そうしたことを防ぐために法案はどのような規制を掛けているんでしょうか。
○政府参考人(北川修君) お答え申し上げます。
 まず、公益信託の委託者には、拠出した財産は戻ることはありません。また、受けた受託者が信託財産を私的に利用することもできません。委託者、委託者は、公益信託の運営にも関与いたしません。また、受託者が委託者やその親族に対し利益供与しないことを認可の基準としておりまして、これは行政庁が厳格に審査いたします。また、委託者、受託者から独立した第三者たる信託管理人が必置となりまして、受託者の監督を行います。また、行政庁も監督を行います。
 これらの措置によりまして、公益信託の適正な運営を確保できるものと考えております。
○井上哲士君 認可において様々今のようなことがあるということでありますが、非営利性を担保するための規定で、特定の個人、企業への利益供与を禁じるという規定もあるわけでありますが、その中で、信託報酬について、当該公益信託の経理の状況その他の事情を考慮して、不当に高額なものとならないような支払基準であることを一つの要件とされておりますが、この不当に高額であるということは具体的にどういうふうに判断をするんでしょうか。
○政府参考人(北川修君) 御説明申し上げます。
 公益信託に係る報酬が公益信託の経理の状況その他の公益事務の内容等を考慮して、不当に高額なものとならないような支払基準を定めていること、これは行政庁においてしっかりチェックしてまいります。報酬の支払基準は、行政によりさらに一元的にウェブサイト等で公表することも予定しておりまして、国民の不断の監視の下に置かれることでも不当に高額な報酬が定められることの抑止効果はあると思います、考えます。
 また、公益信託事務の費用に対する報酬等の管理費用の割合が過大になることを抑止するという規律も法律に設けておりまして、このような観点からも不当に高額とならないようにチェックしてまいります。
○井上哲士君 法人側がそれちゃんと自分たちでできるように、先ほど来あるようなガイドラインとかそんなものでも示されるということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(北川修君) 申し上げます。
 報酬が不当に高額かどうかという判断に当たっては、公益法人の報酬規制も参考にしつつ、契約であるところの公益信託の特殊性を考慮して判断してまいります。その判断に当たりましては、信託事務の種類や内容、受託者の職務の内容、当該信託の規模などの事情を考慮する、していく必要がございますが、その判断基準については、御指摘のとおり、ガイドラインなどでできる限り明確化して公表してまいりたいと考えております。
○井上哲士君 二〇二二年十月の信託フォーラムで三菱UFJ信託銀行の幹部の方が、現在は、出捐財産を金銭とし、その費用対象も預貯金、国債等の安全資産に限ることが税法上の要件になっているが、改正後は、当初、信託財産の範囲や信託期間中の運用財産の範囲に制限がないことが確認されたと、こういうふうに述べられております。
 現行は所得税法施行令で公益信託の信託財産の運用について預貯金や国債、地方債などに限定されておりますが、今回この基準をなくすという方向だということでありますが、そうすると、この投機的取引であるとか、公益信託にふさわしくないような事業が行われるのではないかと、こういう懸念も指摘されておりますが、これはどういうふうに対応されるでしょうか。
○政府参考人(北川修君) お答え申し上げます。
 信託財産の運用につきましては、投機的な取引に該当しない範囲内で行うということが認可の基準として法律に定められております。そして、認可した後におきましても、受託者が投機的な取引を行った場合には、信託管理人が受託者に対し行為の差止めや損失を補填するよう請求することや、その受託者の介入をすることも可能であります。
 また、行政庁といたしましても、投機的な取引の疑いがある場合には報告徴収、立入検査等を行いまして、勧告や命令、認可取消し等の監督措置を着実に実行してまいる考えでございます。
○井上哲士君 公益法人法も公益信託法も公益活動も活性化させていこうという法案でありまして、公益信託の認可、監督も内閣府に一元化をされるということであります。
 今、るる、従来のいろんな制限を緩和をして、様々な公益活動が広がるようにというお話がありましたが、一方で、様々な懸念の中での監督の必要性も答弁がありました。そういうことからいえば、今後、この一元化をされたからといって、監督体制を軽減をするんではなくて、必要な公益活動を活発化させる上でも体制をしっかり整える必要があると考えますけれども、この点、大臣いかがでしょうか。
○国務大臣(加藤鮎子君) お答え申し上げます。
 公益法人、公益信託の信頼性を確保する上で行政庁による実効的な監督は不可欠であると考えております。監督におけるめり張り付けを強化し、不適切な端緒をつかんだ法人、受託者等に対しましては監督措置を果断に実施をしてまいります。
 そのための事務局体制につきましては、公益法人と公益信託に係る業務が一元化されることに伴う合理化、そしてDXの推進等によります事務の効率化、こういったことを図りつつ、必要な体制整備にしっかりと取り組んでまいります。
○井上哲士君 認定基準などの公益性担保のための規定が適切に運用され、先ほどありましたように、公益法人のやっぱり信頼性が深く国民の中で確保されていくように適切な運用を強く求めまして、質問を終わります。

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