国会質問議事録

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本会議(経済秘密保護法案)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 会派を代表して、重要経済安保情報法案、すなわち経済秘密保護法案等について質問いたします。
 まず、自民党の裏金問題です。
 岸田総理は、裏金議員の一部について自民党内の処分を行ったことで問題の幕引きを図ろうとしています。しかし、共同通信の世論調査では、裏金事件の実態が十分解明されていないは実に九三・三%に達しています。
 衆参に政治改革特別委員会が設置されましたが、求められる政治資金規正法の改正を行うには、裏金をめぐる事実の徹底解明が必要です。総理の認識をお聞きします。
 先週土曜日のテレビ番組「報道特集」で、安倍派の元事務総長、下村博文氏が板橋区の支持者の会合で話したとされる音声が放映をされました。その中で、今回の一連の中で、少なくとも二〇〇五年から一九九九年、森会長のときにそういうスキームをやっていたんだなということは、今そういうふうに認識していますと述べ、さらに、こうしたことを政倫審で話さなかったのは、野党に良い材料を与えるようなもの、検察に話したことと違うことを言えば再聴取されると述べたとしています。総理による再聴取は一体何だったんでしょうか。
 事実解明のために森元総理、下村氏を含む安倍派元幹部らの証人喚問が不可欠です。自民党総裁としてその実現に責任を果たすべきです。答弁を求めます。
 本法案は、米国などの同盟国、同志国と兵器の共同開発を進めるためにセキュリティークリアランス制度を導入するものです。
 米国はかねてから、武器等の技術情報、軍の運用情報を迅速に交換するために、米国と同レベルの情報管理体制を日本にも要求してきました。セキュリティークリアランスに関する有識者会議では、産業界から米国防省の調達に参加するために必要との発言もされています。
 こうした本法案の狙いは、岸田総理とバイデン米大統領との日米共同声明で一層明らかになりました。
 共同声明は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上させると明記をいたしました。
 日米間の相互運用性を強化するために、指揮統制機能の連携強化や、共通する装備の保有と連携した運用の一層の強化を米側から求められたのではないですか。日本はどのように対応するのですか。
 その下で、共同声明では、日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議、DICASを開催し、ミサイルの共同開発、共同生産を強めることを宣言しました。
 更に重大なのは、米英豪による対中国の軍事的抑止を図る事実上の軍事同盟であるAUKUSと日本が先端軍事技術での協力の検討を宣言したことです。AUKUSの第二の柱であるサイバー、AI、量子技術、海洋戦力、極超音速兵器などの先端軍事技術での協力をしようというものです。今後、いつまでに、どのように協力の検討を進めるのですか。
 本法案で経済分野を含めて幅広く情報を秘密指定し、その情報を扱う者にセキュリティークリアランスを義務付けるのは、こうした諸外国との先端軍事技術での協力に対応するためなのではありませんか。以上、総理にお聞きします。
 国家安全保障戦略は、防衛力の抜本的強化を補完し、それと不可分一体のものとして、研究開発、公共インフラ整備、サイバー安全保障、抑止力向上のための国際協力の四分野で各省の取組を推進するとしました。それを受けて開かれた昨年八月の関係閣僚会議は、各省の民生利用目的の研究を軍事に動員するため、特定重要技術を指定しました。
 高市大臣はこの会議で、情報セキュリティーの強化の必要性について発言をしています。これが本法案のセキュリティークリアランスなのですか。
 各省の民生利用目的の研究を軍事目的に転用するプロセスの中で、研究を担う民間の研究者等にセキュリティークリアランスが必要になるということですか。以上、高市大臣の答弁を求めます。
 総理は、衆議院で、本法案は軍事分野を念頭に置いたものではないとし、特定秘密の範囲は拡大しないとしています。一方、特定秘密保護法と本法案のシームレスな運用を行うと答弁しています。それが何を意味するのか。
 政府は質疑で、特定秘密保護法の審議の際に経済安全保障が特定秘密に入っているとは答弁していないこと、これまで特定秘密に指定した例がないことを認めました。しかし、本法案で経済分野にまで秘密の範囲を幅広く拡大し、その中から機微度が上がり要件を満たした情報を特定秘密に指定するシームレスな運用をすれば、結果として、これまで四分野に限定されていた特定秘密の範囲が大幅に拡大し、罰則の対象が広がるのではありませんか。
 政府は、本法案でセキュリティークリアランスの対象となる民間人は初年度で数千人程度と答弁しています。しかし、今後、日米の武器共同開発やAUKUSとの先端軍事技術での協力が進めば、将来的に対象は更に大規模になるのは避けられないと考えます。答弁を求めます。
 国民には何が秘密かも知らされないまま、政府の一存で秘密を指定し、その漏えい等を厳罰に処するのが特定秘密保護法です。それと同様の仕組みで、本法案が秘密を扱う人に課す適性評価の調査は、政治思想、海外渡航歴、精神疾患などの治療歴、犯歴、借金や家賃の滞納、家族や同居人の過去の国籍まで三十ページに及ぶ調査票に記入させるものです。さらに、評価対象者の知人や職場の上司にまで質問し、公務所に照会まで掛けるとしています。
 この公務所には、警察や公安調査庁が含まれますね。いつ、どのような内容の確認のために警察や公安調査庁に照会を掛けるのか、本人には知らされるのですか。
 岐阜県大垣警察署警備課の警察官が、中部電力の子会社に対し、同社の進める風力発電施設建設に反対する大垣市民四人の個人情報を提供した事件で、四人の住民は、公安警察により個人情報の収集、保有、利用、第三者提供は違憲だとして、国家賠償請求と警察が保有している個人情報の抹消を求め提訴しました。岐阜地裁は、大垣警察の違法性を認め、損害賠償を認める判決を下しました。
 驚くべきことに、警察はこの裁判の中で、個人情報の収集や第三者への提供は通常の警察業務の一環であると主張しています。本法案により警察による国民監視と個人情報の収集が一層拡大することになる大きな懸念についていかがお考えですか。
 無罪判決が確定した男性が、警察が捜査の中で採取した指紋やDNAなどの個人情報の削除を求めた訴訟の名古屋地裁判決は、データの抹消を命じる判決を出しました。しかし、警察はデータを削除していません。
 本法案により警察や公安調査庁に収集された個人情報は削除されるのですか。一生監視の対象になるのではありませんか。
 適性評価は本人同意が前提という建前ですが、労働者は調査を拒否すれば不利益を受けるおそれがあり、事実上の強制ではないですか。しかも、法案には不利益取扱いをした場合の罰則もありません。なぜ罰則を設けないのですか。
 米国と一体の軍事力増強と軍需産業の利益拡大のために、憲法の国民主権と平和主義を壊し、適性評価によってプライバシー権を侵害し、基本的人権を踏みにじる本法案は断じて認められません。徹底審議の上、廃案にすることを求め、質問を終わります。
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 井上哲士議員の御質問にお答えいたします。
 政治資金収支報告書の不記載に関する事実の解明についてお尋ねがありました。
 報道された議員の言動等の一つ一つについてコメントすることは差し控えますが、御指摘の事実解明については、これまでも、我が党による外部の弁護士も交えた聞き取り調査や国会における政倫審の開催など、様々な関係者によって取組、様々な取組が行われてきたところです。また、これらの結果、事実関係の整理が一定程度進むとともに、一定の場合には、会計責任者のみならず議員本人の責任も強化するべきなど、具体的な政策課題も明らかになってきたところです。
 引き続き、できる限りの事実確認等に努めること、これは大切ですが、今回の事案の概要を踏まえ、政治資金規正法の改正を含む再発防止策に早期に取り組むことも大変重要であると考えております。
 なお、お尋ねの証人喚問については、これまでの関係者による取組の状況等も踏まえつつ、国会で御判断いただくべき事柄であると考えております。
 日米の指揮統制機能の連携強化、AUKUSとの協力及び防衛技術協力と本法案の目的についてお尋ねがありました。
 まず、日米共同声明で発表した日米それぞれの指揮統制の枠組みの向上については、国家防衛戦略等に基づく自衛隊のこの統合作戦司令部の新設を踏まえ議論を進めているものであり、米側から求められたものではありません。
 また、AUKUSが示した先進能力分野における協力については、米英豪との連携強化に向け、今後、具体的に検討を進めていく考えです。
 その上で、本法案の保護対象は、重要経済基盤の保護に関する情報であり、防衛装備に係る諸外国との技術協力への対応を想定したものではありません。
 本法案と特定秘密保護法のシームレスな運用についてお尋ねがありました。
 今回、特定秘密保護法の改正は行わないため、特定秘密の範囲が拡大するとの御指摘は当たりません。
 特定秘密保護法は、その別表の四分野に該当する情報であって、漏えい時に安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるものを保護する制度です。また、現行の特定秘密保護法の運用基準には、経済安全保障分野の情報でもあるサイバー攻撃の防止を別表四分野のうちの特定有害活動の防止に関する事項ないしテロリズムの防止に関する事項の細目として掲げており、特定秘密には経済安保分野は含まれないわけではないと考えております。
 これに対し、本法案は、漏えい時に安全保障に支障を与えるおそれがあるものの、特定秘密保護法が対象とするものより一段低い機微度の経済安全保障上の重要情報を保護する制度です。
 政府としては、経済安全保障上の重要情報を二つの制度で保護していくに当たり、これを確実なものとする観点から、二つの制度をシームレスに運用していくことが重要であると考えている次第です。
 適性評価対象者数の規模についてお尋ねがありました。
 適性評価を受ける人の数については、公表されている秘密文書を含む行政文書ファイルの数を起点に大胆な仮定を重ねて、まず初年度に想定される指定件数を見積もり、さらに、例えば特定秘密を取り扱う者との重複の可能性など、種々の諸要件を捨象して推計した結果として数千人程度であり、数万人という単位にはならないだろうということを説明したものであって、あくまでも現時点における一つの目安としてお答えしたものであります。
 議員はこの法案を軍事に結び付けるかのような御質問をされていますが、本法案が保護の対象とするのは、我が国の国民生活や経済活動にとって重要なインフラや重要物資のサプライチェーン保護に関する情報です。そのため、議員が指摘したことを理由として本法案の適性評価対象者が大幅に増加するようなことはないと認識をしております。
 そして、適性評価における調査についてお尋ねがありました。
 本法案に定めのある本人以外の者への質問や公務所等への照会について、その具体的な手続等は、特定秘密保護法の例を参考にしつつ運用基準の中で明確にすることを想定しており、有識者の意見をお聞きしつつ今後検討してまいります。
 この点、特定秘密保護法では、公務所等に照会することがあることは告知書で本人にあらかじめ知らせて、書面により同意を得ることとしております。警察や公安調査庁に対する照会も、一般論としてではありますが、実際に照会しているかどうか、何を照会しているかは、調査に支障を及ぼすおそれがあるため、お答えは差し控えます。
 また、その上で、一般的に申し上げれば、照会が行われた場合には、回答後、当該情報が記録された文書は関係法令に基づき適切に廃棄されることとなります。
 なお、企業において、上司が適性評価を受けることを求めた場合においても、それに同意しないことが許される状況が実質的に確保されることが重要であると考えており、そのための本人への事前説明の内容や段取りについて対応の在り方を検討しているところです。
 また、同意しなかった者が、その後、これを理由として不利益な措置を受けることがないよう、今後策定する運用基準などにおいても具体的な禁止行為を明示することなどの措置を検討していく予定としており、これらの措置を通じて実効性を担保できると判断しており、罰則を設ける必要はないと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。
○国務大臣(高市早苗君) 井上哲士議員からは、まず、閣僚会議における発言と本法案の関係についてお尋ねがございました。
 第一回総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議における私の発言は、その前々月に発生した産総研の中国籍研究員逮捕を受けて、研究インテグリティーや情報セキュリティーの強化について発言したものでございます。政府が保有する経済安全保障分野における重要な情報の保全を目的とする本法案とは関係がございません。
 次に、民間の研究者などに対するセキュリティークリアランスの要否についてお尋ねがございました。
 本法案により民間において適性評価の対象となる方は、政府から重要経済安保情報の提供を受けることについて自ら意思を示し、政府と合意して契約に至った事業者において、その情報を取り扱う業務を行うと見込まれる、又は現に行っている一定の要件を満たす従業者です。
 御指摘の民間の研究者などがこれに該当すれば、本法案の適性評価を受けていただくこととなります。

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