国会質問議事録

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内閣委員会(経済秘密保護法案、日本学術会議の法人化方針について)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 前回、十八日の質疑の際に、この経済秘密保護法案の第二条第四項第二号の重要経済基盤に関する革新的な技術であって安全保障に関するものについて、AIや量子技術等の先端技術も該当する可能性があるとの答弁がありました。また、民生用の技術と安全保障用の技術の区別は極めて難しくなっており、デュアルユースの技術も該当する可能性があるという答弁もありました。
 そこで、大臣、お聞きしますけれども、つまり、この量子技術やAIを始めとする先端技術の研究は、たとえ民生利用のための研究であっても、同時に軍事利用への応用可能性を有していると、こういう認識でよろしいでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 量子やAI等の先進的な技術につきましては、それを利用しようとする者の目的に応じて、民生分野や又は軍事を含む安全保障分野で利用される可能性を有していると考えております。
○井上哲士君 そこで、十八日の質疑の際に、重要経済安保情報として指定された情報で、情報の機微度が上がって特定秘密保護法の指定に移行していくような情報とは何なのかということを質問をいたしました。大臣の答弁は、基幹インフラへのサイバー攻撃の脅威情報やサイバー攻撃の防止に関する情報が漏えいをした場合に、我が国の安全保障に支障を与えるおそれがある場合は重要経済安保情報として指定し、著しい支障を与えるおそれのある情報となった場合は特定秘密に指定されると、こういう答弁でありました。これは、第二条第四号第一項の重要基盤保護情報の内容について述べた答弁だと思うんですね。私がお聞きしたのはこの重要経済安保情報の方と、でありまして、同条の第四項第二号の問題です。
 改めてお聞きしますけれども、これに該当する重要経済基盤に関する革新的な技術であって安全保障に関するもので、指定後に機微度が上がるという情報とは、具体的にどのようなものを想定をされているんでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 十八日の私の答弁につきましては、今、井上委員から御紹介をいただきましたけれども、具体的には、基幹インフラへのサイバー攻撃の脅威情報やそれに対する政府の対応策を例示させていただきました。これは、第二条四項一号の外部から行われる行為から重要経済基盤を保護するための措置又はこれに関する計画若しくは研究に関するものに該当し得るということでの答弁でございました。
 他方、この基幹インフラへのサイバー攻撃の脅威情報やそれに対する政府の対応策というものには、攻撃の対象となる基幹インフラの脆弱性に関する情報が含まれる場合もございます。その場合は、二条四項二号の重要経済基盤の脆弱性、重要経済基盤に関する革新的な技術その他の重要経済基盤に関する重要な情報であって安全保障に関するものにも該当し得ると考えます。
 現在の特定秘密保護法の運用基準には、経済安全保障分野の情報でもありますサイバー攻撃の防止を、別表四分野のうちの特定有害活動の防止に関する事項ないしテロリズムの防止に関する事項の細目として掲げています。
 こうした脆弱性に関する情報も含む形での基幹インフラへのサイバー攻撃の脅威情報やそれに対する政府の対応策などは、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある情報と判断するに至った際には、それが公になっていないのであれば特定秘密として指定することとなると考えます。
○井上哲士君 最初の質問でお聞きしました、例えばAIであるとか量子技術に関することで、それが、初めは民生利用だけれども、いろんな軍事の問題なんかでのこの応用の可能性が出てきたという場合もこういうことに当たるということではないんですか。
○国務大臣(高市早苗君) 民間が保有する情報を対象した法律案ではございません。国が保有する重要経済安保情報を対象とした法律案でございます。
○井上哲士君 しかし、そのやり取りはいろいろあると思うんですね。この基幹インフラやサプライチェーンの保護に関する革新的な技術といいますと、一見、民生用の先端技術のように感じますけれども、この先端用の技術であっても応用研究で軍事転用可能がなるという可能性があるというのが、先ほどありましたようなAIや量子技術等のデュアルユースの技術なわけですよね。
 ですから、革新的な技術の機微度が上がるというのは、民生用の技術だったものが、そういうことに関する情報がこれ政府から行ったとしても、軍事転用可能な技術になると、そういう場合は排除されていないんじゃないんですか。
○国務大臣(高市早苗君) 基幹インフラへのサイバー攻撃に対する政府の対応策の中に、非公知かつ政府保有の革新的技術を利用した対策が含まれるということは想定されます。こうしたサイバー攻撃の防止に係る革新的技術に関する情報は重要経済基盤保護情報に該当する一方で、特定秘密の別表にも該当する場合には、それを取り巻く状況いかんでは、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあると判断されて、特定秘密として指定されることもあり得るのではないかと考えます。
○井上哲士君 特定秘密に指定される場合もあるのではないかという、最後、お話がありましたけど、例えば今回のAUKUSの第二の柱として掲げられている量子技術は、民生利用としては、高精度の天気予報とか、広告戦略、創薬や製薬など、広範な分野への応用が期待をされております。一方、防衛省は、この量子技術を安全保障において将来の戦い方を大きく変える可能性を秘めている重要な技術と位置付けて、研究を進めているわけですね。それから、AIについても、これ民生利用とともに軍事面への活用が国際的にも進められております。
 今、イスラエルはガザへの空爆に際して、攻撃目標を自動的に生成、設定するAIプログラム、ラベンダーを使用していたと報じられております。これ、イスラエル軍が、ハマスのメンバーの電話、住所、通信、行動パターンなどの情報をAIに学習をさせるとともに、このガザ住民二百三十万人に対する大量監視を通じて得たデータを入力をして、ハマスメンバーとの類似の程度に応じて一から百の段階に分類をし、数値の高い人物が自動的に標的に設定されると、こういうことが行われたわけで、これがデュアルユース技術の軍事転用の現実として既に進行しているわけですよね。
 ですから、これ繰り返しになりますが、この法案でそれに転用できるような技術を幅広く指定をして、それが、機微度が高まったらまさに特定秘密に移行していく、そういうことができるようになっているというのがこの法案なんではないですか。
○国務大臣(高市早苗君) 本法案が対象とするのは、我が国の国民生活や経済活動にとって重要なインフラや重要物資のサプライチェーンの保護に関する情報でございます。
 いわゆるデュアルユースの技術は本法案による保護の対象となる可能性はありますけれども、本法案は防衛装備に係る例えば諸外国との技術協力などの対応を想定したものではございません。
○井上哲士君 入口として幅広く指定をして、そういうものに使われるものを特定秘密に、言わば機微度が上がったといって指定をできていくと、そういう役割を果たす法案なんではないか。まさにそれが、この間、私議論してきました、特定秘密保護法とのシームレスな運用の中でそういうことになるんではないかということを改めて指摘をしていきたいと思います。
 有識者会議の議論では、セキュリティークリアランスの制度はアメリカの制度を参考に検討すべきと、米国との実質同等性をどう確保するかというのが最大のポイントというふうに強調されておりますが、なぜこのアメリカの制度との同等性ということが必要とされるんでしょうか。
○政府参考人(品川高浩君) お答えいたします。
 我が国の経済安全保障の確保は、我が国単独で実現できるものではございません。同盟国である米国、同志国との連携協力が不可欠でございまして、これらの国と経済安全保障分野の協力を進めていく上でこれらの国に通用する制度であることは極めて重要でございます。有識者会議でこの点を重視する御意見をいただいたのは当然のことと考えております。
 なお、この議論につきましては、米国のみを念頭に置いたものではなく、同志国との関係も含めての御議論であったと承知しております。
○井上哲士君 当然のことだと、こういう御答弁でありましたが、今お手元に配付している資料は第三回の有識者会議に提出をされた諸外国における情報保全制度の比較の表であります。各国のクリアランス対象情報の範囲や分野が示されております。アメリカの制度を見ていただきますと、クリアランス対象情報の範囲、分野の⑤、国家安全保障に関連する科学的、技術的、経済的事項ということが含まれているわけですね。
 第二回の有識者会議では、企業の側から、特定秘密保護法では安全保障に関する科学技術情報がカバーされていない、それから、先端技術開発の初期段階では、防衛技術と非防衛技術に区別するのは議論の性質上なじまないと、防衛も非防衛も、両者を抱合する制度にしてほしいと、こういう制度が企業側から出されております。
 まさに、軍事転用の可能性を持った科学技術の情報に秘密指定を拡大をしてセキュリティークリアランス制度を導入することで、こういうアメリカの制度との同等性を確保するというのがこの法案の理由ということではないんですか。
○政府参考人(品川高浩君) お答えいたします。
 繰り返しになって恐縮でございますけれども、デュアルユースの技術は本法案の対象となる可能性はございます。ですが、本法案が防衛装備に係る諸外国との技術協力への対応を主眼としてこの提案をさせていただいているものではないということでございます。
○井上哲士君 この間、主眼としていないとか想定をしないと、こういう答弁がずっと行われるわけですけど、私が申し上げているのは、直接そういうふうに法には書いていなくても、結局、結果として、こうやって秘密保護、この法案で幅広く認定をし、指定をし、それが機微度が上がった場合にこういう形で特定秘密保護法の対象にしていくと。それによって、こういうアメリカなどの制度と同一性を確保するんじゃないかということを申し上げました。
 本会議でも申し上げましたけれども、先日の日米共同声明でDICASを開催をしてミサイルの共同開発や生産なども決めたわけでありますけれども、こういう幅広い今後の日米間の、そしてこれからも、これまでも行われてきたこういう共同開発のために必要だということが今度の法案の一番の背景ではないかということを改めて指摘をしておきたいと思います。
 その上で、この学術研究の政府からの独立性に関わって日本学術会議の問題についてお聞きをいたします。
 特にデュアルユースの問題、この間、学術会議は、科学者がこの科学技術のデュアルユース問題にどう向き合うかということをずっと議論をしてまいりました。一方、政府は、二〇年の十月に六人の学術会議の会員任命を拒否をして、その解決のないままに、会員候補の選考過程に介入する日本学術会議法改正を一方的に発表をいたしました。
 昨年の衆議院の予算委員会で我が党の宮本徹議員がこのことに関して、学術会議の合意なしに法案を提出するべきではないとただしました。これに対して岸田総理は、期限ありきではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めるという答弁をされました。そして、その後、通常国会にこの法案は提出をされなかったわけであります。
 一方、昨年、政府は、学術会議を法人化する方針を打ち出して、現在、学術会議の在り方の検討が有識者懇談会で議論をされております。四月十五日には、具体的な検討を深めるためとして、有識者懇談会の下に組織、制度と会員選考に関する二つのワーキンググループが設置をされました。
 こうして現在進められている検討に当たっても、昨年の総理答弁どおり、期限ありきではなく、学術会議との意思疎通を図りながら検討を進めると、こういうことが当然踏まえられるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(笹川武君) お答え申し上げます。
 御指摘の答弁は、おっしゃるとおり、政府が昨年の通常国会への提出を検討していた学術会議を国の機関のまま存置した上で透明性の向上などの改革を進めていくという案についての質疑の中での御質問でございました。岸田総理からは、そもそも今回の法改正案については、今国会、これはしたがって去年の通常国会ですが、今国会への提出を目指しているところではありますが、先ほど申し上げたように、期限ありきということではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めていきたいと思っていますというふうに御答弁差し上げたというふうに承知しております。
 その法案は、今先生御指摘のとおり、政府として、アカデミアとの関係に配慮して国会提出を見送ったわけですけれども、政府におきましては、昨年六月の経済財政運営と改革の基本方針二〇二三において、これまでの経緯を踏まえ、国から独立した法人とする案等を俎上にのせて議論し、早期に結論を得るということを閣議決定したところでございます。
 これに基づいて、今先生御紹介いただきましたが、まず日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会を開催し、そこでは、学術会議が求められる機能を十分に発揮するためには、国とは別の法人格を有する組織になることが望ましいという中間報告をいただきました。政府としても、十二月に、日本学術会議を国から独立した法人格を有する組織とするということを決定したところでございます。
 現在、先生から最後御指摘ありましたワーキンググループなど立ち上げているわけですけれども、この方針に基づいて法制化に向けた具体的な検討を進めているところでございまして、検討に当たっては学術会議の意見も十分に聞きながら丁寧に進めてまいりたいというふうに思っているところでございます。
○井上哲士君 去年の総理答弁どおり、期限ありきでなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めると、こういうことでよろしいですね。
○政府参考人(笹川武君) 繰り返しになりますけれども、政府といたしましては、丁寧に議論して早期に結論を得る、学術会議の意見も十分に聞きながら検討を進めていくという方針でございます。そういう方針ではありますけれども、期限ありきではなく、学術会議と意思疎通を図りながら検討を進めていく、そういう気持ちも持ってしっかりやっていきたいというふうに思っているところでございます。
○井上哲士君 総理答弁でありますから、気持ちの問題じゃなくて、ちゃんとそのとおりやっていただきたいんですが、この見直し議論について学術会議は昨年十二月九日に声明を発表して、政府案のこの法人化案に懸念を示した上で、活動面での政府からの独立性の確保や会員及び会長選考の自律性、独立性の確保などの五点が満たされる必要があるとして、関係者の継続的な協議を望むということを表明しておりますけれども、こうした学術会議の声明で示された方向も当然尊重されるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
○政府参考人(笹川武君) 有識者懇談会においてもこの説明は、たしか御説明いただいていたかというふうに存じます。したがいまして、今後の検討について、有識者懇談会においては、独立性、自律性が現在以上に確保され、国民から求められる機能が十分に発揮されるような制度設計が行われるべきであり、これは法人化に向けてということですけれども、行われるべきであり、学術会議が心配しなくてもよいように、学術会議の意見を十分に聞きながら今後進めていくというふうに懇談会おっしゃっておりますし、政府としても同様のスタンスで丁寧に進めていきたいということでございます。
○井上哲士君 学術会議は昨日から都内で総会を行っておりますけれども、内閣府のワーキンググループへの参画に当たって、改めて、この五つの点を基本的な考えとして、四月十五日に会長声明も発表をしております。そして、自由な発想を生かした関係者の継続的な協議を望むということを表明をしております。
 学術会議は、一九四九年に、戦前の日本で学問の自由が保障されなかった、学術が軍国主義に奉仕されたと、そういう反省の下につくられました。日本の科学者の代表機関だと。科学が文化国家、平和国家の基礎だとの信念に基づいて、国の機関であると同時に、時の政権から独立した立場で行政や産業、国民生活に関する科学的な提言を行ってきたと。私は、このアカデミアとして非常にこれは大事な立場でありますし、こういう機能をしっかり高めるためにも、期限ありきではなくて、学術会議の意思疎通をしっかり図りながらの検討、国民に開かれた検討が必要だということを再度改めて求めまして、質問を終わります。

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