国会質問

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法務委員会

shitsumon201111.jpg・憲法が禁じる裁判官報酬の引き下げ--消費税増税の地ならし目的であり許されないと追及し反対しました


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 裁判官の報酬、検察官の俸給を減額するこの二つの法案は、国家公務員の給与削減法案と一体のものであります。国家公務員の給与を平均七・八%も下げるということは、地方公務員そして独立行政法人など約六百万人に波及いたしますし、民間の賃下げにも影響して、日本経済を悪化させ、財政破綻もひどくすることになります。しかも、国家公務員の労働基本権を憲法の定めに反して制限をしたままで、その代償措置である人勧をも、勧告さえ無視をするという点で、二重の意味で憲法に反すると言わざるを得ません。

 しかも、これは民自公三党の密室協議で突然議員立法として持ち出されまして、労働組合の代表の意見さえ聴取をしておりません。そして、参議院でいいますと、衆議院でまだ予算の審議がされている最中に閣法を審議するというこれまでにないやり方が行われておりまして、内容的にもやり方についても重大なものであります。

 まず大臣にお聞きいたしますが、副大臣時代の二〇一〇年十一月二十五日の当委員会で、人事院は労働基本権制約の代償措置だとした上で、人事院勧告を仮に無視してそれよりも引き下げるとなりますと、憲法上公務員も含めた労働者に与えられている労働基本権を制限していいのかという議論が当然出てくると、こういう答弁をされておりますが、この答弁からしますと、今回のこの給与削減というのは憲法に反するということになるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君=法務大臣)

 確かに、人事院勧告によらないで公務員の給与を引き下げるということになる、その一方で労働基本権をまだ付与していないとなりますと、やはり憲法上これは議論する必要があるというふうに思っております。今回の措置も、そうした議論する必要があるが、一方で国の財政、東日本大震災の復興という大変に大きな国家的な要請があるという状況も踏まえて、例外的な措置として行ったものであるということでございます。

 労働基本権の問題として議論する必要があるというこの必要性は、私は依然としてあることは当然の前提として、なおその上に立って、やはりそれを超える大きな国家的な必要性が生じておりますので、二年間程度の、二年間ですね、時限立法として、例外的な対応として行わさせていただいているということでございます。

井上哲士君

 国の財政や大きな震災があったからといって基本的人権をじゅうりんしてもいいということは憲法のどこにも私は書いていないと思うんですね。

 そういう大きな問題を持つこの国家公務員の給与削減法案を土台にして裁判官の報酬を削減するというのが今回の法案でありますが、最高裁はこの政府の法案についてどのような説明をいつ受けて、そして立法依頼をされたのか、改めて確認したいと思います。

最高裁判所長官代理者(安浪亮介君=人事局長)

 お答えいたします。

 昨年の六月の裁判官報酬法の改正案につきましては、六月の一日の裁判官会議に諮っております。したがいまして、政府案につきましてはその前に承知しております。

 それから、今回の議員修正に係る部分でございますけれども、これは、先週になりますか、先週の初めに法務省を通じまして概要を承知いたしました。それを踏まえまして、最高裁の中でも検討したという次第でございます。

井上哲士君

 修正部分について裁判官会議で確認をしたのは正確にはいつなんですか。

最高裁判所長官代理者(安浪亮介君)

 裁判官会議を開きまして、最高裁の裁判官方に御説明を申し上げましたのは二月の二十二日水曜日でございます。

井上哲士君

 午前ですか、午後ですか。

最高裁判所長官代理者(安浪亮介君)

 午後でございます。

井上哲士君

 衆議院の委員会で採決をされたのが午前中でありまして、その後追認をしたという形になっているんですね。

 初めて裁判官の報酬を引き下げた二〇〇二年当時の最高裁事務総長のコメント、先ほども紹介ありました。人事院勧告の完全実施に伴い国家公務員の給与全体が引き下げられるような場合に、裁判官の報酬を同様に引き下げても司法の独立を侵すものではないことなどから、憲法に違反しない旨確認したという裁判官会議の結論であります。

 大臣は、副大臣時代にこの趣旨について、単に公務員の給与全体が引き下げられるというような場面ということではなくて、一番大事な点は、人事院勧告完全実施に伴うという点も憲法に違反しないための要件と考えてよいかという質問に対して、私としても同じ考えだという答弁をこの場でされました。

 今回は完全実施じゃないわけですね。三十四倍引き下げるわけであります。大臣の当時の答弁に照らしますと、これは要件だということを同じ考えだと言われているわけでありますから、今回、やはり憲法に違反しないための要件を欠いているんではないでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 確かに、人事院勧告を踏まえるという大原則は私は変わっていないというふうに思っております。

 ただ、これからこの労働基本権付与の法案の審議という、その労働権付与に至る前のはざまのことでございます。そのはざまのことの中で例外的な時限立法として行う措置、そして、先ほども申し上げましたように、国家的な財政の問題、復興財源というこの緊急課題という状況の中におきましては、例外的な対応として許容されるのではないかというふうに思っております。

井上哲士君

 東日本大震災からの復興というのは、確かにこれは社会的要請だと思うんですね。しかし、その財源をどうやって確保するかというのが、これは極めて政治的な問題なんですね。

 公務員給与の削減というのは、内需を冷やして税収を悪化させる、復興財源確保にむしろ逆行するという指摘もあるわけですよ。そういう中で、あくまでも公務員を削って財源に充てるというのは、これは政府の政治的、政策的判断なわけですね。政府から独立した中間機関である人事院が官民較差について客観的な調査をして、その是正のために行う勧告とは全く性格が違うと思うんですね。

 ですから、時の政権の政策に沿って裁判官の報酬を引き下げるということはまさに司法の独立を侵すことになるんじゃないですか。

国務大臣(小川敏夫君)

 裁判官の判断が政権に都合が悪いからこれを引き下げるとか、あるいは司法全体に対してこれを政権に都合のいいような方向に向かせようというような意図であるわけではなくて、これはやはりそうした裁判官の判断、これはイコール司法の独立が担保されるという意味での司法の独立だと思うんですが、この司法の独立にかかわるような事情とはまた別の事情で今回例外的に行うわけでございますので、司法の独立を保障した憲法の趣旨には違反しないものと考えております。

井上哲士君

 やっぱり、時の政権の政策に沿って報酬を引き下げるというのは私は司法の独立を侵すと思うんですね。

 もう一つ、先ほどの最高裁裁判官会議のコメントからいいますと、人勧の完全実施に加えて憲法違反でないとする要件として挙げられたのが、国家公務員の給与全体が引き下げられるような場合と、こうなっているんですね。

 今回は、自衛隊については東日本大震災での労苦に特段に配慮するということで先延ばしになっております。ですから、全体の引下げではないんですね。しかし、震災の復興、救援というのは国家公務員全体が取り組んできました。自衛隊の派遣命令はもう解除されまして、被災地からはもう撤収しているわけですね。一方、震災復興での一般公務員の対応というのは長期にわたります。特に、司法とか法務に関する仕事というのはこれからむしろ増えていくわけですね。だから、どっちが救援、復興に貢献しているかなど比較できない問題だと思うんですよ。にもかかわらず、なぜ自衛隊だけはそういう措置をするのかと。

 大臣は、自衛隊員と比べて法務省の職員の労苦というのは配慮する必要がないと、こういう御判断でしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 確かに、委員御指摘のとおり、公務員全体がそれぞれの持ち場持ち場、それぞれの役職について、別に法務省にかかわらず、全ての公務員がしっかりと職責を果たしておるわけでございまして、これは大変に皆評価されるべき仕事をしているのだと思いますし、またこの震災復興に当たりましてもそれぞれの持ち場において努力をしているというふうに考えております。

 ただ、自衛隊員の場合には、やはり復興の現場に、まさに震災発災直後からその被災地の現場におきまして本当に体を張った大変な御苦労を自衛隊員の任務として行っていただいたということについて、特にその点についてはしっかりと対応すべきではないかという観点から行ったものだと承知しております。決して、ほかの公務員がその職責を果たしていないという趣旨では決してありません。

井上哲士君

 これは被災地の職員の方にも削減になるんですね。これ自体、私、復興に逆行すると思いますし、公務員給与の削減法案によりますと課長級以上は一〇%の削減になっておりますけれども、これは大体懲戒処分の水準なんですね。そういう懲戒処分の場合でも大体二ないし三か月だというふうにお聞きしました。今回は二年間削減するわけですね。

 人事院によりますと、例えば飲食後に部下にタクシー内でセクハラ行為をしたと、こういうケースでも十二か月の減給一〇%カットなんです。それを上回るような削減を行うということで、私は本当に法務省の職員の皆さんがこれからもっと頑張っていこうというモチベーションを保てるのかと大変疑問なんですけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 確かに、それぞれの公務員の方におきまして、やはり生活の糧の給与が下がるということは大変につらいものだということは重々承知しております。また、理解しておるところでございますが、しかし一方で、やはり国の財政の問題、大変厳しい状況にあるというときに、やはり公務員が先頭を切ってそうした財政問題に協力しよう、対応しようという姿勢も示していただけたら大変有り難いというふうに考えております。

井上哲士君

 労働組合との話合いも、この三党提出法案についてはされておりませんし、合意もしていないわけですね。にもかかわらず、こういうことをやる。いずれにしても、いろんな議論がある中で自衛隊だけは削減を先送りしたというのは、これもまた政府の政策的、政治的な判断によるものなわけですね。

 そこで、最高裁にお聞きしますけれども、今回の裁判官の報酬の引下げは、先ほどの紹介した二〇〇二年のときの事務総長のコメントで述べている人事院勧告の完全実施、それから公務員給与全体が引き下げられると、憲法に違反しないためといって挙げられた二つの要件をどちらも満たしていないと思います。そして、中立機関である人事院の判断とは違って、震災財源の在り方についても、それから一部の削減を先送りするということも時の政権の政策的、政治的な判断なわけですね。それに沿って裁判官の報酬を引き下げるということは、私は司法の独立にとって大変重大な問題だと思いますが、裁判官会議では、この点についてはどのような議論をし、結論を出されたのでしょうか。

最高裁判所長官代理者(安浪亮介君)

 お答えいたします。

 裁判官の報酬が憲法上保障規定が置かれているというその趣旨及び重みについては、私どもも十分承知した上でこの間対応してまいったところでございます。

 今回の議員修正に係ります裁判官の報酬の引下げの問題でございますけれども、政府における国家公務員の取扱いに沿った形で裁判官の報酬についても減額支給措置、それから人勧に伴う引下げ、これらを講ずるということにつきましては、了承がされたものでございます。

 これは先ほども申し上げましたけれども、あくまで司法行政事務に関する意思決定機関としての裁判官会議での結論でございます。憲法論も踏まえた上での検討の結果でございます。

 以上でございます。

井上哲士君

 よく分からないんですね。私、前回とは明らかに違うと思うんですが、そのことに対して真剣な検討がされたのかと。

 問題はこれにとどまらないんですね。今回の公務員給与の削減は、震災復興財源のためとされてきました。ところが、先日閣議決定をした社会保障・税の一体改革、この第二章で、「政治改革・行政改革への取組」として、消費税の引上げまでに、国民の納得と信頼を得るために以下のとおり政治改革、行政改革を目指すとした上で、衆議院の議員定数の八十の削減と、この給与臨時特例法案の早期成立を図ると、こういうふうに明記されているわけですね。

 つまり、公務員給与削減の法案というのは消費税増税の地ならしだと、国民の理解を得るためだという位置付けがここでされているんです。これは、昨年六月に給与削減法案を閣議決定したときとは違う中身が付け加えられているわけですね。こういうことになっているということは、法務省として最高裁にちゃんと説明をされたんでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 法案そのものは六月に閣議決定した内容でございます。その閣議決定した内容をしっかりこれを実現、実行することが消費税増税に対する一つの一里塚だという趣旨であると思います。

井上哲士君

 ですから、消費税の増税の地ならしのために公務員給与を削減をするということがこの閣議決定なんですよ。これに連動して裁判官の報酬を引き下げるということは、公務員の給与も下げました、裁判官の報酬も引き下げました、だから消費税の増税に理解してくださいと、こういうキャンペーンを張るんでしょう。

 これは、消費税増税というのは与党の中でも反対ありますよ。まさに国論を二分するような、まさに時の政権の政策、政治的判断ですよ。そのキャンペーンのために裁判官の報酬を引き下げると、こんなことで司法の独立守れるんですか。最高裁、いかがですか。

最高裁判所長官代理者(安浪亮介君)

 今、議員お尋ねのところは裁判所の所管することとは違いますので、ちょっとお答えは差し控えさせていただきます。

国務大臣(小川敏夫君)

 消費税の増税の地ならしのために今回のこの臨時的に給与を引き下げるんではなくて、昨年六月の段階でこうした例外的な対応として公務員給与を引き下げるという約束をした、そうしたことをしっかり行っていくことを約束したわけでありまして、消費税増税のためにこの引下げをやるということではなくて、特例的に引き下げるという約束をしたことをしっかりと実行するという趣旨でございます。ですから、ちょっと地ならしというのとはニュアンスが違うなと思っております。

井上哲士君

 しかし、この大綱の中に、消費税引上げまでに、国民の納得と信頼を得るためにこれをやるんだと書いているじゃないですか。だからあれでしょう、こんなまだ衆議院で予算の審議をしている最中に法務委員会開いて閣法を議論するなどという、今までやったことがないような強引なやり方でやっているのはこのためなんでしょう。これに基づいて裁判官の報酬を引き下げるというのは、私は、まさに司法の独立を侵すものでありますし、六月の説明には何もそんなことはなかったはずなんですよ。それを今になってこういうのを後付けをして、裁判官も下げたんだからと、これは私は絶対に許されないと思います。

 時間ですが、最後一点聞きますが、三党修正の関係で、先ほど答弁がありましたけれども、もし三党修正で裁判官を下げることができることになりますと、今回は横並びでしたけど、裁判官だけ更に引き下げるということも理屈上はあり得るという話になると思うんですが、これは私は、まさに一般公務員以上に削減するような修正が仮に行われるようなことがあったら、これは憲法に抵触すると思いますが、その点、いかがでしょうか。

国務大臣(小川敏夫君)

 そうした観点から慎重な議論が必要だというふうに思います。

井上哲士君

 私は、やはり憲法上の重大な問題がある国家公務員の給与の大幅削減と一体で時の政権の政策や特定政党の協議に基づいて裁判官の報酬を引き下げるということは更に憲法違反を重ねるものであって、到底容認できないということを申し上げまして、質問を終わります。

<討論>

井上哲士君

 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっております裁判官報酬法及び検察官俸給法の両法の改正法案に対する反対討論を行います。

 反対の第一の理由は、両法案は、日本経済を悪化させる上、二重の憲法違反である国家公務員給与削減法案と一体のものだからであります。

 国家公務員の給与を平均七・八%も大削減することは、民間労働者にも大きな影響を与えるなど、国民全体の所得減少の悪循環を招き、内需を冷え込ませ、財政の悪化をもたらします。さらに、東日本大震災の被災地の国家公務員からも例外なく給与を削減することは、復興に逆行するものにほかなりません。

 また、国家公務員の労働基本権が憲法の定めに反して制約されたままで、その代償措置としてとられた人事院勧告制度さえ無視して一方的な不利益を国家公務員に押し付けることは、二重の憲法違反にほかなりません。しかも、民主、自民、公明三党による密室協議による議員立法として持ち出され、労働組合の意見も全く聞かずに衆議院で強行されました。労働基本権の全面的な回復こそ、今、国会がやるべきことであります。

 第二の理由は、裁判官の報酬を時の政権の政策に沿って減額をするものであり、憲法七十九条、八十条に反するものであるからであります。

 これまで、裁判官報酬の減額について最高裁は、人事院勧告の完全実施に伴い国家公務員の給与全体が引き下げられるような場合は憲法違反でないとし、小川大臣も副大臣時代に、一番大事な点は人事院勧告完全実施に伴うという要件だと答弁をしてきました。

 しかし、本法案では、憲法の下で初めて人事院勧告を超えて三十四倍もの削減を時の政権の政策に沿って行うものであります。しかも、政府は、税と社会保障一体改革大綱の中で、公務員給与削減を消費税増税の地ならしと位置付けました。

 両案は、これと連動して裁判官の報酬も減額するものであります。まさに政策実現の手段として裁判官の報酬を引き下げるものであり、司法の独立を揺るがす極めて違憲性が強いものであり、到底賛成することはできません。

 以上、反対の理由を述べて、私の討論を終わります。

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