国会質問

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shitsumon201111.jpg・原爆症認定訴訟裁判で認定されているケースでも、厚労省が爆心地からの距離で機械的に切り捨てるなど司法判断とのかい離が広がり、民主党のマニフェストとも逆行していると迫った


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士であります。

 今日は、原爆症認定問題についてお聞きをいたします。

 私は、広島に育った被爆二世でもありますし、母校の広島国泰寺高校は平和公園のすぐそば、広島一中の先輩たちは多くが亡くなりました。そういう点で、核兵器廃絶と被爆者援護というのは私の原点でもあります。

 そこで、まず厚労大臣、お聞きいたしますが、原爆症認定の近畿訴訟で、三月九日に大阪地裁での判決が下りました。新しい審査方針の下での心筋梗塞による原爆症認定申請への却下処分を取り消しただけではなくて、原爆症の認定をせよと初めて踏み込んだ判決でありますけれども、どのように受け止めていらっしゃるでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君=厚生労働大臣)

 三月九日の大阪地裁の判決は、今委員がおっしゃいましたように、原告が原爆症認定申請却下処分の取消しに加えて原爆症認定の義務付けを求めたため、この点についても判断が示されたものだと考えています。

 国の主張が認められませんでしたので、大変厳しい判決だったという認識を持っています。

井上哲士君

 これは自公政権時代からの流れがあるわけですね。麻生総理と被団協代表の間で集団訴訟の終結のための確認書が取り交わされました。その際に当時の河村官房長官が談話を出しておりますけれども、これはどういう内容か。そしてまた、この確認書と談話を民主党政権も受け継いでいるということでよろしいでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 平成二十一年八月六日に、当時の麻生総理と被爆者団体代表との間で原爆症認定集団訴訟に関する基本方針に関する確認書が署名をされました。これを受けまして当時の河村官房長官が、裁判が長期化し、被爆者の高齢化、病気の深刻化などによる被爆者の方々の筆舌に尽くし難い苦しみや集団訴訟に込められた原告の皆さんの心情に思いを致し、これを陳謝いたします、この視点を踏まえ、この度、集団訴訟の早期解決を図ることとしたものでありますという談話を示されました。

 この内容につきましては、当然、現在の厚労大臣である私も基本的な認識を共有するところです。

井上哲士君

 この大阪地裁判決というのは、この集団訴訟の流れに沿うものであるわけですね。確認書とこの談話を受け継ぐということであるならば、私は、控訴は断念をして、高齢で重い病気に苦しむ原告に対する救済を図るべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 現在、判決の内容を詳細に検討し、関係省庁と詰めの今調整をしているところです。

 控訴期限があさって三月二十三日ですので、最終的な結論を出していきたいというふうに考えています。

井上哲士君

 この問題は、民主党政権の姿勢が問われております。民主党の〇九年のマニフェストでは、高齢化している被爆者を早急に救済するために被爆実態を反映した新しい原爆症認定制度を創設するとしております。つまり、現状は被爆実態を十分に反映をしていないということだと思いますが、具体的にどういうことなのか。また、この新しい認定制度の創設はどのように進んでいるのでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 それは、被爆者の方が高齢化をされているし、先ほどの談話にもありましたように、長い間苦しまれてきているので、何とかその認定を広げたいということで、私も普通大臣が会われる回数より多く被爆者の皆さんと会わせていただいたりしています。

 それで、今私の下で、原爆症認定の見直しについて、原爆症認定制度の在り方に関する検討会、これを開催いたしまして、既に現在まで九回議論をしていただいています。この検討会で、原爆症認定制度の在り方について、原爆放射線の健康影響に関する科学的な論議について、また行政の認定と司法の判断の乖離を踏まえた対応の在り方、そして財政負担の問題、こうした幅広い観点から総合的に御議論をいただいていますので、この議論をなるべく早くに取りまとめていただいて、一定の結論を出していきたいというふうに考えています。

井上哲士君

 確認書に基づいて開かれた第一回目の厚労大臣と被団協との定期協議の場で、当時の長妻大臣が、皆様が認定が緩和された、認定が変わったという実感を持つためには法律の改正が必要であると発言をされました。これを受けてその後のこの検討会の設置になったわけでありますが、つまり法改正も視野に入れて検討をしていると、こういうことでよろしいでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 それは委員がおっしゃるとおりです。

井上哲士君

 そうなりますと、この検討の核心というのは、司法とこの認定行政の乖離を正すというところにあるわけであります。

 原爆症認定の集団訴訟では、三百六人の原告のうち九割以上が勝訴をいたしました。その過程で厚労省は認定基準を緩和をして新しい審査の方針へ改定をしたわけですが、この新しい審査の方針の概要を、当局で結構ですので、お述べください。

政府参考人(外山千也君=健康局長)

 原爆症認定につきましては、平成二十年四月以降、新しい審査の方針により審査を行っているところであります。

 新しい審査の方針では、放射線起因性の判断につきまして、被爆地点が爆心地より三・五キロメートル以内である者、それから原爆投下より約百時間以内に爆心地から約二キロメートル以内に入市した者などの被爆要件を満たし、さらに悪性腫瘍や白血病など七つの疾病に罹患している場合、積極的に認定することとしております。

 また、積極的に認定する範囲に該当しない方については、申請者の被曝線量、既往歴、環境因子、生活歴などを総合的に勘案して判断していただくこととなっております。

 また、要医療性の判断につきましては、疾病の状況に基づき個別に判断しているところでございます。

 なお、この新しい審査の方針に基づき、平成二十年四月から平成二十三年十二月までに八千八百二十五件を認定しております。

井上哲士君

 放射線起因性が認められるという文言はありますけれども、七つの疾病については積極認定をし、それ以外も被爆状況などを総合的に勘案をして認定をするというものです。

 司法判断に沿って積極的に運用をすれば、被爆者の救済につながるものであります。しかし、やはり厚労省は消極的な認定を、態度を変更していないんですね。

 資料一を見ていただきたいんですが、政権交代のあった二〇〇九年九月以降、この認定の大量却下が急増をしております。結果として、二〇〇八年度は認定二千九百十九、却下六十二でしたけれども、二〇一〇年度は認定千四百三十五、却下は五千と、こういう数になっているわけですね。

 司法と認定行政の乖離がむしろ増していると私は思いますが、これ、マニフェストと逆行しているんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 今の新しい審査の方針につきましては、これは被爆者援護法に基づいて科学的に許容できる限度まで疾病等の範囲を拡大して策定されたもので、被爆者の立場に立って認定を行うということになっております。

 ただ、御指摘のような状況もございますので、私もそこのところは、もう少し司法との乖離もしっかりと埋めていくためにどういう形ができるかということを、今被爆者の代表の方にも入っていただいている検討会で議論をいただいているので、それをなるべく速やかに結論を出していただきまして、前向きに検討させていただきたいと私は思っています。

井上哲士君

 今後の検討をしていく、これは早くやる必要がありますが、しかし、現にこれは行われている問題なんですね。そして、それが不服でまた訴訟を起こさなくてはならないという人が出ている問題であります。被爆者には時間がありません。これ、直ちに改善することが必要なんですが。

 表二を見ていただきたいんですが、この新しい審査方針で積極認定とされている中で、この白内障以下のがん以外の疾病に対する認定率が極度に低いんです。

 更に見ますと、表三を見ていただきたいんですが、これは裁判の結果を原告ごとにまとめたものであります。マルやバツが付いたものは勝訴、敗訴という結果でありますけれども、表三、白内障の場合は、裁判ではこの三・一キロ爆心地から離れた地点で被爆した方でも認定された場合があります。では、この新しい審査の方針が実施されて以降、白内障で一・四キロを超えた場所で被爆して認定されたケースはあるでしょうか。

政府参考人(外山千也君)

 原爆症認定申請に係る処分状況につきましては、平成二十二年四月から平成二十三年十二月までの審査の状況を厚生労働省ホームページに公表しているところでございます。公表している審査結果の中で、一・四キロメートルを含めますと二件ございますけれども、一・四キロメートルを超えてということではございません。ただ、御指摘の白内障は加齢や糖尿病などの持病による発症も多く、分科会におきまして申請者の被爆状況や既往歴、環境因子、生活歴などを総合的に勘案しまして一件一件個別に審査しているところでございます。

 なお、新しい審査の方針が始まりました二十年四月から二十二年三月までにつきましては一・四キロを超えてというものもたしか若干あったと思いますけれども、今手元にデータを持っておりません。

井上哲士君

 裁判も、総合的に判断したけれども、こういう距離も含めて認定をしているわけですね。

 では、次に表四を見ていただきますが、これは心筋梗塞の場合であります。裁判の場合は三・八キロを超えた場所で被爆された方も認定をされておりますが、では、新しい審査方針で爆心地から一・五キロを超えた場所で被爆して認定をされたケースはあるでしょうか。

政府参考人(外山千也君)

 先ほどの白内障と同じく、ホームページに公表しております時期の平成二十二年四月から二十三年十二月までの間の審査の状況でございますけれども、公表している審査結果の中で、一・五キロメートルを超えてということではございませんけれども、一・五キロメートル以遠ということで一・五キロを含むのでございますれば四件ございます。なお、先ほどの白内障と同時に、御指摘の心筋梗塞は喫煙や高血圧症、糖尿病などの持病により発症する場合も多く、分科会におきましては申請者の状況を個別個別に審査を行っているところでございます。

井上哲士君

 一・五キロを超えた場合はないということであります。

 では、表四と五を併せて見ていただきますと、この白内障、心筋梗塞、いずれも裁判では入市被爆者も認定をされております、被爆後に広島市内や長崎に入った人。では、新しい審査方針で、この白内障、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎、肝硬変、こういう患者で入市被爆をして原爆症に認定をされた被爆者はいるでしょうか。

政府参考人(外山千也君)

 平成二十年四月から平成二十三年十二月までの審査結果の中で入市被爆だけで被爆者健康手帳を取得されている方のうち、白内障、心筋梗塞、甲状腺機能低下症、慢性肝炎、肝硬変を認定された方はいらっしゃいませんが、先生の資料のその五ページにあります、四日後に〇・七キロメートルに入市、一・三キロメートルで直爆というふうに書いてあるような、原爆投下時に三・五キロメートル以内で被爆し、投下後四日以内に入市した方を数えるのであれば八名の方が認定されております。

 以上でございます。

井上哲士君

 つまり、それはほかの基準でありますから、入市被爆の場合には結局これは認定をされていないんです。ですから、私はこれは明らかに司法の判断と乖離をしていると思うんですね。個々のケースを総合的判断と言われましたけれども、それをやった結果、裁判ではいろんなケースが出ているんです。

 しかし、今の厚労省の認定行政では、明らかに一・五キロとか一・四キロメートルという距離で線引きをして切り捨てています。そして、入市被爆の場合は一切認めないと、こういうふうにしているから大量の却下になっているんじゃないでしょうか。この点、厚労大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 今いろいろと具体的に御指摘をいただきましたけれども、司法と今の認定が乖離をしていることには、冒頭申し上げたように私も強い問題意識を持っています。

 この問題は私自身も野党のときから取り組ませていただいていますので、先ほど申し上げた有識者の検討会、被爆当事者も入っていただいていますが、これの結論を今急がせています。なるべく早くに結論を出してその乖離を埋められるように最大限の努力をしたいというふうに思っています。

井上哲士君

 明らかに司法判断に反する機械的線引きをしているわけですね。ですから、今、新しい審査方針の下での判決でも八割以上国側が敗訴しておりまして、集団訴訟の敗訴が九割でありますから、同じような傾向になっているわけですね。

 なぜこんなことになっているのかと。結局、初期放射線量の被害だけを問題にして残留放射線の影響を無視するという姿勢が続いているということ、そして、この数字で示されたいわゆる科学的知見にしがみついて被害者救済の立場に立っていないということにあると思うんですね。

 科学的な知見というのは未解明な部分が多いということを前提にして、科学的知見がないからといって切り捨てるのではなくて、いろんな社会的、経済的、そういう状況を勘案をして救済するという立場で被害者、被爆者に寄り添っていくと、こういう方向への見直し、これが求められていると思いますが、大臣、いかがでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 私も日ごろから委員がおっしゃる趣旨で事務方に指示をしております。

 そういう意味で、今、かといって私が独断で何かをするわけにはいきませんので、今行っている検討会を急がせておりますので、なるべく早くその結果を得て、私もおっしゃる趣旨で、もう本当に、御高齢で長い間そういう苦しみを抱えていらした方は本当にできるだけのことをしなければいけないと私自身も思っていますので、可能な限りのことをさせていただきたいと思っています。

井上哲士君

 その検討会で、被団協などはもう原爆症認定制度そのものの見直しも提案をされておりますし、医療分科会の委員からも、放射能起因性に固執せずに、被爆者手帳を持っているということは被爆者として国が認めたんだから、原爆起因性という考え方もあるじゃないかと、こういうふうな発言もされておりますし、現行の月額十三万七千円の医療特別手当と三万四千円の健康管理手当のこの間のものもあるんじゃないか、様々な提案がされております。

 こういう認定制度そのものの見直しまで踏み込むべきではないかと思いますが、この点はいかがでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 今委員御指摘のその被団協の方からの御提言についても、これは真摯にしっかりと検討させていただきたいと思います。

井上哲士君

 ところが、第九回の検討会に当面の議論のポイントというものが出されました。これを見ますと、原爆症認定制度を前提とした場合の認定基準についてと、こういう項目になっておりまして、認定制度そのものを見直そうという、こういう様々な被団協の提案も含めたものはポイントから外れているんですよ。何でこんなことになっているんですか。

政府参考人(外山千也君)

 第九回はまだ論点のポイントを示しただけでございまして、先生御案内のように、被爆者援護制度というのは放射性の起因性というのを重要視しておりまして、これが他の戦争被害との違いであるということでございます。

 ただ、今大臣が答弁しましたように、被団協の御要望もあるということでございまして、第十回に向けまして様々な論点から深くまた検討してまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 第九回目のポイントでその問題は外れていたということは、大臣は御存じだったんでしょうか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 事実関係から申し上げますと、その被団協の委員から資料が提示されて説明をされたのがこの第九回なので、第九回に当初、その説明を伺う前に事務方が用意したペーパーが先ほど御指摘のものだったというふうに思っています。

 御説明を受けて、私もこの御提言をしっかりと真摯に受け止めて、そうしたことも含めて検討するように言っておりますので、そういう方向でやっていきたいと思っています。

井上哲士君

 同趣旨の発言はそれまでもいろんな委員から出ているんですね。ですから、そういう議論を意図的に外したというのが私は九回目の役人が作ったポイントだと思うんですね。ですから、裁判でどんなに連敗しても消極的な態度を変えない、そして検討会でいろんな議論があっても、もう法改正はせずに現行制度の微調整に終わらせようという、こういう私は一貫した厚労省のずっとこの行政の問題が今出ていると思うんです。

 これを突破するのが本当に私は政治主導と言われたことのやることだと思うんですね。それ、よろしいですか。

国務大臣(小宮山洋子君)

 それは財政的な問題もございますけれども、そこを乗り越えて、今回、被団協の皆様などからの御要望も踏まえて、事務方だけではなくて、政務の中でも藤田政務官を担当に充てて窓口にしておりますので、そこはしっかりと政治主導でやっていきたいというふうに思います。

井上哲士君

 政権交代後に全会一致で成立した基金法の附則には、認定制度の在り方について検討し、必要な措置を講ずると、こうしているわけでありまして、これは見直しができないのはねじれのせいだと、こういうことではないんですね。まさに消極認定にしがみつくこれまでの厚生行政を変えないのなら、政権の本当に在り方が問われると思います。

 最後に、もう一度、本当に被爆者の願いに寄り添って、大臣自身も十一月に被団協との定期協議会でお話聞かれていると思います。それに寄り添ってやるということで最後御決意をいただきたいと思います。

国務大臣(小宮山洋子君)

 少しでも御高齢な被爆者の皆様に寄り添ってできるように最大限努力をしていきたいと思います。

井上哲士君

 終わります。

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