国会質問

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法務委員会

shitsumon201111.jpg・アスペルガー症候群など障害をもつ刑務所退所者支援や裁判所での障害特性の研修強化などを求めた


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 裁判所職員定員法の一部改正案は賛成であります。一層の人的、物的な体制の充実を求めたいと思います。

 今日は、アスペルガー症候群を有する四十二歳の男性が実の姉を刺殺した殺人事件の判決に関連して質問をいたします。

 大阪地裁において七月の三十日に、検察官の求刑十六年を超える懲役二十年の判決が言い渡されました。この判決に関して、刑法原則に反する、差別を助長する、発達障害者への支援を社会全体の問題としてとらえていないなど、多くの団体から批判の声が上がっております。私が見ただけでも、日本自閉症協会、日本発達障害ネットワーク、全日本手をつなぐ育成会、日本発達障害福祉連盟、全国児童発達支援協議会など障害者関係団体、日弁連や京都、大阪の弁護士会などの声明が出されております。

 最高裁としては、こういうことをどのように承知をされているんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(植村稔君=最高裁判所事務総局刑事局長)

 お答えをいたします。

 今委員御指摘のように、この大阪地裁の判決に対しまして、複数と申しますか、それ以上、全体を私ども把握できているかどうかちょっと自信はないのでございますが、障害者団体の皆さんから声明文が発表され、あるいは弁護士会から、声明文なのかどうかちょっと確認はできませんけれども、文書が出されていることは承知をしております。

井上哲士君

 これらの声明が批判している一つは刑法上の問題であります。精神障害ゆえに再犯可能性があることを理由に重い刑罰を科すことは責任主義の大原則に反するということ、それから、社会防衛のために許される限り長期間刑務所に収容すべきだという考え方は保安処分を刑罰に導入することにほかならないと、こういう批判であります。もう一つは、発達障害の特性や発達障害者支援法成立後の支援体制の現状についての知識や理解が余りにも不足しているんじゃないかという点であります。今日はこの点をただしたいと思うんです。

 まず、判決は、被告人が十分に反省の態度を示すことができないのはアスペルガー症候群の影響があると認める一方で、十分な反省のないまま被告人が社会に復帰すれば同様の犯行に及ぶことが心配されるとしました。これに対し、例えば日本発達障害ネットワークの声明は、相手の感情や空気を読み取ることが苦手で、自ら深く反省する気持ちがあってもそれを表現することがうまくできないことがある等の発達障害の障害特性に対する適切な検討がなされていないと批判をしているわけであります。

 先ほども裁判官、判事の幅広い視野とか知識ということが問題になったわけでありますが、最高裁ではこの最新の知見に基づく発達障害の障害特性や、それらに対する対応についてはどのような研修をされてきたんでしょうか。

最高裁判所長官代理者(植村稔君)

 精神障害やそれを持った方々の刑事責任能力、これは非常に難しい問題でございます。そこで、司法研修所におきます刑事担当裁判官の研究会、それから各地裁で行っている研究会で取り上げております。

 まず、司法研修所の研究会でございますが、カリキュラムの中で責任能力を取り上げております。本年六月に実施いたしました研究会におきましては、責任能力についての判断、これいろいろ検討したようでございますが、その中で具体的な事件としてアスペルガー症候群を取り上げて、講師である精神科医の先生からアスペルガー症候群の特性等についてのお話も伺った上で裁判官と質疑応答を行ったというふうに聞いておるところであります。

 それから、各地方裁判所でございますが、これは鑑定に関する研究会ということで、精神鑑定だけではなくてDNA鑑定なども対象になるのでございますが、その中で精神障害それから発達障害を取り上げることもあるようでございまして、二十一年度にはこれは一つの地裁しかなかったわけでございますが、二十二年度には三地裁、二十三年度には五地裁が発達障害ないし発達障害と他の精神障害併せて取り上げております。精神科の先生に講師をお願いいたしまして、例えば発達障害の基本的なメカニズムでございますとか行動特性等についてのお話を伺って、その後、裁判官との間で質疑応答を行っていると承知をいたしております。

井上哲士君

 地裁で始まったのは平成二十一年だということだと思いますが、足しましても九地裁でありまして、私は極めてこれは不十分だと思います。

 さらに、各声明は、この発達障害者の社会の受皿の現状に対する認識が、これまた余りにも適切でないと批判をしております。

 判決では、社会秩序の維持のために許される限り長期間刑務所に収容すると、こういうふうにしているんですね。その理由として、社会内に被告人のアスペルガー症候群に対応できる受皿が何ら用意されていないし、その見込みもないと断定しているわけであります。十六年たってもそれが整備されないと断定をしたわけですね。これ、本当かと。

 二〇〇四年には発達障害者支援法が成立をいたしました。二〇〇九年には、これは法務省、厚労省が一体になりまして、矯正施設の退所者のうち発達障害を持つ者や高齢者など、特別の調整が必要な者の円滑な社会復帰と再犯防止の観点から地域生活定着支援が始まっております。

 まず、保護局長からその概要について述べていただきたいと思います。

政府参考人(青沼隆之君=法務省保護局長)

 高齢や障害のある刑務所出所者等につきましては、社会復帰に著しい困難があり、これも一因となって刑務所に再入所する者の割合が高いという状況でございます。これらの者の円滑な社会復帰に向けた取組を推進することは再犯防止の観点からも極めて重要であるというふうに認識しております。

 そこで法務省は、高齢や障害により特に自立が困難な刑務所出所者等について、平成二十一年度以降、厚生労働省の事業として各都道府県が設置している地域生活定着支援センターと連携し、釈放後に必要な福祉サービスにつなげるために特別な手続である特別調整という取組を行っているという現状でございます。

井上哲士君

 その特別調整に基づいて矯正施設から退所をされた発達障害者にどういうふうな支援が行われているのか、またそれが、どういう体制が充実整備されてきているのか、保護局それから厚生労働省、それぞれ御答弁いただきたいと思います。

政府参考人(青沼隆之君)

 保護観察所でございますけれども、まず矯正施設から特別調整の候補者の連絡を受けます。その候補者に、まず高齢あるいは身体障害、知的障害若しくは精神障害があるかどうか、あるいは二点目としては釈放後の住居が定まっていないかどうか、三点目は福祉サービス等を受ける必要があるかなど、自立が困難であると認めたときには、その候補者から同意書を徴取いたしまして、特別調整の対象者として選定しております。そして、保護観察所はその所在地の都道府県に設置されている地域生活定着支援センターの長に対して協力を求めます。そして、必要な福祉サービスにつなげるための調整を開始すると、こういうことをやっております。

 ちなみに実績でございますけれども、平成二十三年度においては、特別調整対象者二百七十四名について福祉施設等への入所等の必要な福祉的支援を確保したという現状でございます。

政府参考人(西藤公司君=厚生労働大臣官房審議官)

 お答えいたします。

 先ほどとダブるところもございますが、高齢又は障害により支援を必要とする矯正施設退所者が退所後に直ちに福祉サービスにつながるよう障害者手帳の発給や社会福祉施設への入所等の調整を行う地域生活定着支援センターでございますが、この設置を平成二十一年度から進めてまいりまして、平成二十三年度には全ての都道府県で設置が完了いたしました。その結果、より効果的、広域的な全国調整を行う体制が整ったところでございます。

 具体的には、アスペルガー症候群の方を含め障害を有する方々につきましては、保護観察所から特別調整の依頼があればセンターから直ちに矯正施設に出向き、本人のニーズ等を把握した上で、保護観察所などと連携しながら障害者手帳の取得支援やグループホームなどの社会福祉施設への入所あっせんなどの福祉サービスの利用支援を行いまして、退所後の帰住先の確保に努めております。

 この事業につきましては、今年度更に国庫補助額を増額いたしまして、地域生活支援センターの職員の増員並びに相談支援等の継続的なフォローアップ機能の強化をいたしたところでございます。

井上哲士君

 関係者の努力でこの支援が拡充をしていっていることが大変明瞭になったと思います。

 じゃ、一方、刑務所の中ではこの発達障害を持つ受刑者が反省を深められるような特別な改善指導というのは行われているんでしょうか。

政府参考人(三浦守君=法務省矯正局長)

 お答えいたします。

 受刑者の処遇につきましては、その者の資質等に応じ、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図るということを旨として行うものとされております。

 発達障害を有する受刑者に関しまして、例えば三つのPFI刑務所におきましては精神障害等の障害を有する者を収容する専門の特化ユニットを設けておりまして、障害と向き合いつつコミュニケーション能力の向上等を目的とするプログラムを実施しておりまして、発達障害を有する受刑者につきましてもその対象となっているところでございます。

 また、その他の一部の刑務所におきましても、発達障害に限らず対人関係に困難があるとされる受刑者に対しまして、社会生活技能訓練等を実施して、家庭、職場等で円滑な人間関係を維持するために必要な処遇を行っているところでございます。

 さらに、施設内で不適応状態になるといった問題がある場合には、心理の専門家であります調査専門官等が面接を実施したり、処遇カウンセラーがカウンセリングを実施したりしているところでございます。

 以上でございます。

井上哲士君

 今言われたプログラムというのは、大体一回どのぐらいの期間やられるんでしょうか。

政府参考人(三浦守君)

 先ほど申し上げましたPFIの特化ユニットにおきましては、そういった障害を持っている者を収容いたしまして、それぞれの障害に応じたプログラムを持っているものでございまして、一概にどこでどのくらいの期間というふうに申し上げるのは、一まとめに言うのは困難でございますが、それぞれの状況に応じてプログラムを作って対応しているというところでございます。

井上哲士君

 昨日お伺いしたところでは、三か月とかいうのが一般的だというお話を聞きました。つまり、二十年間そこにおらせても、何ら反省が深まるようなことは矯正施設の中では用意されていないんです。一方、ちゃんと社会の受皿は整備されているわけですね。

 法務大臣にお聞きしますけれども、一般論でお聞きします。社会に、アスペルガー症候群に対応できる、そういう矯正施設から出た人に対応できる受皿が何ら用意されていないし、これからの見込みもないと、こういう認識は私は現状と食い違っていると思いますけれども、法務大臣はいかがお考えでしょうか。

国務大臣(滝実君=法務大臣)

 基本的に、刑事施設その他におきましては、最近の傾向として、できるだけ厚労省の社会福祉に結び付ける、そういう努力を出所の直前からやっているということも御紹介をさせていただいております。そんなことをやはり委員が評価をされているんだろうというふうに思っております。

井上哲士君

 いや、受皿が何ら用意されていないと、こういう認識ですか。

国務大臣(滝実君)

 受皿は、用意されるような努力をしているということであります。

井上哲士君

 厚労省はいかがですか。

政府参考人(西藤公司君)

 先ほど申し上げました地域生活定着支援センターも、各都道府県に設置し、充実させてきております。また、発達障害者支援法が平成十七年に施行されまして、それに基づきます発達障害者支援センターにおきましても、各都道府県、政令指定都市に設置されまして、アスペルガー症候群を含めた発達障害のある方への専門的な発達支援や就労支援などの取組も行っております。また、受皿という観点では、特に矯正施設退所者については、グループホームなどでの受入れの推進が進むよう特別加算という取組も行っているところでございます。

 私どもといたしましては、こうした地域生活定着支援センターが各機関あるいは地域での連携をしながら矯正施設退所者の地域定着が更に促進するよう取り組み、充実していく必要があるというふうに考えております。

井上哲士君

 受皿が何ら用意されていないし見込みもないという判決の認識は私はやっぱり間違っているということが今明らかになったと思います。控訴審で事実に即した適切な判決がされることを信じております。

 法務省や厚労省には発達障害者への支援の充実を更に進めることを求めたいし、最高裁にはその特性や、そして今の支援の状況についての周知徹底をしっかり図ってもらいたいと求めまして、質問を終わります。

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