国会質問

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法務委員会

shitsumon201111.jpg・民事訴訟での障害者の裁判を受ける権利の保障について質問。障害者に対する配慮をすすめるための研修の拡充、視覚障害者への点字文書の送付の拡充、手話通訳者の費用を裁判所が負担することなどを求めた


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 障害のある人の裁判に参加する権利についてお聞きをいたします。

 現行の民事訴訟の手続に、障害のある人が訴訟当事者になった場合を想定した規定がほとんど存在しておりません。そのために、障害のある人が十分な訴訟活動を行うことが非常に困難になっております。民事訴訟の手続というのは健常者にとっても非常にハードルが高いわけでありますが、書類を自由に読み書きできない視覚障害者や、難解な書類の内容を理解しにくい知的障害者の方など、民事訴訟を利用することは極めて困難になっております。

 一方、二〇一一年に施行された障害者基本法は、第二十九条で司法手続における配慮等を定めております。国又は地方公共団体は、障害者が、裁判所における民事事件、家事事件若しくは行政事件に関する手続の当事者その他の関係人になった場合において、障害者がその権利を円滑にできるようにするため、個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段を確保するよう配慮するとともに、関係職員に対する研修その他必要な施策を講じなければならないと、こう定めております。

 まず法務大臣と最高裁にお聞きいたしますが、この基本法の制定を受けて、どのような配慮、施策が行われてきて、かつ、現状についてはどのように認識をされているでしょうか。

最高裁判所長官代理者(永野厚郎君)

 お答えいたします。

 最高裁判所としましては、障害者基本法の改正を受けて、裁判所職員に対して法改正の趣旨及び内容を周知するとともに、各種研修において法改正について触れるなどして、裁判所職員の意識の向上を図っているところでございます。

 各裁判所においては、個々の障害者の特性に応じた意思疎通の手段を確保するよう配慮するという法改正の趣旨を踏まえて、事案に応じた適切な配慮が行われつつあるものというふうに認識しております。

国務大臣(谷垣禎一君)

 今、最高裁の方でやっておられることは御答弁がございました。そういう形で障害者基本法を周知徹底させるということをやっていただいているわけですが、それに加えまして現行の民事訴訟法におきましては、当事者あるいは証人等々、口頭弁論に関与する者が、耳が聞こえない方とかあるいは口が利けない、そういうことで口頭弁論において陳述していくのに支障が、差し障りがある場合、これは裁判所のお仕事なんですが、裁判所は通訳人を立ち会わせて口頭弁論を行わなければならないというふうになっております。

 それから、当事者が難聴であるとか言語障害、あるいはもう御高齢である、それから知能が十分ではない、こういうような十分な訴訟行為をなし得ないような場合に、これも裁判所の許可を得て、補佐人と一緒に出頭することができるというふうになっておりまして、こういうものを適宜適切に、個々の障害者の訴訟行為ができるように適切に配慮していくということを更に努めていただいていると考えております。

井上哲士君

 最高裁からは行われつつあると、こういう答弁でありましたから、まだまだ不十分だということだと思うんですね。

 今、民事訴訟法の第百四十八条第一項で裁判長の訴訟指揮の範囲で様々な配慮が行われておりますが、やはり個々の裁判体の判断による訴訟指揮の範囲になっているわけで、その裁量によって当該当事者が十分な訴訟活動を行うことができないという事態もいろいろ聞いております。裁判所規則でもう少し明確に裁判所が行うべき具体的な合理的配慮の規定を設けるべきだと思うんですが、その点いかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(永野厚郎君)

 お答えいたします。

 合理的な配慮につきましては、やはり個別事案ごとに異なり得るものでありますから、規則によって画一的に訴訟指揮を拘束するということは必ずしも相当ではないのではないかと。また、それらを網羅的に規則に書き込むこともなかなか困難ではないかというふうに考えております。

井上哲士君

 それはやり方、規定ぶりだと思うんですよね。現実でいうとやはりまだまだ十分な配慮がされていないわけですから、きちっとできるようにする上で、私は是非この合理的配慮の規定についてできる限り具体的なものを設けることが必要だと思うんですが。

 その上で具体的にいろいろ聞きますが、先ほど研修のことがございました。事前に資料をいただきますと、新任の判事補研修や新任の部総括、支部長の研修会で、それぞれ法務省の人権擁護局長や学者やマスコミ関係者が人権問題とか国際人権規約等についての講演をされております。国際的な潮流についてもっともっと研修を深めていただくことは必要だと思います。

 書記官の養成課程では、民事特別講座として法務省の人権擁護局による障害者への配慮の講義などが行われるとともに、グループ別の総合演習として病院やホテル、社会福祉法人などの施設の訪問を通じてテーマを深める取組をやっているとお聞きしましたが、ただ、この過去五年間で社会福祉法人を見学先にしたのは二十四年度だけだったとお聞きしておるわけで、やはり障害者への配慮を学ぶという点ではまだまだ極めて不十分だと思うんです。

 そこで、障害を持つ当事者を講師にしたり、それから当事者団体との意見交換を行うとか、こういうことによって具体的、合理的配慮の中身とか実施方法についてもっともっと研修を深めることが必要だと思うんですが、そういう当事者との意見交換など、いかがお考えでしょうか。

最高裁判所長官代理者(永野厚郎君)

 お答えいたします。

 ただいま委員の方から御紹介ございましたように、研修につきましては、裁判官の研修を担当しております司法研修所、裁判官以外の裁判所職員の研修を担当しております裁判所職員総合研修所あるいは各裁判所において、障害者に関する研修も含めてどのような研修をどのようなテーマで実施するのがよいのかといった点について試行錯誤しながら今研修を計画、実施しているところでございますので、委員からの御指摘も踏まえて引き続き検討してまいりたいというふうに考えております。

井上哲士君

 これは本当に当事者じゃないと分からないことがたくさんあるんですね。是非これは実現をしていただきたいと思います。

 視覚障害者や知的障害者への配慮なんですが、訴状の送達を受けても、それが訴状であることを認識できないまま送達の効力が発生をして欠席裁判が行われて、さらに、送達された文書が判決文であることを知らないまま控訴期間が経過をし確定してしまうと、こういう事態も起こっておりますし、二〇〇二年に通達を出されて、裁判所が必要と認める場合は点字文書を交付、送付するという便宜供与を図ることとされておりますけれども、その後どのぐらいこの便宜供与が行われているのか、いかがでしょうか。

最高裁判所長官代理者(永野厚郎君)

 お答えいたします。

 御質問のあった点訳判決等の件数についてでございますけれども、最高裁の方としまして判決書の点訳書面を交付した事例について一律に報告を受けているものではございませんので、ただいま御紹介のあった報道で紹介されている以外に、こちらの方で把握しているというところはございません。

井上哲士君

 二〇一二年の九月に名古屋地裁で点字の判決文がありましたが、これが全国二例目という報道だったわけで、本当にごく一部に、特に判決にはとどまっておるわけで、これも是非もっと広げていただきたいと思います。

 さらに、聴覚障害者への配慮ですけれども、先ほどいろんな通訳の配置はできるということでありますが、この費用負担ですね。まず、手話通訳や要約筆記の扱い及びその費用負担、これはどうなっているでしょうか。

最高裁判所長官代理者(永野厚郎君)

 お答えいたします。

 一般的に手話通訳は、民事訴訟法百五十四条一項本文の通訳人に該当するというふうに解釈をされておりまして、通訳人の通訳料は民事訴訟費用等に関する法律によって当事者が負担すべき費用とされております。そして、この民事訴訟費用等に関する法律は強行法規というふうに解釈されておりますので、裁判所でその支払を任意に免除することはできないと、そういうことでございますので、当事者が一旦その費用を予納された上で、その上で、最終的には、費用の負担は原則として敗訴した当事者が負担するという扱いになっております。

井上哲士君

 これ、手話通訳というのはかなり負担でありまして、一日で三、四万掛かる場合もあるとお聞きをいたしました。ですから、民事訴訟に踏み切る、場合によっては自分が負担しなくちゃいけないということになりますと、非常に高いハードルになっておりまして、実質的にやっぱり裁判を受ける権利が阻害をされていると思うんですね。

 全日本ろうあ協会のアンケート調査では、回答した九百七十一市町村のうち、手話通訳の派遣事業の実施率は約八三%です。そのうち、九三・八%は利用料を徴収をしておりません。これは、コミュニケーションに受益ということを求めるのは無理があるという判断だと思うんですが、一方、この派遣の範囲にいろいろ差がありまして、医療や官公庁の手続は約八割五分が対象ですが、裁判や警察関係は六六・三%しか対象になっていないので、三分の一は対象外なんですね、地方自治体の支援についても。それから、県外派遣を認めないというのも四二・七%ありまして、住んでいる地域によって、またその裁判を受ける場所によって、通訳の派遣料の負担に大きな差が出ておりまして、これは裁判を受けるところに格差が生じております。

 これ、民事訴訟法で訴訟費用の負担になるということでありますけれども、こういうやっぱり格差というものを是正をするということを考えますと、この民事訴訟法の改正ということも含めて配慮をすることが必要かと思うんですが、この点、大臣いかがでしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)

 今、最高裁から御答弁がありましたように、手話通訳は当事者負担で、敗訴者が負担するのが原則だと。ただ、今委員のお問いかけは、事前に納付したりいろいろ負担もあるんじゃないかということだと思いますね。

 それでもう一つ、要約筆記というのがございまして、やっぱり普通の筆記なんかではよく、うまくいかない場合には、口頭弁論における口頭のやり取りを要約筆記者がパソコン等で分かるようにしていくと、これは訴訟費用には当たらないと、これは国が負担するということになって、そういう扱いになっていると思います。

 そこでさらに、今の御趣旨は国が国費で負担する制度をもっと拡充すべきではないかという、そういう御趣旨だと思うんですが、障害者が訴訟上もその権利を行使できるようにそれぞれに応じてどうしていくかということは、相当これから考えていかなきゃならない面が一つはございます。

 しかし、他方、民事訴訟は私人間の紛争を解決するものだというのもございまして、だから手続に要する費用は普通は当事者負担となって敗訴者が負担するということになっているわけですが、手続を利用する人と利用しない人の公平をどう図っていくかという観点ももう一つあるように思います。

 そこらをどうしていくかというのは非常に難しい検討が必要ではないかというふうに感じます。

井上哲士君

 例えばアメリカでは、障害のあるアメリカ人に関する法というもので、障害のある当事者が、州の裁判所や地方裁判所を含むあらゆる州政府及び地方政府の機関の提供するプログラムや活動への参加を否定するということを禁止しておりまして、その一環として、州裁判所や地方裁判所がその費用によって配慮を行うべき旨を規定をしております。その上で、一九七八年の法廷通訳法というのがありまして、連邦裁判所が、一定の要件の下で、聴覚障害のある訴訟当事者や証人等のための手話通訳等の費用を公費で負担しなければならないという規定をしているんですね。

 先ほど、利用した人としない人の不公平感みたいなお話がありましたけど、これは裁判にそもそも参加する、その手続に入る前のハードルになっているわけですよ。ですから、私はやっぱりいろんな障害を持っている方が裁判手続というものを選ばれる自体が障害になっているということは、基本法の精神からいっても、また障害者の権利に関する条約の精神からいっても、これはやっぱり賄っていくということは国際的にも大きな流れだと思うんですね。

 難しい検討と言われましたけれども、前向きの検討を是非お願いしたいと思いますが、改めていかがでしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)

 その辺、いろいろまた状況をよく見て考えていきたいと思います。

井上哲士君

 これはアメリカだけではなくて、韓国でも、二〇〇七年の三月に制定された障害者差別禁止法でも、民事訴訟手続における訴訟当事者及び証人のための手話通訳等の費用は公費で負担すべきということの規定になっておりまして、国際的に大きな流れになっております。

 是非、これは障害者の裁判参加を保障するという点で前向きの検討を是非強く求めまして、質問を終わりたいと思います。

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