国会質問

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法務委員会

shitsumon201111.jpg・国際結婚の破たんによる国境を越えた子の連れ去りについて解決ルールを定めるハーグ条約関連国内法について質疑。運用にあたって「子の最善の利益が最優先されるべき」ことを谷垣法相に確認。DV被害から子どもを連れて帰国する場合が多いことをあげ、在外公館が現地支援機関に相談や通訳、同行などの業務を委託したり、弁護士と顧問契約を結んで被害者が相談できるようにすることなどを求めた。


井上哲士君

 日本共産党の井上哲士です。

 日本人の国際結婚が増えまして、その中で破綻も増加をするという中で、子の連れ去りというのは大変深刻な問題になっております。国際的なルールと国家間の協力は必要だと考えております。条約から実施法案、衆議院から含めまして大詰めの議論になっておりますので、私は主に運用の問題についてお聞きをしたいと思います。

 まず、その運用に当たっての基本姿勢でありますが、やはり、子の最善の利益の尊重が最優先して運用されるべきだと考えますけれども、この基本姿勢について、法務省、外務省、それぞれまず確認をしたいと思います。

国務大臣(谷垣禎一君)

 井上委員のおっしゃったとおりだと思います。子の最善の利益を一番の基本としてこの運用をしていくべきであろうと思います。また、本法律案の中にも、子の返還申立事件の手続が子の利益に配慮した裁判手続となるように子の意思を把握するように努めろとか、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないという規定が入っておりますのも、その精神が法の中に組み込まれている一つの表れだろうと思っております。全く御指摘のとおりだと思います。

大臣政務官(若林健太君)

 委員の御指摘のとおり、条約の前文において、「子の監護に関する事項において子の利益が最も重要であることを深く確信し、」、こう書いてありますように、この条約は子の利益を最重要視しているというふうに理解をしております。

 国境を越えた不法な連れ去りによる一番の被害者は子供自身だと。ハーグ条約は、子が元々居住していた国、すなわち子供が慣れ親しんできた生活環境がある国において子の監護に関する事項を決定するための手続を行うことがその子にとって最善であると、そういう考え方に立って、まずは子供が不法に連れ去られた状況の原状回復を図ろうとするものであるというふうに理解しています。このルールは、今や国際的なものとして確立されているということであります。

 ただし、いかなる場合であっても子供が元々居住していた国に返還されることが子供の最善の利益になるとは限りません。ハーグ条約においては、返還により子供の心身に害悪を与える重大な危険がある場合などの一定の場合には子の返還を拒否できるものというふうにされているわけで、こうした観点からも、この条約は子供の利益を最重要視した条約であるというふうに理解をしております。

 我が国におけるハーグ条約の運用においても、条約の基本理念にのっとりまして、子の利益を最重要視して取り組んでまいりたいというふうに思っています。

井上哲士君

 今後、政令や規則、そして体制づくりなどありますし、実際の様々な運用の場面で子の最善の利益というのを本当に最優先にするということを貫いていただきたいと思います。

 その中で、今の答弁の中にもありました問題でありますが、返還拒否事由の要件の問題であります。

 先ほどの大臣の答弁で、直接盛り込まずに、考慮事項として子が申立人から暴力を受けるおそれなどの項目を挙げたお話がありました。DV被害者への配慮をしたものでありますし、こういう仕組みは諸外国にはないという答弁もあったわけですが、一方で、やはり要件に明記をされないと、考慮事項ではどれだけ裁判で実効性があるんだろうかという声もお聞きするわけでありますが、この法案のように考慮事項を別途具体的に規定している他の法律の例はどういうものがあるのか、それらが実際の裁判の中でどのように取り扱われているか、いかがでしょうか。

政府参考人(深山卓也君)

 御指摘の考慮要素を法律に明記した例といたしましては、借地契約における土地の賃貸人が契約の更新を拒絶する場合に必要となる正当の事由の考慮要素を明記した借地借家法の第六条や、家庭裁判所が離婚した夫婦の財産分与の額や方法を定める際の考慮要素を明記した民法第七百六十八条第三項などを挙げることができます。

 こういった立法例は、抽象的な法律概念の判断において、一般的に重要と考えられる考慮要素を明記して法適用の明確化、予測可能性の向上を図ったものでございまして、これらの法律を適用する裁判所においても、これらの法律の趣旨を踏まえた判断が現にされているものと思っております。

 この法律案の二十八条第二項各号に定める考慮要素は、同条一項四号の返還拒否事由の有無を判断するに当たって重要なものを明示したものでございますので、裁判所においてもその趣旨を踏まえた判断がこの法律でもされるであろうと考えております。

井上哲士君

 その考慮要素の一つに、常居所地国において子を監護することが困難な事情というものがありますが、その更に具体的な中身として、相手方が帰国後に適法な滞在資格が得られないおそれとか、当該国において生計を維持することが著しく困難ということも示されているわけですね。

 先ほども質問があったんですが、帰国後に就労可能な滞在資格が得られないおそれというのは、まさにこの生計の維持の困難にも当たると思うんですが、ちょっと先ほどの答弁がはっきり聞こえなかったものですから、この点は具体的にどうか、就労可能な滞在資格が得られないおそれの場合。それから、先ほど適切に監護する者がいない場合も示されましたけれども、例えば、子が返還された場合に、子が里親とか施設に託されるという可能性があるという場合はいかがでしょうか。

政府参考人(深山卓也君)

 まず、御質問のあった前者の適法な在留資格あるいは就労可能な在留資格がない場合のことについてですけれども、こういった事情で常居所地国で子供を監護することができないという場合には、二十八条二項の子の返還拒否事由の考慮事情のうち、第三号の相手方が常居所地国において子を監護することが困難な事情に該当し得るものと考えられます。

 結局、このような事情は、最終的には返還拒否事由の子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があるという判断をする上での重要な事情になると、こういうことでございます。

井上哲士君

 次に、海外で暮らす日本人同士の夫婦が離婚をして一方が日本に連れ帰ったという場合もこれはハーグ条約の対象になると考えるんですが、そのことの確認と、一方で、申立人がこのハーグ条約の仕組みを使って相手を捜し出したけれども、そして常居所地国で例えば監護権の判断を受けた後で、その後、実際には日本に帰って生活をするとか、いろんなケースがあると思うんですね。ですから、海外で暮らす日本人同士の夫婦が離婚をして一方が連れ去ったという場合、どのケースはハーグの対象になり、どのケースはならないのか、そこのちょっと線引きを示していただきたいと思います。

政府参考人(新美潤君)

 お答え申し上げます。

 まず、基本的な考え方といたしまして、ハーグ条約には当事者の国籍に関する規定は置かれておりません。したがって、委員の前半の御質問のように、日本人同士で海外で結婚して、そして海外に居住しているという場合、そこで当該子供が元々居住していた国と日本との間でお互いがハーグ条約の締約国で条約が効力を生じていれば、日本人同士の、今委員が御指摘になっている場合、一般論としてハーグ条約の適用を受けることになります。

 その上で、各論でございますけれども、これも委員の御質問で、そういう場合で一方の親が日本に子を連れ帰ったということで、その後、残された親、この場合、今の御質問ですと申請者ということになると思いますけれども、日本に戻ってきたという場合にハーグ条約の対象になるとか、これはいろんな場合があると思います。

 したがって、それを網羅的に申し上げることは困難かもしれませんけれども、申請者が日本に戻ったのが一時的なものではなくて、例えば住所あるいは居所を日本に移しているということになりますれば、これはまさに御指摘の点だと思いますけれども、子供の所在地そして申請者の住所、双方が例えば日本、同じ締約国の中にあるということになると思います。こういう場合には、条約による保護、援助は、子が親と異なる締約国にいるということを前提にしておりますので、外国返還にかかわる援助の申請については却下されることになると思います。

井上哲士君

 次に、日本国内から母子が外国に避難をした後に、父親の方から返還の申立てがあって、そして子が外国から日本に返還をされたという場合についてお聞きをいたします。

 子とともに返還される外国人女性の母が日本で適法に滞在、就労ができる在留資格を保障しないと適正な監護権や親権の係争ができないということになるわけで、こういう場合はそういう適法な滞在、就労ができる在留資格の保障が必要かと思いますが、この点、いかがでしょうか。

政府参考人(榊原一夫君)

 お答えいたします。

 個々の事案ごとの具体的な申請内容に応じ、入国の可否を適切に判断し、適当と認められる場合はその入国を認めることとなります。また、在留資格については、その入国目的に応じて適切な在留資格を付与することとなりますが、離婚訴訟等を行うことを目的として入国を希望する場合は、一般的に、在留資格、短期滞在で入国を認めることとしております。

 また、就労の点についてでございますけれども、個々の事案に応じまして適切に判断していくことになろうかと思っております。

井上哲士君

 先ほどの日本の返還拒否事由の考慮事項の中にも、適法な滞在資格というのがあるわけですね。逆に、日本が、子とともに返還される外国人に対して適法な滞在資格を与えないということになりますと、相手側からの返還拒否事由にも当たりかねないということになるわけですから、ここはしっかり判断をしていただきたいんですが。

 例えば、その場合に、母子が日本から外国に避難をしたという際に、既に在留期間が過ぎていたという場合もよくあると思うんですね。そうなりますと、これは退去命令とか出ていますから、再入国の拒否事由に当たると思うんですが、そういう場合でも、子の返還命令が出たという場合についてはやはり合法的に滞在、就労ができる在留資格をやっぱり保障すべきだと思うんですが、これは可能でしょうか。

政府参考人(榊原一夫君)

 不法滞在で退去強制された外国人などは、原則として、出国後一定期間本邦に入国、認められませんので、委員御指摘のような事情に当たると思いますけれども、このような場合でありましても、その入国目的等に照らしまして法務大臣がその外国人の入国を認めることが相当と判断する場合には、入管法第五条の二の上陸拒否の特例や第十二条の上陸特別許可の規定に基づき入国を認めることとなっております。

 そういった場合で、日本での裁判に参加することが必要であるというふうな場合には入国を認めることになろうかというふうに考えております。

井上哲士君

 法務大臣の判断だそうですから、適切によろしくお願いいたします。

 次に、在外公館における邦人保護の問題です。

 これもるる質疑があったわけでありますが、このハーグ条約の内容についての周知徹底や在外公館での邦人保護や支援を実効あるものにすることが一層求められておりますが、現地の支援機関との日常的な関係構築はもちろんですが、具体的な業務委託とか財政支援が必要だと思います。

 先ほど来の答弁で、アジア女性センター等に日本語の相談窓口を業務委託した、また包括的な支援も委託をしているということがあったんですが、具体的にどういうことを委託しているのか、例えば同行支援とか通訳支援も含めて委託をされているのかと、この点。それから、今後、当面四か所、北米中心に増やしていくというお話がありましたけれども、ほかの地域も含めてどの程度まで広げていく計画があるのか、併せてお願いをしたいと思います。

政府参考人(山田滝雄君)

 御答弁申し上げます。

 ニューヨークのアジア人女性センター、またロサンゼルスのリトル東京サービスセンターですが、これらの団体は日本語で二十四時間対応していただいていると。それで、その支援の内容は極めて包括的でございまして、今お話がありました同行支援、シェルターの紹介、通訳、それから法律的な支援、こういったものを含めて全てやる能力を有しておられます。

 現行予算の中で何とかやりくりしまして、今年度中に更に北米を中心に四か所程度増やしていきたいと考えておりますし、また、ほかにもこのような機関がないか、今調査をしているところでございます。

 国によって事情は異なりまして、例えば豪州、ニュージーランド等では、例えば裁判の場合に言葉の問題のある方については先方の政府が通訳を提供するとか、こういうサービスをしてくれるところがあります。欧州もまた若干事情が違って、これほどアクティブな団体が必ずしもある国が多いわけではないというふうには聞いております。ですから、その国々の事情に合わせて、また必要があれば大使館自らが付添い等のサービスもするということも考えながら、できる限りのサービスをしていきたいと考えております。

井上哲士君

 これも先ほどありましたけれども、法律相談とか法律支援の問題ですけれども、DV問題などに詳しい弁護士を紹介するというような答弁も衆議院でも行われておりますが、これ費用がなければ依頼ができないわけで、やはり日本国内にいる場合と同程度の法律支援が結果として受けられるということが必要だと思うんですね。現地でのいろんな法律扶助の制度を紹介するというお話もありますが、いろんな言葉の問題もありますから、きちっとそれが使えると、外国のそういう法律扶助の制度が使えるというところまで援助するということが必要かと思いますが、その点を確認をしておきたいということと、それから、先ほど弁護士と領事館が顧問契約を交わすのはどうかということに対して、領事が弁護士とよく相談をするということがあったんですが、その弁護士とこの問題の対象者が直接相談や法律的な支援を受けられるような形が取れないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

政府参考人(山田滝雄君)

 今、各国におけます法律扶助制度、これについても調査をしております。私どもが承知している限りでは、ハーグ条約を締結しているほとんどの国において各々の国の法律扶助制度がございます。ですから、在外公館においては、まずきちんとそういった各国の扶助制度をよく調査して、邦人の方が必要がある場合はそうした公的な法律の弁護士費用の扶助制度、それから、無料法律相談制度などをきちんと御紹介できるようにすると。それから、現地において、領事だけではなくて館全体としてきちんと体制を組んで、そして、家族法の専門家の方々といつでも連絡が取れるような体制を取っておいて、必要に応じてきちんとお金を払ってアドバイスも受けるというような、そういう体制の制度、こういうことを今やっております。そういうことを通じて、万遺漏なきよう最大限の御支援をしていきたいというふうに思っております。

井上哲士君

 なかなか直接弁護士とということの答弁がなかったんですが、これも含めて是非御検討いただきたいと思います。

 最後に、返還命令の代替執行についてですけれども、非常に慎重な配慮が必要だということも議論がありました。ソーシャルワーカーの立会いというような答弁があるんですが、ソーシャルワーカーというのは必ずしも子の福祉であるとかDVや児童虐待の専門家ではないと思うんですね。やはり児童精神科医などの本当の専門家の立会いを原則とするということが必要かと思いますが、この点はいかがでしょうか。

政府参考人(新美潤君)

 お答え申し上げます。

 累次御答弁申し上げておりますとおり、子の返還の代替執行を行う際には子供の心理的負担を最小限に抑えるという必要性にも鑑みまして、子の福祉に関する専門的知見を有する専門家を代替執行のために立ち会わせるという措置を検討しているわけでございます。

 そして、それに対応し得る人材でございますが、過去の答弁等でソーシャルワーカーについて言及したわけでございますが、委員御指摘のとおり、単にソーシャルワーカーに限られるものではございませんで、例えば児童虐待の支援業務に携わるなど専門的な知見を有する人材であることが望ましいと思います。

 ですから、そういう人材、あるいはそういう知見を持っているソーシャルワーカーということもあり得ると思いますけれども、まさにそういう合目的的に一番適当な、どういう人材が対応するのかというのは、これから引き続き関係機関とも協議しつつ、本日の委員会の御指摘も踏まえて検討していきたいと考えております。

井上哲士君

 終わります。

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