国会質問

ホーム の中の 国会質問 の中の 2014年・186通常国会 の中の 外交防衛委員会

外交防衛委員会

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。日本とサウジアラビア、ミャンマー及びモザンビーク三か国との投資協定について質問いたします。この三か国は、安倍総理が昨年、財界と一体に訪問して、トップセールスで経済連携を進めてきた国であります。サウジアラビアでは、首相訪問時に原発輸出を約束をして、現在、原子力協定の締結に向けて話合いが進められております。ミャンマーは、民主化の下で外国企業の受入れが進められて、日本企業の進出条件整備が進められているところであります。また、モザンビークは、日本のODA、プロサバンナ計画の下で、広大な土地を農地に変え農産物を日本の商社が世界中に輸出していくと、こういう計画が進められているところであります。この三つの投資協定、共通する部分と違う部分があるわけでありますが、サウジアラビアとの協定にはいわゆるパフォーマンス条項がないという点については、先ほど来も議論ありましたのでこれは割愛をいたしまして、一方で、共通する部分で、いずれも投資家対国家間の紛争解決手続の条項、いわゆるISDS条項が含まれておりますが、この条項とは何なのか、それを構成する要件についてまず御答弁いただきたいと思います。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) ISD条項のこの中身ですが、締約国が協定に基づく義務に違反した結果損害を受けた投資家は、まず基本的にその締約国との間の協議により解決を試みるわけですが、これにより解決が得られない場合に、国際仲裁等に直接付託することができます。仲裁の付託を受けた仲裁裁判所が下す裁定は最終的なものであり、紛争当事者を拘束いたします。そして、締約国の義務違反による損害が生じていると判断された場合には、その締約国は今度は損害賠償の支払等を行うこととなります。こうした内容のISD条項ですが、海外投資を行う日本企業を保護するために有効であり、経済界も重視している規定であると認識をしております。また、中立的な国際仲裁等に付託できる選択肢を与えることによって、外国から投資を呼び込むという側面もあります。これは、日本経済を活性化させる上でも有効であると認識をしております。

○井上哲士君 この手続は幾つかの仲裁規則を選択できるわけでありますが、その一つとして、世銀によるイニシアチブで投資紛争解決国際センターが設置をされておりまして、日本はその設置条約の締約国になっております。なぜ世銀がこのような国際センター、仲裁規則を作ったのか、そしてなぜ日本がこの締約国になったのか、いかがでしょうか。

○政府参考人(外務省 国際協力局 地球規模課題審議官 香川剛廣君) お答え申し上げます。今御指摘いただきました投資紛争解決国際センター、通称ICSIDは、国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約、ICSID条約に基づきまして一九六六年に設立されました。条約の締約国とその他の締約国の国民、投資家との間の投資紛争を解決する調停及び仲裁のための施設を提供することを目的とする組織でございます。ICSID条約が成立した一九六〇年代には、国際社会におきまして、開発途上国に対して民間資本の国際的移動を増進させる必要性が強く認識されておりまして、そのような国際的民間投資の促進を図るには、国家と外国の投資家との間に生ずる紛争の国際的解決の仕組みを設け、紛争解決を容易にすることが有効な方策の一つと考えられたわけでございます。この観点から、一九六一年の世銀総会におきまして、投資紛争を解決するための調停又は仲裁を行う国際的センターを設立する構想が提示されまして、その後、我が国を含めまして八十六か国の世銀加盟国の政府が任命する法律専門家会議における審議を経まして、一九六五年に世銀理事会により作成され、六六年に発効をいたしました。我が国といたしましては、他国への民間投資の促進に資するという観点から、一九六五年にICSID条約に署名し、一九六七年に批准をした経緯がございます。

○井上哲士君 幾つかある中で、特にこのICSIDを日本は使うと。これはなぜなんでしょうか。

○政府参考人(香川剛廣君) このICSIDを使うかどうかにつきましては、幾つか選択肢がございまして、国際連合国際商取引委員会あるいは国際商事会議所の仲裁規則といった他の仲裁の仕組みがございまして、仲裁を求める当事国がそれを選択するということになってございます。

○井上哲士君 日本がこれまで結んだ二十五本の投資協定の中で、フィリピンのEPAを除く二十四本にこの条項が含まれているということでありますが、日本政府がこれに基づいてこれまで訴えられた例、また逆に日本企業が訴えた例というのはあるんでしょうか。

○政府参考人(外務省 経済局 局長 片上慶一君) お答え申し上げます。我が国は一九七八年以降、ISD手続を含む投資関連協定を締結してきておりますけれども、これまでISD手続で提訴された例はございません。他方、日本企業の子会社が第三国間の投資協定に基づくISD手続を通じて外国政府を提訴し、賠償を得たという事例はございます。

○井上哲士君 いろんな例を調べてみますと、一企業が投資国を相手に仲裁をした場合には多額の補償金等が支払われているケースが多いわけですね。その金額は数十億円にも上るということが普通のようでありますが、これまで国際仲裁裁定になった案件は何件あるのか。また、代表的な事例として、アメリカのエチル社がカナダ連邦政府を訴えた仲裁の事例でのその内容及び和解金の額についてお示しいただきたいと思います。

○政府参考人(片上慶一君) お答え申し上げます。UNCTAD、国際連合貿易開発会議の報告書によりますと、二〇一三年末までに投資関連協定に基づく仲裁手続に付託された投資紛争件数は、公開された限りで五百六十八件、また、この報告書によりますと、昨年二〇一三年、少なくとも五十七件の投資紛争が仲裁手続に付託されたとされています。御指摘のありました米国のエチル社の件でございます。概要を簡単に申し上げますと、基本的に、我が国が紛争当事国ではございませんので一定の制約はありますけれども、御指摘のこのエチル社、これは無鉛ガソリンに使用されるガソリン添加物の輸入を禁じるカナダの法律がNAFTAの十一章、これはISD条項を規定する投資章でございますが、におけるカナダの義務に違反するという請求を提出したとされています。その一方で、カナダ国内においても、カナダの州政府から連邦政府に対してエチル社と同様の申立てが提起され、NAFTAのISD条項ではなくカナダ国内の紛争処理手続においてこの規制に不利な判断が下された結果、カナダ政府がエチル社に対して仲裁費用及び逸失利益として千三百万米ドルを支払うことを条件に、カナダ政府とエチル社は、ISD条項に基づく請求を含め、あらゆる問題に和解したケースというふうに認識しております。

○井上哲士君 結果としては、日本円で約十三億円を上回るものが支払われているわけです。非常に大きな額であります。NAFTAの実態を見ても、ほとんどアメリカの大企業が勝っているわけですね。一方、この仲裁自身は非公開でありますから、国民にとってはよく分からないままで国が税金を使って支払をすると、こういうことになるわけであります。これまで日本政府が訴えられたケースはないということでありますが、今後訴えられるケースも出てくると思います。その辺の政府の認識や対応ということはどのようにお考えでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 先ほど来答弁させていただいていますように、一九七八年に国家と投資家の間の紛争解決手続を含む投資協定を締結し始めて以来、我が国が仲裁を提起されたことはないわけでありますが、これは、そもそも締結するに当たって、我が国は国内法との整合性の観点から、必要な範囲での留保及び例外規定を置いてきております。したがって、我が国が法令に基づき合理的で必要な規制を行っている限り、協定違反が認められることは通常想定されず、外国投資家から仲裁を提起される蓋然性は低いと考えております。そもそも、締結するに当たって、こうしたしっかりとした準備を行った上での締結を行っているということであります。こういったことから、今後も仲裁を提起される蓋然性は低いと認識をしております。

○井上哲士君 TPP交渉の中でもこの条項が大きな問題になっておりまして、各界から様々な懸念が出されております。企業が国家を訴えて多額な賠償金を請求することによって国家の規制権限を脅かすのではないか、公共の利益のために規制を行う国家の主権がそもそも制約されてよいのか、国家の主権が一企業のために制約されてよいのか、こういう意見が出ているわけですね。これは自民党内でも大問題になりまして、昨年の二月十三日の自民党政務調査会と外交・経済連携調査会によるTPP交渉参加に対する基本方針には、「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。」と、こう明記をされております。昨年の日米首脳会談の際に、安倍総理がこのTPPに関する自民党の方針を説明したと官邸のホームページでも発表されているわけでありますが、この「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。」という自民党の基本方針についてはどのように具体的に説明をされたんでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 我が国がTPP交渉に参加する前に行われた昨年二月の日米首脳会談では、TPPについて、その意義やそれぞれの国内事情も含めじっくりと議論され、安倍総理から、さきの衆議院選挙で、聖域なき関税撤廃を前提にする限りTPP交渉参加に反対するという公約を掲げ、また、自民党はそれ以外にも五つの判断基準を示し、政権に復帰したということをオバマ大統領に説明をいたしました。その際、総理から、このISD条項に関するものも含め、自民党が示した判断基準、具体的内容をオバマ大統領に伝えている次第です。

○井上哲士君 これは今も自民党の基本方針だと、こういうことで確認してよろしいでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) このISD条項に関しましては、二〇一二年のJ―ファイルの中に、「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。」、このように明記をされております。この考え方は今も生きていると考えます。

○井上哲士君 これが引き続きTPP交渉の中でも議論になっているんですが、昨年の十一月六日付けの日経は、このISDS条項について、米企業などから訴訟を起こされる可能性が高まると警戒する豪州やアジアの国が慎重だったが、「過度に訴えるのは避ける」との条項を採用することで各国が折り合ったと、こういう報道がされております。ただ、これは訴えるのは国でなくて企業なわけですから、この過度に訴えるのは避けるということが果たして担保できるのかなということも思うわけでありますが、この点はどのように報道されている内容は担保をされるということになるんでしょうか。

○政府参考人(内閣審議官 澁谷和久君) お答え申し上げます。御指摘の記事にありますように、過度に訴えるのは避けるという条項で各国が折り合ったというのは事実ではございません。まず第一に、ISDSに関することはTPPにおきまして引き続き協議中でございます。そもそも折り合ってはいないわけでございますが。その上で、ISDSについて慎重な態度を取る国はみだりに訴えられることが単に嫌だということを言っているわけではなくて、先生先ほど御紹介していただきましたとおり、ISDSが発動されることを懸念する余りに国が本来必要な規制を行うことに抑制的になるということはあってはいけないと、そういう観点から、投資の保護と国家の規制権限の確保という、この両方のバランスを確保する内容にするべく議論がなされているところでございます。  詳細はまだ協議中でございますが、例えば、各国政府が健康、安全、環境保護を含む公共目的の適切な規制を行うことができるということを確保するような内容とするほか、仲裁手続自体の透明性を確保するなどの観点から議論がなされているところでございます。

○井上哲士君 そうすると、ここで言われているような、一般論で結構なんですが、過度に訴えるのを避けるというような条項、つまり企業に何か規制を掛けるというようなことは可能なんでしょうか。そこはいかがでしょうか。

○政府参考人(澁谷和久君) あくまで一般論で申し上げますと、投資協定におけるISDSというのは、投資受入れ国が投資協定の規定に違反したおそれのある場合に投資家が付託すると、そういうことでございます。その際、例えば、公共目的の措置は基本的に協定違反ではないことなどを明確にすることによって、訴えることができる場合を合理的な範囲とするといったような工夫が様々な協定でなされているというふうに承知しております。

○井上哲士君 先ほどのありましたように、過度に警戒する余りに必要な様々な規制ができなくなるのではないかという、こういう懸念がある中で、適切な規制は確保するというような議論がされているということであるわけでありますが、これに対して日本政府がどういう立場なのかということなんですが。これは是非外務大臣にお聞きしたいわけでありますが、やはり一企業が国を訴えるわけですから、様々、国が主権が侵害される危険性が明らかだと思うんですね。だからこそ自民党の基本方針にも先ほどのようなことが明記をされたわけだと思うんですが、そういう点でいいますと、今、先ほど紹介されたような、国家が適切な国民のための安全などのための規制をきちっとできるようにしていくということで、様々なISD条項について見直しも進めていくことが必要でありますし、TPPでもそういうことが必要かと思うんですが、その点のお考えを聞かせていただきたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、一般論として、ISD条項は、海外投資を行う日本企業を保護するために有効であり、経済界も重視している規定であると認識をしています。また、中立的な国際仲裁に付託できる選択肢を与えることによって外国からの投資を呼び込むという側面もあり、日本経済を活性化させる上で有効であると考えています。  そして、今までも、このISD条項を結ぶに当たりましては、国内法との整合性の観点から、必要な範囲で留保及び例外規定を置いてきております。こういったしっかりとした留保及び例外規定を置きながら結んだISD条項につきましては、これ、当然のことながら国益に沿っているものであると思っています。これ、歴代自民党政権の下で結んだ条項でありますので、これは国益に沿っていると我々は認識をしております。こういったISD条項のありようもしっかり念頭に、これからの交渉、TPPにおいても交渉を進めていくものであると私は認識しております。

○井上哲士君 TPPはマルチなわけでありますから、果たしてどういうことになるのか。多くの国々がやはり懸念の声を上げているわけでありますし、先ほどの自民党の基本方針である、国家の主権を損なうような条項は合意しないと、こういうことも言われているわけでありまして、そういう点を改めて強く指摘をいたしまして、私の質問を終わります。

日本とサウジアラビア、モザンビーク、ミャンマーとの投資協定承認に対する反対討論

○井上哲士君 私は、日本共産党を代表して、日本とサウジアラビア、日本とモザンビーク及び日本とミャンマーの三つの投資協定にいずれも反対の立場から討論を行います。
 今回の三協定は、第二次安倍政権下で締結した最初の協定であり、安倍政権が経済政策の柱とする成長戦略に基づき、日本の多国籍企業が海外で最大限利益を上げるよう、投資を促進するために締結した協定です。
 日本の財界は、国内では法人税の減税や労働法制の改悪を、国外では日本の多国籍企業が多額の収益を上げられるような条件整備、投資協定や租税条約の締結を強く求めてきました。
 安倍総理を先頭に進めるトップセールスは、こうした財界の強い要請と一体となって、原発や武器を含む様々な分野に広がり、就任一年半の間に延べ四十三か国にも及んでおります。
 まず、サウジアラビアとの協定では、安倍総理は、昨年四月に自ら訪問し、世界一安全な原子力発電の技術を提供できるなどと原発輸出を表明しました。今協定は、その原発輸出を進める条件づくりであり、容認できません。
 次に、モザンビークとの協定では、安倍総理は、今年一月の同国訪問時の共同声明で、日本政府が現地で行うODA事業であるプロサバンナ計画を推進する立場を明らかにしました。今協定が、モザンビークの農民に犠牲を強いる同計画をめぐり、日本の多国籍企業が収益を上げるための条件整備としての性格を持つことは明白であります。
 さらに、ミャンマーとの協定には、投資に関する法制度の未整備が指摘される同国で、その法整備の不十分さを下支えし、地元の元軍閥資本と一体に、日本の多国籍企業が様々な優遇税制などで収益を上げる条件づくりに資するものであり、賛成できません。
 また、今回の協定には、TPPをめぐって重大な問題点が明るみになってきたISDS条項が盛り込まれております。一企業が国家を訴え、一企業が国家の主権を脅かすことについても看過することはできません。
 以上、今回の三投資協定への反対討論といたします。

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