国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2014年・187臨時国会 の中の 外交防衛委員会

外交防衛委員会

井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 私からも、まず、片山委員長が政府の答弁資料を読みながら委員会運営をしていた問題についてただしたいと思います。
 立法府と行政府の関係から、あってはならないことであります。常任委員長は参議院本会議で選ばれた院の役員でありまして、その立場から絶対やってはならないことでありますし、同時に、公正、民主の委員会運営を進めるべき委員長としてもこれはあってはならないことであります。
 今日、冒頭、軽率な行動というふうに謝罪がございました。しかし、委員部から前例がないことだというふうに言われながらも重ねてこの提出を求めたということから考えれば、事の重大さを認識できていない、私はそれ自体が委員長としての資格に欠けると、こう思います。今日の各同僚委員の議論の中でも指摘がありました。先ほど、外務、防衛それぞれの大臣から、行政府の長としても、また国会議員としてもあってはならないことだという厳しい御意見もあったわけでありますね。
 こういうものを踏まえて、改めて委員長として潔い私は責任を取るべきかと思いますが、そのお考えはないでしょうか。
○委員長(片山さつき君) 私の行動によりましてこのような事態を招いてしまったことは非常に重く受け止めております。
 今後は、より慎重に、かつ中立、公正、公平を心得、円滑、円満な運営に努めるという委員長の立場の原点に立ち返り、引き続き重責を果たしてまいりたいと存じますので、よろしく御指導を賜りたいと思います。
○井上哲士君 自らしっかりと責任を取るということでないのは大変残念でありますし、与党内からもこれは交代というような一部声も聞こえてきたわけですが、結局そういう良識が発揮されなかったことは大変残念でありますし、納得ができません。しかしながら、こういう状況になった中で、厳しい自覚を持って中立公正な委員会運営を重ねて強く求めたいと思います。
 その上で、江渡大臣の政治資金問題についても私からもお尋ねをしたいと思います。
 資金管理団体聡友会から大臣個人への寄附したという政治資金報告書の訂正をめぐって、この間問題になってまいりました。一方、大臣自身が代表を務める自民党青森県第二選挙区支部から大臣個人への寄附も収支報告書で届出をされております。二〇一一年、平成二十三年、二〇一二年、平成二十四年それぞれについて、寄附・交付金という区分で行われた大臣への寄附の日付と金額について明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(防衛大臣 江渡聡徳君) お答えさせていただきます。
 自民党青森県の第二選挙区支部から私に対しまして、平成二十三年、二〇一一年ですね、これは一月十四日、百万、五月十二日に五十万、八月三十日に百万、十二月十四日に百万で計三百五十万。二〇一二年は四月二十七日に百万、そして八月二十二日に百万、そして十二月三日、これ五百万の寄附が行われております。
○井上哲士君 丁寧に通告すればよかったんですが、十二月三日の五百万というのは、先ほども答弁ありましたように、選挙関係費という区分になっておりまして、ほかの寄附・交付金という区分のお金と少し性格が違うんだろうと思うんですね。
 政党支部、それから資金管理団体がそれぞれいろんな政治活動への支出をいたします。一方、大臣には国会議員としての歳費が入っているというのに加えて、なぜ政党支部からの寄附を受ける必要があるのか、これは何に使用されたんでしょうか。
○国務大臣(江渡聡徳君) この質問もほかの委員からも御質問いただいた件であるわけでありますけれども、政党支部から支部長といたしまして政党活動を行うための資金を受けまして適切に使用させていただいているわけであります。
 また、先ほどの五百万の件なんですけれども、青森県第二選挙区支部から私への寄附のうち政党交付金を原資とするものにつきましては、自由民主党として厳格な内規を作成し、支部の支出について党本部から当該内規に従って厳しいチェックを受けているところでございまして、このような寄附につきましては選挙運動費用以外の使途に用いるようなことはありません。
○井上哲士君 この選挙関係費以外にも日常的に政党本部から支部にお金が入っておりますが、この年の政党支部の収入の五割から六割は政党助成金である党本部からの寄附でありまして、それがあなた自身が代表である支部からあなた個人への寄附になっていると、こういうことになるわけですね。そうすると、そこから先の使途が分からないということになるわけで、先ほど支部長としての活動と言われましたけれども、やはり国民の税金が原資である可能性が大なわけですから、もう少し具体的に詳しく明らかにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(江渡聡徳君) 先ほども言いましたように、税金を原資とする政党交付金が含まれているんじゃないかというのが委員の御指摘だというふうに思っておりますけれども、あくまでも政党交付金を原資とするものにつきましては、先ほども申し上げさせていただいたように、自由民主党としては厳格な内規を作成いたしまして、支部の支出について党本部から当該内規に従って厳しいチェックを受けておりますから、そのような寄附については、先ほど答弁させていただいたように、選挙運動費用以外の使途に使うことはありませんというふうにお答えさせていただいたわけであります。
○井上哲士君 選挙関係費五百万のお話とちょっと区別をしたいんですが、先ほど質問しましたように、寄附・交付金という区分で大臣自身に二〇一一年には四回三百五十万、二〇一二年には二回二百万が寄附されているわけでありますが、この具体的な使い道についてはいかがでしょうか。
○国務大臣(江渡聡徳君) お答えさせていただきます。
 先ほどもお話しさせていただいたように、支部長として政党活動を行うための資金を受けまして、そして適切に使用しているわけでありますけれども、ある意味自民党の政策広報とか、あるいは政策実現のための政党活動というものに使っているところでございます。
○井上哲士君 そういう政治活動に使用されているということでありますが、先ほどの答弁もありましたように、政党支部からの寄附・交付金としての大臣個人への寄附は、二〇一一年が四回で三百五十万、二〇一二年は二回で二百万であります。
 ところが、二〇一二年の聡友会の収支報告書に記載をされた寄附が二回百五十万なんですね。これ、二〇一二年に加えますと、二〇一一年も二〇一二年も四回三百五十万円で一致をするわけであります。しかも、二〇一二年に聡友会からの寄附として記載されたのは五月と十二月でありまして、これも二〇一一年に政党支部から寄附された月と一致をいたします。
 そうしますと、あなたは、その資金管理団体とこの政党支部という政治家としての二つの財布を余り区別なしに個人としての寄附を受けていたのではないか。そして、改めてチェックをすれば、資金管理団体からの個人寄附は違法だということを気付いたので、これを訂正をして、その分を実は人件費だったというつじつまを合わせたんではないかという疑念が湧いてくるんですけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(江渡聡徳君) そのようなことはございません。あくまでも二〇一二年、平成二十四年の方は記載ミスでございます。
 それと、今そのようなお話が出たわけでありますけれども、もし違法な行為が分かりつつそのような形のことをするのであれば、そもそも寄附という欄に普通は載せないだろうというふうに私は思っておりますけれども、ですから、その辺のところで御理解いただければ有り難いなというふうに思っております。
○井上哲士君 ですから、二つの財布を政治資金規正法上の資金管理団体と、そして政党支部が行う個人への寄附ということについて十分区別がされないまま当時は記載をされたんじゃないか、そして大臣就任ということでチェックをしてみれば、こういうことがあったということで訂正をし、実は賃金だったということでつじつまを合わせたんではないかと、こういう疑念が湧くわけです。
 そして、一貫してあなた否定をされますけれども、結局何一つ具体的な資料は出されていないと思うんですね。その点の自覚はありますか。
○国務大臣(江渡聡徳君) そもそも、今委員は、委員の御指摘をそのまま私が受ければ、要は第二選挙区支部も、そして聡友会も、同じスタッフで経理会計しているように私は聞こえました。
 でも、そうではございません。聡友会はあくまでも東京の議員会館のみで行っておりますし、第二選挙区支部の方の経理等々は私の地元の青森県の第二選挙区支部の事務所の方において別の人間が行っておりますから、ですから、そのような形には私はならないというふうに思っているところでございます。
○井上哲士君 私が聞いたのは、いろいろこの間弁明をされてこられましたけれども、それを晴らすための具体的な資料を何か一つでも出されたのかと、そのことの自覚はいかがですかと聞いております。
○国務大臣(江渡聡徳君) まずは、二十四年の方の仮の領収書は出させていただきました。その後の二十一年の方は今鋭意探している最中でございます。
○井上哲士君 求められているのは、それが実際は人件費だったということを示すものを、この間同僚委員からも様々な形で言われておりますけれども、何一つ具体的なものが出てきていないんですね。
 大臣は衆議院議員でありますから、一九八五年の衆議院の政治倫理綱領というのを当然御存じかと思いますが、この中で、自らが政治倫理に反する事実があるとの疑惑を持たれた場合にはどうしなくちゃいけないかということが明記されておりますが、そのことは御存じでしょうか。
○国務大臣(江渡聡徳君) お答えさせていただきます。
 政治資金に関しまして問題が生じた場合ということは、政治家といたしましてきちんと説明する責任があるというふうに認識いたしております。
 今般のこの政治資金収支報告書の訂正につきましては、報告書が作成される段階で人件費として記載されるべきものを寄附と取り違えてしまったあくまでも事務的なミスで、後日訂正したものであるわけであります。
 御指摘のとおり、人件費として支払われたことを示す客観的な資料の提出につきましては、これまで御要望に十分にお応えできていないかもしれません。特に、細かな経緯や事実関係につきましては、何分かなり前のことでもあるために記憶が定かでない部分もありまして、あるいは資料が残っていない場合、明確にお示しできていない部分もあるかもしれません。しかし、現存するものの中から私なりに誠意を持って対応あるいは説明させていただいているつもりでございます。
 また、他方、本件の人件費につきましては、本人たちに受領を改めて確認いたしましたし、また確実に支払っている旨の回答を両名より得ているところでございます。
 また、政治資金規正法上、自身の資金管理団体から選挙期間外で寄附を受けることが禁止されていることは私も十二分に認識しているところでありまして、同法で禁じられている寄附行為を意図的に隠蔽をしようとするならば、最初からわざわざ収支報告書に寄附と記載するはずはありません。私はそのように思っております。
○委員長(片山さつき君) 江渡大臣におかれましては、井上委員の質問の趣旨に簡潔にお答えいただけますでしょうか。
○国務大臣(江渡聡徳君) 申し訳ございません。次から簡潔に答えるようにさせていただきたいと思います。
○井上哲士君 今、出していないかもしれませんというふうに言われましたけれども、明確に人件費であったということを示す客観的証拠は何一つ出されていないとはっきり自覚をしていらっしゃらないんですか。
○国務大臣(江渡聡徳君) 先ほども答弁させていただきましたが、二十四年分のやつはあったものですからすぐ出させていただきました。二十一年分のやつは今鋭意探させていただいている最中でございます。
○井上哲士君 いや、あれはあなたの仮領収書と言われるものでありますよね。そうではなくて、それは実は人件費だったということを示す客観的なものは何も出していないんじゃないですかということを聞いているんです。
○国務大臣(江渡聡徳君) どこまでが客観的でどこまでがそうじゃないかということは、これは認識の違いもあろうかもしれませんけれども、あくまでも私自身は......(発言する者あり)済みません、委員長。
○委員長(片山さつき君) 答弁をお続けください。
○国務大臣(江渡聡徳君) あくまでも私自身は、仮の領収書、本人が受け取ってきちんと記載すれば、それでその仮は破棄されるものだというふうに思っておりましたから、ですから、私は仮の領収書という形で出させていただいた。そして、結果的に、収支報告書を作るとき、その前の書類等々においても細かく細かくきちんと付けておけばよかったのかもしれませんけれども、数か月ごとでまとめてやったりしていたというところもあったもので、そこでの記載のミスがあったのではないのかなと、あるいは間違いがあったのではないのかなというふうに思っております。
 それから、今委員がおっしゃられるように、その仮のやつも違うと言われれば、確かにそのような受け止め方もあるかもしれないというふうに今思っております。
○井上哲士君 いろいろ言われますけれども、人件費の支払があったということを示すものは何もここには出されていないんですよ。お話があるだけなんですね。そして、探してもないという話と、もう一つは、規正法上そこまで求められていないから御容赦いただきたい、御理解いただきたいと、こういう話があります。
 しかし、先ほどの衆議院の政治倫理綱領は、「われわれは、政治倫理に反する事実があるとの疑惑をもたれた場合にはみずから真摯な態度をもつて疑惑を解明し、その責任を明らかにするよう努めなければならない。」と、こう書いてあるんです。政治資金規正法上の届出というのは、言わば最低限のことですよ。誰でもやらなくちゃいけない、政治家であれば。
 しかし、現に倫理に反する事実があるとの疑惑を持たれたら、当然、それ以上に自ら積極的に具体的資料を出して解明をするということがこの綱領の精神じゃないですか。これに反していると思いませんか。
○委員長(片山さつき君) 江渡大臣、簡潔にお答えください。
○国務大臣(江渡聡徳君) 私は丁寧に説明させていただいているというふうに思っております。
○井上哲士君 全く言葉だけですから、こうやって何回も各委員から質疑が重ねられているわけでありまして、結局何一つ具体的な証拠は示されていないと。
 私からも、これが実は人件費だったということを示す何らかの客観的なものを示していただきたいことを改めて求めたいと思います。
○委員長(片山さつき君) 引き続き、本件につきましては理事会で検討させていただきます。
○井上哲士君 では次に、普天間基地の問題に関わってお聞きをいたします。
 菅官房長官が九月の十七日に沖縄の仲井眞知事と会談した後の会見で、知事が求めている普天間基地の五年以内の運用停止に関して、今年二月を起点として二〇一九年二月までの実現を目指すという方針を明らかにいたしました。
 十月七日に閣議決定された答弁書でも同様の趣旨が書かれておりますが、この方針は、事前にアメリカ側とはどのような調整の上に発表されたんでしょうか。防衛大臣、お願いします。
○国務大臣(江渡聡徳君) お答えします。
 この普天間飛行場の五年以内の運用停止につきましては、沖縄県から、平成二十六年二月から五年をめどとするようにとの考え方が示されておりまして、政府といたしましては、このような同県の考え方に基づいて取り組むこととしております。
 相手国との関係もあることから、詳細というものは差し控えさせていただきますけれども、普天間飛行場の五年以内の運用停止を含む仲井眞知事の御要望については、これまでも各種の機会を捉えまして、米国に対して様々なレベルから説明をいたしましたし、そしてまた、沖縄の負担軽減に向けた米国の協力を要請してきているところでございまして、また、私自身も、先月のヘーゲル国防長官との電話会談の際に協力をお願いしたところでございます。
○井上哲士君 今、要請はされたと言いましたが、私はどのような調整の上に発表されたかと聞いたんですが。
 九月二十五日にロックリア米太平洋軍の司令官が、日本から要請を受けていないと、私は聞いていないというふうに会見で述べておりますし、今月二日の日米合同委員会で、アメリカ側の代表から、一方的発表に驚いた、米側と調整もなく発表したことは迷惑で、米国を困った立場に追いやると述べたと報道されております。さらに、米側からは、同基地の運用停止は最も早くて二二年というのが日米間の共通認識であって、こうした日本側のやり方は同盟の流儀に反する、日本政府が運用停止の目標時期を一方的に明言したために米側は失望し不満を抱いていると述べたと、こう言われておりますが。
 要請はされたのかもしれません。しかし、なぜこういうアメリカ側との調整も全くなしに発表されたのか、重ねてお聞きいたします。
○国務大臣(江渡聡徳君) お答えいたします。
 この普天間飛行場の五年以内の運用停止を始めとする仲井眞知事からの御要望につきましては、米国に対しましても様々なレベルから説明しまして、沖縄の負担軽減について協力を要請してきております。
 例えば、四月の六日の小野寺前防衛大臣からヘーゲル国防長官に対して説明を行い、ヘーゲル長官より沖縄県民の思いを理解しつつ日本側の取組に対して引き続き協力していく旨の発言もあったほか、また、四月二十四日には安倍総理からオバマ大統領に対し説明を行いまして、オバマ大統領からは沖縄の負担軽減に引き続き取り組みたいというような発言もあったところでございます。
 また、日本側からの要請を受けていないというような話もあるということでございますけれども、日本側からの説明とか要請をどの範囲で共有するかというのは、ある意味、米国政府内の問題でありまして、そこについては防衛省としてコメントする立場にはないというふうに考えております。
○井上哲士君 我々、様々な問題を日米問題について質問をいたしますと、アメリカ側との調整があって答えられないということが度々あるわけでありますが、この問題では米側から一方的発表に驚いたというふうな形で行われました。
 要するに、沖縄知事選挙対策だとはっきり言われたらどうですか。共同の報道では、アメリカ政府当局者のコメントとしても、沖縄県知事選挙を意識した政府・与党が移設問題を政治利用していると、こういう発言すら報道をされているわけですね。
 辺野古基地の新基地反対の圧倒的県民世論を裏切っている仲井眞知事を何とか支援をすると、埋立ての承認のときに知事が求めた早期運用停止に応えられるかのようなアピールをする、そういうことで移設事業への反対論を和らげたいと、こういう意図で調整なしに発表したと、こういうことじゃないんですか。
○国務大臣(江渡聡徳君) そのようなことはございません。また、今御指摘のあったような選挙対策のためということでもございません。
○井上哲士君 このときの共同の報道は、県外移設を公約しながら解決策を見付けられなかった民主党政権の無策ぶりを非難してきた安倍政権だが、場当たり的な地元対策で米国の不信を招く構図は変わらないと、こういう指摘をしております。
 私は、前回の国政選挙で県外移設を県民に公約をした沖縄選出の自民党の国会議員に公約を撤回をさせて県民を裏切らせて、やはり県外移設を言ってきた仲井眞知事に県民を裏切らせて埋立てを承認をさせたと。その上、アメリカとの調整もないにもかかわらず、まるで実現するかのように、何の裏付けもなしに五年以内の運用停止を打ち出して県民を欺くようなやり方は、これは県民を愚弄するものだと思います。やめるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○国務大臣(江渡聡徳君) お答えいたします。
 我々は、別に県民を愚弄するなんという思いは毛頭ございません。あくまでも、沖縄県から平成二十六年二月から五年をめどとする考え方が示されておりまして、政府としては、できることは全てやるというその思いの下において、同県の考え方に基づいて取り組むということにしておるところでございます。
○井上哲士君 九六年のSACOの普天間基地の返還合意以降十八年間、一ミリも基地が動かなかったのは、結局県内移設という条件が付いてきたからなんですね。私は、県内たらい回しでは問題は絶対解決しないし、例の建白書に示された県内移設断念と普天間基地の閉鎖、撤去こそ本当の解決の道だということを改めて強調しておきたいと思います。
 さらに、同じように総理が十月二十日に官邸を訪れた仲井眞県知事に直接伝えたのが、その日に行われた日米両国政府による共同発表であります。
 日米共同発表は、「日米両政府は、米軍のプレゼンスの政治的な持続可能性を確保するため、米軍による影響を軽減することに取り組んできた。」として、「在日米軍に関連する環境の管理の分野における協力に関する協定につき実質合意に至った」として合意内容を四点挙げております。
 まず確認しなくちゃいけないのは、米軍基地が置かれている沖縄や関係都道府県とその住民がこれまで要求してきたのは、地位協定そのものの改定なわけですね。基地のある県の渉外知事会は、昨年、改定案も作成、公表いたしました。地位協定によって米軍の様々な特権や日本法令の免除等が認められる下で、その駐留活動に伴って犯罪や騒音、環境汚染など様々な耐え難い環境負担、基地負担に苦しんできたことからすれば当然の要求だと思います。しかし、昨年末の共同発表以来の動きを見ても、これに応えて改定そのものが協議をされた形跡は見られません。
 外務大臣にお聞きしますけれども、地位協定の改定そのものを米政府には提起をしたんでしょうか。
○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 現行の日米地位協定につきましては、この環境に関する規定がないことから、日米地位協定を環境面で補足する新たな政府間協定を作成するため、昨年十二月、日米協議を開始することで米国と一致をしました。そして、協議を重ねて、今般実質合意に至ったところです。
 その間の協議の過程については、つまびらかにすることは外交交渉においては控えなければならないとは思っていますが、要は協議の考え方としましては、地位協定に欠けている要素を入れ込む方法には様々ある中にあって、どういった方法を取るのが適切なのか、こういった観点から議論を行った次第であります。そして、その結果として、日米間で補足協定との形式を取ることで合意した、これが協議のありようでありました。
 日米地位協定が締結されてから五十四年たっております。補足協定の交渉は初めての取組であり、今般の実質合意、従来の運用改善とは異なる大きな意義があるものと認識をしております。
○井上哲士君 改定そのものを提起したというお話はありませんでした。
 具体的中身について見ていきますが、環境基準について、この共同発表では、米国政府は、自国の政策に従って、JEGSを発出し、維持する云々と、こうあります。これは、例えば二〇〇〇年の九月にも環境原則に関する日米の共同発表がありますが、この下でも、在日米軍は、日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択するとの基本的考えの下で作成される日本環境管理基準、JEGSに従って行われると書いてあるわけで、従来から米国が表明してきたことと同じことが書かれたにすぎないんじゃないですか。
○政府参考人(外務省北米局長 冨田浩司君) お答えをいたします。
 先生今御指摘がございましたアメリカ側によります日本環境管理基準、これはJEGSと呼んでおりますけれども、これに関します取組につきましては、先生御指摘のとおり、二〇〇〇年の環境原則に関する共同発表において日米間で確認をし、これまで継続して実施されてきていると、こういう経緯があるわけでございます。
 今回の環境補足協定におきましては、JEGSの発出、それからその維持を政府間協定という形式で明確に定めることになったと、こういう意義を有しておりますので、二〇〇〇年の環境原則に関する共同発表というのは政治文書でございまして、政治文書での確認にとどまっていたこれまでの取組とは一線を画す意義を持つものだというふうに考えております。
 昨年十二月の仲井眞知事からの御要望の中にも、日米地位協定の条項の追加ということに関連をいたしまして、日米両国の環境基準のより厳しい条件を適用するというふうな言及がございます。今回の補足協定はこうした御要望にもお応えするものだというふうに考えております。
○井上哲士君 従来のものは政治文書であって、今回は政府間協定で違うんだと、こうおっしゃいます。確かに、例えばオスプレイの配備に関する日米間の政治文書が全く守られていなかったということは、沖縄県民を始め皆さん知っていることで、まあそういうものだということをお認めになったのかなと思うんですが、実際、この間、米軍はこの内規であるJEGSを守っていると言ってきました。
 しかし、実際には、次々と看過できない環境汚染事案が発生、発覚をしてきたというのが動かし難い事実で、私もこの間、当委員会で、返還された土地の下に様々な有毒物質が埋められていたとか、様々な事案を指摘をしてきたわけですね。渉外知事会も、今年四月十七日の要請文書で、手続面を含めて、実質的に日本側環境法令を遵守することを確保する条項の導入を求めております。
 現状を変えようというならば、この地位協定が規定する米軍の施設・区域の管理権の在り方に踏み込む必要があると思うんですが、そういう提起はされているんでしょうか。
○政府参考人(冨田浩司君) お答えをいたします。
 在日米軍は、地位協定の第三条に基づきまして、施設・区域の管理等のために必要な全ての措置をとることができるというふうに規定されているところでございます。恐らく先生はこの点を捉えて管理権というふうに言われているんだと思いますけれども、これ自体は、在日米軍が日米安保条約上の義務を履行するために日本に駐留をし、その円滑な活動を確保する上で必要なものであるというふうに私どもとしては認識をしております。
 ただ、同時に、アメリカはこのような権利を何の制約もなしに行使するということでなくて、同じく第三条、地位協定の第三条の三項には、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払つて行なわれなければならない。」というふうに規定されているところでございます。
 その上で、政府といたしましては、この協定を通じまして、施設・区域内外の環境保護を強化して地元の御懸念に可能な限りお応えするという観点から、環境基準、それから施設・区域への立入り等の面で適切と考えられる規定を整備しようと、こういう考え方の下で交渉を行ってきたものでございます。
○井上哲士君 これまでもそういうようなことが言われてきたけれども、実際には行われてこなかったと。そして、基地内で事故が起きて、当該自治体が立入りを求めても拒否をされたということがたくさんあるわけですね。それに、どういう具体的な担保がされるのかということがちっとも見えてまいりません。
 この発表文には、返還に関する原状回復義務についても全く見当たらないわけですが、これはどういうことなんでしょうか。話し合ってもいないんですか。
○政府参考人(冨田浩司君) まず、協定、今回、実質合意ということで、共同発表の形でその主要点というのを発表させていただいておりますけれども、これを具体的にどういうふうに実施していくかということについては、協定そのものを署名し公表する段階で御説明をできると思いますし、また、この協定と関連のいろんな文書を今後整備する中で、できるだけお地元の期待にも応えられるようなものをつくっていきたいというふうに考えています。
 その上で、原状回復についての御質問でございますけれども、その地位協定におきましては、施設・区域を日本に返還するに当たって米側に原状回復の義務は置いておりません。その代わりに、日本側におきましても、残される建物、工作物等について、米側へ補償する義務を負わないという形で双方の権利義務のバランスを取っているというのがこれまでの立場でございます。
 そこで、今回の環境補足協定でございますけれども、この基本的な原状回復義務に関する構造は変えておりません。その上で、したがって、返還地の原状回復は必要に応じてこれまでどおり日本側で行うことになるわけでございますけれども、この協定の中での取組を進めることを通じまして、例えば、アメリカがきちんと環境基準を遵守するであるとか立入りを確保していくということを通じて、その原状回復に関して日本側が負う負担というものが軽減されることが期待されるというふうに御理解をいただければと思います。
○井上哲士君 しかし、この発表文書では、立入りについて、手続を作成、維持とありますけれども、日本の権利ということは書いていないんですよね。自治体側が求めればアメリカ側は立入りを拒否できないと、こういう仕組みがつくられるんでしょうか。
○政府参考人(冨田浩司君) 先ほどの御答弁に、繰り返しになりますけれども、今回は実質合意ということで協定の主要なポイントについて発表させていただいておりますけれども、これからその協定に係る関連の文書等も整備をした上で、これを協定の署名と併せて公表していくという段取りを考えているところでございます。
 御指摘のございました立入りにつきましては、恐らくは協定そのものというよりは協定に関連する附属文書の中で具体的に整備をしていくということになるかと思います。
 その際、環境事故の際の調査等につきましては、これまでは個別に、調査のたびに米側に立入りを申請してきた経緯がございます。申請に係る統一的な手続が存在しておらず、いかなる場合に立入りが認められるかなどが明らかでなかったという経緯がございます。
 今回、補足協定におきましてこうした手続を定めることが明確になりましたことに伴って、日本側の関係当局にとって予見可能性、透明性が高まって、こうした現地調査がより実効的に行うことが可能になるのではないかというふうに期待されているところでございます。
○井上哲士君 いや、その予見可能性が問題になってきたんじゃないんですよ。立入調査を行わせろと、現に事故が起きているじゃないかということを地方自治体が求めても断られてきたという実態があるわけですね。そういうことはなくなるんですかと、ちゃんと自治体側の立入りの権利というものとして定められるんですかということを私は聞いているんです。
○政府参考人(冨田浩司君) 今御指摘のございました、この立入りの手続について今後整備していく上での実効性ということにつきましては、まだその手続自体をアメリカと交渉しているところでございますので今この場で御説明する段階にはございませんけれども、いずれにいたしましても、これまで地元から様々いただいた御指摘などを踏まえて、できる限り実効的なものをつくっていきたいと、こういうふうに考えているところでございます。
○井上哲士君 要するに、米側が排他的な管理権を有していると、そして行使すると、その枠組みは変えない下で、その裁量の下で立入りを容認する場合の手続を定めると、こういうことですかね。
○政府参考人(冨田浩司君) 繰り返しになりますけれども、今御質問のあったお尋ねの点については、協定の文言、それから現在交渉中の立入りの手続などを含めたこの全体像の中で評価いただくべき話だと思っておりますので、更に米側との調整を進めた上で、またきちんと御説明させていただきたいというふうに考えております。
○井上哲士君 地位協定が今定めている権利義務に手を付けずに、そこに何ら影響を及ぼさない形で幾ら私は話をしても、現に被害に苦しむ自治体や周辺住民の問題の解決にはならないということを指摘したいと思うんですね。
 さらに、この発表文によれば、日本側の新たな負担についても書かれてあります。日本政府は、環境に配慮した施設を提供するとともに、環境に配慮した種々の事業及び活動の費用を支払うために資金を提供すると、こうありますが、この環境に配慮した施設とは具体的に何か、それから環境に配慮した種々の事業、活動とは一体何でしょうか。
○政府参考人(冨田浩司君) 今御指摘のあったとおり、今回発表させていただいた共同発表の中では、先生が御指摘になった二つの協力、日本政府側の協力が挙げてございます。
 具体的には、環境に配慮した施設を提供するということと、環境に配慮した種々の事業及び活動の費用を支払うための資金を提供するということが挙げられておりますけれども、これらの措置の詳細につきましては、まさに今、日米間で交渉中でございます。したがいまして、これについても、詳細については、この交渉が妥結した段階で御説明するということになるかと思います。
○井上哲士君 具体的に聞きましょう。
 この間、返還された米軍の基地の跡地から有害物質が埋められていたということが後から発覚して、日本側の負担でこれを除去するということがたくさん行われておりますが、例えば事前に調査をして、返還前にそういうものがあると明らかになった場合に、これはアメリカ側の負担でちゃんと元に戻すというようなことには踏み込むんでしょうか。
○政府参考人(冨田浩司君) 今御指摘のあったような具体的なケースについて、今回の補足協定及びその下で交渉される関連文書でいかなる具体的な対応が行われるかということについては、繰り返し申し上げておりますけれども、まだ米側と調整中の部分もございますので、予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、先ほども御答弁いたしましたけれども、現に起こっているということではなくて、過去に起こった環境面での事由に対する原状回復の義務ということに係るこれまでの考え方というのは基本的に変更がないというふうに考えております。
○井上哲士君 ですから、幾ら汚染したって復旧義務がないわけですから、現行地位協定のその枠組みのままでは汚染発生の抑止力にはならないと思うんですね。
 先ほどの環境に配慮した施設とか種々の事業、活動ということをお聞きしましたけれども、これはそもそも地位協定の負担原則に合致しない負担だと思うんですね。どういう理屈で地位協定上こういうものを日本が負担をすることになるんでしょうか。
○政府参考人(冨田浩司君) 先ほど申し上げましたとおり、この財政措置の在り方については依然として米側と調整中でございます。そういうこことで、これが具体的にどういう形で運用されるかということについては現時点では御容赦いただきたいと思いますけれども、基本的な考え方につきましては、米軍施設・区域にある自治体の地元の方々が施設・区域内外の環境が十分に保護されているというふうに実感していただくことが最も大事なことでございます。そのために、米軍が環境保護のために様々日本側と協力していくということがまず前提になるということ、これはもちろんである、これは言うまでもないことでございます。
 他方で、日本政府としてもこれはその際に果たすべき役割がないかというと、そういうことではございませんで、日本側としてもこれまでも施設・区域内で環境に配慮した施設を整備する等の協力を行ってきているわけでございますので、今後、今回の補足協定の中で行う財政措置につきましてもこうした考え方を踏まえながら米側と調整して策定をしていくと、こういうふうに御理解をいただければと思います。
○井上哲士君 地位協定の原則は、日本が負うのは施設や区域の提供だと、そして米国は米軍を維持することに伴う全ての経費を負担すると、これが原則なはずなんですよね。ですから、既に日本が提供した施設・区域を環境に配慮したものにしていくというものを日本が負担するのはこの原則から外れていませんかと、こういうことを聞いているんです。
○政府参考人(冨田浩司君) 繰り返しになりますけれども、財政措置の内容についてはまだ調整中でございます。しかしながら、先ほど申し上げたような施設を提供するというふうな形で日本が協力する部分については、当然のことながら、これまで地位協定の下で行ってきた財政措置の在り方と整合的な形で行うということを考えているところでございます。
○井上哲士君 結局、地位協定そのものが極めてこのアメリカの特権を維持したものでありますが、その枠すら外れて、この間、例えば思いやり協定という形で日本の負担がどんどん広がってきたと、これに更にこの問題での負担をするということになっているんですね。
 外務大臣、お聞きしますけれども、やはり地位協定の原則に戻っても、この環境の配慮に係る経費というのは日本が分担すべき筋合いのものではないと思うんですね。原則からしてもアメリカ側の責任においてなされるべきであるし、それから、先ほど来申し上げているような、有毒な物質を地下に埋めたようなことも含めて行っていることの何の原状回復義務もないというようなことについて、これはやっぱり改めなければ国民の権利は守れないと思いますが、外務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(岸田文雄君) 今回の環境補足協定ですが、日米両政府が在日米軍に関連する環境の管理の分野における協力を強化する、こうした考えに基づいて協議を続けてきました。そして、何よりも、この協議を行い、そしてその結果において重視されなければならない考え方として、米軍施設・区域の地元の方々がこの施設・区域内外の環境が十分に保護されている、こういった実感を持てるようにすることが重要だという考えの下に協議を行ってきました。そして、その地元の方々に実感を持っていただくためには、まずは米軍がこの協定に従って環境保護のため日本側と協力すること、これが重要であること、これは当然のことであります。
 しかし、米軍のこうした努力に加えて、日本側としてもこの施設・区域内で環境に配慮した施設を整備するなどの取組を行って、米側と日本側と、それぞれの努力、双方の取組が総体として効果を発揮する、そして、そのことによってこの地元の方々が環境が保護されているという実感を持てるような結果につなげる、こういった考え方に基づいて議論を行ってきたわけであります。
 そういう、米側の努力、もちろん重要でありますが、この結果を出すために日本側の努力も必要である、こういった考え方に基づいてこの費用の負担、こういった対応が結論として導き出されてきた、この考え方につきまして是非御理解をいただきたいと考えております。
○井上哲士君 米側の努力、日本の努力と言われましたけれども、中身を今聞きましても、結局、地位協定の改定は提起をしないと、そして米軍の権利義務には全く踏み込んでいないわけですね。実効性自身が甚だ疑問でありますが、一方で、筋違いの財政負担を日本がすることだけは、これはもう明記をされたわけでありまして、これがおよそ周辺住民の実感になどつながるものとは到底思えないわけでありまして、私は、これもやっぱり、結局沖縄知事選の前に基地負担軽減の努力かのようにアピールするというやり方は、これはやめるべきだと、協議をやり直して地位協定の改定そのものの提起を行うということを強く求めたいと思います。
 ガイドラインについても質問をしたかったんですが、時間が来ましたので、また是非時間を取っていただきたいと思います。
 以上、終わります。

 

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