国会質問議事録

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外交防衛委員会(自衛隊国民監視訴訟)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 自衛隊の情報保全隊による国民監視活動は違法だとして損害賠償を求めていた訴訟の控訴審の判決が二月の二日に仙台高裁でありました。一審判決に続き、自衛隊の行った国民監視、情報収集の違法性を認めました。
 高裁判決は、反戦ライブ活動をしていた原告一人について、公になっていない本名や職業を陸上自衛隊に調べられたとしてプライバシーの侵害を認め、十万円の賠償を国に命じました。これに関して国、防衛省は最高裁に上告せず、原告勝訴判決が確定をいたしました。
 まず、防衛大臣、なぜ上告をしなかったんでしょうか。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) 今般の判決につきまして、国の主張について一部裁判所の理解が得られなかったというところでありますが、判決内容を慎重に検討をし、関係機関と調整をした結果、上告及び上告受理申立ての理由に該当する事項がないということから、国としては上告及び上告受理の申立ては行わないということにしたわけでございます。

○井上哲士君 該当事項がないというのは、具体的にどういうことでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 上告につきましては、民事訴訟法三百十二条に基づき、当該判決に憲法の解釈の誤り、その他憲法違反等があることを理由にできるとされております。また、上告受理申立ては、同法の三百十八条に基づいて、判例に反する判断又はその他の法令の解釈に関する重要な事項を含むと認められる事件について受理されるということになっているからでございます。

○井上哲士君 この裁判は、日本共産党が二〇〇七年の六月に公表した自衛隊の内部文書によるものであります。この文書はA4判の百六十六ページに及んで、陸上自衛隊の情報保全隊がイラク派兵に反対する運動をしていた人たちを監視し、個人情報を追跡調査、収集しているものを記載したものでありまして、監視対象は年金改悪、消費税増税反対運動であるとか、また監視対象も国会議員や地方議員、新聞記者などにも及ぶものでありました。
 高裁判決では、この内部文書が自衛隊しか知り得ない内容が記載されていること、当時の久間防衛大臣が自衛隊の文書でないとは断言できないと国会で答弁をしていること等からすると、情報保全隊によって作成されたもののコピーであると明確に認定をいたしました。
 大臣、この判決が、自衛隊が全国で国民を詳細に監視していると、こういう事実を認定したものであるということ、その認識でよろしいですね。

○国務大臣(中谷元君) 関連する訴訟が係属中であるということから、お答えは差し控えさせていただきます。
 いずれにしましても、本件訴訟で提示された文書につきましては、防衛省として対外的に明らかにしたものではないことでありまして、陸上自衛隊情報保全隊が本件文書を作成したか否かも含めまして国として認否できないという立場に変わりはありません。

○井上哲士君 国として認否しなかった、つまり否定しなかったということなんですね。
 その上で、裁判を通じてこの文書が情報保全隊作成の文書のコピーであるということを明確に認定をしたわけですから、そのことをはっきり認めるべきだと思います。さらに高裁は、勝訴した原告について、原告が行ったのはライブ活動であって、自衛隊若しくは隊員に対しての働きかけを伴う行動とは言えず、一般的に公になっていない原告の本名及び職業を探索する必要性は認め難く、その情報を探索、保有した行為は原告のプライバシーを侵害する違法な行為だといたしました。
 上告しなかったということは、自衛隊がこれらの行為を違法だと認めたということでよろしいですか。

○国務大臣(中谷元君) 損害賠償請求を認容された原告一名について判決が確定をしたということは承知をいたしておりますが、関連する訴訟が係属中であるということから、お答えは差し控えさせていただきます。

○井上哲士君 裁判で、事実について認否をしなくて、そして事実を認め違法とした、そういう判決が出てもまともに答弁をしない、そんな態度が私は法治国家で許されるのかと。
 自衛隊・防衛省というのは、司法のこういう判断を認めないと、そういう態度なんですか。

○国務大臣(中谷元君) 関連する訴訟が係属中であるということから、お答えは差し控えさせていただきます。
 文書につきましては、先ほど申し上げましたけれども、防衛省として対外的に明らかにしたものではないということから、陸上自衛隊情報保全隊が本件文書を作成したか否かも含めまして国として認否できないという立場に変わりはございません。

○井上哲士君 認否はしないと、しかし、司法で認められても認めないと、そんなこと通用しないですよ。どんな言い逃れをしようとも、国の上告断念が自衛隊による国民のプライバシー侵害という違法行為をしたということを認めたわけであります。
 原告は、勝訴は当然としつつ、これでは安心できない、私の情報を一体どこまで探索したのか、どんな情報を収集、保有しているのか国は全く説明していないと、それが今後どのように利用されるかを考えると恐怖を感じるとして、違法に集めた本名や職業の情報、その他違法に集めた情報があれば直ちに削除してほしいというコメントを出しております。当然のことだと思います。直ちに応じるべきだと思いますが、削除されたんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 関連する訴訟が係属中であるということから、お答えは差し控えさせていただきます。
 いずれにしましても、本件の訴訟で提示された文書につきましては、防衛省として対外的に明らかにしたものではないということから、陸上自衛隊の情報保全隊が本件文書を作成したか否かも含めまして国として認否できないという立場に変わりはございません。

○井上哲士君 いや、この原告に対するのは終わっているんです、上告しなかったんだから。だから、この原告本人が自分に対する情報は消してくれと言っているんですから、ほかの訴訟は関係ないじゃないですか。すぐ答えてくださいよ。

○国務大臣(中谷元君) 関連する訴訟が係属中でございまして、お答えは差し控えさせていただきます。

○井上哲士君 本当にひどい態度ですよね。
 自民党が野党時代に、自衛隊のOBの参議院議員が質問主意書を出されております。自衛隊の情報保全隊が同議員を含む自衛隊OBの講演会に潜入して現職自衛官の参加状況を監視していると報道されたことについて、自衛隊法で制限されている政治活動に抵触しない行為まで規制することは、憲法第十九条において保障されている思想、良心の自由を侵害するものであり、極めて憂慮すべき事態であると認識していると、こういう質問主意書を出されているんですね。ましてや、憲法に保障された国民の表現活動を監視することはあってはならないんですよ。
 この裁判では、情報保全隊の監視活動の内容が問われました。控訴審では、情報保全室長が証人に立って、公になっていない氏名を仮に情報保全隊が調べていたらそれは問題のある行為であると情報保全室長が証言をしておりますけれども、これは防衛省・自衛隊とも同じ認識でよろしいですね。これは一般論で証言されております。

○国務大臣(中谷元君) 情報保全隊というのは、特定の個人とか団体の影響を受けて自衛隊員が情報保全に関する規律違反等を行ったりすることがないよう、必要な資料の情報の収集、整理等を行っているわけでございます。
 情報保全隊の情報収集につきましては、防衛省・自衛隊の任務、所掌事務の範囲の中において、関係法令に従い適切な方法で行われており、具体的には、インターネットや刊行物を通じた収集、公開された場での収集などを行っております。今後とも、関係法令に従って適切な方法で情報収集等に努めてまいります。

○井上哲士君 いや、当時の情報保全室長が証人に立って、公になっていない氏名を仮に情報保全隊が調べていたら、それは問題のある行為であると明確に証言しているんです。このことについて、同じ立場ですねということを確認しているんです。

○国務大臣(中谷元君) 元陸上自衛隊の情報保全隊長が御指摘の内容を証言をしたということは承知をいたしておりますけれども、現在訴訟が係属中でございますので、お答えは差し控えさせていただきます。

○井上哲士君 もう一点聞きますが、判決は、情報保全業務の対象に関して、医療費の負担増の凍結、見直しとか、年金改悪反対とか、こういう自衛隊の保全と全く関係ない情報収集の必要性は認め難いといたしました。この点も、元情報保全隊の隊長が証人として立って、証言の中で、消費税増税反対の街宣活動は対象に当たり得ないと、こういうふうに述べておりますけれども、じゃ、これも防衛省・自衛隊も同じ認識でしょうか。いかがでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 情報保全隊の情報収集の対象など個別具体的な活動内容につきましては、これを明らかにいたしますと防衛省・自衛隊の情報保全に支障が生じるおそれがあることからお答えは差し控えさせていただきますが、その上であえて申し上げれば、情報保全隊というのは、特定の個人、また団体の影響を受けて自衛隊員が情報保全に関する規律違反等を行ったりすることがないように、必要な資料、情報の収集、整理等を行うことを任務といたしております。その際、防衛省の所掌事務の範囲内で、関係法令に従いまして適切な方法で行うということは当然のことであると考えております。

○井上哲士君 現実に現場でやっているこの保全室長、保全隊長が、そういう立場の上で、こういう公になっていない氏名の収集、それから消費税増税反対などの街宣活動は対象に当たり得ないと、こういうことを言っているわけです。これは、じゃ勝手に、防衛省・自衛隊と相談なく勝手にこの証人がこういう意見を言ったんですか。

○国務大臣(中谷元君) これは、関連する訴訟が係属中であるということからお答えは差し控えさせていただきますが、情報保全隊の任務というのは、先ほど御説明をいたしましたとおり、特定の個人、団体の影響を受けて自衛隊員が情報保全に関する規律違反等を行ったりすることがないように、そのような必要な資料、情報の収集、整理を行うということを任務といたしております。

○井上哲士君 いろいろ言われますが、情報保全元室長、隊長が明確に証言で述べたということは大変重い中身でありまして、こういう違法な監視活動の中止を直ちに指示すること、そして、第三者委員会もつくって、こうしたことが行われていないかということを調査し、国民に公表することを強く求めたいと思います。
 その上で、最後に、この十万円の賠償金の支払は確定をいたしました。いつこれ支払うんでしょうか。そして、自衛隊の責任者が原告にちゃんと会って謝罪をするべきだと思いますけれども、そのおつもりはあるでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 本判決におきまして、原告一名に対する賠償金の支払が確定をいたしたことから、現在、早期に支払を行うため原告側と支払の要領等について調整を行っているところでございまして、調整が整い次第、速やかに支払うことといたしております。
 また、謝罪すべきとの御意見につきましては、関連する訴訟が係属中であることからお答えは差し控えさせていただきますが、本件訴訟で提示された文書につきまして、防衛省としては、対外的に明らかにしたものではないということから、陸上自衛隊の情報保全隊が本件文書を作成したか否かも含めまして、国として認否できないという立場に変わりはございません。

○井上哲士君 そう言って裁判をやったけれども、この件については原告が勝って、そして上告しなかったんですから。ですから、仕方がないので賠償金は支払うけれども、司法の判断を認めずに謝罪はしないと、そんな不誠実な態度は通用しないですよ。自衛隊のいじめ問題でも、裁判では争ったけれども、結果が出ればちゃんと謝罪しているわけです、遺族に。私は、裁判所がどう言おうと、自衛隊の保全のためには国民のプライバシー踏みにじっていいと、そう思っているとしか考えられないわけですね。
 憲法に保障された集会、結社、出版などの表現の自由を踏みにじるようなこういう国民監視活動はやめるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。

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