国会質問議事録

ホーム の中の 国会質問議事録 の中の 2016年・190通常国会 の中の 予算委員会(宇宙軍拡と無人機)

予算委員会(宇宙軍拡と無人機)

○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。
 積極的平和主義の名の下に安保法制、我々は戦争法と呼んでおりますが、強行されまして、そして今月二十九日にも施行されようとしております。
 総理、この安保法制の審議の際の地方公聴会に公述人として参加をされた日本学術会議の広渡清吾前会長はこう言いました。安倍内閣の積極的平和主義は、軍事を社会の中心に置くという考え方に限りなく近づいていますと述べられました。総理、受け止めいかがでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) その認識は間違っているというふうに思います。
 まさに積極的平和主義ということについて言えば、これは言わば、確かに安全保障全般をいっているわけでございますが、プラス言わば人間の安全保障を進めていくという分野もありますし、基本的には外交において地域の平和や安全を確保していく、これが中心でありますが、その中で平和安全法制の整備について言えば、これはまさに地域や世界の平和構築に更に日本が貢献をしていこうというものでありますし、また日米同盟をよりきずなを強化することによってその抑止力を高め、日本人の命や平和な暮らしを守り抜いていく上において資するものであると、こう考えているところでございます。

○井上哲士君 認識は間違っているとおっしゃいました。しかし、実際には、今様々な分野で軍事の拡大が進んでおります。来年度予算は史上最高五兆円を超えました。国是であった武器の輸出の禁止が変えられて、積極的な武器輸出へと変わり、防衛装備庁もつくられました。
 今日は、私は、宇宙の分野での軍備の拡大についてお聞きをいたしたいと思うんです。
 総理、日本の宇宙開発は軍事利用を厳しく禁じてきました。それを明確にしているのが、一九六九年の衆議院本会議での平和の目的に限り宇宙を利用するという決議です。当時、政府は、この平和とは非軍事という解釈だと明確に述べております。なぜ我が国では宇宙開発は軍事利用が禁じられてきたと承知されているでしょうか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 宇宙の開発及び利用については、昭和四十四年に衆議院による宇宙の平和利用決議において平和の目的に限り行うものとするとされており、これが軍事利用を禁じていると解釈されてきたと理解をしています。
 その後、自民党、公明党、民主党の共同提案によって平成二十年に成立した宇宙基本法においては、宇宙の開発及び利用を我が国の安全保障に資するよう行うものと位置付けており、憲法の平和主義の理念にのっとり、専守防衛の範囲内で我が国の防衛のために宇宙を開発利用することが可能となったと考えております。
 政府としては、このような宇宙基本法の基本理念を踏まえて宇宙政策を推進していきたいと思っております。
   〔委員長退席、理事岡田広君着席〕

○井上哲士君 今ありましたように、この宇宙の軍事利用の禁止は憲法の平和原則に基づいたものであります。しかし、今おっしゃった二〇〇八年の宇宙基本法の中の、我が国の安全保障に資するように行われなければならないと、これが宇宙の軍事利用に私は道を開いたと指摘をしたいんですね。
 安倍政権の下でそれが急速に進行しております。昨年四月に発表された日米ガイドライン防衛協力指針の中に初めて宇宙に関する日米協力が盛り込まれました。なぜこれが盛り込まれたのでしょうか。

○国務大臣(防衛大臣 中谷元君) 専守防衛を旨とする我が国にとりまして、各種の状況を事前に察知するための情報の収集、また、今日も北朝鮮がミサイルを発射をいたしましたけれども、周辺の海空域の警戒監視を強化をする上で、また宇宙のみならず、PKO活動ですね、こういった国際平和活動における通信手段、こういうことを確保する上で、いかなる国家の領域にも属さずに地表の地形などの条件の制約を受けない宇宙空間、これの利用は極めて重要であります。
 それに加えて、近年、宇宙ごみの増加また衛星攻撃兵器による実験など宇宙空間の利用を妨げるリスクの拡散や深刻化、新たな安全保障上の課題が発生しておりまして、これに実効的に対処して宇宙空間の安定を強化するということが必要でございます。
 これは日米の共通の認識でありまして、日米間で相互の能力を強化して補完するために宇宙分野における協力を行っていこうではないかということで、近年の宇宙ごみの増加に踏まえて日米が連携して宇宙状況の監視に取り組むなど、宇宙空間の安定的利用を確保するための施策を更に推進をしていくというものに鑑みまして、新しいガイドラインにおきまして、日米間の協力の分野におきまして新たに宇宙に関する協力について盛り込んだわけでございます。

○井上哲士君 アメリカは世界最大の宇宙大国として軍事利用を進め、単独で優越性の維持や強化を目標としてきましたけれども、この間、同盟国との連携も重視をしてきております。このガイドラインを受けて、自衛隊と米軍の間で宇宙協力ワーキンググループもつくられております。そういう点で、宇宙での日米協力を初めて掲げたこのガイドライン、日米の宇宙支配戦略宣言とも言えるものだと思います。
 安倍内閣は、このガイドラインを先取りして、昨年の一月に第三次宇宙基本計画を策定しております。一昨年七月の集団的自衛権行使容認の閣議決定を受けて、総理が指示をしてこの計画が作られました。(資料提示―井上質問(16年3月18日予算委 宇宙軍事利用、無人機)配付資料.pdf
 この計画では、宇宙政策の目標の三つのトップに宇宙安全保障の確保が掲げられました。そして、初めて宇宙協力を通じた日米同盟等の強化が掲げられました。一方、前回の基本計画にはあった宇宙の平和的利用という言葉も日本国憲法の平和の理念に基づきという言葉もなくなりました。宇宙を研究している科学者たちからは、宇宙が軍事に乗っ取られたと、こういう声すら聞こえてまいります。
 この基本計画で最も重視をされたのが準天頂衛星システムです。これはどういうものなのか。そして、これまではまず四機体制で七機体制は将来課題とされておりましたけれども、七機体制の前倒し整備も掲げられました。一体なぜなのか、担当大臣、お答えください。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(宇宙政策担当)島尻安伊子君) 準天頂衛星システムは我が国が独自に整備を進めている衛星による測位システムでございまして、日本で常に天頂付近に衛星が見えるようにして位置情報などを得るサービスを提供するものでございます。同様の衛星測位システムであります米国GPSの信号を受信できない都市部、山間部でも位置情報が得られる機能などを有しておりまして、衛星測位の利用可能性の拡大や精度等の向上が図られるということでございます。
 精度の高い位置情報などを活用することで、自動車の自動走行や農業機械の無人走行など、我が国の産業活動や国民生活に対して新たな機能、サービスを提供することが可能となります。こうした準天頂衛星システムの生み出す新たな機能、サービスは、我が国にとどまらず、準天頂衛星の信号が届くアジア太平洋地域への海外展開も期待されているところでございます。
 平成三十年度において確立予定の四機体制では、少なくとも二機以上が二十四時間三百六十五日、日本の上空に配置されることになります。このため、GPSと準天頂衛星システムを組み合わせることで、GPSのみの位置測定サービスに比べてより高度なサービスが常に提供可能となります。
 さらに、昨年改訂されました宇宙基本計画におきまして、平成三十五年度を目途に準天頂衛星の七機体制の確立、運用を開始することが決定したところでございます。これによりまして、測位に最低限必要となる準天頂衛星四機が常に日本上空に配置されることとなります。このため、GPSに依存せず、我が国の準天頂衛星システムのみで持続的な測位を行うことが可能となります。本システムの利用の幅も一層大きく広がるということが期待されるところでございます。
   〔理事岡田広君退席、委員長着席〕

○井上哲士君 GPS機能との組合せということでありました。計画では、この準天頂衛星システムはGPS機能の補完、補強をすると。日本版GPSということも言われております。
 今、いろんなことが言われました。GPSといいますとスマホとかナビが強調されるわけですが、これは元々米軍の軍事技術の一つであります。アメリカは三十機のGPS衛星を上げておりますが、これは国防総省が上げているわけですね。弾道核ミサイルや攻撃地点の位置を測定したり無人攻撃機の運航など、今日の米軍の戦争とは、このGPSというのは切っても切れないものになっているわけですね。
 そして、今七機体制について言われました。この準天頂衛星、来年度予算にはどれだけ掲げているのか、そして今後七機体制にするわけですが、総事業費は幾らか、それから地上システムはどこに建設する予定で、既に運用されているのはどこか、お答えください。

○国務大臣(島尻安伊子君) 平成二十八年度予算案におきましては、内閣府において約百四十五億円を計上させていただいておりまして、主に二号機から四号機の衛星開発に掛かる費用として約二十六億円、打ち上げに掛かる費用といたしまして約三十一億円、二〇二〇年に寿命を迎えます初号機、初めてのものでございますけれども、この後継機の開発等費用として約八十五億円が計上されているところでございます。
 準天頂衛星については、平成二十三年九月に二〇一〇年代の後半をめどに四機体制を整備することを閣議決定しておりまして、また今般改訂された宇宙基本計画において、平成三十二年度以降も確実に四機体制を維持すべく、この初号機の後継機について検討に着手することが位置付けられたことから、早期に実現するように努めてまいりたいと思っております。
 そして、七機体制でございます。総事業費はという問いでございますが、この七機体制の確立に必要となる総事業費につきましては、これは未確定でございますが、この初号機については、平成十五年度から平成二十三年度にかけて文科、経産、そして総務省及び国交省の予算で約七百五十八億円が措置されたところでございます。二号機から四号機については、平成二十三年九月の閣議決定に基づきまして、四機体制の開発、整備、運用に必要な額として、内閣府の予算で平成二十四年度から平成四十四年度までに二千億円強を見込んでいるところでございます。

○井上哲士君 四機体制でも三千億近いことになるわけで、これが七機体制となりますと莫大な金額になります。これ、防衛省予算ではないわけでありますが、軍事的目的があることは、私は経過を見れば明白だと思うんですね。
 衛星測位というのは四機で可能であります。七機あればオーストラリアなどもカバーすることができる。なぜこれを急ぐことになったのかと。その経緯を、内閣府の宇宙政策委員会の葛西敬之委員長が、昨年六月に「時評」という雑誌で述べておられます。
 こう言われているんですね。安全保障となると、日本が単独で自国防衛することは不可能な状況ですから、やはり米国の協力が不可欠であり、協力を得るためには米国が最も望む内容を把握する必要があります。そこで、私自身、昨年九月に米国に赴き実際に関係者と意見交換したところ、中国がGPS機能を破壊しようとする可能性がある、したがって日本がそのバックアップ機能を保有してくれることが大変重要であるとの意向でした。すなわち日本版GPSである準天頂衛星の充実強化です。日本では七機体制はあくまで将来的に目指すものとしていたのですが、以降急速に具体化していくことが必須となりましたと、こういうふうに述べております。
 総理、お聞きしますけど、この計画で宇宙の平和的利用ということが取り払われました。そして、今述べたような宇宙政策委員長自身が経過を語っているように、アメリカの軍事的要望に沿って日米協力をするというのがこの宇宙基本計画の真価ではないんですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 宇宙分野における日米防衛協力の強化は、あくまでも我が国の国益を踏まえて我が国の主体的判断として行っているものでありまして、米国の宇宙軍事利用への補完とか従属ということでは全くない、あくまでも我が国の安全のためであると、こういうことでございます。

○井上哲士君 今の雑誌で、この葛西宇宙政策委員長自身がこう述べているんですね。日米協力体制の構築に寄与することがまさにこの宇宙基本計画の真価なのですと、こう述べた上で、この宇宙基本計画の内容については米国も高い評価をしてくれましたと喜んでおります。さらに、宇宙から衛星で正確な位置を測定すること、これに高度情報通信を組み合わせることで、例えば部隊の効率的運用が可能になり、安全保障体制が大きく向上しますと軍事的な意義を強調をしております。ここにまさにこの宇宙基本計画の私は本質があると思うんですね。
 この部隊の効率的運用といいますけれども、じゃ、アメリカがこの衛星を利用して何をやっているのか。重大な惨害をもたらして国際的に厳しい非難の対象となっているのが、オバマ政権の下で進められてきた無人機攻撃です。アメリカ国内など、戦場から遠く離れた安全な場所で衛星を利用して無人戦闘機やミサイルで攻撃をするというものであります。
 外務大臣、お聞きしますけれども、パキスタンを始めアフガニスタン、イエメン、ソマリアなど、米国の無人機攻撃による一般市民の犠牲者の数について、どう把握されているでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) テロ対策等の目的で使用されている無人機が文民を巻き込んだ被害をもたらしていること、こういったことについて国際社会の関心が高まっています。その中で、我が国としては、無人機によるものであるなしにかかわらず、民間人が巻き込まれる事態は極力避けなければならない、こうした考え方に基づいて議論に臨んでいます。
 そして、数字について御質問がありました。我が国も、英国のNPO等の無人機による被害に関する数字、承知はしておりますが、ただ、この数字もNPO自身が推計であると自らこれ説明をしています。正確な数字については、我が国自身、当事者でもありませんので、正確な数字を責任持ってお答えすることは難しいと考えます。

○井上哲士君 無責任な話だなと私は思うんですね。これだけ国際社会で問題になり、国会でも取り上げられてまいりました。
 イギリスのNPOの調査報道局が調査をしております。これでいいますと、例えばパキスタン、二〇〇四年以降、四百二十三回の攻撃があって、最大数で殺害された者が三千九百九十九人、一般市民がそのうち九百六十五人、そのうち子供が二百七人。アフガニスタンでは、一五年以降、二百九十八件、殺害された者、最大で千八百人、うち一般市民が八十二人、うち子供が十八人、こういう数になっております。本当に深刻な事態です。
 二〇一四年の三月に、国連の人権理事会に具体的事例の報告がされております。例えば二〇〇九年六月二十三日、パキスタンの南ワジリスタンで開かれていた大規模な葬儀の会場を、米国指揮下の無人機からと思われる精密誘導ミサイルが爆撃した。会葬者には、タリバンの活動家が含まれていた一方、かなりの数の民間人がいたと目撃者は証言しており、殺されたのは最大八十三人、十人の子供と部族の長老四人が死亡した。これも国連できちっと報告されているんです。極めて痛ましい事態なんですね。
 これだけ深刻な事態が出ているのに、オバマ政権は、無人機による作戦回数を、現在の一日当たり六十から六十五回を二〇一九年までに約九十回に増やす計画を昨年示しております。
 外務大臣、なぜ無人機による攻撃がこんなに増やされてきたとお考えでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 米国政府が無人機によるこうした攻撃を増やしている理由ということですが、米国政府の説明としては、米国の軍事行動は関係法規に従って行われているといった説明を行っていることは承知をしておりますが、それ以上、我が国が米国政府のこうした意図について何か申し上げる材料はございません。
 我が国としては、無人機によるものであるか否かを問わず、民間人が巻き込まれる事態は避けなければならない、こうした考えに基づいてこうした議論に臨んでいる次第であります。

○井上哲士君 まあ、日米協力、日米協力、同盟と言う割には、肝腎なことについては分からないと、本当に無責任だと私は思うんですね。現にやられているんですから。
 結局、自国の兵士の犠牲を考えずに攻撃ができるんですよ。だから、効率的運用ができるということがこの無人機攻撃の本質的な危険なんですね。二〇一〇年の国連人権理事会への特別報告では、その地域の状況も分からずにプレイステーション感覚で殺害ができる、ゲーム感覚だ、だから一般市民の無差別な殺害を必然的に引き起こすと厳しく指摘をしております。
 この無人機攻撃による民間人の殺害は、国連総会にも特別報告が行われました。そして、国連人権理事会でも二つの決議が行われていますが、この決議の内容、そして賛否の数、日本の態度をそれぞれ明らかにしていただきたいと思います。

○国務大臣(岸田文雄君) 遠隔操作航空機等の使用に関し二〇一四年の国連人権理事会で採択された決議、これは、各国に対し、遠隔操縦航空機等の使用を含むいかなるテロ対策措置も、国際法上の義務に従うよう確保することを要請するものとなっています。また、遠隔操縦航空機等の使用に関し国際法違反の兆候がある場合には、迅速、独立、公正な調査を実施すること等を要請しています。
 そして、二〇一五年の国連人権理事会に採択された決議、これは、二〇一四年の決議の決定に基づき国連人権理事会においてパネルディスカッションが開催されたことを歓迎する、こういった内容になっています。
 そして、決議の賛否ですが、二〇一四年の決議は、賛成二十七、反対六、棄権十四です。そして、二〇一五年の決議は、賛成二十九、反対六、棄権十二です。いずれの決議も我が国は反対票を投じております。

○井上哲士君 驚くべきことですよ。国際法を守れと、この攻撃においてもですよ、こういう決議に日本はアメリカとともに二度とも反対をしております。日本政府は反対理由も表明しておりませんけれども、なぜ反対したんですか。アメリカに歩調を合わせたんですか。

○国務大臣(岸田文雄君) この決議の採択においては、決議の中身以前に、決議あるいは議論の在り方について議論が行われました。
 そもそも国連人権理事会は、国際人道法を議論する場ではなく、特定の武器、システムに特化した議論を行うための適切なフォーラムとは言えない、こういった議論が複数の国から提起をされ、そしてこの取扱いについて大きな議論になりました。内容以前の問題としてこういった議論が行われた、こういったことから我が国としましては反対を表明したわけであります。
 我が国の態度につきましては、無人機の航空機による攻撃であるか否かにかかわらず、民間人が巻き込まれる事態を極力避けなければならない、こうした態度であります。これ、他の様々なフォーラム等においてこの問題が取り上げる際には、今申し上げましたこの考え方に基づいてしっかりと我が国の立場を示していきたいと考えます。

○井上哲士君 今述べた理由は、アメリカが反対理由説明で述べたのと全く同じなんですね。人権理事会の議題にふさわしくないと、こう言ったわけです。
 しかし、一回目の決議の後に人権理事会の専門家パネルディスカッションが開かれました。そして、その結論として、無人機攻撃については、全く既存の国際人権法、人道法の範囲内の問題であり、人権理事会で扱うべき問題と明確に断じたわけですよ。日本の反対理由はもうこれ否定されたんですね。にもかかわらず、その次の決議にも日本は反対をいたしました。
 私は、この問題で二〇一三年に岸田外務大臣に質問をしたことがあります。そのときにこう答弁されたんですよ。無人航空機が武力紛争において使用される場合も同様に国際人道法の適用を受けることは当然であります、我が国は、そうした認識を持ちながら今後の国際的な議論をしっかり注視していきたいと、こう言われました。
 じゃ、何でこの決議に反対するんですか。ちゃんと国際人道法、人権法を守れという決議に反対することとこのときの答弁、全く矛盾するじゃないですか。

○国務大臣(岸田文雄君) 我が国の考え方、また私自身の考え方も御指摘の答弁の時点と全く変わってはおりません。
 そして、御指摘の国連人権理事会における決議の採決につきましては、先ほど申し上げましたこの決議の取扱いにつきまして大きな議論が行われて、結果として意見が分かれたままこうした決議が行われたと承知をしています。
 内容については、先ほど申し上げました日本の考え方は変わっておりません。是非、様々なフォーラムにおいて、我が国の考え方、しっかり示していきたいと考えます。

○井上哲士君 全く反対した説明にはなっておりません。
 この人権理事会の専門家パネルでは、米国の無人機による識別特性攻撃、シグネチャーストライクスを取り上げて、国際法を遵守する能力に関して対処を必要とする重大な懸念があると、こういう指摘をしています。
 この識別特性攻撃というものはどういうものと承知されていますか。

○国務大臣(岸田文雄君) 国連のテロ対策と人権保護の特別報告者が二〇一三年に発出した報告書においてシグネチャーストライクについて説明しておりますが、それによりますと、対テロ活動において、集団又は個人の行動に着目して軍事目標の特定を行うとの趣旨が説明されていると承知をしています。

○井上哲士君 分かりにくい説明ですが、国会図書館に調べていただきました。
 つまり、目標が誰であるかを特定することなく、無人機からの映像情報等に基づいて、目標の特徴、若い男性であるとかテロリストが地域で活動をしているとか、そして武器を持っているとか、そういうことを映像で確認をすれば、それがテロリスト、合法な攻撃目標であると推定して攻撃を行うと。つまり、標的かどうか分からなくても、要するに似ていたらやるということなんですよ。これは明らかな無差別攻撃だと思います。
 こうした攻撃でどういう被害が出ているか。アメリカのインターネットメディアで二〇一五年に公開されたアメリカの機密文書によりますと、二〇一二年から一三年にアフガニスタンで無人機攻撃で殺害した二百十九人のうち、意図した目標は僅か三十五人だったと。八五%はつまり目標以外の人を殺害しているんですね。同メディアは、とんでもないギャンブルだと情報提供者の言葉を紹介しております。
 総理、私、これは明らかな人権問題、人道問題そのものでありますが、なぜ、こういうことが起きているにもかかわらず、これを規制していこうというこういう流れ、決議に日本は反対するんですか。おかしいじゃないですか。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) 無辜の市民の命を奪う卑劣なテロは、いかなる理由でも正当化できないわけでありまして、国際社会は一致団結してテロに対処しなければなりません。
 同時に、テロ対策に使用されている無人機が文民を巻き込んだ被害をもたらしていることについて国際社会の関心が高まっていることについては承知をしております。
 御指摘の国連人権理事会の決議には我が国は反対をしておりますが、反対した理由につきましては先ほど既に岸田外務大臣から答弁をさせていただいているとおりでございますが、いずれにせよ、一般論としては、無人機によるものであるなしにかかわらず、民間人が巻き込まれる事態は極力避けなければならないと考えております。

○井上哲士君 極力避けなきゃならないんじゃないんですよ、あってはならないんですよ。人権問題なんですよ。だから人権理事会で議論するんじゃないですか。
 それを反対をしておいて、一体何なのかと。これだけ国際的批判が高まっているときに、アメリカと一緒になって決議には反対をする。そして、その無人機攻撃に不可欠なのがこのGPS機能なんです。これを補完、補強するための宇宙における日米の安保協力を進める、これは全く私は世界の流れに反していると思います。そして、この問題は、もはや他国の問題ではありません。
 防衛大臣にお聞きしますけれども、一昨年の防衛生産・技術基盤戦略では無人機の研究開発ビジョンを作るという方針を示して、昨年発足した防衛装備庁は、一歩先んじた技術力の保持を掲げております。この無人機の研究開発ビジョンというのはいかなるものなんでしょうか。

○国務大臣(中谷元君) 御質問の研究開発ビジョンといいますと、先進的な研究、これを中長期的な視点に基づいて体系的に行うために、将来に必要な主要な装備品と考えられるものについて取り組むべき技術的な課題を明らかにして、中長期的な研究開発のロードマップ、これを定めるものでございます。
 この中で、無人装備につきましては、もう世界でも車や航空機の利用など世界的に開発が進んでいる分野でございまして、我が国におきましても技術基盤の向上に努めていく必要があるということから、無人装備の研究開発ビジョンを策定すべく検討を行っているところでございます。

○井上哲士君 これ一般的研究じゃないんですね。防衛省がやっているんですよ。この技術は攻撃用兵器への応用も可能になるんじゃないですか。

○国務大臣(中谷元君) 防衛省としては、先ほど御説明しましたけれども、警戒監視とか、また情報収集ですね、こういうものは我が国の防衛上必要なものでございまして、あくまでも周辺海空域において常時監視を行い、また各種兆候を早期に察知するような態勢、これを強化するために、滞空型ですね、空にとどまる無人のグローバルホークのようなものを導入を進めているところでございますが、我が国につきましては、何ら攻撃能力、これを有しているものではございません。あくまでも警戒監視やまた情報収集、これを目的とするようなものを念頭に研究をしているということでございます。

○井上哲士君 しかし、安保法制の下で日本の海外での軍事活動がどんどん広がっているわけですから、これが転用される可能性が全く否定はできないところですね。
 しかも、この戦略によれば、外国との装備・技術協力も視野に入れるとしておりますが、この分野での国際的な共同研究の開発も行うんですか。

○国務大臣(中谷元君) あくまでも、この研究開発ビジョンにおきまして中長期的な研究のロードマップを定めて研究を行っているわけでございます。
 他方、いろんな分野における研究は実施をしておりまして、米国とも宇宙協力におきましてはワーキンググループ等を設置をしまして、宇宙に対する政策や情報共有、また訓練、教育交流など幅広い分野での協力の在り方について検討は実施をしているということでございます。

○井上哲士君 ですから、外国での攻撃用兵器の開発にもつながりかねないと、こういう中身になっているんですね。
 そこで、総理、お聞きいたしますが、昨年九月、防衛装備庁の設立のときに、経団連が防衛産業政策の実行に向けた提言を出しております。その中で、武器輸出を国家戦略として推進すべきとして、精密誘導技術等を含む情報関連技術、そして無人機システムの研究開発の強化を求めております。
 安倍内閣の宇宙の軍事利用の拡大というのは、こうした軍需産業の要望に全面的に応えたものではありませんか。

○国務大臣(中谷元君) 防衛省といたしましては、このような攻撃型の無人機を保有するといった計画もありませんし、これに関する研究開発の計画もございません。当然ながら、国際法及び国内法によって使用が認められない装備品の研究開発を行うこともございませんし、海外への装備の移転につきましても、定められた移転三原則、これに従って厳密に行ってまいりたいと考えております。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) いずれにいたしましても、新三原則の下、我々は防衛装備の移転を行っていく考えであります。

○井上哲士君 冒頭、広渡氏の公述を紹介しました。軍事を社会の中心に置く、こんな国づくりは絶対許せませんし、それを進める戦争法は廃止をするべきだということを申し上げまして、質問を終わります。

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